大和路のしらべ

情け深きは 君が御心

えにしの糸を 手繰り寄せ

幽かに見ゆる 奥の暗きを

悟るまなこぞ 尊けれ

情け深く、仁徳を備えた人は、

めぐる縁の理を悟り、

ほの暗い奥の世界さえ 見通してゆく。

あなたのまなざしは、なんと尊いことでしょう。

あまねく人を 愛しむる身は

益荒男が立つ 道となり

勇ましき君 仰ぎ奉りて

安き世のへと 歩むなり

広く人を愛しむ心を持つ者は、

義と勇を胸に、君へ仕える道となる。

勇ましいその背を仰ぎ、私たちは進んでゆく。

やがて来る、小さな安らぎの世へと。

君と臣とが 心を合わせ

親思う子と 一つにて

仮の静けさ ここに成れども

小さき安きと 知るべかり

君と臣とが心を合わせ、

親子のように、忠と孝をひとつにすれば、

そこにひとまず 静かな世は訪れる。

けれどそれは、まだ小さな安らぎにすぎないと、

知っておかねばならない。

大いなる道 興さんためは

小さきを捨て 先を行き

大道を興し、大きな未来を開くためには、

まず小康の世を築き、その“小”が示す限りを悟り、

さらに先へと、歩み続けねばならない。

諸人つどい 和らぎをもて

いと貴しと 為すならん

いと貴しと 為すならん

人々が集い、和をもって互いを尊び合うとき、

その営みこそが、世を貴く満たしてゆく。

まことに尊い世が、そこに生まれるだろう。

まことに尊い世が、たしかに生まれるだろう。