神道式本筮法による易占について
神道式本筮法による易占の成立
神道式本筮法による易占は、漢土の經典たる四書五經の一つ『易經』周易に由來する占法に基づくものである。 その根幹は『易經』の解説書として傳へられる「十翼」繫辭傳に記された筮法に基づく十八變本筮法にある。
古來、蓍草を用ゐて卦を立てる此の筮法は、天道の變化を象り、陰陽消長の理を以て吉凶を觀る方法として傳へられて來た。
また漢代の思想家・王充の著した『論衡』卜筮篇には、卜筮の信仰に關して次の如き文言が見える。
俗信卜筮,謂卜者問天,筮者問地,蓍神龜靈,兆數報應,故捨人議而就卜筮。
此の文に於いて「蓍神龜靈」と記されてゐることに着目し、蓍草を用ゐる筮法に於いては蓍草そのものが靈性を宿す媒介として認識されてゐたことが窺はれる。
神道式本筮法による易占は、此の「蓍神」の觀念を基礎とし、神道祭祀の作法を以て之を整へ、蓍神を奉齋し、祭式の中に於いて筮を行ふ方法として、東洋文化研究會により令和元年に體系化されたものである。
但し此の方法は、神道と儒教の兩傳統に通曉する者にとりては自然に導き得る思想的結合であり、特定の人物或は團體を以て始祖とするものではない。 唯、過去に於いて明確なる記錄として殘らず、また一つの體系として整理されてゐなかつたものを、近年になり改めて整理し、明文化したに過ぎない。
神道式本筮法による易占の原理
神道式本筮法による易占の核は、次の六要素によつて構成される。
一、確率 二、神名(蓍神) 三、祭式
四、祝詞 五、本筮法(十八變筮法) 六、觀測および解釋
易占に於ける卦の成立は、蓍草を操作する十八變の手續を經て定まる。 その結果として得られる卦象は、六十四卦および三百八十四爻の組合せとして顯れる。
此の過程は外見上は偶然的操作に見えるが、近代自然科學の知見に照らすとき、そこには確率的選擇が働いてゐる。 十八變筮法に於いて蓍草の分割が繰り返されることにより、最終的に三百八十四通りの結果のうち一つが選ばれるが、これは統計的確率に基づく選擇過程として理解することができる。
近代自然科學との關係
近世に於いてピエール=シモン・ラプラスは、宇宙の全粒子の位置と速度を完全に知り得る知性が存在すれば宇宙の未來と過去は完全に計算できるといふ思想、いはゆる「ラプラスの惡魔」を提示した。
しかし二十世紀に入り、量子力學の成立により此の決定論的世界觀は大きく修正された。 ヴェルナー・ハイゼンベルクの提示した不確定性原理は、粒子の位置と運動量を同時に完全には決定できないことを示した。 さらにマックス・ボルンは量子状態を表す波動關數の二乘が粒子の存在確率を表すことを示し、自然現象の記述に確率が本質的役割を持つことを明らかにした。
また物理法則の多くは對稱性を持つが、實際の自然界ではその對稱性が一つの結果として破れる現象、すなはち對稱性の破れが存在する。 この場合、理論上は複數の可能性が存在するが、實際にはその中の一つが選ばれる。その選擇には微細な揺らぎ、あるいは確率的過程が關與すると理解されてゐる。
神道式本筮法による易占に於いても、筮竹の操作によつて複數の可能性の中から一つの卦が成立する。 此の過程は確率的選擇の瞬間を、祭式と祝詞を以て整へ蓍神を奉齋することにより、象意を解釋するための宗教的儀禮として行はれるものである。
禁忌
一、同一の事項につき、結果を變へむとする意圖を以て再筮することを禁ず。
山水蒙卦辭「初筮は告ぐ。再三すれば瀆る。瀆るれば則ち告げず。貞に利ろし」
二、酒氣を帶び、心神を亂したる状態にて筮を行ふことを禁ず。
三、他人を害せむとする目的の占を禁ず。
四、生死の時期・盗みの詮索・浮氣の詮索・受験の合否・裁判の勝敗・賭博に關はる事柄の占を禁ず。
心得
一、易占は天道の象を觀る助けと心得べし。
二、卦象の解釋は經典に基づき、私意を交へざることを要すべし。
三、結果を恐れず、亦結果に依存せざる心を保つべし。
四、占的はできる限り具體的に絞り込み、抽象的な問ひを避けるべし。
五、御自身がいかなる考へを持ち、何を求めてゐるかを明確にした上で筮前の審事を行ふべし。
六、筮前は先入觀を捨て、無念夢想・寂然不動にて易に臨むべし。
注意事項
一、筮竹は必ず定數(五十本)を用ゐ、本筮法の手順を誤らざること。
二、祭式・祝詞は定められた形式に從ふこと。
三、觀測結果は六十四卦三百八十四爻の體系に基づき解釋すること。
免責事項
神道式本筮法による易占は、祭式及び經典に基づく象意解釋の方法を提供するものであり、特定の結果を保証するものではない。 最終的な判斷及び行動の責任は、占を受ける御自身に存する。
御名前・御内容は神前奏上のみに用ゐ、外部への提供は行ひません。
詳細解釋のご依頼には後ほど連絡先のご入力をお願ひ申し上げます。
卦の一般解説
䷀ 乾為天(けんいてん)の解説を読む
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