10/18(月) ䷡ 雷天大壯(らいてんたいそう) 上爻
【運勢】
大壯は、盛んである、勢いの強い者のことである。
勢いが強すぎれば、暴走してしまい。身動きが取れなくなってしまう。
ただ、そのことについて心から反省し、改心するのであれば問題はない。
【原文】
《卦辭》
大壯は貞に利し。
彖に曰はく、大壯は大なる者󠄃、壯なるなり。剛以て動く。故に壯なり。大壯は貞に利しとは、大なる正しきなり。正大にして天地の情󠄃見るべし。
象に曰はく、雷天上に在るは大壯。君子以て禮にあらざれば履まず。
《爻辭》
上六。羝羊藩に觸れ、退くこと能はず。遂ぐること能はず。利する攸无し。艱めば則ち吉。
象に曰はく、退くこと能はず、遂ぐること能はずとは、不詳也。艱めば則ち吉とは、咎長からざる也。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
大は陽爻をいう。
小の道は亡ぼうとしている。
大は正を得る。
故に利貞である。
天地の情󠄃は正大である。
廣く正しくあれば天地の情󠄃を見ることが出来よう。
壮大で礼に違えば凶。
凶であると壮を失う。
だから君子は大壮でありながら礼を大切にするのである。
《爻辭》
三爻に応じている。故に退くことができない。剛長ずることを懼る。故に遂ぐることもできない。疑いを持ちて猶豫し、志定まる所なし。斯を以て事を決すれば、未だ利する所を見ず。剛長ずるに處ると雖も、剛正を害はず。苟くも其の分を定め、固く志三に在り。斯を以て自ら處れば、則ち憂患消え亡ぶ。故に艱めば則ち吉という。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
陰が小で陽が大である。
四つの陽が壮である。
二陰は徐々に薄れていく。
君子の道が長く続く時である。
其れなのに正しくしていれば吉というのは何故か。
人は辛い状況では戒めの気持ちを持つが、楽しい時はとかく邪の心が生じやすいのである。
陽の道が盛んな時だからこそ、其の機を逃すべきではなく、ちょっとした間違いに警戒しなければならない。
四つの陽がみんな正しいわけではない。
私なく、天地の性である正大の道を実践すべきである。
盛大な時であるが、つまずくこともある。
君子は平素から礼法をまもる。
昔の人は天命を畏んだ。
雷ほど天威に似たものはない。
常に礼を大切にすべき時である。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
「大」の字は陽で、初爻目から四爻目まで重なっており、盛んな状態である。
また「壮」の字は、鄭玄の解に「気力浸強之名」と有り、気力が浸(つ)いて強まって来たことだと云う。
人の年齢で言えば、三十歳になり気力も積み重なって来た所である。
剛いと云っても悪い方に強ければ害を為すので、正しい方に固まって居なければならない。
[彖伝]
大なるものが極めて剛くなった。
卦徳では上卦の震は「動」、下卦の乾は「剛」である。
従って、気力が強く動いて進む。
また天の気が動き、萬物を生じる。
人間の身体も天地の気を稟(う)けて居り、動いて事を行う時は正しくなければいけない。
[象伝]
雷の気は萬物を生じる所の気である。
君子は礼に非ざれば履まずと云う。
上卦の震は身体で言えば「足」であり、「礼」は天道天理を以て、履(ふ)んで往くことである。
其処で礼に非ざる事であってはいけない。