11/30(火) ䷕ 山火賁(さんかひ) 五爻初爻

11/30(火) 山火賁(さんかひ) 五爻初爻


【運勢】
感謝を伝える時は簡素に、そして迅速に行う。
外面を気にして、内実が伴わない様ではいけない。
誠実さが何より大切である。
新たに何かを始める時は、準備に力を掛け過ぎず、手元にある物で出来る事から進めると良い。


【結果】
䷕◎⚪︎
山火賁(さんかひ) 五爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 初陽]
《爻辭》
[五爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
賁は、亨る。小しく往く攸有るに利あり。彖に曰はく、賁は亨る。柔來たりて剛を文る。故に亨る。剛を分かちて上りて柔を文る。故に小しく往く攸有るに利あり。天文なり。文明にして以て止まるは、人文なり。天文を觀て以て時變を察し、人文を觀て以て天下を化成す。象に曰はく、山の下に火有るは、賁なり。君子以て庶政を明らかにし、敢へて獄を折むること无し。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。丘園を賁る。束帛戔戔たり。吝なれども終に吉。象に曰く、六五の吉は、喜び有るなり。
[初爻]
初九。其の趾を賁る。車を舍てて徒す。
象に曰く、車を舍てて徒すとは、義として乘らざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
剛柔分かたざれば、文何に由りてか生ず。故に坤の上六、來たりて二の位に居る。柔來たりて剛を文るの義也。柔來たりて剛を文り、位に居りて中を得。是を以て亨る。乾の九二、分かちて上位に居る。剛を分かちて上りて柔を文るの義也。剛上りて柔を文り、中の位を得ず、柔來たりて剛を文るの若くならず。故に小しく往く攸有るに利あり。


《爻辭》
[五爻 優先]
尊位を得ている。飾の主である。飾の盛たる者である。物に飾を施せば、其の道害はるる也。丘園に飾を施せば、盛なること焉より大なるは莫し。故に束帛を賁る。丘園乃ち落たり。丘園を賁る、束帛乃ち戔戔たり。用て儉なるを過ぐる莫く、泰んじて能く約やかなり。故に必ず吝なり、乃ち終に吉を得るのである。
[初爻]
賁の始めに在り、剛を以て下に處り。无位に居り、不義なるを棄つ。夫の徒歩するに安んじ、以て其の志に從ふ者なり。故に其の趾を飾る。車を舍てて徒す。義として乘らざるの謂ふなり。

11/29(月) ䷹ 兌爲澤(だゐたく) 二爻

11/29(月) 兌爲澤(だゐたく) 二爻


【運勢】
支える側の負担は軽く、支えられる側は充分な生活が維持出来る、健全な社会を目指して行く事が大切である。
邪な考えを避け献身的な心を持つと良い。
外寛内明を心掛け互いに協力すれば、悔いのない結果を得られるだろう。


【結果】
䷹◎
兌爲澤(だゐたく) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
兌(だ)は亨(とほ)る。貞によろし。彖(たん)に曰はく、兌は說󠄁(よろこ)ぶなり。剛は中にして柔は外。說󠄁(よろこ)びて貞によろし。ここを以て天に順(したが)ひて人に應ず。說󠄁(よろこ)びて以て民に先(さきだ)てば、民その労をわする。よろこびて
以て難󠄄を犯せば、民その死をわする。說󠄁の大、民勧むかな。
象に曰はく、麗澤(れいたく)は兌。君子以て朋友講習す。


《爻辭》
九二は。孚ありて兌ぶ。吉にして悔亡ぶ。
象に曰く、孚ありて兌ぶの吉は、志を信にするなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
兌は喜ぶこと、嬉しいことである。
この卦は
が二つ重なってできている。
は内に强い意志を持ち、外に対しては温和な態度で臨むので、人との付き合いはうまく行き、人間関係は良好である。
内に强い意志を持ち、外に対して温和な態度の人は、天道にも、人道にも逆らわない良い人である。
喜びを大切にすれば、他の人はどんな労力も厭わずに協力してくれる。


《爻辭》
說びて中を失はず、孚有る者なり。位を失ひて說び、孚ありて吉なれば乃ち悔亡ぶ者なり。
其の志信なるなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
兌は喜びである。
自然と出る喜びが本当のもので、私心からの喜びは偽りである。
立心偏のない「兌」が本来のもので、立心偏を添えた「悅」や言偏を添えた「說」になるのは後の事である。
彖伝が「說」の字で書くのは、喜びを言葉で表すからである。
上卦下卦とも兌であるのは、己と他者が互いに喜ぶ象である。
互いに相助ける所があるので、何事も亨るのである。
『中庸』に「致中和天地位」とある。この中和が兌の卦にあたる。
中庸の道を行い、人がそれに服し、親しみ和合するなら、天地陰陽の気までも調和する。
あくまで作られた喜びでなく、正しい所が無ければいけない。
そこで「貞利」なのである。
[彖傳]
「兌悅也」というのは、沢山咸の「咸感也」と同様に、「心」の字の有無と同じである。
「剛中」は二爻目、五爻目が陽爻で、それぞれ上卦下卦の中を得ていることを云う。
「柔外」は三爻目、上爻が陰=柔らかであることを云う。つまり剛は明らかにして正しく、外の人には穏やかで柔らかに交わるのである。
それによって自他ともに喜ぶのであり、正しい所にあるのがよろしい。
この卦を天地人の三才に分けてみると、上の二爻が天、下の二爻が地、中の二爻が人となる。
「天に順い」というのは、五爻目は天の正しい位で、其れに上六が陰爻で順っていることである。
また「人に応ずる」は、人にあたる三爻目が陰爻で、地にあたる二爻目が陽爻であるから、人に応じているのである。
己が先ず喜びを起こすことで、民も喜び順う。
上下和順しているから、民は労苦を忘れて働き、戦争が起これば難を犯して戦ひ、死をも忘れて尽くすのである。
[象傳]
兌の卦を澤と言う。
澤は潤うという義で物に湿潤の気を含んでいる。
『国語』の「周語」に、澤は美(水)を鐘(あつ)めるとある。
これが麗澤である。
《爻辭》

11/28(日) ䷝ 離爲火(りゐか)→䷫ 天風姤(てんぷうこう)

11/28(日) 離爲火(りゐか)→ 天風姤(てんぷうこう)


【運勢】
勢いや朗らかさも大切だが、何より素直である事が求められる。
邪な考えを避け、成果の出る時をじっくりと待つ事が大切である。
相手にお願いをする時は、迅速かつ明確な誠意ある対応を心掛けると良い。


【結果】

本卦:離爲火(りゐか)
之卦:天風姤(てんぷうこう)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老院][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
離爲火》
離は貞に利(よろ)し。亨(とほ)る。牝牛を畜(やしな)へば吉。
彖に曰はく、離は麗なり。日月は天に麗(つ)き、百穀草木は地に麗き、重明󠄃以て正に麗く。乃(すなは)ち天下を化成す。柔、中正に麗く。故に亨る。是を以て牝牛を畜へば吉なり。
象に曰はく、明󠄃兩たび作るは離。大人以て明󠄃を繼ぎ、四方を照らす。


《之卦:
天風姤》
姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。
彖に曰はく、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。
象に曰はく、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。


【解釋】
《本卦:
離爲火》
[王弼]
離は柔であることが正しい。だから、必ず正しくして後にうまく行く。陰爻が卦の真ん中にある。牝の善いものである。外は強くて内は柔らかい。牛の善いものである。柔順を良しとする。凶暴な動物を飼ってはならない。牝牛を飼うのが良い。それぞれのものが、あるべき場所にあるのが良い。陰爻が真ん中に在ればうまく行く。吉。強暴な動物を飼うべきでない。


[東涯]
離は附くということである。一陰が二陽の間についている。火であり、日であり、電気であり、德としては明󠄃である。皆柔順であることを知っている。明󠄃は正しくあるのに良い。世の中で明󠄃を用いれば、正を失いがちである。明󠄃が二つ重なる状態で正を忘れなければ、天下を化成することが可能である。坤では牝馬の貞によいとあったが、この離では牝牛である。柔順の徳というより、柔順な人に服するのが良い。智の至りである。明󠄃とは日のことである。前の日が没しても、次の日の出がある。君子はこれを体現し、前の王の明徳を継いでいくのである。


[根本通明]
離はつくの意󠄃味である。正しくあればどこまでもよい。陰が陽爻二つの間についている。この陰爻は坤からきた。牝牛は柔順であり、温厚である。二爻と五爻が牝牛であるから、柔順の徳をやしなうべきである。
[彖傳]
乾の卦の二爻と五爻に陰爻がついたのである。日月は天について天下をあまねく照らす。また百穀草木は地に附いて盛んである。明󠄃の上に明󠄃が重なっているので、重明󠄃という。それが皆正しい位置についている。日月が天下を照らすように、君主も今日も明日も正しさを失わずにいれば、あまねく天下を化すことが出来る。中正なる所󠄃に居るのは二爻である。牝牛というのは二爻のことである。天子は每日明徳を以て政治をしなければならない。


《之卦:
天風姤》
[王弼]
姤は遇うことである。
柔が剛に遇う。
人でいうと女が男に遇󠄄うのである。
一人の女が五人の男に遇󠄄う。
大変強靭な女である。
取るべきでない。
剛が中正であるから天下はあまねく王化󠄃に帰すのである。
言義は見えるところを表現しきれない。


[東涯]
姤は遇󠄄うことである。
一陰が下に生じて、五つの陽にあったのである。
一陰が五つの陽に対峙する。
その大壮はすさまじいが、陽が必ず勝つ。
このような陰を用いてはならない。
陰陽が互いに對待(たいたい)することは、天地の常経である。
陰が盛んであると陽が損なわれる。
臣下が君主に背くのも、婦が夫を凌駕するのも皆陰が盛んだからである。
姤の卦が戒めるところである。


[根本通明]
この卦は初六の陰爻が主役で、他の陽爻は賓客のような訳になる。
陰は長じて、次第に陽を侵食していく。
陰爻つまり女の方から、進んで陽爻に遇う所がある。
其処で女を娶るという方へ、この卦を用いてはならない。
[彖傳]
「遇」は多いがけない所で遇うと云う義である。
柔は剛に遇うと云うのは、女の方から進んで男に遇うという義である。
このような女を娶ると、次第に増長して往くから娶ってはならない。
剛中に遇うというのは、九五の剛が九二の賢人に遇う所を云う。
賢人は朝廷へ出ようとする初六を抑え止める。
そのため剛は賢人と相謀って、初六を正しくする。
[象傳]
天の下に風が旋ぐるように、天下に命令を下す。
四方に遍く告げ諭して、能く治め斉(ととの)える。
旧弊を除きはらって政を以て天下を新たにする。

11/27(土) ䷀ 乾爲天(けんゐてん)→䷬ 澤地萃(たくちすい)

11/27(土) 乾爲天(けんゐてん)→ 澤地萃(たくちすい)


【運勢】
物事を進める時は正しさを固く守り、これから得られる機会を最大限に活かす事が大切である。
初心忘れるべからず。
誠意ある行動を心掛ければ、志を同じくする仲間を得られ、何事も上手く行くだろう。


【結果】

本卦:乾爲天(けんゐてん)
之卦:澤地萃(たくちすい)
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 老陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[上爻][三爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
乾爲天》
乾は元いに亨る、貞に利ろし。
彖に曰く、大なるかな乾の元は、萬物資りて始まる、乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。
大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗じて以て天を御す。
乾道變化して、各おの性命を正し、大和を保合して、乃ち貞に利ろし。庶物に首出して、咸(あまね)く寧(やす)し。
象に曰く、天行は健なり。君子以て自ら彊めて息まず。


《之卦:
澤地萃》
萃(すい)は亨(とほ)る。王は有廟(ゆうびょう)に假(か)る。大人(だいじん)を見るに利(よろ)し。亨る。貞に利し。大牲(だいせい)を用ふれば吉。往く攸(ところ)有るによろし。
彖に曰く、萃は聚(じゅ)なり。順にして以て說󠄁(よろこ)ぶ。剛中にして應ず。故に聚(あつむ)るなり。「王有廟に假る」とは、孝享を致すなり。「大人を見るによろし。亨る。」とは、聚むるに正を以てするなり。「大牲を用ゐて吉。往く攸(ところ)有るによろし」とは、天命に順ふなり。其の聚むる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰はく、澤、地に上るは萃。君子以て戎器を除き、不虞を戒める。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《本卦:
乾爲天》
《之卦:
澤地萃》
萃は集まることである。
物事がうまく行く、王は宗廟に至り、人々は集まる。
その中には偉大な人もういるので、賢人に遇う機会を得られる。
假は至の意󠄃で『春秋左氏傳』でもそのように使われている。
「六月󠄃丁亥、公大廟に假(いた)る」三つの陰が下に集まり、上は五爻に従う。
内卦は柔順であり、外卦は喜びであるから、君臣が通じ合っている。
祭祀は大切にすべきである。
古代の王は宗廟を祭り、祭祀を嚴修することで民の心をつないでいた。


〔根本通明の解釋〕
《本卦:
乾爲天》
《之卦:
澤地萃》
萃の下に亨の字があるのは間違いである。
萃とは草がたくさん集まって茂っている様を言う。
地の上に沢があるので草木が密集して茂るのである。
王が宗廟を祭る時は全国から人々が集まり、特産品が集まってくるのである。
そして、豚羊牛で祭るのが良い。
そうすれば、人々の心は一つになり、何事を行うにも良い状況となる。
[彖傳]
萃は集まるの意󠄃味で、内卦は順、外卦は喜ぶ。
天下の人が天子の徳を慕って集まってくるので、天子は天下の様々なものを以て宗廟を祭る。
天命にしたがうというのは、
巽の卦が内包されてゐるからで、天命とは風と關係があるのである。
天子の恩沢に人々は集まるのである。
[象傳]
人々が集まってきたなら、思わぬ争いごとが起こるかもしれない。
そこで油断はできず、兵器の手入れを怠ってはならぬということである。

11/26(金) ䷊ 地天泰(ちてんたい)→䷲ 震爲雷(しんゐらい)

11/26(金) 地天泰(ちてんたい)→ 震爲雷(しんゐらい)


‪【運勢】‬
現状に甘んじる事無く気を引き締める事が大切である。
相手との違いを認識した上で、共感出来る所を協力して進めて行くと良い。
助け合える仲間が居れば、如何なる困難に直面しても解決出来るだろう。


‪【結果】

本卦:地天泰(ちてんたい)
之卦:震爲雷(しんゐらい)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《本卦:
地天泰》
泰は小往き、大來る。吉にして亨る。
彖に曰はく、泰は小往き大來る。吉にして亨る。則ち是れ天地交はりて、萬物通ずるなり。上下交はりて其の志同じきなり。内陽にして外陰。内健にして外順。内君子にして外小人。君子は道󠄃長じ、小人は道󠄃消するなり。
象に曰はく、天地交はるは泰。后以て天地の道󠄃を財成󠄃し、天地の宜しきを輔相し、以て民を左右す。


《之卦:
震爲雷》
震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり。笑言啞啞(ああ)たり。震百里を驚かす。匕鬯(ひちょう)を喪はず。
彖に曰はく、「震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり」とは、恐れて福を致すなり。「笑言(しょうげん)啞啞(ああ)たり。」とは、後に則あるなり。「震百里を驚かす」とは、遠きを驚かして邇(ちかき)を懼(おそ)れしむるなり。出でて以て宗廟社稷を守りて、以て祭主と爲すべきなり。
象に曰はく、しきりに雷するは震。君子以て恐懼(きょうく)脩省(しゅうせい)す。


【解釋】
《本卦:
地天泰》
〔王弼の解釋〕
泰は物が大いに通る時である。
上下がよく通じれば、物はその節󠄄を失う。


〔東涯の解釋〕
泰は通󠄃るという意味である。
卦は否と逆である。
否の三爻の陰が外卦に行き、三陽が下に来たのである。
陽は大であり、陰は小である。
天気が下降して地気が上昇したのである。
陰陽がよく通じているのである。
人は世の中で、人と交際しながら生きていく。
上は下をおさめ、下のものは上のものを助ける。
君臣上下から親戚や町の仲間にまで言えることである。
そして天下は治まるのである。
よく通るので吉である。


〔根本通明の解釋〕
泰の字は滑らかという義で、天地陰陽の気が流動して滞らず、能く万物を成長させる。
太、代、世も皆通じる意味である。
外卦が坤で、内卦が乾であるから、小は外の方に往き、大は内の方に来る。
地の底で陽が三つになって、盛んになる。
一ヶ年で考えれば、丁度旧暦の正月にあたる。
旧暦の十一月に一陽来復するため、初爻目が十一月、二爻目が十二月、三爻目が正月となる。
この卦は天の元気が地に十分に充ちて居る所の卦である。
世の中で譬えてみれば、天子の恩沢が人民の間に一杯に溢れて居り、下々の者もそれに随って上の方に事(つか)え、上下相交わる所の卦である。
その為、是より吉なる所の卦は無い。
[彖傳]
天の気が下に降り、地の気が上に昇り、天地の気の交わった所で、万物が発生する。
地の中に陽気が十分に充ちており、陽気に随って陰気が外の方に昇っていく所である。
一人の人にしてみれば、乾は心が十分に剛く、且つ外の行いは順従で人に抵抗しない。
又世の中で譬えてみれば、内に在って事を用いるのは君子、外へ出て君子に使われているのは皆小人である。
又世の道徳上の事にとってみれば、君子たる所の仁義の道が段々と盛んになって行き、小人の方の道は段々と滅びる所となる。
[象傳]
天地が交わり万物の生成が盛んになる。
しかし人間がこれを輔けなければ、天地の造化は昌(さか)んになる様なものではない。
天地があり、人間というものがあって、天地を輔けるから天地人、これを三才という。
即ち君と書かずに后(きみ)の字を書いたのは、天地を承けてこれを相(たす)けるためである。
財の字は裁に通じ、物を計って余計な所は裁り、少ない所はこれを補う。
天子が天下を治め人民を取り扱うのは、我が家に生まれた赤子を養育する様な物で、倒れない様に右からも左からも手を引いて輔ける。
そうして民を左右するのである。


《之卦:
震爲雷》
〔王弼、東涯の解釋〕
震は雷鳴を表す。
上下両方とも震であり、雷鳴が轟くときは傲慢になった人々も恐れ、敬意を取り戻す。
人々が恐れ敬いの心を取り戻せば、規則が守られ、幸福になる。
雷鳴は遠方まで轟きわたり、人々を驚かせるが、そんな中でも先祖を祭り、神々を祭る人は重い責任にたえられる人である。


〔根本通明の解釋〕
前の卦は火風鼎である。鼎(かなえ)は天子の宝器のことで、日本では三種の神器にあたる。皇統一系は天道であって万世不易のものであるから、革命が起こっても必ず皇統一系に引き戻さなければならない。そのため火風鼎が示すように、皇后に子が無ければ、妾の子であっても皇位を嗣がせなければならない。こういう理由で鼎の卦の次に、震の卦を置いたのである。『序卦伝』にも「器を主(つかさ)どる者は長子にしくはなし。故にこれを受くるに震(しん)をもってす」とある。この震は皇太子の象である。皇太子はどのような困難に遭っても、何所までも忍耐して必ず位を嗣がなければならない。震は剛(つよ)いから亨る。また震は雷であり、この卦は雷を以て説く。卦全体の主になるのは初爻目である。虩虩(げきげき)とは恐懼する姿である。激しい雷には聖人といえども恐れ慎む。『論語』にも「迅雷風烈は必ず変ず」と出ている。大いなる災難が来るが、恐れ慎めば後には必ず福を得ることになる。天が天下を委任するに相応しい人だと思えば、禍(わざわい)を降して其の人の心身を苦しめる。艱難辛苦を経ることで忍耐力が養われて、後に大事を為せるのである。「笑言唖唖」とは、はじめ難に遭って苦しむが、後には安楽となり喜び笑う所となることである。「匕鬯(ひちょう)」は、宗廟の祭祀のときに天子自ら使う道具である。匕(ひ)は鼎の中の肉を掬(すく)い取る匙(さじ)である。鬯(ちょう)は鬱金草(うこんそう)という香草を入れて醸した酒のことである。この酒を地に撒くと香気が立ち上り、これによって神を降ろすのである。このように匕と鬯は、祭祀に於いて最も重要であることから、この卦で取り上げられるのである。身を砕くほどの雷が鳴っても、匕鬯を行える忍耐力が無ければいけない。
[彖傳]
「震亨、震来虩虩」と云うのは、災難に見舞われるも、恐れ慎んで徳を修めることで、遂に天の福を招く所となる。「笑言唖唖、後有則也」には、「後」という字が加えてあり、難と福の順序を失わないようになっている。雷により胆力を養い徳を修めた所で、皇太子が御殿から出て天子の位を継ぎ、宗廟社稷を守って祭る所の主人となることが出来る。乾為天四爻目の「或いは躍る」がこれにあたる。つまり天子が健在でも時によって皇太子が出て、宗廟社稷の祭祀を代わりに行えるだけの準備が出来ていることを意味する。
[象傳]
この卦は震が二つある。二度も三度も打ち重なって雷鳴が響く。君子は難に遭うことで、恐れ慎んで徳を修めて、我が身を省みる所が出てくるのである。

11/25(木) ䷇ 水地比(すゐちひ) 上爻

11/25(木) 水地比(すゐちひ) 上爻


【運勢】
大事は一人で進めようとせず、仲間と役割を分担し、成果を共有する事が大切である。
仲間を集める時は、消極的、俗物的な者を避けなければならない。
気の合う人を見つけたら、機会を逃さず、積極的に関わると良いだろう。


【結果】
䷇◎
水地比(すゐちひ) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
比は吉なり。原筮(げんぜい)。元永貞(げんえいてい)にして咎(とが)めなし。寧(やす)からざる方(まさ)に來たる。後るる夫は凶。彖(たん)に曰はく、比は吉なり。比は輔(ほ)なり。下順從するなり。原筮、元永貞にして咎めなしとは、剛中(ごうちう)を以てなり。寧(やす)からざる方(まさ)に來たるとは、上下應ずるなり。象に曰はく、地の上に水あるは比。先王(せんわう)以て萬國を建て、諸侯を親しむ。


《爻辭》
上六。之に比するに首(かしら)なし。凶なり。象に曰はく、之に比するに首なしとは、終はる所なきなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
比の時にあり、筮によって咎なきを求めようとしている。元永貞であろうか。人が群れて互いに親しみ、元永貞で無ければ、凶邪の道である。もし主に遇わなければ、永貞といえども咎を免れることが出来ない。永貞で咎なき者は、ただ五爻のみであろう。上下に五爻以外に陽がない。すべて五爻に帰す。親しみ安心する。後れるものは凶である。


《爻辭》
首がない。終わりである。卦の終わるところにいて、後夫のことである。親道はすでに成っていて、終わるところがない。時になって棄てる所、凶である。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
比は相附き比することである。九五が位を得ている。そしてほかの五陰がつき従う。多くのものが一人を助けている。吉である。元永貞の後に郡陰に当たれば咎めがない。まだ安住の地に居ないものがいる。どんな剛強の者でも咎を免れない。柔弱󠄃であれば猶更である。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
比は親密なる所である。比は密であり、密は物と物とが密着して間に隙間の無いことである。上卦は水、下卦は地である。水は地の中に浸み込んでくるから、水と土は離れることが無く、密着した状態である。五爻目は陽爻で天子にあたる。天子は人民と密着しており離れることが無い。ちょうど水と土の関係のようである。これは吉である。「筮」は神に吉凶を問い訊ねることで、「原」は再びという意で三度問うことである。つまり天子は神に吉凶を訪ねるのと同じように、諸々の人民へ何事も懇ろに問い訊ねて事を謀るのである。「元永貞」とは元徳を持つ人が、永く怠らず、貞しい所を守っていることである。これは堯舜(古代中国で徳をもって天下を治めた聖天子である堯(ぎょう)と舜(しゅん)。転じて、賢明なる天子の称のようなものである。「後夫凶」は、四方の国が名君に服しているのに、後に残って服せずに居る男が禍を受けることである。
[彖傳]
比は吉である。また互いに相輔けることである。「下順従」の「下」は下卦の坤=人民のことである。そして「順従」は坤の卦の象であり、人民が皆九五の天子のもとに集まってくることである。「不寧方来」は上から下まで残らず天子に応じて服して来ることをいう。「後夫凶」は名君に服さない者が、自ずから往くべき所がなくなり、その道に窮することをいう。
[象傳]
地の上に水があるのが比である。地に悉く浸み込んで来る水は、名君の徳性が深く人民の方へ浸み込んでいく例えである。君と民は親密な関係であり、離れようもない。こうした君民一体の関係に、皇統一系の象が含まれているのである。
《爻辭》

11/24(水) ䷟ 雷風恆(らいふうこう) 初爻

11/24(水) 雷風恆(らいふうこう) 初爻


【運勢】
事なかれ主義では信頼を得られない。
時代と共に変化する価値観に惑わされず、芯を持って行動する事が大切である。
信頼関係は一朝一夕で築けるものでは無い。新たな関係を築くよりも、今ある関係を大切にすると良い。


【結果】
䷟◎
雷風恆(らいふうこう) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
恒は亨る。咎めなし。貞に利ろし。往く攸あるに利ろし。彖(たん)に曰はく。恒は久なり。剛上りて柔下る。雷風相ひ與す。巽にして動き、剛柔皆應ず。恒。恒は亨る。咎めなし。
貞によろしとは、その道に久しきなり。天地の道󠄃は恒久にしてやまず。往くところあるによろしとは、終れば則ち始まり有るなり。日月は天を得てよく久しく照らす。四時は変化して、よく久しく成󠄃る。聖人はその道を久しくして天下化成す。その恒とするところをみて、天地萬物の情󠄃見るべし。


《爻辭》
初六。浚を恆うす、貞凶。利しき攸なし。
象に曰く、浚を恆うするの凶は、始に求むること深ければなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
恒であり享る。
恒の道は通り、咎めなく通る。
正しくしていれば良い。
常道を修めることが終われば、また始まりがある。
行って間違いはない。
剛が尊く柔が卑しいの順序が得られる。
長く陽で長く陰である。
互いに成就する。
動いて間違えることなく、よく連れ合い、長く続く。
窮まることがない。


《爻辭》
恆の初に處り、最も卦の底に處る。始めより深きを求むる者なり。深きを求めて底を窮め、物をして餘蘊なからしむ。漸く以て此に至れば、物すら猶ほ堪へず、而して況んや始めより深きを求むる者を乎。此を以て恆と爲せば、正なるを凶にし德を害ふ。絶へて利あるなきなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
恒は常、久しいの意である。
卦は変じて咸となる。
咸の三爻が上に行き四爻となった。
上爻が下って初爻となった。
剛が昇り柔が下る。
雷も風も共に鼓動する。
内外全て応じる。
だから久しく続き不易である。
咎めなく、正しくしておけば良い。
作為や粉飾は恒の道でない。
必ず駄目になり、長く続くことはない。
正しくなければ恒であっても善でない。
恒で善であれば何をしても良い。
伊尹が畝の中に居て堯舜の道を楽しんだことは、身を終えたことはまさに恒と言えよう。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「つね」は常と恒の二つがある。
「常」の方は幾万年経っても少しも変わる所が無い。
しかし「恒」の方は毎日変わり続けて居るが、幾万年経っても易わらない所が有る。
是は日月の象になり、常の字は日、恒の字は月である。
太陽は幾万年経っても大小変化せず、何時も変わらない。
しかし月は毎日形が変わって居る。
この卦は夫婦の卦である。
夫婦は一旦婚姻を結んだ上は何処までも全うすべきものである。
しかし人の身の上というものは毎日変わって往く。
初爻目は下卦の主であり、四爻目は上卦の主である。
また初爻目と四爻目は互いに相応じて居る。
其処で正しい所が良い。
夫婦力を合わせ心を同じくして事を為せば、一家は段々盛んになり先に進んで往く。
[彖傳]
この卦は元は地天泰で、一番下の陽爻が四爻目に上り、また四爻目の陰爻が一番下に下った。
其処で陰陽相交わり雷風恆の卦になった。
雷が鳴って動けば、風が従って雷を助ける。
雷と風は相離れず、互いに相與しめ、万物を生じさせる。
初爻目と四爻目、二爻目と五爻目、三爻目と上爻目、皆剛柔応じて居る。
男女の道は天地陰陽の道である。
[象傳]
雷が春に起こって風が是を助ける。
雷気の滞る所を風が一帯に吹き散らし、能く気が循環して万物が育つ所がある。
君子は陽が外、陰が内という在り方を易えない。
《爻辭》

11/23(火) ䷌ 天火同人(てんかどうじん) 四爻初爻

11/23(火) 天火同人(てんかどうじん) 四爻初爻


【運勢】
志を同じくする仲間と協力し、物事を進めると良い。
道理に適った芯のある生活を心掛ければ、何事も上手く行くだろう。
無駄な事など無い、合理的に考え過ぎず、地道に経験を積み視野を広げる事が大切である。


【結果】
䷌◎⚪︎
天火同人(てんかどうじん) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
同人野に于てす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。
彖に曰はく、同人は柔位を得、中を得る。而して乾に應ず。同人といふ。「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし。」とは、乾行くなり。文明にして以て健。中正にして應ず。君子の正なり。
象に曰はく、天と火とは同人なり。君子は以て族を類し物を辨す。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。其の墉に乗る。攻むる克(あた)はず。吉。
象に曰はく、「其の墉に乘る」は、義あたはざるなり。其の吉はすなはち困みて則にかへるなり。
[初爻]
初九。同人は門においてす。咎(とが)なし。
象に曰はく、門を出でて人に同じくす。又誰か咎めん也。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし」は、二爻の能くする所ではないこれが乾の行う所である。故に特に同人に曰くという。健を行うに武を使わずに、文明を使って之を用いる。相応してに邪を応じずに、中正によって応じる。君子の正しき事である。故に「君子、貞に利し」という。君子は文明をもって徳にする。天、上にあって、火の炎上げている。同人の意味である。君子、小人、各々同じくする所を得る。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は城の塀に登って五爻に攻めかかろうとしたが、この同人の卦の五爻は道理にかなって堂々としているから、攻撃を断念せざるを得なかった。
しかし、それがかえって良かった。
道理にかなった者を攻撃することは間違いである。
[初爻]
同人の始めに居て、同人の首となる。上に応じることが、心に吝を係ることもない。夫の大いに同じくするに通じ、門を出づること皆同じくする。故に人に「同人、門に于いてす」という。門を出づるに人と同じくすれば、誰とともに吝をなす。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
同人とは人が互いに心を同じくすること、共に同じ目標を有することである。天(日)と火は同じ火の性である。野は広い場所のことで、狭い集団での友情も大切であるが、より広い範囲で人と交流することが、大きなことを成し遂げる際には必要である。そのためには正直で、正しい心を大切にしなければならない。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は法則に遵う正しい在り方に戻ったのである。
新しい事を始める時、最初は勝手が分からないので、上手く進めるために、皆で協力して取り掛かる。
しかし、暫くして勝手が分かると、一人でできる様になる。
力を出し合っていた者達は、自分の能力が不要になったと思い、不安になるかもしれないが、案ずる事は無い。
[初爻]
「門においてす」とは、門から出て交わることである。私心の無いことをいう。この爻は同人にあって、初めであり、上に、繋がって応じているものがいない。故に「同人、郊(こう)においてす」の象があり、咎めなしなのである。思うに人と交わることは、偏っている所に流れやすい。それははっきりと現れている。私事に関わらず、人に交わる。何の咎めがあるのだろうか。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
同人は、人と人が互いに相親しくして、吉凶ともに同じくする。野は都から遠く離れた田舎で、山や谷の間に居る者までも親しくするという義である。これは乾の象である。天下一軒の家の如くして居れば、互いに亨らない所は無い。九五の天子は六二の賢人を深く信用して、之を用いて往く。
[彖傳]
六二は陰爻を以て陰位に居り、位を得て居る。また下卦の真ん中にあるので、中を得て居る。これは賢人で、中正なる道徳があり、天道に応じて居る。乾は上卦であり、上は外であるから、内から外へ旋って往く。人は道徳を以て普く進んで行う所の義である。之は仁者であり、君子である。天下皆悉く応じて来る。
[象傳]
「天興火」の興は親しむと訓む。また火と天は元は同じ物である。人間も天の分子であるから、御互に親しまなければならない。族を類するとは、分家が自分達の先祖である宗家の祭りへ聚って来ることである。物を辨ずるというのは、聚って来た者は皆代数や衣服などが異なり、其々仕分けて往く所を云う。
《爻辭》

11/22(月) ䷋ 天地否(てんちひ) 初爻

11/22(月) 天地否(てんちひ) 初爻


【運勢】
世の中が乱れた時は、周りに流されず、慎ましくいる事が大切である。
志を内に秘め、目標達成に向けて地道に諸事を進めると良い。
自らを省み中正を固く守れば、災いの連鎖を断ち切り、後には順調に進む事が出来るだろう。


【結果】
䷋◎
天地否(てんちひ) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
否は之(こ)れ人に匪ず。君子の貞によろしからず。大は往き、小は來る。
彖に曰はく、「否は之れ人に匪ず。大は往き小は來る」とは、則ち是れ天地交はらずして、萬物通ぜざるなり。上下交はらずして天下邦无(な)きなり。内、陰にして外、陽。内、柔にして外剛。内小人にして外君子なり。小人は道󠄃長じ、君子は道󠄃消ゆるなり。
象に曰はく、天地交はらざるは否。君子以て德を儉し難を避け、榮するに禄を以てすべからず。


《爻辭》
初六。茅を拔いて茹す。其の彙を以てす。貞吉にして亨る。
象に曰く、茅を拔く、貞吉とは、志君に在るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
否者、閉塞なり。此卦、内坤にして外乾。卦變、泰興し相錯す。泰の三陽往きて外に居る、三陰來て内に居る。此の天氣は上騰し、而して地氣は下降す。陰陽隔絶す。相交わりて通らざるの象有り。故に卦の名否に曰く、天地交わらず。則ち萬物成らず、萬物の生は人の大爲なし。故に辭系、人に匪ずと云ふ。上下否隔、國その國非ず、君子道を行ふの時に非ず。


《爻辭》
否の初に居り、順の始めに處る。類の首と爲るなり。順、健に非ざるなり。何ぞ以て征く可きか。否の時に居れば、動けば則ち邪に入る。三陰道を同じくす。皆進む可からず。故に茅を拔くに茹たり、類と以にす、貞にして諂はざれば、則ち吉にして亨る。
志君に在り。故に苟くも進まず。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
否は塞がる、匪人は悪人の意󠄃味である。
天地が通じず、上下の意思が通わない様を表す。
世の中が乱れる時である。
君子が正しくしていても、臣下や国民には伝わらない。
悪人が栄え、有徳者は德を隠す。
このような時には、徳のある者は徳を隠し、控えめにするのが良い。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
否は塞がるの義である。
天地陰陽の気が塞がっている。
これは地天泰と反対である。
こうした隔絶をつくったのは匪人である。
匪人は人間でなく、悪の最も大なるものである。
君子が正しい政治を行っても災を受け、小人が権力を握る。
このような状態では咎を無くし、誉も出ないように謹慎しなければ危うい。
大往小来は、陽が外の方へ往ってしまい、陰ばかりが内側に来ることである。
[彖傳]
天の気が上にあり下に降ってこない。
地の気は下に滞って上に騰がっていかない。
天地の気が交わらなければ、萬物は生長して往かない。
上は上で高振って下を顧みず、下は下で上を上と思わず尽くす所が無い。
君臣の道も、親子の道も無く、禽獣の住む所と変わらず、人間の国ではない。
外卦は陽爻で内卦は陰爻である。
これを一人の小人とすれば、内の心は柔弱で陰、外は無理に剛を偽って拵える。
朝廷とすれば、内にばかり在って政務を執るのは小人、外に出て遠くの田舎にまで往くのは君子である。
世の中が欲ばかり盛んになれば、道徳は廃れ、君子の正しい道は段々と消滅してくる。
それを小人の道が長じて、君子の道が消するという。
[象傳]
天地陰陽の気が調和せず、萬物は害を受け、人間の身体も病弱になる。
君子は我が身を全うすることを心掛け、なるべく徳を内に仕舞込んで用いない。
徳を外に顕すと小人に憎まれて必ず害を受ける。官から禄を与えるといっても、出れば害に遭うから賢人は出てこない。
そこで営するに禄をもってすべからず。
後世の本には「栄」の字で書いてあるが、古い方の「営」が正しい。
《爻辭》