11/11(木) ䷔ 火雷噬嗑(からいぜいごう) 変爻無し

11/11(木) 火雷噬嗑(からいぜいごう) 変爻無し

【運勢】
目の前の問題から目を背けたり、反対に、感情のまま私的に制裁を行なってはいけない。
問題が尾を引かぬ様に、正道を守り、公の場で判断する事が大切である。
堅実に秩序を守れば、災い転じて福となすだろう。

【結果】
火雷噬嗑(からいぜいごう) 変爻無し
‬《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]

【原文】
噬嗑は亨(とほ)る。獄を用うるによろし。
彖(たん)に曰はく、頤(おとがひ)の中に物有るを噬嗑といふ。噬(か)み嗑(あは)して亨る。剛柔分かれ、動いて明󠄃なり。雷電合して章なり。柔、中を得て、上行す。位に當たらざると雖も、獄を用うるに利しなり。
象に曰はく、雷電は噬嗑。先王以て罰を明󠄃らかにし、法を勅ふ。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
噬はかむこと。
嗑は合わせることである。
物は親しくなかったら、間を開けるものである。
物が整わず、過ちがある。
噛み砕いて合わせると通ずる。
噛まなければ通じない。
刑に服して改心するのは獄の利である。
剛柔が分かれて動けば乱れず、明らかである。
雷電が合わされば明るい。
獄に用いるべきである。
五爻が主爻である。
五爻は位に当たっていないが、獄に用いるのに良い。

〔東涯の解釋〕
噬嗑は嚙合わせることである。
物が口の中に入っている。
これを嚙合わせるのである。
上下に二陽があるが、これが口である。
四爻の陽爻が口の中のものである。
内卦は動いて外卦は明󠄃るい。
この卦は賁から来ており、賁の二爻が上に昇って五爻に来ている。
位に当たっていないが、君位に居て柔順の德と勢いを失っていない。
刑罰を執行するによい。
剛と柔が卦の中を得ており、偏りがない。

〔根本通明の解釋〕
噬は噛む、嗑は合わせるである。
口の中に物が一つある。
頤は上に動いて物をかむ。
上のあごは動かないものである。
飲食をする卦である。
堅いものが四爻に一つある。
骨である。
また、上と下とを通わせない悪人である。
悪人を取り締まるのが刑獄である。
刑獄を用いるによいというのは、そういうことである。
雷、火は造物者󠄃が天地の間の惡を砕くためにある。
[彖傳]
上は火で下は雷。
火は陰で雷は陽である。
雷は動く。
すると火が起こり、明るくなって、悪人がよく見えるようになる。
五爻は陰爻であり、位に当たっていないが、刑獄にはよい。
なぜなら、陽であったなら強すぎて苛烈な刑罰を下す。
それよりは陰の方が良い。
[象傳]
朱子学者は雷電を電雷にした方が良いという。
上が火で、これが電、下が雷というのである。
しかし其れは良くない。
文字に拘泥して道理に背いている。
この電は雷に発したものであるから、雷電で良いのである。
三四五爻に
がある。
是を法律とする。
世の中に悪人は絶えないものであるから、刑獄の必要性はなくならないのである。

11/10(水) ䷊ 地天泰(ちてんたい) 上爻二爻

11/10(水) 地天泰(ちてんたい) 上爻二爻

‪【運勢】‬
上に立つ者と従う者が応じ合う事で、社会の平穏は保たれている。
相手との違いをしっかり認識し、その上で、互いに共感出来る所を協力して進めて行くと良い。
現状に甘んじる事無く、気を引き締める事が大切である。


‪【結果】
䷊◎⚪︎
地天泰(ちてんたい) 上爻二爻‬
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
泰は小往き、大來る。吉にして亨る。
彖に曰はく、泰は小往き大來る。吉にして亨る。則ち是れ天地交はりて、萬物通ずるなり。上下交はりて其の志同じきなり。内陽にして外陰。内健にして外順。内君子にして外小人。君子は道󠄃長じ、小人は道󠄃消するなり。
象に曰はく、天地交はるは泰。后以て天地の道󠄃を財成󠄃し、天地の宜しきを輔相し、以て民を左右す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。城隍(ほり)に復(かえ)る。師(いくさ)を用ふること勿れ。邑(ゆう)より命を告ぐ。貞なれば吝。象に曰はく、城隍に復るとは、其の命乱れるなり。
[二爻]
九二。荒󠄃を包(か)ぬ。馮河を用う。遐を遺󠄃れず。朋を亡ふときは、中行に尚ぶことを得る。
象に曰はく、荒󠄃を包ぬ。中行に尚ぶことを得るとは、以て光大なるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
泰は物が大いに通る時である。
上下がよく通じれば、物はその節󠄄を失う。


《爻辭》
[上爻 優先]
泰の上極に居て、各々の応ずる所に反る。泰の道滅びようとしていて、上下交わらない。卑しくして上を承けず、尊くして下に施すことをしない。故に「城隍に復る。」卑の道が崩れるのである。「師を用ふること勿れ」とは、攻めても苦しむだけである。「邑より命を告ぐ、貞なれば吝」とは、否の道に入っていて、命令は行き届かないのである。
[二爻]
健(陽)を体して中に居る。
そして泰に用いる。
よく荒󠄃い穢れを包含できる。
受け容れて川を渡る者である。
心を用いて弘大。
私なく偏りなし。
このようにして中行を尊ぶようになる。
中行とは五爻の事を言う。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
泰は通󠄃るという意味である。
卦は否と逆である。
否の三爻の陰が外卦に行き、三陽が下に来たのである。
陽は大であり、陰は小である。
天気が下降して地気が上昇したのである。
陰陽がよく通じているのである。
人は世の中で、人と交際しながら生きていく。
上は下をおさめ、下のものは上のものを助ける。
君臣上下から親戚や町の仲間にまで言えることである。
そして天下は治まるのである。
よく通るので吉である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
荒󠄃穢を包容する。
国の君主が清濁併せ呑むようである。
あえて川を渡る。
私党はない。
中行は中道である。
陽剛で中を得る。
上は五爻に応じている。
泰に治める任に当たり、君を得るものである。
だからよく清濁を併せのむことが出来る。
通泰の時に当たり、人情は安穏をむさぼり、引き締めを嫌う。
人は厳しさに堪えられない。
清濁を併せのまなければ人は服さない。
そして世情はゆるんでいる。
泰を治める道は剛中を尊ぶことである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
泰の字は滑らかという義で、天地陰陽の気が流動して滞らず、能く万物を成長させる。
太、代、世も皆通じる意味である。
外卦が坤で、内卦が乾であるから、小は外の方に往き、大は内の方に来る。
地の底で陽が三つになって、盛んになる。
一ヶ年で考えれば、丁度旧暦の正月にあたる。
旧暦の十一月に一陽来復するため、初爻目が十一月、二爻目が十二月、三爻目が正月となる。
この卦は天の元気が地に十分に充ちて居る所の卦である。
世の中で譬えてみれば、天子の恩沢が人民の間に一杯に溢れて居り、下々の者もそれに随って上の方に事(つか)え、上下相交わる所の卦である。
その為、是より吉なる所の卦は無い。
[彖傳]
天の気が下に降り、地の気が上に昇り、天地の気の交わった所で、万物が発生する。
地の中に陽気が十分に充ちており、陽気に随って陰気が外の方に昇っていく所である。
一人の人にしてみれば、乾は心が十分に剛く、且つ外の行いは順従で人に抵抗しない。
又世の中で譬えてみれば、内に在って事を用いるのは君子、外へ出て君子に使われているのは皆小人である。
又世の道徳上の事にとってみれば、君子たる所の仁義の道が段々と盛んになって行き、小人の方の道は段々と滅びる所となる。
[象傳]
天地が交わり万物の生成が盛んになる。
しかし人間がこれを輔けなければ、天地の造化は昌(さか)んになる様なものではない。
天地があり、人間というものがあって、天地を輔けるから天地人、これを三才という。
即ち君と書かずに后(きみ)の字を書いたのは、天地を承けてこれを相(たす)けるためである。
財の字は裁に通じ、物を計って余計な所は裁り、少ない所はこれを補う。
天子が天下を治め人民を取り扱うのは、我が家に生まれた赤子を養育する様な物で、倒れない様に右からも左からも手を引いて輔ける。
そうして民を左右するのである。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
初爻目は陽爻が陽位に居るから動かない。
二爻目は陽爻を以て陰位に居るから動かなければいけない。
九二は六五に動くので龍徳と云う。
九二の皇太子は五爻目に昇るだけの徳を持っている。
五爻目の陽位に陽爻が往く。
中庸を以て言った辭の通り之を謹んで行う。
心に邪を入れずに虚になって居るならば、天の元気が宿る。
其の神霊なる所の誠を失わないようする。
世の中の習慣風俗の悪い所を、我が徳を以て洗い浄めて善くする。

11/9(火) ䷇ 水地比(すゐちひ)→䷲ 震爲雷(しんゐらい)

11/9(火) 水地比(すゐちひ)→ 震爲雷(しんゐらい)


【運勢】
一人で何でも出来る事が、必ずしも良いとは限らない。
集団の中で役割を分担し、成果を共有し、互いに関係を深める事が大切である。
助け合える仲間が居れば、如何なる困難に直面しても解決出来るだろう。


【結果】

本卦:水地比(すゐちひ)
之卦:震爲雷(しんゐらい)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][初爻]


【原文】
《本卦:
水地比》
比は吉なり。原筮(げんぜい)。元永貞(げんえいてい)にして咎(とが)めなし。寧(やす)からざる方(まさ)に來たる。後るる夫は凶。
彖(たん)に曰はく、比は吉なり。比は輔(ほ)なり。下順從するなり。原筮、元永貞にして咎めなしとは、剛中(ごうちう)を以てなり。寧(やす)からざる方(まさ)に來たるとは、上下應ずるなり。
象に曰はく、地の上に水あるは比。先王(せんわう)以て萬國を建て、諸侯を親しむ。


《之卦:
震爲雷》
震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり。笑言啞啞(ああ)たり。震百里を驚かす。匕鬯(ひちょう)を喪はず。
彖に曰はく、「震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり」とは、恐れて福を致すなり。「笑言(しょうげん)啞啞(ああ)たり。」とは、後に則あるなり。「震百里を驚かす」とは、遠きを驚かして邇(ちかき)を懼(おそ)れしむるなり。出でて以て宗廟社稷を守りて、以て祭主と爲すべきなり。
象に曰はく、しきりに雷するは震。君子以て恐懼(きょうく)脩省(しゅうせい)す。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《本卦:
水地比》
比は親しむ、たすけるの意󠄃である。五爻の王だけが陽であり、他はすべて陰爻で王にしたがっている。筮に基づいて大変長く正しさを守っている人を選べば問題ない。五爻に親しむ機会を失ったものはよくない。人と親しもうとすべきである。


《之卦:
震爲雷》
震は雷鳴を表す。
上下両方とも震であり、雷鳴が轟くときは傲慢になった人々も恐れ、敬意を取り戻す。
人々が恐れ敬いの心を取り戻せば、規則が守られ、幸福になる。
雷鳴は遠方まで轟きわたり、人々を驚かせるが、そんな中でも先祖を祭り、神々を祭る人は重い責任にたえられる人である。


〔根本通明の解釋〕
《本卦:
水地比》
比は親密なる所である。比は密であり、密は物と物とが密着して間に隙間の無いことである。上卦は水、下卦は地である。水は地の中に浸み込んでくるから、水と土は離れることが無く、密着した状態である。五爻目は陽爻で天子にあたる。天子は人民と密着しており離れることが無い。ちょうど水と土の関係のようである。これは吉である。「筮」は神に吉凶を問い訊ねることで、「原」は再びという意で三度問うことである。つまり天子は神に吉凶を訪ねるのと同じように、諸々の人民へ何事も懇ろに問い訊ねて事を謀るのである。「元永貞」とは元徳を持つ人が、永く怠らず、貞しい所を守っていることである。これは堯舜(古代中国で徳をもって天下を治めた聖天子である堯(ぎょう)と舜(しゅん)。転じて、賢明なる天子の称のようなものである。「後夫凶」は、四方の国が名君に服しているのに、後に残って服せずに居る男が禍を受けることである。
[彖傳]
比は吉である。また互いに相輔けることである。「下順従」の「下」は下卦の坤=人民のことである。そして「順従」は坤の卦の象であり、人民が皆九五の天子のもとに集まってくることである。「不寧方来」は上から下まで残らず天子に応じて服して来ることをいう。「後夫凶」は名君に服さない者が、自ずから往くべき所がなくなり、その道に窮することをいう。
[象傳]
地の上に水があるのが比である。地に悉く浸み込んで来る水は、名君の徳性が深く人民の方へ浸み込んでいく例えである。君と民は親密な関係であり、離れようもない。こうした君民一体の関係に、皇統一系の象が含まれているのである。


《之卦:
震爲雷》
前の卦は火風鼎である。鼎(かなえ)は天子の宝器のことで、日本では三種の神器にあたる。皇統一系は天道であって万世不易のものであるから、革命が起こっても必ず皇統一系に引き戻さなければならない。そのため火風鼎が示すように、皇后に子が無ければ、妾の子であっても皇位を嗣がせなければならない。こういう理由で鼎の卦の次に、震の卦を置いたのである。『序卦伝』にも「器を主(つかさ)どる者は長子にしくはなし。故にこれを受くるに震(しん)をもってす」とある。この震は皇太子の象である。皇太子はどのような困難に遭っても、何所までも忍耐して必ず位を嗣がなければならない。震は剛(つよ)いから亨る。また震は雷であり、この卦は雷を以て説く。卦全体の主になるのは初爻目である。虩虩(げきげき)とは恐懼する姿である。激しい雷には聖人といえども恐れ慎む。『論語』にも「迅雷風烈は必ず変ず」と出ている。大いなる災難が来るが、恐れ慎めば後には必ず福を得ることになる。天が天下を委任するに相応しい人だと思えば、禍(わざわい)を降して其の人の心身を苦しめる。艱難辛苦を経ることで忍耐力が養われて、後に大事を為せるのである。「笑言唖唖」とは、はじめ難に遭って苦しむが、後には安楽となり喜び笑う所となることである。「匕鬯(ひちょう)」は、宗廟の祭祀のときに天子自ら使う道具である。匕(ひ)は鼎の中の肉を掬(すく)い取る匙(さじ)である。鬯(ちょう)は鬱金草(うこんそう)という香草を入れて醸した酒のことである。この酒を地に撒くと香気が立ち上り、これによって神を降ろすのである。このように匕と鬯は、祭祀に於いて最も重要であることから、この卦で取り上げられるのである。身を砕くほどの雷が鳴っても、匕鬯を行える忍耐力が無ければいけない。
[彖傳]
「震亨、震来虩虩」と云うのは、災難に見舞われるも、恐れ慎んで徳を修めることで、遂に天の福を招く所となる。「笑言唖唖、後有則也」には、「後」という字が加えてあり、難と福の順序を失わないようになっている。雷により胆力を養い徳を修めた所で、皇太子が御殿から出て天子の位を継ぎ、宗廟社稷を守って祭る所の主人となることが出来る。乾為天四爻目の「或いは躍る」がこれにあたる。つまり天子が健在でも時によって皇太子が出て、宗廟社稷の祭祀を代わりに行えるだけの準備が出来ていることを意味する。
[象傳]
この卦は震が二つある。二度も三度も打ち重なって雷鳴が響く。君子は難に遭うことで、恐れ慎んで徳を修めて、我が身を省みる所が出てくるのである。

11/8(月) ䷫ 天風姤(てんぷうこう) 五爻二爻

11/8(月) 天風姤(てんぷうこう) 五爻二爻


【運勢】
何事も、志が高く無ければ続かない。
邪な考えを避け、成果の出る時をじっくりと待つ事が大切である。
興味を惹く事があっても安易に関わらず、一度冷静に考え直した方が良い。
思いがけない所に問題は潜んでいる。


【結果】
䷫◎⚪︎
天風姤(てんぷうこう) 五爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。
彖に曰はく、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。
象に曰はく、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。杞(こ)を以て瓜を包む。章を含めば天より隕(お)つることあり。
象に曰はく、九五の章を含むは中正なるなり。天より隕(お)つること有りとは、志、命を舎てざるなり。
[二爻]
九二。包むに魚あり。咎めなし。賓によろしからず。象に曰はく、包むに魚有りとは、義賓(ひん)に及ばざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
姤は遇うことである。
柔が剛に遇う。
人でいうと女が男に遇󠄄うのである。
一人の女が五人の男に遇󠄄う。
大変強靭な女である。
取るべきでない。
剛が中正であるから天下はあまねく王化󠄃に帰すのである。
言義は見えるところを表現しきれない。


《爻辭》
[五爻 優先]
杞は木の名である。
肥沃な土地にある。
五爻は尊󠄄位を履んで応じるものがない。
地を得て食べない。
威德を持ちながら、まだ発現していない。
天命が下りていない。
しかし、良い場所に居り、剛で中を得ている。
だから志は天命を諦めていないのである。
傾き落ちていくことはない。
[二爻]
二爻は初爻の陰爻に一番近いところにある。
陰爻は袋や風呂敷に包んでおくのが良く、討伐しようとしてはならない。
この包んだ陰爻は魚にたとえられる。
客人が来た時にその魚を出してはならない。
なぜならその魚には毒があるかもしれないからである。
包んだままにしておくのがよい。
陰爻を他の人にはあわせてはならず、自らが責任を持って対処すべきである。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
姤は遇󠄄うことである。
一陰が下に生じて、五つの陽にあったのである。
一陰が五つの陽に対峙する。
その大壮はすさまじいが、陽が必ず勝つ。
このような陰を用いてはならない。
陰陽が互いに對待(たいたい)することは、天地の常経である。
陰が盛んであると陽が損なわれる。
臣下が君主に背くのも、婦が夫を凌駕するのも皆陰が盛んだからである。
姤の卦が戒めるところである。


《爻辭》
[五爻 優先]
杞は高大な木である。
杞梓(きし)のことである。
瓜はおいしい木の実で、下に在るものである。
ここでは初爻を言う。
剛であり中正。
尊󠄄位に居て二爻が応じていない。
賢い君主が良い臣下を得ていない。
そして至誠は賢者󠄃を求めて下に行く。
広大な樹木が下に在るおいしい果実を覆うようなものである。
それは素晴らしいものを秘めているが、まだ表に現れていない。
下は誠に感応して応じて來る。
それは天が授けてことで、人力ではない。
五爻は中正の徳がある。
だから優れたものを持っているという。
至誠の道は鬼神をも感ぜしめるべし。
もし、至誠にして賢人を求めたのであれば、その位を降りて、浮世を離れて静かに暮らしたら、応じるものがない状況が変わり、応じるものが現れる。
予期できないことがある。
昔から聖人が賢臣に遇うときは、みな至誠の道󠄃を履んだのである。
高宗が傅說󠄁を得、文王が太公望を得たのがまさにそれである。
[二爻]
魚は陰のものであり、客人には出していけない。初爻と応じている。初爻の陰には害があり、それを包容しており、外人に接させないようにしなければならない。小人の禍を君子に遭わせないようにする必要がある。小人の勢いが強くここで止めなければならない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は初六の陰爻が主役で、他の陽爻は賓客のような訳になる。
陰は長じて、次第に陽を侵食していく。
陰爻つまり女の方から、進んで陽爻に遇う所がある。
其処で女を娶るという方へ、この卦を用いてはならない。
[彖傳]
「遇」は多いがけない所で遇うと云う義である。
柔は剛に遇うと云うのは、女の方から進んで男に遇うという義である。
このような女を娶ると、次第に増長して往くから娶ってはならない。
剛中に遇うというのは、九五の剛が九二の賢人に遇う所を云う。
賢人は朝廷へ出ようとする初六を抑え止める。
そのため剛は賢人と相謀って、初六を正しくする。
[象傳]
天の下に風が旋ぐるように、天下に命令を下す。
四方に遍く告げ諭して、能く治め斉(ととの)える。
旧弊を除きはらって政を以て天下を新たにする。


《爻辭》
[五爻 優先]
瓜は初六の小人、𣏌は柳の大木のことで九二の賢人である。
九五の天子が、九二を以て、初六を包んで外に出さない様にする。
瓜は甘く美しいが、毒がある。
小人はいくら除いても、天から降ってくるように、何時となしに出てくる。
[象傳]
九五は中庸の徳を以て、天下を正しくして往く。
天命で小人が降って来ても、九五の名君は志をもって、これを引っ繰り返す。
人智を以て、世の乱れを抑える。
天命だから仕方が無いということはいけない。
人間の力を以て、天命を回(か)えると云うのが易の教えである。
[二爻]

11/7(日) ䷮ 澤水困(たくすいこん) 五爻

11/7(日) 澤水困(たくすいこん) 五爻

【運勢】
言葉巧みに物事を進めようとしても、内実が伴わなければ信頼はされない。
着飾ろうとせず、成果の出ない時は寡黙に努力し誠実さを体現すると良い。
消極的、悲観的な物の見方を改め、賢人の助言を受ける事が大切である。


【結果】
䷮◎
澤水困(たくすいこん) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。彖に曰はく、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。象に曰はく、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


《爻辭》
九五。劓られ、刖られ。赤紱に困しむ。乃ち徐にして說󠄁び有り。用て祭祀するに利ろし。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
[王弼]
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。
[東涯]
正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


《爻辭》
五爻は為政者の爻である。鼻を切られ、足を切られる困難な状況である。そこで赤紱という礼服を着て賢者を待つがまだ来てくれない。しかし急がずゆっくりとしていれば、志を遂げることができ、喜びも訪れる。必ず賢者が来てくれて、共に祭祀を行うことで、福をえよう。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。


《爻辭》

11/6(土) ䷭ 地風升(ちふうしょう) 二爻

【運勢】
何事も一貫した姿勢で取り組み、皆の信頼を得ると良い。
大事を行うのに良い時である、内実がしっかり伴えば、多少見栄えが悪くても誠意は伝わるだろう。
順調な時こそ慢心せず、謙虚な心で土台を固める事が大切である。


【結果】
䷭◎
地風升(ちふうしょう) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
升は元(おほ)いに亨(とほ)る。大人を見るに用う。恤(うれ)ふることなかれ。南征して吉。彖に曰はく、柔は時を以て升(のぼ)る。巽にして順。剛中にして應ず。是を以て大いに亨(とほ)る。「大人を見るに用う。恤ふることなかれ」とは、慶あるなり。南征して吉とは、志行はるるなり。象に曰はく、地中に木を生ずる升。君子以て德に順(したが)ひ、小を積みて以て高大なり。


《爻辭》
九二。孚あれば乃ち禴を用ふるによろし。咎なし。
象に曰く、九二の孚とは、喜び有るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
巽順で以て上るべし。陽爻が尊󠄄位に当たらない。厳しい剛の正しさがないので憂えを免れない。大人にあうのに用いる。憂うるなかれ。柔で南に行けば、大きな明󠄃につく。柔は時により上ることを得られる。純柔であれば自分で上ることが出来ない。剛が思いあがれば人は従わない。旣に時であり上った。また巽順である。剛中で応じている。だから大いにとおるのである。巽順で上った。大きな明に至る。志が通ったことを言う。


《爻辭》
五を興し應ずるため、往けば必ず任ぜ見る。夫の剛徳を體して、進みて寵を求めず。邪を閑ぎ誠を存し、志大業に在り。故に乃ち約を神明に納るるを用ふるに利あるなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
升は変じて萃と通う。萃の内卦の三爻の陰が昇って外卦に行った。だから升という。内が巽で外が順。柔巽で人の心に從う。二爻は剛中で五爻と応じている。これは賢人が君を得た象である。その得失を憂うるなかれ。西南は坤
であり、上卦にある。だから前進して南に遠征する。進み上って吉である。君臣が遇うことは古來難󠄄しい。巽順の德を身につけ、柔中の君(五爻)に遇󠄄う。剛中の逸材(二爻)を重用して、賢人を好む時、進んで為すことがある。地中に木が生ずる象であるから、地道は木に敏感である。時に昇進する。もしその養いを得れば、長く続かないものはない。君子はこれを体してその徳に從う。次々に重ねて高明󠄃廣大となる。漸次進む。


《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
升は升(のぼ)って進むという義がある。昇と同じである。三・四・五爻の震の卦は陽木、下卦の巽は陰木である。地に陽木と陰木の芽が出ている。それが天を貫くまでに段々進んで往くのが升である。元亨の元は震で、亨は兌である。また震は仁で、兌は義であるから、この卦には仁義の象がある。震は長子で、仁義の徳が段々と上って行けば、天子の位に即(つ)く所があり、心配には及ばない。南に征くとは、南面の位に即くことをいう。
[彖傳]
太子は升るべき時を以て天子の位に升る。皇太子が二爻目になると陽爻であるから剛である。内卦の皇太子が剛で中庸の徳を備えているから、外卦の坤=天下皆その徳に応じて服する。心配には及ばない。必ず天子の位を相続して大いなる慶びが出てくる。
[象傳]
地の中に巽と震の卦がある。木が次第に上の方に進んで伸びて往く。君子はこの卦の象を用いて徳を順にする。巽は『説卦伝』に「高し」とある。


《爻辭》

11/5(金) ䷘ 天雷无妄(てんらいむまう) 四爻

11/5(金) 天雷无妄(てんらいむまう) 四爻


【運勢】
自己管理を徹底し、心に余裕を持ち、相手を思いやる事が大切である。
我を通さず、謙虚堅実に相手と向き合えば、何事も上手く行くだろう。
正しいと思う事を率先して行えば、災いを未然に防げるだろう。


【結果】
䷘◎
天雷无妄(てんらいむまう) 四爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻]


【原文】
《卦辭》
无妄(むまう)は、元(おおい)に亨(とほ)る、貞に利(よろ)し。其れ正に匪(あら)ずんば眚(わざわい)有り。往く攸(ところ)有るに利(よろ)しからず。
彖に曰く、无妄は剛外より來(きた)りて、内に主になり、動いて健。剛中にして應(おう)ず。大(おおい)に亨り以て正し。天の命なり。其正に匪ずんば眚有り、往く攸有るに利しからずとは、无妄の往く、何(いずく)にかゆかん。天命、祐(たす)けず、行かんかな。
象に曰く、天の下に雷行き、物に无妄を與(あた)う。先王以て茂(さかん)に時に對(たい)して萬物を育す。
《爻辭》
九四。貞(てい)すべし。咎(とが)无(な)し。
象に曰く、貞すべし。咎无しとは、固(かた)く之れを有するなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
[王弼]
動いて健とは震のことをいう。
雷動して乾健である。
剛中というのは五爻を言う。
剛が外からきて、内卦の主爻となる。
動いていよいよ健である。
剛中で応じている。
私欲が行われない。
妄動することはない。
无妄の道ができ、大吉。
剛が外から来て内の柔邪の道は消失する。
動いていよいよ健であれば剛直の道が通る。
剛中にして応じれば斉明の德が通る。
天の教命である。
もし正しくないのであれば、往く攸有るによくない。
茂は盛んなことである。
物は皆あえて妄でない。
その後に萬物はそれぞれその性を全うできる。
時に対して物は育つ。
是より盛んなことはない。
[東涯]
妄(もう)は、望と音に相近し。
无妄は、希望することがない。
『史記』では无望󠄇とかく。
この卦をさかさにすると
山天大畜になる。
主爻は初九である。
无妄は予期せずに来るものである。
卦体は震が動くで、乾が健やかである。
五爻と二爻は応じている。
まさに天命である。
逆に正しくないことをしていれば、どんどん禍いを増す結果となる。
舜禹が君で伊傅が臣であるようなものだ。


《爻辭》
陰の四爻に陽であるので、謙順を失いがちである。
至尊󠄄の五爻に近いので、正しいものをつけるべきである。
初爻と応じていない。
何もしようとせず、正しさを守っていればよい。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
无妄は欲がないということである。
無望の意味である。
『史記』や『戦国策』にも無欲の意味で使われている。
ただ誠にのみ志すのである。
志が正しくなければ、災いがおこる。
[彖傳]
外卦が天で、内卦が雷である。
五爻と二爻が応じており、上下心が通う。
天命を受けることを表す。
その天命に従うのがよい。
それ以外のことをしようとするのは、天命でないことをすることになるので、よろしくない。
[象傳]
天の下に雷があるのが无妄である。
人間が无妄であるのは当然であるが、万物も无妄であるべきである。
先王はこの无妄の卦を用いて、つとめて万物を育んだ。
春夏秋冬、天に従った生き方をした。


《爻辭》
四爻は陰の位に陽がきているので、正しくあるべきと戒めている。
[象傳]
四爻は、仁の徳を初爻と共に大切に育めば問題ない。

11/4(木) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 四爻

11/4(木) 水雷屯(すいらいちゅん) 四爻

【運勢】
目先の利益に惑わされず、未来を見据え堅実に行動する事が大切である。
新たに何かを始める時は、精力的な仲間を集めると良い。
様々な困難があり悩みは絶えないが、今を踏ん張れば、後に大きな成果を得られるだろう。


【結果】
䷂◎
水雷屯(すいらいちゅん) 四爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻]


【原文】
《卦辭》
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。彖(たん)に曰はく、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。象に曰はく、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


《爻辭》
六四。馬に乘ること班如たり。婚媾(こんこう)を求めて往く。吉にして利しからざる无し。
象に曰はく、求めて往く。明󠄃成なるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。
なやんで通ずることが出来ない状況である。
ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。
そのためには、正しさを固く守らねばならない。
現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。
こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


《爻辭》
[王弼]
二爻は初爻と比の関係にあるが、正しさを守って初爻に従わない。
己の志を害さない者である。
好みの合う友を求めて往くと必ず受け容れてもらえる。
[東涯]
婚媾(こんこう)は初爻と応じていることを指し、四爻は陰柔であり屯に居る。
そして柔順にして正に居る。
智の德は従うべきところを知る。
初爻の応じるものに求めて往く。
人で屯に居る時は、自ら救済することが不可能であれが、よく応じる相手を探すことは出来、救済の力に頼り、可能なことも出てくる。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
屯は止まり艱(なや)むという義である。
下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。
水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。
天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。
険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。
初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。
この人が進んで遂に侯になる所の卦である。
雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。
真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。
服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。
世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。
また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。
綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。
この雲雷の象によって世の中を治める。


《爻辭》
六四と初九は位が応じて居る。
そこで六四は初九の方へ往こうと思って馬に乗ったが、隣の九五から頻りに招かれ仕方なく一時馬を還した。
しかし初九の方から婚媾を求めて来る。
初九は天下に君たるべき存在であるから、其処へ往くのが吉である。
[象傳]
今は九五が権力が盛んであっても、後には良くない。
初九から求めて来たのであれば、其方へ往くのが良いのは、明らかなる所である。

11/3(水) ䷳ 艮爲山(ごんゐさん) 初爻

11/3(水) 艮爲山(ごんゐさん) 初爻

【運勢】
精力的なのは良い事だが、大事を行うには時期尚早である。
先ずは一人で出来る事を地道に行い、地位を盤石にする事が大切である。
周りに過度な期待をしてはいけない。
自らの力を信じれば、悔いの無い結果を得るだろう。


【結果】
䷳◎
艮爲山(ごんゐさん) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
その背に艮(とどま)り、その身を獲(え)ず。その庭に行きてその人を見ず。咎めなし。彖に曰はく、艮は止まるなり。時止まるときは則ち止まり、時行くときは、則ち行く。動靜(どうせい)その時を失はず。その道光明なり。その止まるに艮(とどま)るはその所に止まるなり。上下敵應(てきわう)して相ひ與(くみ)せず。ここを以て、その身を獲ず。その庭に行きてその人を見ず。咎めなきなり。象に曰はく、兼󠄄ねたる山は艮。君子以て思ふことその位を出ず。


《爻辭》
初六。その趾(あと)に艮(とどま)る。咎めなし。永貞によろし。象に曰はく、その趾に艮(とどま)るとは、未だ正を失はざるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
艮はとどまる意󠄃である。山である。山が二つ重なるので兼山ともいう。應爻が一つもなく、互いに反発して人の顔をみようとしないので、背中しか見ないのである。どこかに向おうとすることなく、その地位にとどまるだけである。


《爻辭》
[王弼]
初爻はどこにも行かず、今の位置に留まることがよい。
初爻は最下位であり、上昇したい気持ちもあるが現状を維持して問題ない。
また長く正しくあろうとすべきである。
[東涯]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
『説卦伝』にあるように、艮は止まるのが宜しい。しかし止まると云っても、進むべき時に止まっては弊害が生じるので、注意しなければならない。艮は人の身体でいえば背中に相当する。動くものは前にあり、背中は動かないからである。また欲は前の方から起こり、背中には欲が生じない。かつ世の中は欲の世界だが、背を向けていれば無欲でいられる。無欲であれば、我が身は無いのと同じである。我が身が無ければ、世間から訪ねて来る人もいない。荘子も「斉物論」で同様のことを言っている。人と交わらずに一人道を楽しんで居れば、何所からも咎を受けることはないのである。
[彖傳]
艮は止まるとある。三爻目、四爻目、五爻目に震の卦があるが、これは進み行くことを意味する。止まる方にばかり偏ってはいけない。また艮の卦には時の象があるが、これは止まるべき所に於いて止まるという意味である。動と静の双方を含んでいることになる。つまり自身に相応(ふさわ)しい所で止まり、行けば良い時になれば動いていくのである。初爻目と四爻目は陰爻同士、また二爻目と五爻目も陰爻同士、そして三爻目と上爻も陽爻同士であるから、いずれも相応じず親しまない。よって「其ノ身ヲ獲」ない。我が身に欲が無く、世間に望みを持たず、室から庭に出て行っても訪問者も見えず、従って咎を受けることもないのである。
[象傳]
「兼山ハ艮」とある。山が二つ重なっており、対立しているから、互いに動いて交わることがない。君子は自分の居所から外へ出ず、我が身を守っているので、外への考えが及ばないのである。


《爻辭》
「趾」は前に向かうもので卦の一番下にあるので趾(あし)にあたる。艮の卦は人の身体に象を取っている。外へ往くために最初に動くのは足である。足を止めて世間へ出ないから咎を受けることがない。貞しい所に居るのが宜しい。
[象傳]
「其趾ヲ艮スル」とある。「艮スル」とは止めるという意味であり、正しさを失ったわけではない。三・四・五爻目の震の卦になれば動く所となるが、初爻・二爻目では動くべきでない。言ってみれば、九三(三爻目)は正しさを失って居るが、初爻はそれと反対であるから正しさを失ってはいないのである。

11/2(火) ䷑ 山風蠱(さんぷうこ) 五爻三爻

11/2(火) 山風蠱(さんぷうこ) 五爻三爻

【運勢】
風が山に阻まれて淀んでしまう様に、進まず留まれば、何事も腐敗が進んでしまう。
取り返しの付かなくなる前に、悪しき習慣を改め、良い習慣を取り入れる事が大切である。
信頼する相手と協力して物事を進めると良い。


【結果】
䷑◎⚪︎
山風蠱(さんぷうこ) 五爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰はく、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰はく、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。

《爻辭》
[五爻 優先]
六五。父の蠱を幹す。用ゐて譽(ほまれ)あり。
象に曰はく、父に幹す、用ゐて譽ありとは、承くるに德を以てするなり。
[三爻]
九三。父の蠱を幹す。小しく悔有り。大なる咎なし。
象に曰く、父の蠱を幹すとは、終に咎なきなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。
旣に巽また止まり、競争しない。
事有りて競争の煩いがない。
だから為すことがある。
為すことがあれば大いにうまく行く。
天下を治める。
蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。
德を進めて業を修めればうまく行く。
甲とは創制の令である。
古いものを以てしてはならない。
甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。
事によって令を述べる。
終われば始まる。
天の運行は四季のようである。

《爻辭》
[五爻 優先]
柔が尊󠄄位に居る。
中を用いて應ず。
先代を承けるのに中を用いれば譽を受ける。
柔が中にあるので威力を用いない。
[三爻]
剛を以て事を幹す、其れ應ずるなし。故に悔有るなり。其の位を得るを履み、正を以て父に幹す。小しく悔有りと雖も、終に大なる咎なし。

〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蠱は壊、腐敗のことである。
この卦は變じて隨となる。
隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。
だから、剛が上って柔が下るというのである。
強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。
内は巽順であり、よく物を止める。
天に十日有り。
甲に始まり癸で終わる。
甲は事の始めである。
甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。
前󠄃の事が終わろうとする。
腐敗を致す道である。
甲に後れるとは乙丙丁である。
乱が極まり治まるころである。
腐敗を治める道である。
治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。
上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。
そうすればうまく行くのである。


《爻辭》
[五爻 優先]
腐敗がある時に柔であり、尊󠄄位にある。
二爻と応じてゐる。
柔中の君は、剛陽の臣下を任命することが出来る。
そしてその祖業を輝かせる。
自分自身の才能が腐敗を治めるに足らないならば、良く治めることが出来るものに頼るべきである。
君は衆と力を合わせて腐敗に対応すべきである。
[三爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。
蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。
三・四・五爻目に震の卦がある。
これは長子、即ち皇太子である。
上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。
巽は弱く姑息で敗れる。
晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。
そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。
元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。
皇太子が即位して政を改め天下を治める。
先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。
後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。
ニ・三・四爻目に兌の卦がある。
兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。
これは旧弊の政事を除く義である。
三・四・五爻目は震の卦である。
震は春で、新しい芽がまた出てくる。

《爻辭》
[五爻 優先]
皇太子が天子の位に即いて政を改める所である。
これは重大な事であるから、一人で行えない。
五爻目に応じるのは二爻目で、九二の賢人を用いる。
そうして天下を斉へた所から誉を得る。
[象傳]
親の後を承け継ぎ、道徳に則った政を行う。
[三爻]