1/31(月) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 上爻二爻

1/31(月) 雷水解(らいすいかい) 上爻二爻


【運勢】
困難に直面した時は、立ち止まり悩むのではなく、力強く行動する事が大切である。
出来る事を積極的に進めて行き、解決に向けた流れを作ると良い。
一貫した姿勢で、中正を堅く守れば、充分な成果を得られるだろう。


【結果】
䷧◎⚪︎
雷水解(らいすいかい) 上爻二爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
解は西南によろし。往くところなし。それ來たり復すれば吉。往くところあれば、夙(つと)にして吉。彖(たん)に曰(い)はく、解は險(けん)以て動く。動いて險より免(まぬが)るるは解。「解は西南によろし」とは、往(い)きて衆を得るなり。「それ來たり復して吉」とは、乃(すなは)ち中を得るなり。「往くところ有れば夙にして吉」とは、往きて功あるなり。天地解(ひら)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作りて百果艸木(ひゃくかそうもく)皆甲拆(こうたく)す。解の時大なるかな。象に曰はく、雷雨作るは解。君子以て過ちを赦(ゆる)し、罪を宥(ゆる)す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。公用ひて隼を高墉の上に射る。これを獲てよろしからざることなし。象に曰く、公用ひて隼を射るとは、以て悖を解くなり。
[二爻]
九二。田して三狐を獲る。黄矢を得れば貞にして吉。
象に曰く、九二の貞吉は中道を得るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は衆である。難を解決し、危険を整える。利を衆に施す。また東北に困まらない。故に東北に利がないとは言わないのである。まだ、困難を解決するによくない。安に処する迷う。解とは困難を解決し、厄を除くことである。中を失わない。難があっても行けば、迅速であれば吉。難が無ければよく中に復す。難があれば厄を除く。


《爻辭》
[上爻 優先]
初は四の應となり、二は五の應となる。三は上に應ぜず、位を失ひて負ひて乘り、下體の上に處る。故に高墉と曰ふ。墉とは、隼の處る所に非ず、高とは、三の履む所に非ず。上六は、動の上に居り、解の極なり。將に荒れ悖るるを解きて、穢れ亂るるを除かんとする者なり。故に用て之を射る。極まりて後に動き、成りて後に擧ぐ。故に必ず之を獲て、利あらざるなきなり。
[二爻]
狐は隠れ潜むものである。
剛中で応じている。
五爻に任じられ、大変な時に居る。
危険の情勢を知っている。
物分かりが良く、潜伏したものを見つける。
黄色は中を表し、矢は直を表す。
枉直の實を失わない。よく正しくできる。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
解は解散の意󠄃である。危険に居てよく動けば、険難を回避できる。卦は変じて蹇となる。二爻が蹇の外卦に行き、五爻が西南坤の方に行く。坤には地の象がある。險の中でよく動ける才でよく進み、よく止まる。どこでも通用する。君子は陰陽を和し、過失であれば赦して問わず、罪悪があれば、寛大にこれを宥す。仁政の至りである。解の道である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
狐は人を惑わす動物である。
三匹の狐は二爻より上の三つの陰をさす。
黄色の矢は中直を表す。
剛中の才があり、五爻に応じ、三つの陰が上に在る。
よく三陰の小人を除くことが出來る。
智術を用いて政治をしてはならず、正直が大切である。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦の水山蹇(
、天下の険難なる所の卦)が解けた所の卦である。長い大乱で農業が廃れ、人民は衰えてしまっている。西南は坤の卦で、地の象である。地に五穀を植立てて、以て人民を養う。天下が平らいだなら、進んで事を為す所の仕事は無い。漸次人民を養えば宜しい。若し大乱が平らいでいても、進んで往く所の事柄があるならば、速やかに往ってこれを治めるのが宜しい。
[彖傳]
険難に屈せずに踏み越えて外へ出ることで、険難を免れた。西南は坤の卦で、衆口衆口という象がある。大勢の人民を我が方へ撫で育てるようにしなければいけない。既に大難は解けているから、多く仕事をし過ぎず、程良い所に止(とど)まるのが宜しい。往くべき所があるなら、往けば必ず功が出て来る。
[象傳]
天地に於いては万物を生じ育(やしな)う時である。君子に於いては仁を行う時であるから、人を殺めるのは良くない。其所で過ちを赦し、罪人を宥(なだ)める。善い事を為す心で行った悪事を過ちと云い、それならば無罪になる。しかし意あって悪事を為したのは、赦すわけにはいかないので流刑などに処す。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
九二は賢人で、六五の賢人を輔ける。
二・三・四爻目に離の卦がある。
離は狩りで、田で狐を狩る。
三匹の狐は、初六・六三・上六の三つである。
黄矢は黄金を以て飾り立てる矢で、黄と云う色は中庸の譬えである。
悪を除くのに遣り過ぎては、却って小人の激する所がある。
丁度程良い所を得ており、正しくして吉である。
[象傳]
九二は小人を悪む事が甚だしくない。
其の処分が如何にも中庸の道を得ており、小人においても感服する所があり、能く治まる。

1/30(日) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 五爻

1/30(日) 地雷復(ちらいふく) 五爻


【運勢】
一陽来復、何事も低迷が長く続いた後には、必ず良い事がある。
初心に立ち返り、消極的な考え方を避け、積極的な人に倣うと良い。
道徳心を篤く持つ事で、様々な問題を未然に防ぎ、悔いがないように進む事が出来るだろう。

【結果】䷗◎
地雷復(ちらいふく) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
復は亨(とほ)る。出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。その道に反復す。七日にして來復す。往くところ有るによろし。彖(たん)に曰(い)はく、複は亨(とほ)る。剛反るなり。動いて順を以て行ふ。ここを以て出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。「その道に反復す。七日にして來復す」とは、天の行なり。「往くところ有るによろし」とは、剛長ずるなり。復はそれ天地の心を見るか。象に曰はく、雷地中に在るは復。先王以て至日に關(せき)を閉(と)づ。商旅(しょうりょ)は行かず。后は方を省みず。


《爻辭》
六五。敦復す、悔なし。
象に曰く、敦復す、悔なしとは、中以て自考すなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
復はかえるの意󠄃味である。ひとつ前の
剝の上爻にあった陽爻が初爻に帰ったということである。一陽来復、また盛んになろうとしている。陰陽の運行が他の妨害を受けず、順調であるから、何か事をなすのに良い時期である。


《爻辭》
厚きに居りて中を履む。厚きに居りて則ち怨みなく、中を履みて則ち以て自考すべし。以て復を休くするの吉に及ぶこと足らざると雖も、厚きを守りて以て復る。悔いて危ぶむべきなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
復は本の所に反(かえ)るという意である。一年で考えれば旧暦の十一月、つまり冬至にあたる。天の気が地の底に来ることで万物は生じる。この卦は天の万物を生じる所に、復(ま)た立ち反った所である。前の卦の山地剥は上九のみが陽爻で、それは碩果(せきか:大きく実った果実)を意味する。果実が地に落ちて復た芽が生える所の象である。「其道」とは、万物を生成する所の道である。「七日来復」とは、乾為天から一爻ずつ陽が減っていって全てが陰爻になり、復た新たに陽爻を生じるまで七段階の過程があることによる(乾為天→①天風姤→②天山遯→③天地否→④風地観→⑤山地剥→⑥坤為地→⑦地雷復)。雷気が往くに従って万物が発生する。また君子の勢いが昌(さか)んになれば道徳が行われる世となり、志ある者は朝廷に出て往って事を行うのが良い。それで「利有攸往」なのである。
[彖傳]
「復亨、剛反」とは、山地剥の陽爻が引っ繰り反ったのである。上卦の坤の卦徳(卦の基本的特徴)は順である。つまり天道天理に順って段々と動いて往く所であるから「動而以順行」なのである。七とは陽の発生する所の数で、これから段々と陽が長じて往く。「天地之心」は万物の生成である。
[象傳]
雷が地中に来たって居ることが「復」である。陽気は地の底へ来た所で未だ力が弱く、これを育てなければならない。そこで先王は一陽来復(いちようらいふく:陰暦十一月、冬至)の時期にあっては関門を閉ざして、商人や旅行者の往来をなくし、各人は家で静かにした。天子と雖も冬至の日には巡狩(じゅんしゅ:諸国の巡視)を罷めている。
《爻辭》

1/29(土) ䷶ 雷火豐(らいかほう) 二爻

1/29(土) 雷火豐(らいかほう) 二爻


【運勢】
勢いのある時は、その勢いを正しい方向へ進めなければならない。
如何に遠回りであっても、周りから疑われない様に、注意して行動する事が大切である。
独善的にならず、公明正大さを心掛ければ、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷶◎
雷火豐(らいかほう) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
豐は亨る。王、之に假る。憂ふる勿れ。日中に宜し。
彖に曰く、豐は大なり。明󠄃以て動く。故に豐なり。王、之に假るとは、大を尚ぶなり。憂ふる勿れ。日中に宜しとは、天下を照らす宜しきなり。
日中するときは則ち昃(かたむ)き、月󠄃盈(み)つるときは、則ち食󠄃す。天地の盈虚、時とともに消息す。而るを況や人に於いてをや。況や鬼神に於いてをや。
象に曰く、雷電皆至るは豐。君子以て獄を折し刑を致す。


《爻辭》
六二。其の蔀を豐にす。日中斗を見る。往けば疑疾を得ん。孚有りて發若すれば吉。
象に曰く、孚有りて發若すとは、信以て志を發するなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
豐の義はひろめる、ひらく、微細にするである。
隠れ滞っているものを通して天下の主となって、微隱にはうまく行かない。
憂えは未だに収まっていない。
だから、豐は亨に至るのである。
そして憂えが無くなる。
豐亨憂えなきの德を用い、天中に居るべきである。そして天下を照らす。


《爻辭》
蔀は覆いである。光を遮るものである。明󠄃動の時に居て、自然に豐かにはなれない。光大の德で内に居る。陰で陰に居る。豐かなところに蔀がある。かすかにしてみえない。日中は明󠄃の盛である。北斗が見えるとは暗い事の極みである。だから往くと疑いを招く。そして中を履んで位に当たる。暗い場所に居て邪にならない。争うことがあれば、誠が大切である。闇に苦しまない。だから吉。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
豐は盛大である。
知有りて動く。
よくうまく行く。
王者が大事業を起こす時である。
火を日とし、下に在る。
その徳の光明、あまねく四方を照らせば、憂うことなく、自然と豊大である。
人は明󠄃がなければ物を照らすことできない。
動かなければ事業は出来ない。
明にしてよく動く。
昔は湯王の徳を慕っていった。
天が王に勇智を錫(たま)う。


《爻辭》
蔀は覆いである。北斗が暗いから見える。この爻には豐があり、明の主爻である。中正の徳がある。五爻が応じる。五爻は陰柔不正、よく動くことが出来ない。才があっても上が応じない。陰暗が甚だしくよく見えない。日中の一番盛に北斗が見える。五爻は柔暗、賢を下すことがきでない。もし行きて求めれば、人々の猜疑心を引き起こす。ただひたすら人に誠実にあるべきである。大変な賢人と暗愚の君、誠実のみである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「豊」は腆(あつ)いと云う義で、物が厚く充ち満ちて居ることである。
世の中で云えば、天子が名君で政事が能く行き届いて居り、天下が盛んで富んでいることである。
しかしながらどれだけ盛んであっても、衰える所も出て来る。
下卦の離は日である。
東に在る時は未だ日が低いが、日中になれば遍く東西南北を照らし届かない所は無い。
ただし日が昃(かたむ)くといけない。
[彖傳]
天子の明徳は宜しく四海天下を照らすべきで、暗い所が出て来てはいけない。
しかしながら日が南中すれば、やがては傾いて往く所がある。
月も満ちれば、欠けて来る。
天地の道は斯くの如きもので、いつまでも保つことは難しい。
人間の主でなって居る所の鬼神と雖も、神明なることもあれば、時には神明ならざることもある。
自然の勢いと云うものは、力を以て動かすことは出来ない。
[象傳]
雷と電が一書に来るのが豊の卦である。
天下が皆富んで、上下安楽の時である。
しかし安楽であると、自然と人の心には奢りが出て来るようになる。
其処で刑罰を厳重にしなければいけない。


《爻辭》
この卦は安楽の義が有り、小人が君に楽しみを勧め奢りを助長させる所がある。蔀(しとみ)は遮り塞ぐ物で、君の明徳を蔽って塞ぐ所が甚だ盛んである。六二は陰爻を以て陰位に在り、離の卦の主爻でもあるから、明徳ある賢人のことである。賢人が往って君を輔けようとするが、讒言が多い為に往けば君から疑われる。天子が惑いから覚めて、忠臣の精神に感じ入り、志を動かす様になれば吉である。
[象傳]
六二の信が六五の天子の志を動かす。其処で信以発志也と云う。

1/28(金) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 上爻

1/28(金) 水雷屯(すいらいちゅん) 上爻


【運勢】
様々な困難があり、悩みは絶えないが、悲観する事は無い。
峠は既に越えている。
不安に駆られる気持ちを抑えて、今は耐える事が大切である。
目標に向けて歩みを続ければ、時勢は良くなり、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷂◎
水雷屯(すいらいちゅん) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。彖(たん)に曰はく、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。象に曰はく、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


《爻辭》
上六。馬に乘ること班如たり。泣血漣如たり。
象に曰く、泣血漣如たり。何ぞ長かるべきなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。なやんで通ずることが出来ない状況である。ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。そのためには、正しさを固く守らねばならない。現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


《爻辭》
上爻は険難の極みであり、煩わしいことが多い。助けてくれる人もなく、泣くほかない。憐れであるが、どうしようもない。その位に留まることも、長くはない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
屯は止まり艱(なや)むという義である。下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。この人が進んで遂に侯になる所の卦である。雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。この雲雷の象によって世の中を治める。


《爻辭》
上六は尊い位を失ってしまった所で、遁げようとするが往く所が無い。そこで復た馬を回えして唯立って泣いているより他ない。涙が尽きて血を流して泣いている。
[象傳]
ここに至って婦女子の如く唯泣いて居た所で仕方が無い。ここで一つ考えをもって気力を振るって為す所が無ければいけない。其処で何ぞ長うすべきという。

1/27(木) ䷎ 地山謙(ちさんけん)→䷠ 天山遯(てんざんとん)

1/27(木) 地山謙(ちさんけん)→ 天山遯(てんざんとん)


【運勢】
何事も謙虚な姿勢で望み、相手の気持ちに寄り添う事が大切である。
上手く行かない事には執着せず、進退極まる前に素早く身を引くと良い。
正しいと信じる道を進めば、災いを避ける事が出来るだろう。


【結果】

本卦:地山謙(ちさんけん)
之卦:天山遯(てんざんとん)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陰][四爻 老陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻][五爻][四爻]


【原文】
《本卦:
地山謙》
謙は亨(とほ)る。君子は終はり有り。彖に曰はく、謙はとほる。天道下濟して光明。地道卑(ひく)くして上行す。天道は盈(えい)を虧(か)きて、謙に益す。地道󠄃は盈を變じて謙に流る。鬼神は盈を害して謙に福す。人道は盈を惡(にく)みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑(ひく)くして踰ゆべからず。君子の終はりなり。


《之卦:
天山遯》
遯は亨る。小しく貞に利し。
彖に曰く、遯は亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當りて應ず、時と與に行くなり。小しく貞に利しとは、浸して長ずるなり。遯の時義大なるや。
象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡うせずして嚴にす。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《本卦:
地山謙》
謙は謙譲や謙遜の意󠄃味である。平面な地卦の下に高いはずの山卦がある様が謙遜を表す。謙譲の徳を持っている者は、どんなところでも歓迎されるし、尊敬される。しかし、謙譲の美徳は昇進するにつれて失いがちである。謙譲の美徳を持ち続けて、人の上に立つことは難しい。君子とは最後まで謙譲の美徳を全うすることができる人のことである。これを有終の美という。謙譲の美徳を有する者が上にいると、下の者を大切にするので、下の者は自分の実力を活かすことができる。また、謙譲の美徳を有する者が下にいると、周りの人がその徳を慕って昇進を求める。


《之卦:
天山遯》
遯の義爲るや、遯るれば乃ち通ずるなり。
五を謂ふなり。剛位に當りて應ず。亢るを否ぐに非ざるなり。遯れて亢るを否がず。よく時と與に行ふ者なり。
陰道浸して長ぜんと欲す。正道もまた未だ全く滅びず。故に小しく貞に利しなり。
天の下に山有り、陰長ずるの象なり。


〔根本通明の解釋〕
《本卦:
地山謙》
謙は「へりくだる」と言われるが、本当は「小さい」という意味である。我が身が小さくなって人の下に降って居る。古くは言偏の無い「兼」の字であった。小さいために一つで足らず合わせるという義である。他に口偏を附けた「嗛」の字もあり、子夏伝はそう書いている。口の中に入るだけの小さな物を含んでおり、嗛嗛之食という言葉は僅かの食物のことである。小さいというのが本来の義である。卦の象では地の下に山があり、人民の下に我が身を引き下げて小さくなって居る。二・三・四爻目に坎がある。水には功労があるが、低い所に居るので、謙遜の義がある。これなら何処へ行っても尊ばれ亨ることになる。しかし真実の謙虚さでなく、人望を得るために拵えて行うのは長く亨らない。
[彖傳]
天道下済とあるのは、上に在る天の陽気が降って来て地の徳を成すことである。元は乾の一番上にあった陽爻が下に降って九三となったのである。光明は三爻目に降りて来た陽爻である。また元は三爻目にあった陰爻が一番上に上がったから上行という。元の乾の卦が陽爻ばかりで剛に過ぎるので盈(えい)に虧(か)く。上に居るべき人が小さく為って、人の下に降るのが謙である。我が身を下しても人が侮って其の上を踰(こ)えて往くことは出来ない。卑い所に居れば居るほど人が尊んでくる。そうして君子は終を遂げる所となる。
[象傳]
上卦が地で下卦が山である。地の広い方から見れば山が小さい。天地の道理は何でも盈ちる所があり、それを虧かなければいけない。そこで多い方から取って、少ない方へ益す。政でも米を多い所から寡(すく)ない所に益すようにする。政は物の多少を量り、平らかにしなければいけない。


《之卦:
天山遯》

1/26(水) ䷹ 兌爲澤(だゐたく) 上爻五爻

1/26(水) 兌爲澤(だゐたく) 上爻五爻


【運勢】
自らの発言に責任を持ち、軽率な行動を慎むと良い。
支える者の負担が少なく、支えられる者が、多くの恩恵を受けられる状態を維持する事が大切である。
真に仲間の幸せを願えば、共に喜びを分かち合う事が出来るだろう。


【結果】
䷹◎⚪︎
兌爲澤(だゐたく) 上爻五爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][五爻]


【原文】
《卦辭》
兌(だ)は亨(とほ)る。貞によろし。彖(たん)に曰はく、兌は說󠄁(よろこ)ぶなり。剛は中にして柔は外。說󠄁(よろこ)びて貞によろし。ここを以て天に順(したが)ひて人に應ず。說󠄁(よろこ)びて以て民に先(さきだ)てば、民その労をわする。よろこびて
以て難󠄄を犯せば、民その死をわする。說󠄁の大、民勧むかな。
象に曰はく、麗澤(れいたく)は兌。君子以て朋友講習す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。引いて兌ぶ。
象に曰く、上六。引いて兌ぶとは、いまだ光ならざるなり。
[五爻]
九五。剥に孚あれば、厲きこと有り。
象に曰く、剥に孚ありとは、位正に當るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
兌は喜ぶこと、嬉しいことである。
この卦は
が二つ重なってできている。
は内に强い意志を持ち、外に対しては温和な態度で臨むので、人との付き合いはうまく行き、人間関係は良好である。
内に强い意志を持ち、外に対して温和な態度の人は、天道にも、人道にも逆らわない良い人である。
喜びを大切にすれば、他の人はどんな労力も厭わずに協力してくれる。


《爻辭》
“王弼”
[上爻 優先]
夫の陰質を以て、最も説の後ろに處り。静かにして退く者なり。故に必ず引く。然る後に乃ち説ぶなり。
[五爻]
上六に比す。與に相得て、尊正の位に處り。陽に信あるを説ばずして、陰に信あるを説ぶ。剥に孚あるの義なり。剥の義爲るや、小人の道長ずるの謂なり。
“東涯”
[上爻 優先]
[五爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
兌は喜びである。
自然と出る喜びが本当のもので、私心からの喜びは偽りである。
立心偏のない「兌」が本来のもので、立心偏を添えた「悅」や言偏を添えた「說」になるのは後の事である。
彖伝が「說」の字で書くのは、喜びを言葉で表すからである。
上卦下卦とも兌であるのは、己と他者が互いに喜ぶ象である。
互いに相助ける所があるので、何事も亨るのである。
『中庸』に「致中和天地位」とある。この中和が兌の卦にあたる。
中庸の道を行い、人がそれに服し、親しみ和合するなら、天地陰陽の気までも調和する。
あくまで作られた喜びでなく、正しい所が無ければいけない。
そこで「貞利」なのである。
[彖傳]
「兌悅也」というのは、沢山咸の「咸感也」と同様に、「心」の字の有無と同じである。
「剛中」は二爻目、五爻目が陽爻で、それぞれ上卦下卦の中を得ていることを云う。
「柔外」は三爻目、上爻が陰=柔らかであることを云う。つまり剛は明らかにして正しく、外の人には穏やかで柔らかに交わるのである。
それによって自他ともに喜ぶのであり、正しい所にあるのがよろしい。
この卦を天地人の三才に分けてみると、上の二爻が天、下の二爻が地、中の二爻が人となる。
「天に順い」というのは、五爻目は天の正しい位で、其れに上六が陰爻で順っていることである。
また「人に応ずる」は、人にあたる三爻目が陰爻で、地にあたる二爻目が陽爻であるから、人に応じているのである。
己が先ず喜びを起こすことで、民も喜び順う。
上下和順しているから、民は労苦を忘れて働き、戦争が起これば難を犯して戦ひ、死をも忘れて尽くすのである。
[象傳]
兌の卦を澤と言う。
澤は潤うという義で物に湿潤の気を含んでいる。
『国語』の「周語」に、澤は美(水)を鐘(あつ)めるとある。
これが麗澤である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[五爻]

1/25(火) ䷏ 雷地豫(らいちよ) 上爻四爻

1/25(火) 雷地豫(らいちよ) 上爻四爻


【運勢】
減り張りのある生活が大切である。
緩慢さが過ぎると、やるべき事にも力が入らず、取り返しのつかない結果を生んでしまう。
心を入れ替え、志を同じくする仲間と協力して、慎重に進めて行けば、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷏◎⚪︎
雷地豫(らいちよ) 上爻四爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 老陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
豫は侯を建て師を行るによろし。
彖に曰く、豫は剛應ぜられて、志行はる。順以て動くは豫。豫は順にして以て動く。故に天地も之の如し。而るを況んや侯を建て師を行るをや。天地順を以て動く。故に日月過(あやま)らずして、四時忒(たが)はず。聖人順を以て動く。則ち刑罰清くして民服す。豫の時義大なるかな。
象に曰く、雷地を出でて、奮ふは豫。先王以て樂を作り、德を崇(たうと)び、之を上帝に殷薦して、以て祖󠄃考を配す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。冥豫す。成るも渝ることあり。咎めなし。
象に曰く、冥豫上に在り。何ぞ長かるべきや。
[四爻]
九四。由豫す。大いに得ること有り。疑ふこと勿(なか)れ。朋盍簪す。
象に曰く、由豫す。大いに得ること有りとは、志大いに行はるゝなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
豫はあらかじめすることや、楽しいことを意味する。
四爻のみが陽爻で、その周りを陰爻が囲んで仲良くしている。
上卦は諸侯を表し、下卦は村を表すので、兵を率いる時である。
統率するには、下の者が楽しみ喜んで馳せ参じる状況でなければならない。
そして、順調に行動すれば、罰を与えることも少なくて、民はよく治まるのである。


《爻辭》
[上爻 優先]
上爻は過剰に楽しみがあるので、人々の締まりがなくなってしまった状態である。
早く頭を切り替えるべきである。
[四爻]
“王弼”
豫の時に居て、動きの始めに居る。
一つだけの陽爻である。
澤山の他の陰が従う。
ものが信でなければ疑いが生じる。
だから疑うことが無くなったら、朋が集まってくる。
“東涯”
由豫は己によって豫であるということである。
友人が集まってくると解釋される。
豫にあって、一つの陽であり澤山の陰の主である。
だから、君の傍に居ても、陰陽相求め、其の志は上に行く。
陽剛の才で、中陰の王に仕え、衆を下に得る。
危うく疑われやすい地位である。
だが其の志は名誉や権利にない。
これは周󠄃公が民の流言を恐れた所以である。
至誠であれば最後は良くなる。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
豫は象の中の最も大きなものをいう。
豫は舒(ゆる)やかという意味の舒、叙、序と同じで、物を急がず順序を踐(ふ)んで往く。
そこで必ず成功することから、悦び楽しむという義がある。
一方で、豫(あらかじ)めという義があるのは、十年も後の事を考えて今日から行動して往き、早計であることによる。
上卦の雷が下卦の地の上に出た象で、萬物が盛んになっていく。
天下が治まり安楽になるには、侯を建てるのが良い。
[彖傳]
四爻目は剛で震の主爻であり、天子である。
また長子でもあり、大臣にもなる。
この四爻目の剛に天下悉く応じる。
震は行くの義で、豫は順を以て動くの義であるから、天道天理に順って動いて行き、必ず悦びを得る所となる。
日月の運行、春夏秋冬の巡りに間違う所は無い。
三・四・五爻目の坎は法律の義がある。
法は備わっているが、用いずに民は服す所となる。
国家安楽であり、学問道徳を正しくする所があるから、義は大いなるかな、と言う。
[象傳]
豫は萬物皆悦ぶという義である。
この象を用いて作ったのは音楽である。
歌は最も古く、道徳功労を詩にして、詩を謡って天に誥(つ)げる。
そうしてその人の徳は愈々高く尊くなるのである。
殷薦というのは、有るだけの音楽を悉く奏することである。
黄帝、堯、舜、夏、殷、周を六代の楽という。
上帝を本にして祖考を合わせて祭り、音楽を殷(さか)んに奏す。


《爻辭》
[上爻 優先]
無し
[四爻]
天下は悉く九四の大臣を用い、その徳に由(よ)って天下は安楽となる。
権力が甚だしければ、周公旦の様に流言の禍を受ける様にもなるが、この場合は天下の朋友が自然と九四の徳に集まってきたのだから、疑うことは無い。
「朋」の字は他の陰爻のことで、これが残らず九四の元に集まって来る。
「盍」の字は合うという字で、「戠」の字は集まると云う義である。
一本の簪(かんざし)が多くの髪の毛を括るように、九四は天下の人民を集める。
[象傳]
無し

1/24(月) ䷄ 水天需(すいてんじゆ) 初爻

1/24(月) 水天需(すいてんじゆ) 初爻


【運勢】
自然の巡りは不変であり、晴れが続けば後には必ず雨が降る。
今は冷静に時期を待ち、危険や困難に遭わぬよう注意すると良い。
変化に対して右往左往せず、寛大な心を持ち、成果が出るまで中正を堅く守る事が大切である。


【結果】
䷄◎
水天需(すいてんじゆ) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
需孚有り。光に亨る。貞にして吉。大川を渉るに利し。彖に曰はく、需は須なり。險前󠄃に在るなり。剛健にして陥らず。其の義、困窮せず。需は孚有り。光に亨る。貞吉とは、天位に位して以て中正なるなり。大川を渉るに利しとは、往きて功有るなり。
象に曰はく、雲、天に上るは需。君子以て飲食宴樂す。


《爻辭》
初九。郊に需つ。恒を用ふるに利し。咎なし。
象に曰く、郊に需つとは、難を犯して行かざるなり。恆を用ふるに利し、咎なしとは、未だ常を失はざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
天位に居るとは五爻のことである。中正。そして物を待つ。之が需道である。乾德で進めば亨る。童蒙は旣に德を持つ。


《爻辭》
需の時に居り、最も難に遠し。能く其の進むを抑へ、以て險に遠くして時を待つ。幾に應ぜずと雖も、以て常を保つべきなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
需は待つべきであるという卦である。下卦の陽は進もうとする。然し前には険難がある。我慢して待てば険難に陥らない。五爻が主爻である。五爻は剛中の才がある。能く待ってから進むことが出來る。心が弱い人は待つことができないで冒険して失敗し困窮する。忍耐は大切である。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
下卦の乾は三爻共に陽爻で賢人の象である。上卦の五爻目は陽爻を以て陽位にあり、明君である。しかしながら上卦の坎は水であり、天下が水に溺れる象がある。これは三四五爻目に離の卦があり、主爻となる六四の大臣が、火が物を害する様に天下の人民を苦しめている象である。其所で此の禍の元凶である大臣を、天下の賢人が撃ち拂わければならない。需と云うのは、須(ま)つと云う事である。上卦では力を盡したいと云う賢人を需(ま)ち、下卦では明君が賢人を求める所を需って居る。天子に孚が有り、賢人が国家の為に盡す時には、危険を冒してでも往く所に宜しき所がある。
[彖傳]
需は「須つ」と訓み、「待つ」とは違って、暫く控えると云う義である。険難を前に大事を行おうと思っても、速やかには行われない。天下の賢人は遠く慮る所があり、無理に川を渉って危険に陥らない。九五の天子は天位に居り、何処迄も正しく中庸である。其所で遂に孚の亨る所がある。
[象傳]
雲が天に上り十分に集まった所で雨が降る。即ち需つの象である。下に居る賢人は、時を需って居る間、飲食を以て身を養い、宴楽を以て心を養う。そして時が到れば雷の如くに進んで往くのである。
《爻辭》

1/23(日) ䷣ 地火明󠄃夷(ちかめいい) 三爻初爻

1/23(日) 地火明󠄃夷(ちかめいい) 三爻初爻


【運勢】‬
些細な事に惑わされない、芯の強さを持つと良い。
進むべき道は理解している。
考え過ぎると、かえって的外れになってしまう。
焦らず静かに機会を待ち、辛い時も正しさを守り続ければ、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷣◎⚪︎
地火明󠄃夷(ちかめいい) 三爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[三爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
明󠄃夷は艱貞によろし。
彖(たん)に曰はく、明󠄃、地中に入るは明󠄃夷。内文明にして外柔順。以て大難を蒙る。文王これを以てす。「艱貞によろし」とは、その明󠄃を晦すなり。内艱にして能くその志を正す。箕子之を以てす。
象に曰はく、明󠄃地中に入るは明󠄃夷なり。君子以て衆に莅(のぞ)みて晦を用ゐて明󠄃なり。


《爻辭》
[三爻 優先]
九三。南狩に明夷る、其の大首を得たり。疾く貞にすべからず。
象に曰く、南狩の志は、乃ち大に得るなり。
[初爻]
初九。明夷る、于に飛びて其の翼を垂る。君子于き行く、三日食はず。往く攸有れば、主人言有り。
象に曰く、君子于き行くとは、義、食はざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
衆に莅むは顯明にして、百姓を蔽ひ僞る者なり。故に蒙を以て正を養ひ、明夷を以て衆に莅む。
明を内に藏めれば、乃ち明を得るなり。明を外に顯かにすれば、乃ち辟くる所なり。


《爻辭》
[三爻 優先]
下體の上に處り、文明の極に居り。上は晦き爲るに至り、地に入るの物なり。故に其の明を夷り、以て南狩するを獲、大首を得るなり。南狩とは、其の明を發するなり。旣に其の主を誅し、將に其の民を正さんとす。民の迷ひなり。其の日固より已に久しきなり。化するに宜しく漸なるを以てすべし。正を速やかにすべからず。故に疾く貞にすべからずと曰ふ。
闇主を去るなり。
[初爻]
明夷の主、上六に在り。上六、闇きに至ると爲る者なり。初、卦の始めに處り、最も難に遠ざかるなり。難に遠ざかること甚しきに過ぎ、明夷れて遠く遯る。跡を絶ち形を匿し、軌路に由らず。故に明夷る、于に飛ぶと曰ふ。懷懼して行き、行きて敢へて顯はれず。故に其の翼を垂ると曰ふなり。義を尚びて行く。故に君子于き行くと曰ふなり。急なるを行くに志し、飢へて食ふに遑あらず。故に三日食はずと曰ふなり。類に殊なること甚しきに過ぐ。斯を以て人に適けば、人必ず之を疑ふ。故に往く攸有れば、主人言有りと曰ふ。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
明󠄃夷は目をくらますことである。心の中では聡明で大きな徳を有しているが、外面は柔順である人、例えば文王のような人である。箕子は紂の親戚で國内にいたが、難󠄄に会い、内に志を正した。


《爻辭》
[三爻 優先]
南の方に狩りに行き、大物を得た。
あまり急いでは失敗する。
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
明らかなるものが傷ついて夷(や)ぶる。内卦の離は明らかなるもので、外卦の坤は欲である。前の卦の火地晋の明徳が欲のために夷ぶれ亡びようとする所の卦である。
[彖傳]
明らかなるものは地の底に這入って悉く失われる。明徳を身に懐いていながら、その明徳を外に現さずに巽順にして能く仕えている。その結果、柔順なる聖人は大難を蒙る。ちょうど文王と殷の紂王の無道なる時に該当する。
[象傳]
明らかなるものが地の中に這って真っ暗に為った所が明夷である。君子は万民の上に立って晦を用いる。天子は余り世間の事を細かい所まで見るようではいけない。


《爻辭》
[三爻 優先]
九三は離の卦の最後である。
離は南の象とともに、火で物を害する所があるから兵の象がある。
つまり南において狩りして大首を得るとは、ちょうど殷の紂王を伐ったことにあたる。
しかし是は堪えに堪え、抑えに抑えても、止めることが出来ないために已むを得ず撃ったのである。
[象傳]
南狩の志とは、多いに人民を得たことである。
[初爻]

1/22(土) ䷇ 水地比(すゐちひ) 三爻初爻

1/22(土) 水地比(すゐちひ) 三爻初爻


【運勢】
周りに対して親しみの心を持ち、助け合いの精神を大切にすると良い。
新たに何かを興すなら、やる気のある者を重用すると良い。
己の熱意を内に秘め、誠実に努力を惜しまなければ、思いがけない幸運に巡り会えるだろう。


【結果】
䷇◎⚪︎
水地比(すゐちひ) 三爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[三爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
比は吉なり。原筮(げんぜい)。元永貞(げんえいてい)にして咎(とが)めなし。寧(やす)からざる方(まさ)に來たる。後るる夫は凶。彖(たん)に曰はく、比は吉なり。比は輔(ほ)なり。下順從するなり。原筮、元永貞にして咎めなしとは、剛中(ごうちう)を以てなり。寧(やす)からざる方(まさ)に來たるとは、上下應ずるなり。象に曰はく、地の上に水あるは比。先王(せんわう)以て萬國を建て、諸侯を親しむ。


《爻辭》
[三爻 優先]
六三。之を比す、人に匪ず。象に曰く、之に比す人に匪ずとは、また傷しからずや。
[初爻]
初六。孚有りて之を比すれば、咎なし。孚有りて缶に盈つれば、終に来りて他の吉あり。
象に曰く、比の初六は、他の吉有るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
比の時にあり、筮によって咎なきを求めようとしている。元永貞であろうか。人が群れて互いに親しみ、元永貞で無ければ、凶邪の道である。もし主に遇わなければ、永貞といえども咎を免れることが出来ない。永貞で咎なき者は、ただ五爻のみであろう。上下に五爻以外に陽がない。すべて五爻に帰す。親しみ安心する。後れるものは凶である。


《爻辭》
[三爻 優先]
四、外自り比する。二、五を應と爲す。近くして相得ず、遠ければ應ずる則ちなし。與に比する所の者、皆己の親に非ず。故に之に比すること人に匪ずと曰ふ。
[初爻]
初爻は人に親しむはじめであるから、特に誠実にしなければならない。水器に並々と盛られたように誠があれば、予想外の吉を得られるだろう。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
比は相附き比することである。九五が位を得ている。そしてほかの五陰がつき従う。多くのものが一人を助けている。吉である。元永貞の後に郡陰に当たれば咎めがない。まだ安住の地に居ないものがいる。どんな剛強の者でも咎を免れない。柔弱󠄃であれば猶更である。


《爻辭》
[三爻 優先]
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
比は親密なる所である。比は密であり、密は物と物とが密着して間に隙間の無いことである。上卦は水、下卦は地である。水は地の中に浸み込んでくるから、水と土は離れることが無く、密着した状態である。五爻目は陽爻で天子にあたる。天子は人民と密着しており離れることが無い。ちょうど水と土の関係のようである。これは吉である。「筮」は神に吉凶を問い訊ねることで、「原」は再びという意で三度問うことである。つまり天子は神に吉凶を訪ねるのと同じように、諸々の人民へ何事も懇ろに問い訊ねて事を謀るのである。「元永貞」とは元徳を持つ人が、永く怠らず、貞しい所を守っていることである。これは堯舜(古代中国で徳をもって天下を治めた聖天子である堯(ぎょう)と舜(しゅん)。転じて、賢明なる天子の称のようなものである。「後夫凶」は、四方の国が名君に服しているのに、後に残って服せずに居る男が禍を受けることである。
[彖傳]
比は吉である。また互いに相輔けることである。「下順従」の「下」は下卦の坤=人民のことである。そして「順従」は坤の卦の象であり、人民が皆九五の天子のもとに集まってくることである。「不寧方来」は上から下まで残らず天子に応じて服して来ることをいう。「後夫凶」は名君に服さない者が、自ずから往くべき所がなくなり、その道に窮することをいう。
[象傳]
地の上に水があるのが比である。地に悉く浸み込んで来る水は、名君の徳性が深く人民の方へ浸み込んでいく例えである。君と民は親密な関係であり、離れようもない。こうした君民一体の関係に、皇統一系の象が含まれているのである。


《爻辭》
[三爻 優先]
[初爻]
「孚」は坎の卦の象である。
坎の卦は、上卦なら月、下卦なら水となる。
「有孚」は九五の天子に孚が有ることである。
初六は人民の中でも最下層の者に相当するが、天子は丁重に取り扱い親しく交わる。
であるから初六が君を犯すということはなく、咎は無い。
天下に溢れる天子の孚は、甕の中の水が一杯に為っているようなものである。
甕は坤の卦の象である。
[象傳]
比は初六=下賤の身であるから、天子の方から親しんでくれるのは、思いの外なる所である。
予想外の吉となる。