第2回 勉強会

1月11日、神道学科研究室で第2回勉究会が行われた。

当初予定していた「武士道」の要約発表は延期され、その代わりに顧問である高野先生による「近代神道の変遷」についての講義が行われた。

近代の神社神道と教派神道、仏教、それぞれの歩みを、大教宣布運動三条の教則神官教導職分離令などを焦点にして講義が行われた。

講義後は、戦前戦後の神道変遷を踏まえた上で「神社神道を担う者としてどの様にあるべきか」という内容で議論が行われた。

追記:1/18 第3回勉強会が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響により中止となった。

1/11(火) ䷨ 山澤損(さんたくそん) 五爻初爻

1/11(火) 山澤損(さんたくそん) 五爻初爻


【運勢】
目に見える資産を失う事より、心を狭める事の方が人生を貧しくする。
懐疑心を持ち続けても、益する事は無い。
大らかな心を持ち、相手の益を自らの益と捉える事が大切である。
迅速な行動が、信頼に繋がるだろう。


【結果】
䷨◎⚪︎
山澤損(さんたくそん) 五爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
損はまこと有り元吉。咎めなし。貞すべし。往くところ有るによろし。曷(たれ)をかこれ用ゐん。二簋(にき)用ゐて享すべし。彖に曰はく、損は下を損して上を益す。その道󠄃上行す。損してまこと有り。元吉咎めなし。貞すべし。往くところ有るによろし。曷(たれ)をかこれ用ゐん。二簋(にき)もちゐて享すべし。二簋(にき)時あるに應じ、剛を損して柔を益す。時有り。損益盈虚時とともに行はる。象に曰はく、山下に澤あるは損。君子以て忿(いかり)を懲らし、欲を窒(ふさ)ぐ。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。或いは之を益す。十朋の龜も違ふことあたはず。元吉。
象に曰く、六五元吉は上より祐(たす)くるなり。
[初爻]
初九は、事を已めて遄に往く。咎なし。酌みて之を損す。
象に曰く、事を已めて遄に往くとは、尚りて志を合すなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
外卦の艮は陽であり、内卦の兌は陰である。
陰は陽に順うものである。
陽は上にとどまり、陰は喜んで順う。
下を損じて、上を益す。
上に上昇するということである。
損の道は下を損して上を益し、剛を損して柔を益す。
不足を補うものではない。
君子の道を長ずるわけでもない。
損して吉を得るには、ただ誠の心がある場合だけである。
だから元吉なのである。
剛を損して柔を益す、それで剛を消さない。
下を損して上を益す。
それで上を満たして剛を損して邪をなさない。
自然にはそれぞれ分というものが決まっている。
短き者󠄃が不足しているわけでなく、長者󠄃が余っているわけでもない。
損益とは、常なきものであり、だから時とともに動くのである。


《爻辭》
[五爻 優先]
陰が尊󠄄位に居る。
尊󠄄を履んで損なので、あるいは益になる。
亀は疑いを決める物である。
陰は先に唱えてはいけない。
柔は自分で任じることは出来ない。
尊󠄄にいて、その場を守る。
故に人はその力を用い、その功に尽くす。
才能を持ったものが集まってくる。
十朋の龜を得て、天人の助けを尽くす。
[初爻]
損の道爲る。下を損して上を益し、剛を損して柔を益し、以て其の時に應ずる者なり。下極に居り、剛を損して柔に奉ふれば、則ち以て逸すべからず、損の始めに處れば、則ち以て盈つべからず。事已めば則ち往き、宴安べからざれば、乃ち咎なきを獲るなり。剛、以て柔に奉ふれば、咎を免るると雖も、猶ほ未だ親しまざるがごときなり。故に旣に咎なきを獲れども、復た自ら酌みて損す。乃ち志を合するを得るなり。遄は速なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
損は減少である。
は泰の三爻(陽)と上爻(陰)とを入れ替えたものである。
下が損して上が益する様である。
天子は下を益することで、自らも利益を得るものであるから、下を損させて、益を得ようとすることはよくないことである。
損は結果的に良い場合と悪い場合があるが、誠の心があれば問題はない。
あくまで正しくあろうとすべきである。
二つの簋(祖󠄃先を祭るときに用いる祭器)を用いて祭祀をすればよい。
損益は時に應じておこなわれるとよい。


《爻辭》
[五爻 優先]
昔は貝を貨幣としており、二つの貝を朋という単位にした。
十朋の龜とは澤山の宝石に相当するものである。
龜は大変貴重である。
比に損があるが、柔順中正である。
そして尊󠄄位に居る。
二爻の賢人と応じている。
五爻は賢人の言をきく。
其れは利益となる。
賢人と親しくなる益は、諸󠄃鬼神にただし、違うことはない。
民の順うところに天は従う。
神々も祝福するだろう。
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は「損」を意味する。
損とは有る物を失って不足になることである。
前の卦の雷水解は、難が解ける卦である。
解ければ人の心が緩む。
緩めば損を生じる。
この卦は、もと地天泰の下卦三爻目を損して、上卦三爻目に益すことによる。
地天泰は下卦が乾であるから、下の方が満ちている。
つまり人民が富んでいる。
初爻目にはじまり、二爻目になると丁度良い加減になるが、三爻目になると度を過ぎてしまう。
そこで余りを以て上に献ずる。
そうして下卦は兌になり、上卦は艮になるのである。
上の方ではこれを止(と)める。
上は人民を十分に富ましたいので、献じなくてよいとするが、下は余剰を差上げる所を以て喜びとする。
兌の卦は喜びを意味している。
こうして上下富んでいるのは、上の徳義による。
互いに孚(まこと)があるので、元吉にして咎が無い。
しかし、是も程良い所でなければいけない。
そこで貞が大切である。
乾は満ちているから、奢りが生じる。
余剰は御祭用に献上するのが良い。
多くの献上物があっても、天子は二簋の祭器しか用いず倹約する。
八簋供えるべきところに、僅か二簋だけでも祭りは出来る。
孚を以てすれば供物が少なくとも神は是を享けるのである。
[彖傳]
損の卦は下を損(へ)らすから名付けられた。
下を損らして、上を益すのである。
下は上の為にどこまでも盡したいと思って行う。
「損而孚アリ、元吉咎ナシ」とは、前の彖の辭をここへ述べてきたのである。
二簋というのは倹約を言うが、損らすのも時による。
豊年で献上物が多ければ、益すこともある。
下は上に献上するが、上はこれを止めて、倹約をする。
内卦の剛を損らして、上卦の陰へ益すというのも時による。
凶年の時には上から下へ益して来ることもある。
損すべき時には損し、益すべき時には益す。
満ちるべき時には満ち、虚なるべき時には虚になる。
これも其の時節に従って時と共に行うのである。
[象傳]
山下に澤があるのは損である。
君子はこれを用いて怒りを徴らしめる。
この「徴」の字は「懲らす」という字と同じである。
これは止める義であり、元は乾の卦である。
乾は三畫とも剛である。
強い所に剛が重なり、気が立って怒りになる。
これを損らして、怒りを止めて、喜びに変ずるのである。
三爻目が上へ往って、上六の陰が下に来ると、兌の卦となる。
つまり喜ぶところとなる。
また欲は坤の卦の象である。
坤は吝嗇(りんしょく:極度に物惜しみすること)であって、どこまでも欲が深い。
上は坤の卦であるから、欲が盛んである。
その欲を窒(ふさ)ぐには、坤の上爻が変じて、艮になれば欲が止むのである。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五と九二は互いに応じて居るが、二爻目は五爻目を益することが出来ない。
ここでは上九から益するので、「或いは之を益す」るのである。
上九が富んでいるのは、三爻目が六爻目を益したことによる。
人民(三爻目)からの献納物を上方(六爻目)で受け取り、これを天子(五爻目)に差上げた格好になる。
これは全く当然の事だから、「十朋の龜も違ふ能はず」なのである。
一朋は二百十六銭であるから、十朋は二千百六十銭となる。
それだけの価値がある上等な龜のことで、これは神霊である。
この龜の甲羅で占えば、必ず吉となるのである。
[象傳]
六五を上九が祐(たす)ける。
下からの献納物を上九が受けて、そこから天子の方へ廻っていく。
よって「上より祐くる也」と云う。
[初爻]

1/10(月) ䷐ 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し

1/10(月) 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し


【運勢】
ただ闇雲に努力するのでは無く、先を見据えて努力する事が大切である。
安易に行動すれば、成功の機会を逃してしまう。
礼節を弁え、自らの決断にしっかりと責任を持つ事が出来れば、間違いを犯す事は無いだろう。


【結果】

澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
隨(ずゐ)は元(おほ)いに亨(とほ)る。
貞(てい)によろし。咎めなし。彖(たん)に曰(い)はく、隨は剛に來たりて柔に下る。動いて說󠄁(よろこ)ぶは隨(ずゐ)。元(おほ)いに亨(とほ)り、貞。咎めなし。しかして天下時に隨(したが)ふ。時に隨(したが)ふの義、大なるかな。象に曰はく、澤中に雷あるは隨。君子以て晦(みそか)に嚮(むか)ひて入りて宴息(えんそく)す。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
隨はしたがうの意󠄃味である。
内卦は震で動き、外卦は兌であり、よろこぶの意󠄃である。
君主が行動するとき、人々はよく協力してくれ、思い通りにできる。
人々は時機にしたがい行動する。


〔根本通明の解釋〕
随は後ろに随って行く義である。
同じ「したがう」でも、従の字は左に付いても右に付いても従うだが、随の字は後ろに附いて行くという義である。
初九はニに随う。
二は三に随う。
三は四に随い、四は五に随い、五は六に随う。
先の方に随うという象があるが、何でも随へば良いわけではない。
仁義礼智に外れないようにすれば咎が無い。
[彖傳]
初九の陽爻が二・三爻目に随っているので、剛柔に随う。
下卦の震は雷なので動く。
動いた先の兌が說ぶ。
随うには正しき所をもってすれば、必ず大いに亨る。
二・三・四爻目の艮は時の象がある。
時は重要で、必ず随わなければならない。
[象傳]
兌は秋、雷は春である。
春に雷が出で、秋に沢中に潜む。
これは時に随うの義である。
君子は晦に嚮(むか)う。
晦は日の暮れる所である。

1/9(日) ䷎ 地山謙(ちさんけん) 上爻四爻

1/9(日) 地山謙(ちさんけん) 上爻四爻


【運勢】
謙虚な姿勢で望み、常に相手の気持ちに寄り添う事が大切である。
謙譲の美徳を蔑ろにし、集団の不和を起こす者には、厳しく対処すべきである。
信頼出来る仲間と切磋琢磨する事を当たり前だと思わず、感謝すると良い。


【結果】
䷎◎⚪︎
地山謙(ちさんけん) 上爻四爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
謙は亨(とほ)る。君子は終はり有り。彖に曰はく、謙はとほる。天道下濟して光明。地道卑(ひく)くして上行す。天道は盈(えい)を虧(か)きて、謙に益す。地道󠄃は盈を變じて謙に流る。鬼神は盈を害して謙に福す。人道は盈を惡(にく)みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑(ひく)くして踰ゆべからず。君子の終はりなり。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。鳴謙す。用ふるに師を行り、邑國を征するに利し。
象に曰く、鳴謙すとは、未だ得ざるなり。師を行り邑國を征するに用ふべしなり。
[四爻]
六四。利しからざることなし。謙を撝す。
象に曰く、利しからざることなし、謙を撝すとは、則に違はざるなり。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《卦辭》
謙は謙譲や謙遜の意󠄃味である。
平面な地卦の下に高いはずの山卦がある様が謙遜を表す。
謙譲の徳を持っている者は、どんなところでも歓迎されるし、尊敬される。
しかし、謙譲の美徳は昇進するにつれて失いがちである。
謙譲の美徳を持ち続けて、人の上に立つことは難しい。
君子とは最後まで謙譲の美徳を全うすることができる人のことである。
これを有終の美という。
謙譲の美徳を有する者が上にいると、下の者を大切にするので、下の者は自分の実力を活かすことができる。
また、謙譲の美徳を有する者が下にいると、周りの人がその徳を慕って昇進を求める。


《爻辭》
[上爻 優先]
最も外に處り、内政に與らず。故に名有るのみ。志、功、未だ得ざるなり。外に處りて謙順なるを履む。以て邑國を征するべきのみ。
夫れ吉凶悔吝は、動より生ずる者なり。動の起くる所は、利より興る者なり。故に飮食には必ず訟ひ有り。訟へば必ず衆の起こる有り。未だ衆人の惡む所に居ること有らずして、動く者の害ふ所と爲る。競はざるの地に處りて、爭ふ者の奪ふ所と爲る。是を以て六爻位を失ひ、應ずるなく、剛に乘ること有ると雖も、皆凶咎悔吝なきは、謙を以て主と爲ればなり。謙尊くして光いなり、卑にして踰ゆべからず。信なるや。
[四爻]
三の上に處りて謙を用ふ。則ち是れ上自り下に下るの義なり。五を承けて用て謙順たり。則ち是れ上に行く道なり。上を奉じ下に下るの道を盡くす。故に利しからざることなし。指撝すること皆謙なり。則に違はざるなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
謙は「へりくだる」と言われるが、本当は「小さい」という意味である。
我が身が小さくなって人の下に降って居る。
古くは言偏の無い「兼」の字であった。
小さいために一つで足らず合わせるという義である。
他に口偏を附けた「嗛」の字もあり、子夏伝はそう書いている。
口の中に入るだけの小さな物を含んでおり、嗛嗛之食という言葉は僅かの食物のことである。
小さいというのが本来の義である。
卦の象では地の下に山があり、人民の下に我が身を引き下げて小さくなって居る。
二・三・四爻目に坎がある。
水には功労があるが、低い所に居るので、謙遜の義がある。
これなら何処へ行っても尊ばれ亨ることになる。
しかし真実の謙虚さでなく、人望を得るために拵えて行うのは長く亨らない。
[彖傳]
天道下済とあるのは、上に在る天の陽気が降って来て地の徳を成すことである。
元は乾の一番上にあった陽爻が下に降って九三となったのである。
光明は三爻目に降りて来た陽爻である。
また元は三爻目にあった陰爻が一番上に上がったから上行という。
元の乾の卦が陽爻ばかりで剛に過ぎるので盈(えい)に虧(か)く。
上に居るべき人が小さく為って、人の下に降るのが謙である。
我が身を下しても人が侮って其の上を踰(こ)えて往くことは出来ない。
卑い所に居れば居るほど人が尊んでくる。
そうして君子は終を遂げる所となる。
[象傳]
上卦が地で下卦が山である。
地の広い方から見れば山が小さい。
天地の道理は何でも盈ちる所があり、それを虧かなければいけない。
そこで多い方から取って、少ない方へ益す。
政でも米を多い所から寡(すく)ない所に益すようにする。
政は物の多少を量り、平らかにしなければいけない。


《爻辭》
[上爻 優先]
[四爻]

1/8(土) ䷀ 乾爲天(けんゐてん) 二爻

1/8(土) 乾爲天(けんゐてん) 二爻


【運勢】
大事を行うのに良い時である。
自らの力を過信してはいけない。
賢人に倣い、至らない所を地道に努力する事が大切である。
失敗を恐れず、迷わず素直に行動し、志を同じくする仲間と協力して、好機を最大限に活かすと良い。


【結果】
䷀◎
乾爲天(けんゐてん) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
乾は元いに亨る、貞に利し。
彖に曰く、大なるかな乾の元は、萬物資りて始まる、乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。
大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗じて以て天を御す。
乾道變化して、各おの性命を正し、大和を保合して、乃ち貞に利ろし。庶物に首出して、咸(あまね)く寧(やす)し。
象に曰く、天行は健なり。君子以て自ら彊めて息まず。


《爻辭》
九二。見龍田に在り、大人を見るに利し。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
《爻辭》
潛を出でて隱を離る、故に見龍と曰ふ。地上に處り、故に田に在りと曰ふ。德施周普たり。中に居りて偏らず。君位に非ずと雖も、君の德なり。初なれば則ち彰らかならず、三なれば則ち乾乾たり、四なれば則ち或ひは躍り、上なれば則ち過亢たり。大人を見るに利しきは、唯だ二五のみ。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
《爻辭》

1/7(金) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 四爻三爻

1/7(金) 雷水解(らいすいかい) 四爻三爻


【運勢】
実績の無い者が、新たに何かを始める時、分不相応だと言われるのは仕方の無い事である。
困難の前に、立ち止まってはいけない。
否定的な考えを断ち切り、意欲を持って臨めば、志を同じくする仲間を得られるだろう。


【結果】
䷧◎⚪︎
雷水解(らいすいかい) 四爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 老陽]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
解は西南によろし。往くところなし。それ來たり復すれば吉。往くところあれば、夙(つと)にして吉。彖(たん)に曰(い)はく、解は險(けん)以て動く。動いて險より免(まぬが)るるは解。「解は西南によろし」とは、往(い)きて衆を得るなり。「それ來たり復して吉」とは、乃(すなは)ち中を得るなり。「往くところ有れば夙にして吉」とは、往きて功あるなり。天地解(ひら)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作りて百果艸木(ひゃくかそうもく)皆甲拆(こうたく)す。解の時大なるかな。象に曰はく、雷雨作るは解。君子以て過ちを赦(ゆる)し、罪を宥(ゆる)す。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。而(なんぢ)の拇を解く。朋至りて斯に孚あり。
象に曰く、而の拇を解くとは、未だ位に當らざるなり。
[三爻]
六三。負ひて且つ乘る。寇の至るを致す。貞なれども吝。
象に曰く、負ひて且つ乘るとは、亦た醜かるべきなり。我自り戎を致す。又、誰をか咎めんなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は衆である。難を解決し、危険を整える。利を衆に施す。また東北に困まらない。故に東北に利がないとは言わないのである。まだ、困難を解決するによくない。安に処する迷う。解とは困難を解決し、厄を除くことである。中を失わない。難があっても行けば、迅速であれば吉。難が無ければよく中に復す。難があれば厄を除く。


《爻辭》
[四爻 優先]
位を失い、正しくない。
三爻と比の関係であり、三爻は親指である。
三爻を重んずると初爻の應を失う。
だから親指を解けば、友である初爻が來るのである。
[三爻]
處るに其の位に非ず、履むに其の正に非ず。以て四に附き、夫の柔邪なるを用て、以て自ら媚ぶ者なり。二に乘りて四を負ひ、以て其の身を容る。寇の來るなり、自己の致す所なり。幸ひにして免ると雖も、正の賤しむ所なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
解は解散の意󠄃である。危険に居てよく動けば、険難を回避できる。卦は変じて蹇となる。二爻が蹇の外卦に行き、五爻が西南坤の方に行く。坤には地の象がある。險の中でよく動ける才でよく進み、よく止まる。どこでも通用する。君子は陰陽を和し、過失であれば赦して問わず、罪悪があれば、寛大にこれを宥す。仁政の至りである。解の道である。


《爻辭》
[四爻 優先]
拇は足の親指である。
初爻を指す。陽剛で外卦にいる。
下は初爻と応じ、兩方とも位を得ない。
これは交わりを道によってしないものである。
陽で動に居り、よく私情を抑え公義に從う。
そうすれば道を同じくする君子が集まってきて共に信じあえる。
自分の過ちを悟り、改めないことはよくない。
四爻ははじめは小人でも、それが良くないことが分かり、そこから解放される。
難しいことであるが、そうすることで善人が自然に集まってくるのである。
[三爻]
負は小人の任。乗は君子の事。此爻は解在りて、陰柔は不中。下の上に居り、上九を興し應ず。此の小人、時を得て位を致す。其の任、勝らぬ者なり。衆心服せず。必ず寇する敵を招く。勉め正を爲すと雖も。亦た吝しむべきなり。故に、負ひて且つ乘ると云ふ。寇の至るを致す。貞すれば吝。蓋を解く者は君子なり。解き見る者は小人なり。解き見る者にして、解く者の位は處る。宜しく其の寇する兵を來侵すべし。君の側に清く欲すなり。小忠なれば細謹す、何ぞ貴き足かな。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦の水山蹇(
、天下の険難なる所の卦)が解けた所の卦である。長い大乱で農業が廃れ、人民は衰えてしまっている。西南は坤の卦で、地の象である。地に五穀を植立てて、以て人民を養う。天下が平らいだなら、進んで事を為す所の仕事は無い。漸次人民を養えば宜しい。若し大乱が平らいでいても、進んで往く所の事柄があるならば、速やかに往ってこれを治めるのが宜しい。
[彖傳]
険難に屈せずに踏み越えて外へ出ることで、険難を免れた。西南は坤の卦で、衆口衆口という象がある。大勢の人民を我が方へ撫で育てるようにしなければいけない。既に大難は解けているから、多く仕事をし過ぎず、程良い所に止(とど)まるのが宜しい。往くべき所があるなら、往けば必ず功が出て来る。
[象傳]
天地に於いては万物を生じ育(やしな)う時である。君子に於いては仁を行う時であるから、人を殺めるのは良くない。其所で過ちを赦し、罪人を宥(なだ)める。善い事を為す心で行った悪事を過ちと云い、それならば無罪になる。しかし意あって悪事を為したのは、赦すわけにはいかないので流刑などに処す。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四は大臣で、六三に屈っ接いている。
而(なんじ)の母は親指の事で、九四を指す。上卦は震の卦で足の象である。
その下に屈っ接いている陰爻は足の指にあたり、小人の首である。
其所で親指を切り断って棄てよと云う事である。
即ち六三を取り除くのが宜しい。
初六は六三の朋である。
この同類の者が来たならば、道徳を以て悪を悛(あらた)める様にするのが宜しい。
[象傳]
九四は六三の小人に取り付かれて、是を引き挙げたが宜しくない。
大臣の位に見合った者ではない。
[三爻]

1/6(木) ䷲ 震爲雷(しんゐらい) 三爻

1/6(木) 震爲雷(しんゐらい) 三爻


【運勢】
成果の出ない時は、焦らず心を落ち着かせると良い。
周りを奮い立たせる事は大切だが、独りよがりに進めれば、かえって不安を与えてしまい、思う様には進まない。
誠実な対応を心掛けて、地道に信頼を得る事が大切である。


【結果】
䷲◎
震爲雷(しんゐらい) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり。笑言啞啞(ああ)たり。震百里を驚かす。匕鬯(ひちょう)を喪はず。
彖に曰はく、「震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり」とは、恐れて福を致すなり。「笑言(しょうげん)啞啞(ああ)たり。」とは、後に則あるなり。「震百里を驚かす」とは、遠きを驚かして邇(ちかき)を懼(おそ)れしむるなり。出でて以て宗廟社稷を守りて、以て祭主と爲すべきなり。
象に曰はく、しきりに雷するは震。君子以て恐懼(きょうく)脩省(しゅうせい)す。


《爻辭》
六三。震蘇蘇たり。震して行へば眚なし。
象に曰く、震蘇蘇とは、位當らざればなり。
〔王弼と東涯の解釋〕
《卦辭》
震は雷鳴を表す。
上下両方とも震であり、雷鳴が轟くときは傲慢になった人々も恐れ、敬意を取り戻す。
人々が恐れ敬いの心を取り戻せば、規則が守られ、幸福になる。
雷鳴は遠方まで轟きわたり、人々を驚かせるが、そんな中でも先祖を祭り、神々を祭る人は重い責任にたえられる人である。


《爻辭》
其の位に當らず、位處る所に非ず。故に懼れて蘇蘇なり。剛に乘るの逆なし。故に以て懼れて行へば眚なかるべきなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦は火風鼎である。
鼎(かなえ)は天子の宝器のことで、日本では三種の神器にあたる。
皇統一系は天道であって万世不易のものであるから、革命が起こっても必ず皇統一系に引き戻さなければならない。
そのため火風鼎が示すように、皇后に子が無ければ、妾の子であっても皇位を嗣がせなければならない。
こういう理由で鼎の卦の次に、震の卦を置いたのである。
『序卦伝』にも「器を主(つかさ)どる者は長子にしくはなし。故にこれを受くるに震(しん)をもってす」とある。
この震は皇太子の象である。
皇太子はどのような困難に遭っても、何所までも忍耐して必ず位を嗣がなければならない。
震は剛(つよ)いから亨る。
また震は雷であり、この卦は雷を以て説く。
卦全体の主になるのは初爻目である。
虩虩(げきげき)とは恐懼する姿である。
激しい雷には聖人といえども恐れ慎む。
『論語』にも「迅雷風烈は必ず変ず」と出ている。
大いなる災難が来るが、恐れ慎めば後には必ず福を得ることになる。
天が天下を委任するに相応しい人だと思えば、禍(わざわい)を降して其の人の心身を苦しめる。
艱難辛苦を経ることで忍耐力が養われて、後に大事を為せるのである。
「笑言唖唖」とは、はじめ難に遭って苦しむが、後には安楽となり喜び笑う所となることである。
「匕鬯(ひちょう)」は、宗廟の祭祀のときに天子自ら使う道具である。
匕(ひ)は鼎の中の肉を掬(すく)い取る匙(さじ)である。
鬯(ちょう)は鬱金草(うこんそう)という香草を入れて醸した酒のことである。
この酒を地に撒くと香気が立ち上り、これによって神を降ろすのである。
このように匕と鬯は、祭祀に於いて最も重要であることから、この卦で取り上げられるのである。
身を砕くほどの雷が鳴っても、匕鬯を行える忍耐力が無ければいけない。
[彖傳]
「震亨、震来虩虩」と云うのは、災難に見舞われるも、恐れ慎んで徳を修めることで、遂に天の福を招く所となる。
「笑言唖唖、後有則也」には、「後」という字が加えてあり、難と福の順序を失わないようになっている。
雷により胆力を養い徳を修めた所で、皇太子が御殿から出て天子の位を継ぎ、宗廟社稷を守って祭る所の主人となることが出来る。
乾為天四爻目の「或いは躍る」がこれにあたる。
つまり天子が健在でも時によって皇太子が出て、宗廟社稷の祭祀を代わりに行えるだけの準備が出来ていることを意味する。
[象傳]
この卦は震が二つある。
二度も三度も打ち重なって雷鳴が響く。
君子は難に遭うことで、恐れ慎んで徳を修めて、我が身を省みる所が出てくるのである。
《爻辭》

1/5(水) ䷚ 山雷頤(さんらいい) 四爻

1/5(水) 山雷頤(さんらいい) 四爻


【運勢】
不用意な発言は危険である。
皆の期待を一身に背負う様な状況では、特に注意しなければならない。
言葉の力は長期に渡り影響を及ぼす。
機会をしっかりと見計らい、正しく活用出来れば、物事の成就に大きく近づくだろう。


【結果】
䷚◎
山雷頤(さんらいい) 四爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻]


【原文】
《卦辭》
頤は貞吉。頤を觀て自ら口實を求む。
彖に曰はく、頤は貞吉とは養正しきときは則ち吉なるなり。頤を觀るとは其の養ふ所󠄃を觀るなり。天地は万物を養ひ聖人は賢を養ひて、以て萬民に及ぼす。頤の時大なるかな。
象に曰はく、山下に雷有るは頤。君子以て言語を慎み、飲食を節󠄄す。


《爻辭》
六四。顛に頤はる。吉。虎視眈眈。其の欲逐逐。咎なし。
象に曰く、顛に頤はるるの吉は、上の施し光なるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
言語飲食慎み節󠄄すべし。そのほかは言うまでもない。


《爻辭》
體、上體に屬し、居に其の位を得。而して初に應じ、上なるを以て下を養ふ。頤ふの義を得。故に顛に頤はる、吉と曰ふなり。下に交はりて以て涜すべからず。故に虎視眈眈。威にして猛からず、惡まずして嚴かなり。徳を養ひ賢に施す、何ぞ利有るべき。故に其の欲逐逐。篤實なるを尚ぶなり。此の二者を脩む。然る後に乃ち其の吉を全うするを得て咎なし。其の自ら養ふを觀れば、則ち正を履み。其の養ふ所を察れば、則ち陽を養ふ。頤爻の貴きは、斯く盛爲り。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
頤はおとがいである。口実は食󠄃のことである。卦全体でみると初爻と上爻に陽がある。中は四つの陰である。人のあごを象る。あごは飲食をするところ。そして身を養う。だから養いの道󠄃である。正道であれば吉。食󠄃は人を養うものである。正道でなければ最終的には禍󠄃に苦しむ。質素なものを食すのが良い。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
頤は養うと云い、「オトガヒ」と訓む。丁度人の頤(あご)の象があり、
は口を開いた貌である。人の飲食する時に、上顎が動かず下顎が動くように、上卦の艮は動かず下卦の震が上の方に上がる。飲食を以て身体を養う。不正なことを以て飲食を得てはいけないが、正しき所を以てするので吉である。自分の求める所の物の、正と不正を能く観なければいけない。口の中に入れる物を皆口實と云う。艮は身体で、震は道徳である。
[彖傳]
正しき所を以て、身体ばかりではなく、道徳を養っていけば、吉である。不正の禄を受けてはいけない。天地は万物を養い、天子は賢人を養う。そして賢人の力を用いて万民を養う。天子は自身も学問を修め賢人の徳を備えて、是を以てあまねく万民を養う方法を心掛けなければいけない。
[象傳]
山下に雷気があり、是で以て万物を養う。君子は言語を慎んで徳を育う。人と話をするにも、道に背くこと、仁に違うことを言ってはいけない。言おうとする時に、控えて稽えるのが慎むことである。口に任せて言えば、後で信用を失うことになる。又飲食を節にするのは、身を養うことである。飲食は過ぎれば害を為す。
《爻辭》

1/4(火) ䷡ 雷天大壯(らいてんたいそう) 上爻三爻

1/4(火) 雷天大壯(らいてんたいそう) 上爻三爻


【運勢】
礼節を重んじ、周りと信頼関係を築く事で、大事を成せるだろう。
急がば回れ。逸る気持ちを抑えて、堅実に正しさを守る事が大切である。
自らの力を弁えず、勢いに身を任せれば、進退窮まる結果となるだろう。


【結果】
䷡◎⚪︎
雷天大壯(らいてんたいそう) 上爻三爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
大壯は貞に利し。彖に曰はく、大壯は大なる者󠄃、壯なるなり。剛以て動く。故に壯なり。大壯は貞に利しとは、大なる正しきなり。正大にして天地の情󠄃見るべし。象に曰はく、雷天上に在るは大壯。君子以て禮にあらざれば履まず。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。羝羊藩に觸れ、退くこと能はず。遂ぐること能はず。利しき攸なし。艱むときは則ち吉。
象に曰く、退くこと能はず、遂ぐること能はずとは、詳にせずるなり。艱むときは則ち吉とは、咎長かふざるなり。
[三爻]
九三。小人は壮(そう)を用ひ、君子は罔(もう)を用ふ。貞なれども厲し。羝羊(ていよう)藩に觸れて。其角を羸(くるしまし)む。象に曰く、小人は壮を用ひ、君子は罔なるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
大は陽爻をいう。小の道は亡ぼうとしている。大は正を得る。故に利貞である。
天地の情󠄃は正大である。廣く正しくあれば天地の情󠄃を見ることが出来よう。
壮大で礼に違えば凶。凶であると壮を失う。だから君子は大壮でありながら礼を大切にするのである。


《爻辭》
[上爻 優先]
三に應ずる有り。故に退くこと能はず。剛長ずることを懼る。故に遂ぐること能はず。疑ひを持ちて猶豫し、志定まる所なし。斯を以て事を決すれば、未だ利する所を見ず。剛長ずるに處ると雖も、剛正を害はず。苟くも其の分を定め、固く志三に在り。斯を以て自ら處れば、則ち憂患消え亡ぶ。故に艱むときは則ち吉と曰ふ。
[三爻]
健の極みに處す。陽を以て陽に處す。其の壮を用ふる者なり。故に小人之を用ふるに以て壮と爲す。君子之を用ひ、以て己を羅(とら)うると爲す者なり。貞にして厲(あやう)し、以て壮。復た羝羊と雖も、之を以て藩に觸れる。能く羸(つか)れることなけんや。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
陰が小で陽が大である。四つの陽が壮である。二陰は徐々に薄れていく。君子の道が長く続く時である。其れなのに正しくしていれば吉というのは何故か。人は辛い状況では戒めの気持ちを持つが、楽しい時はとかく邪の心が生じやすいのである。陽の道が盛んな時だからこそ、其の機を逃すべきではなく、ちょっとした間違いに警戒しなければならない。四つの陽がみんな正しいわけではない。私なく、天地の性である正大の道を実践すべきである。盛大な時であるが、つまずくこともある。君子は平素から礼法をまもる。昔の人は天命を畏んだ。雷ほど天威に似たものはない。常に礼を大切にすべき時である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[三爻]
罔は蔑なり。羝は羖羊(黒羊)なり。剛壮、觸を喜ぶ。此の卦は兌に似たり。羊の象有り。藩は籬落(竹、柴などを編んで作った垣)なり。四を指して言ふ。羸(るい)は困弊の意なり。此の爻、大壮に在りて、陽剛乾體なり。下の卦の最上位に居て、小人在れば、則ち其の拳勇を奮ふ。郷曲を武斷す。(むらざとの軍隊)君子在れば則ち、其の權力に負ひて、衆人を凌蔑(りょうべつ)す。爲す所、正しと雖も。厲きを免れず、四は陽を以て前に當りて、進むこと能はず。強之を犯さんと欲すれば、則ち必ず困辱を取る。猶ほ羝羊の藩に觸れて、其の角を羸困(るいこん)するが如し。故に、詞に系て此の如し。蓋し人、徒らに勇を尚ぶを知りて、時宜を量らざれば、則ち爲す所正しと雖も、卒に厲きを免れず。況(いわん)や、其の爲す所、未だ必ずしも正しきを出でざれば、豈、其の終はり良きを得んや。夫子(孔子)曰く、君子勇有りて、義無ければ、則ち亂と爲る。小人勇有りて、義無ければ、則ち盗と爲る。正に此れを言うのみ。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「大」の字は陽で、初爻目から四爻目まで重なっており、盛んな状態である。また「壮」の字は、鄭玄の解に「気力浸強之名」と有り、気力が浸(つ)いて強まって来たことだと云う。人の年齢で言えば、三十歳になり気力も積み重なって来た所である。剛いと云っても悪い方に強ければ害を為すので、正しい方に固まって居なければならない。
[彖傳]
大なるものが極めて剛くなった。卦徳では上卦の震は「動」、下卦の乾は「剛」である。従って、気力が強く動いて進む。また天の気が動き、萬物を生じる。人間の身体も天地の気を稟(う)けて居り、動いて事を行う時は正しくなければいけない。
[象傳]
雷の気は萬物を生じる所の気である。君子は礼に非ざれば履まずと云う。上卦の震は身体で言えば「足」であり、「礼」は天道天理を以て、履(ふ)んで往くことである。其処で礼に非ざる事であってはいけない。
《爻辭》
[上爻 優先][三爻]

1/3(月) ䷱ 火風鼎(かふうてい) 三爻

1/3(月) 火風鼎(かふうてい) 三爻


【運勢】
火を長く灯すには、常に新しい風を送り込む必要がある。
偏見や拘りを持たず、相手の意見を尊重し、協力する事が大切である。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
一つの事に入れ込み過ぎず、冷静に全体を俯瞰して見ると良い。


【結果】
䷱◎
火風鼎(かふうてい) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
鼎は元(おほ)いに吉、亨(とほ)る。
彖に曰はく、鼎は象なり。木を以て火に巽れて、亨飪(かうじん)するなり。聖人亨(かう)して以て上帝を亨す。而して大いに亨して以て聖賢を養ふ。巽(そん)にして耳目(じもく)聡明(そうめい)。柔進みて上行す。中を得て剛に應ず。是を以て元いに亨る。
象に曰はく、木の上に火有るは鼎(てい)。君子以て位を正し、命を凝(あつ)む。


《爻辭》
九三。鼎の耳革る。其の行塞る。雉の膏食はれず。方に雨ふらんとして悔を虧く。終に吉。
象に曰く、鼎の耳革るとは、其の義を失ふなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
古い制度が新しく刷新され、新しい制度が定着するので大吉である。
さらに、それが長くなる持続するので亨るという。
鼎(かなえ)は食べ物を煮炊きする器である。
程子はこの卦自体が鼎の形を象っているとする。
初爻が鼎の足で、二爻から四爻までが鼎の腹、五爻が口で、上爻が蓋であるとする。
下が木德であり、上が火德であるから、物の煮炊きに良いので、鼎とされるのである。
革の卦と対応しており、五爻と二爻が応じており、和順で聡明である。
だから、大吉なのである。
何かをする時に人の助けがあり、その人に任せられる。
君臣の心が通じ合っている。
おそらく、亨と烹は音が通じるので古代にはどちらも使われていたのであろう。
《爻辭》
鼎の義爲る。中を虚にして以て物を待つ者なり。而して三は下體の上に處りて、陽を以て陽に居り、實を守りて應ずるなく、納れ受くる所なし。耳とは宜しく空にして以て鉉を待つべくして、反りて其の實塞るを全くす。故に鼎の耳革る、其の行くこと塞ると曰ふ。雉の膏有ると雖も、終に食ふこと能はざるなり。雨とは、陰陽交はり和して亢に偏らざる者なり。陽爻を體すと雖も、陰卦を統屬す。若し全く剛の亢なるを任ぜざれば、務めは和し通ずるに在り。方に雨ふらんとすれば則ち悔虧く。終ふれば則ち吉なり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
鼎は三足の鍋で、天下の宝器であり、王の象徴である。
日本でいうところの三種の神器である。
鼎は五味を調和することが出來る。
だから肉であれ、魚であれ、釜で煮た後、最後は鼎に移して味を調えたのである。
天地宗廟の祭祀に用いる神饌は鼎で調理され、賓客への御馳走も鼎が用いられた。
伏羲の時代には、一つの鼎が宝器であった。
もとより天地万物は一つのものから生じたわけで、天地人の三才は鼎の三足、それが鼎により調和されるのである。
それが黄帝の時代に三つの鼎になった。
三才を表すためであるという。
堯舜までは三つであった。
その後、夏王朝初代の禹王の時代に九つになった。
なぜなら、九州(漢󠄃土全体は九つの國に分かれていた)を象徴するためである。
周代まで九つであった。
政治も料理と同じで、五味を調和して誰にとってもおいしいものでなければならない。
だから鼎が王の象徴なのである。
王を助けるのは宰相であるが、この宰の字は肉を盛って料理をこしらえるという意味である。
そして十翼に鼎を主るのは長子であるとする。
つまり、皇太子が皇統を継ぐべきであるというのである。
それでこそ元吉なのである。
[彖傳]
初爻が鼎の足、二から四までに
があるが、これは物が入る部分である。
五爻が耳、上爻が持ち運びのためのひもにあたる。五爻の耳に通すのである。
元来、鼎は門外で煮炊きするもので、宗廟の門外東である。
[象傳]
木の上に火がある。
火は物を煮炊きするのに必要であり、強すぎても弱すぎてもいけない。
火にも陰陽があり、陽の火は強すぎて、すぐにものが焦げてしまう。
逆に弱すぎると火が通らないで生のままである。
陰陽が程よい状態ではじめて煮炊きが可能である。
牛羊豚で鼎を分ける。
是を三鼎という。
三鼎は日月星を表す。
心は巽順で耳目がしっかりしている。
五爻の王は二爻の賢人を用いて大いに栄えるのである。
《爻辭》