2/18(金) ䷜ 坎爲水(かんゐすい) 変爻無し

2/18(金) 坎爲水(かんゐすい) 変爻無し


【運勢】
真価が問われる時。
どんなに辛い状況でも、己の芯を曲げず、前向きに捉える事が大切である。
思い悩み立ち止まれば、問題は先送りになり、進退極まる結果となるだろう。
やるべき事を整理して、迅速に取組むと良い。


【結果】

坎爲水(かんゐすい) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


〔根本通明の解釋〕
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。
しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。
たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。
この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。
この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖傳]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。
水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。
水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。
このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。
信を失わず進んでゆくのが功である。
二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。
山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。
また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象傳]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。
水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。
そこで徳の行いを常にする。
教育を重ね、徳を育てなければいけない。

2/17(木) ䷭ 地風升(ちふうしょう) 上爻四爻

2/17(木) 地風升(ちふうしょう) 上爻四爻


【運勢】
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
向上心も度が過ぎれば、時に周りとの不和を生んでしまう。
自分には厳しく、周りには優しく接する事を心掛けると良い。
順調な時こそ冷静に、しっかりと土台を固める事が大切である。


【結果】
䷭◎⚪︎
地風升(ちふうしょう) 上爻四爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
升は元(おほ)いに亨(とほ)る。大人を見るに用う。恤(うれ)ふることなかれ。南征して吉。彖に曰はく、柔は時を以て升(のぼ)る。巽にして順。剛中にして應ず。是を以て大いに亨(とほ)る。「大人を見るに用う。恤ふることなかれ」とは、慶あるなり。南征して吉とは、志行はるるなり。象に曰はく、地中に木を生ずる升。君子以て德に順(したが)ひ、小を積みて以て高大なり。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。冥(くら)くして升る。息(や)まざるの貞に利ろし。
象に曰く、冥くして升りて上に在り、消して富まざるなり。
[四爻]
六四。王用ゐて岐山に亨(とほ)す。吉にして咎(とが)め无(な)し。象に曰く、「王用ゐて岐山に亨す」とは、順にして事(つか)ふるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
巽順で以て上るべし。陽爻が尊󠄄位に当たらない。厳しい剛の正しさがないので憂えを免れない。大人にあうのに用いる。憂うるなかれ。柔で南に行けば、大きな明󠄃につく。柔は時により上ることを得られる。純柔であれば自分で上ることが出来ない。剛が思いあがれば人は従わない。旣に時であり上った。また巽順である。剛中で応じている。だから大いにとおるのである。巽順で上った。大きな明に至る。志が通ったことを言う。


《爻辭》
[上爻 優先]
升の極に處り、進みて息まざる者なり。進みて息まず。故に冥きと雖も猶ほ升るなり。故に息まざるの正に施せば則ち可にして、物の主と爲るに用ふれば則ち喪ふ。息まざることを終ふるは、消するの道なり。
[四爻]
四爻は大臣の爻で、ここでは文王が岐山に登って神を祭った象である。大変有能であるが、王に服してよく仕える大臣である。どんな徳の無い王でも、良い臣下の助けを得て天下は治まっている。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
升は変じて萃と通う。萃の内卦の三爻の陰が昇って外卦に行った。だから升という。内が巽で外が順。柔巽で人の心に從う。二爻は剛中で五爻と応じている。これは賢人が君を得た象である。その得失を憂うるなかれ。西南は坤
であり、上卦にある。だから前進して南に遠征する。進み上って吉である。君臣が遇うことは古來難󠄄しい。巽順の德を身につけ、柔中の君(五爻)に遇󠄄う。剛中の逸材(二爻)を重用して、賢人を好む時、進んで為すことがある。地中に木が生ずる象であるから、地道は木に敏感である。時に昇進する。もしその養いを得れば、長く続かないものはない。君子はこれを体してその徳に從う。次々に重ねて高明󠄃廣大となる。漸次進む。


《爻辭》
[上爻 優先]
[四爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
升は升(のぼ)って進むという義がある。昇と同じである。三・四・五爻の震の卦は陽木、下卦の巽は陰木である。地に陽木と陰木の芽が出ている。それが天を貫くまでに段々進んで往くのが升である。元亨の元は震で、亨は兌である。また震は仁で、兌は義であるから、この卦には仁義の象がある。震は長子で、仁義の徳が段々と上って行けば、天子の位に即(つ)く所があり、心配には及ばない。南に征くとは、南面の位に即くことをいう。
[彖傳]
太子は升るべき時を以て天子の位に升る。皇太子が二爻目になると陽爻であるから剛である。内卦の皇太子が剛で中庸の徳を備えているから、外卦の坤=天下皆その徳に応じて服する。心配には及ばない。必ず天子の位を相続して大いなる慶びが出てくる。
[象傳]
地の中に巽と震の卦がある。木が次第に上の方に進んで伸びて往く。君子はこの卦の象を用いて徳を順にする。巽は『説卦伝』に「高し」とある。


《爻辭》
[上爻 優先]
[四爻]
岐山は西の山である。兌は西であり、岐山において祭る。即ち皇太子が天子に代わって天を祭る。そこで吉であり、咎が無い。
[象傳]
従順にして能く天に事(つか)う所がある。皇太子が天子に代わって祭るのは、やはり順なる所である。


〔朱熹の解釋〕
《卦辭》
升は、望みは大いに通る。大人に会う。心配する必要はない。前進すれば吉である。
《爻辭》
[上爻 優先]
[四爻]

2/16(水) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 上爻

2/16(水) 山天大畜(さんてんたいちく) 上爻


【運勢】
蓄えていた力が溢れ、物事は大きく前進する。
地道な努力が報われる時である。
日々を無為に過ごしていた者は、蓄えなどないので、好機を逃してしまう。
堅実な目標を掲げて、己の信じる道を進む事が大切である。


【結果】
䷙◎
山天大畜(さんてんたいちく) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
大畜は貞に利(よろ)し。家食󠄃せざる吉。大川を渉るによろし。彖に曰く。大畜は剛健篤實輝光。日にその德を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは大正なり。家食󠄃せずして吉。賢を養ふなり。大川を渉るによろしとは、天に應ずるなり。象に曰く、天山中に在るは大畜。君子以て多く前言往行(わうこう)を識して、以てその德を畜(やしな)ふ。


《爻辭》
上九。何ぞ天の衢。亨る。象に曰く、何ぞ天の衢とは道󠄃大いに行はるるなり。

【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
大畜は大きく蓄へる、とどむることである。剛健篤実でますます徳が高くなることを表す卦である。剛い者が最上位に登り、賢者を尊んで賢者を養う。賢者は家から出て朝廷に仕えはじめた。吉である。大事業をするのに良い時である。


《爻辭》
畜の極みに居て、大いに亨る時に至り、どうして止める必要があろう。天衢は天の路である。空の中の広く障害がないことをいう。畜が極り變ずる。吉凶禍福は交互に起こるものである。極まれば通る。止まっていても永遠に留まり続けることはなく、泰であってもずっと泰であることはない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
大畜は、君が臣を止めて畜(やしな)う卦である。大は君のことである。大畜とは反対に小畜という卦がある。小畜は、臣の方が君を止めるという卦である。小は臣のことである。上卦の艮は身体である。三・四・五爻目の震は仁である。また二・三・四爻目に兌は義である。つまり仁義の徳を身の内に具えていることになる。畜の字は、止めるというだけでなく、之を育てて善くするという義がある。徳を十分に養はねばならない。君は、臣の早く出世を求める心を抑えて、十分に学問を以て徳を養わせるのである。また養われる側も、貞所を守るのが良いので、「利貞」という。「不家食吉」とは、学問道徳のある人物は君に用いられ、禄を以て養われる所となる。そのため賢人は家に居って食することは無い。朝廷に招かれた賢人は、危険なことがあっても之を踏み越えて往くのが良い。そこで「利渉大川」という。
[彖傳]
天子に剛健なる徳が具わっている。政務を執っても疲れることがなく、篤実である。篤実は艮の卦の象である。また艮の陽爻が上にあり、光輝く所がある。「日新」というのは、乾の卦で象で、日々昇り沈んでいく太陽である。「其徳剛上」は、上九を指していう。上九は剛にして一番上に居る。
[象傳]
上卦の艮は山、其の山の中に天がある。山中には天の元気が十分に満ちている。火気と水気の働きで草木が良く生じ、禽獣も繁殖する。これが大畜である。「前言」は震の象である。また震は行くという事もある。

《爻辭》
「衢」は街の事であり、四方八方から集まって来る要路の事である。朝廷に出るのは、背中に天を荷う事であり、天に代わって万民を生育する。志が大いに行われ、亨る。
[象傳]
要路に坐って、天より禀けた道徳を十分に行う。道とは天の道であり、萬物を生じ萬物を育う所の道である。

2/15(火) ䷼ 風澤中孚(ふうたくちゅうふ) 五爻初爻

2/15(火) 風澤中孚(ふうたくちゅうふ) 五爻初爻


【運勢】
目の前の事に一喜一憂せず、冷静さを保ち、正しさを守ると良い。
素直な心を持ち、内実の伴う行動で誠意を示す事が大切である。
仲間との絆を大切にし、真心を込めて決断すれば、選択を悔いる事は無いだろう。


【結果】
䷼◎⚪︎
風澤中孚(ふうたくちゅうふ) 五爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
中孚は豚魚吉。大川を渉るに利し。貞に利し。
彖に曰はく、中孚は柔、内に在りて、剛、中を得る。說󠄁(よろこ)びて巽(したが)ふ。豚魚吉とは、信豚魚に及󠄃ぶなり。大川を渉るに利しとは、木に乘りて舟虚なるなり。中孚以て貞に利し。乃ち天に應ずるなり。
象に曰はく、澤上に風有るは中孚。君子以て獄を議し、死を緩(ゆる)す。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。孚有りて攣如たり。咎なし。
象に曰く、孚有りて攣如たりとは、位正に當るなり。
[初爻]
初九。虞れば吉。他有れば燕(やす)からず。
象に曰く、初九。虞れば吉とは、志未だ變ぜざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
上四に徳があって初めて誠となる。信立ちて初めて国が治まる。柔が内に在り、剛が中を得ている。剛が中を得れば正直、柔が内に在れば、静順である。喜んで従う。競い合わない。魚は虫の潜り隠れるものである。豚は獣の卑しく弱いものである。競い合う道󠄃はない。中信の徳があつければ、どんなに弱い者󠄃でも信用に足る。木を船の空洞に用いればついに溺れない。


《爻辭》
[五爻 優先]
攣如は、其の信を繋ぐの辭なり。中誠に處りて以て相交るの時にして、尊位に居りて羣物の主と爲る。信何ぞ舍つべき。故に孚有りて攣如たり、乃ち咎なきを得るなり。
[初爻]
虞は專の如し。信の初めにあり、四爻が応じている。吉を得る。志は変わらない。心を一に繋いでいる。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
孚は信である。豚魚は江豚である。大きな澤に住み、風が起これば必ず出現する。二陰が四陽の中にある。二爻と五爻は共に剛中の徳があり、心が誠実である。だから中孚というのである。己に信があれば物は必ず感じる。木が澤の上に在る。真ん中が空洞の舟であり、櫂もある。大難を過ごして、誠を守る。誠があれば物は何でも動かせる。まだ誠がない場合は物を動かせない。


《爻辭》
[五爻 優先]
[初爻]
虞は度である。陽で初爻に居る。四爻と応じており、信ずべきものを信じて往けば吉である。別のものを考えてしまうと、向かうところが分からず安心できない。陽は変動しやすい。人は君に仕える時も、友と交わる時も、師に学ぶ時も一つのことに専心すべきである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
心中に存する孚に感応して動く所が中孚である。我が孚が豚魚の様であれば吉である。豚魚は豕に似た魚の事である。平生は水の上に出ないが、風が出て来る時には必ず水面に出て来る。船に乗り魚を獲る者は、風信と名付け、風を人に示す所に間違いが無いと信じる。この豚魚を信じるが如く、孚があれば人の信用を得られ、危険を踏み越えて往くことが出来る。孚は正しい所を以てするので無ければいけない。
[彖傳]
内側の六三六四は柔で、九二九五の剛は中を得て居り、中庸を得て居る。下卦の兌は說びがあり人を愛し、上卦の巽は行いが謙遜で傲らない。其所で天下の人々は我が孚の精神に感じて、悪い者も自然と善き方へ化して来る。我が方の孚を人が信用する所は、豚魚に能く及んで居る。
[象傳]
この卦を大きく見て、初二爻を一つの陽爻、三四爻を一つの陰爻、五上爻を一つの陽爻とすれば、離の卦と解釈できる。離は明らかさの象があり、白と黒を判けるが如く、罪人の善悪を能く明らかにする。互體(ニ三四爻)は震の卦で、雷の如く決する所がある。また春の象があり、萬物を生育する如く恩恵が深く、処分を緩める所がある。


《爻辭》
[五爻 優先]
[初爻]
虞と云う字は祭りの名である。親を葬って我が家に帰って来て、桑の木を以て木牌を立て、親の魂魄を思い祭りを行う。虞祭ほど精神が凝る祭りは無い。其所で初九が虞祭の如くに、精神が凝れば吉である。外の所へ氣が動けば、親の魂が其所に安んじて留まらない。他の所へ心を狂わせず、燕の如く人を信じなければ、去って往く所がある。
[象傳]
親が死んで間もないため、親を慕う志は未だ変わらない。夜も昼も親を思って飲食が喉を通らないような精神でなければ、人の信用も出ないものである。

2/14(月) ䷽ 雷山小過(らいさんしょうか) 四爻

2/14(月) 雷山小過(らいさんしょうか) 四爻


【運勢】
沢山の事を同時に済ませようとせず、一つの事に集中すると良い。
時間の余裕は心の余裕、拘りを持たず、速やかに進める事が大切である。
謙虚に正しさを守り、小事にも目を配れば、間違いを犯す事は無いだろう。


【結果】
䷽◎
雷山小過(らいさんしょうか) 四爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻]


【原文】
《卦辭》
小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。彖に曰く、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。象に曰く、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。


《爻辭》
九四。咎なし。過ぎずして之に遇󠄄ふ。往けば厲(あや)ふし。必ず戒む。永貞を用ゐることなかれ。
象に曰く、過ぎずして之に遇󠄄ふとは、位當らざるなり。往けば厲し必ず戒むとは、終に長ずべからざるなり。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。


《爻辭》
陽爻であってもその位に居ない。主を責めない。だから咎めがない。位を失い下に在る。過ぎることが出来ないものである。咎を免ずるの合うを得る。宴会に耽っている。よろしくない。小過で不安な時に居て、陽で陰に居る。達成することが出来ないものである。だから自衛したら、咎を免れることが出来る。だから何か事業をするには危険な時である。助けがなく、危うい。戒めるべきである。危険を教えてくれる人もいない。卑怯で弱い。自守しなければならない。小が群れている中に、任に堪えないものである。長く用いてはいけない。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。


《爻辭》
陽で陽にあり、過󠄃である。陽を以て陰にあるのを遇という。四爻は小過にあり、陽で陰に居る。位に当たらない。往けば危うい。戒め慎むべきであり、固く守ることが出来ない。陰が多い時、過甚の行でないといっても、身を立て不正である。長く守るべし。慎むべし。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
小過の卦は全体でみると
の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻にがある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。
[彖傳]
祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。
[象傳]
大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。


《爻辭》
九四は初六と応じて居る。陰の初六は過ぎるだけの力が無く、陽の九四は程好く之を取扱って居るから、咎は無い。併し九四の方から初六に従えば厲(あや)うい。小人の勢いは盛んであるから、能く用心しなければいけない。永く正しい所を守り、動かずに居るのが宜しい。
[象傳]
九四は大臣の位にあるが、其れだけの権力が無い。小人が盛んな時であるから、往けば厲うい。戒めるべきである。小人は勢いを得ているが、長く其の儘に為って居るものでは無い。時を待って居れば、復衰えて来る。用心して固く守って動かずに居れば宜しい。

2/13(日) ䷹ 兌爲澤(だゐたく) 上爻三爻

2/13(日) 兌爲澤(だゐたく) 上爻三爻


【運勢】
喜びを分かち合うのに良い時である。
自分本位な考えは、言葉に滲み出る。
感謝の言葉をいい加減に扱ってはいけない。
己の弱さを断ち切る事が大切である。
心を込めて恩に報いる事が出来れば、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷹◎⚪︎
兌爲澤(だゐたく) 上爻三爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
兌(だ)は亨(とほ)る。貞によろし。
彖に曰く、兌は說󠄁(よろこ)ぶなり。剛は中にして柔は外。說󠄁(よろこ)びて貞によろし。ここを以て天に順(したが)ひて人に應ず。說󠄁(よろこ)びて以て民に先(さきだ)てば、民その労をわする。よろこびて
以て難󠄄を犯せば、民その死をわする。說󠄁の大、民勧むかな。
象に曰く、麗澤(れいたく)は兌。君子以て朋友講習す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。引いて兌ぶ。
象に曰く、上六。引いて兌ぶとは、いまだ光(おおい)ならざるなり。
[三爻]
六三。來りて兌(よろこ)ぶ。凶。
象に曰く、來りて兌ぶの凶は位当たらざればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
兌は喜ぶこと、嬉しいことである。
この卦は
が二つ重なってできている。
は内に强い意志を持ち、外に対しては温和な態度で臨むので、人との付き合いはうまく行き、人間関係は良好である。
内に强い意志を持ち、外に対して温和な態度の人は、天道にも、人道にも逆らわない良い人である。
喜びを大切にすれば、他の人はどんな労力も厭わずに協力してくれる。


《爻辭》
[上爻 優先]
夫の陰質を以て、最も説の後ろに處り。静かにして退く者なり。故に必ず引く。然る後に乃ち説ぶなり。
[三爻]
陰柔の質で履むのはその位でない。来たりて喜びを求めるものである。正しくないのに喜びを求める。邪な佞人である。
外を行くのを往とし、内を行くのを來とする。内に居て喜びを求める。陰柔で不中正。上に応じる者がいない。内卦の二つの陽について喜びを求める。間違っている。下に行って喜びを求めるようでは凶。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
兌は喜びである。
自然と出る喜びが本当のもので、私心からの喜びは偽りである。
立心偏のない「兌」が本来のもので、立心偏を添えた「悅」や言偏を添えた「說」になるのは後の事である。
彖伝が「說」の字で書くのは、喜びを言葉で表すからである。
上卦下卦とも兌であるのは、己と他者が互いに喜ぶ象である。
互いに相助ける所があるので、何事も亨るのである。
『中庸』に「致中和天地位」とある。この中和が兌の卦にあたる。
中庸の道を行い、人がそれに服し、親しみ和合するなら、天地陰陽の気までも調和する。
あくまで作られた喜びでなく、正しい所が無ければいけない。
そこで「貞利」なのである。
[彖傳]
「兌悅也」というのは、沢山咸の「咸感也」と同様に、「心」の字の有無と同じである。
「剛中」は二爻目、五爻目が陽爻で、それぞれ上卦下卦の中を得ていることを云う。
「柔外」は三爻目、上爻が陰=柔らかであることを云う。つまり剛は明らかにして正しく、外の人には穏やかで柔らかに交わるのである。
それによって自他ともに喜ぶのであり、正しい所にあるのがよろしい。
この卦を天地人の三才に分けてみると、上の二爻が天、下の二爻が地、中の二爻が人となる。
「天に順い」というのは、五爻目は天の正しい位で、其れに上六が陰爻で順っていることである。
また「人に応ずる」は、人にあたる三爻目が陰爻で、地にあたる二爻目が陽爻であるから、人に応じているのである。
己が先ず喜びを起こすことで、民も喜び順う。
上下和順しているから、民は労苦を忘れて働き、戦争が起これば難を犯して戦ひ、死をも忘れて尽くすのである。
[象傳]
兌の卦を澤と言う。
澤は潤うという義で物に湿潤の気を含んでいる。
『国語』の「周語」に、澤は美(水)を鐘(あつ)めるとある。
これが麗澤である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[三爻]

2/12(土) ䷾ 水火旣濟(すいかきせい) 変爻無し

2/12(土) 水火旣濟(すいかきせい) 変爻無し


【運勢】
大事を成し遂げたからといって、そこで歩みを止めてはいけない。
現状に甘んじる事無く、次の目標を立て、先を見据えて準備を行うと良い。
今までの経験を活かし、気を引き締めて、注意深く進める事が大切である。


【結果】

水火旣濟(すいかきせい) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
旣濟は亨(とほ)る。小、貞に利し。初めには吉、終はりには亂る。
彖に曰く、旣濟は亨るとは、小なる者、亨るなり。貞に利しとは、剛柔正して位當たる。初めは吉とは、柔、中を得るなり。終に止まれば則ち亂る。其の道󠄃窮まるなり。
象に曰く、水、火の上に有るは旣濟。君子以て患を思ひて豫め之を防ぐ。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
旣濟は完全に渡り切ったという意味である。
小は残らず渡り切った。
五爻と二爻が位に当たっているので、邪悪なことは出来ない。
ただ正しければ上手く行くのである。
柔が中を得たら、小はとおるのである。
柔は中を得ていないならば、小はまだ通らない。
小はまだうまく行っていない。
剛で正を得ているといっても、まだ旣に渡り切れていないのである。
だから旣濟の要は柔が中を得るにあるのである。
旣濟を安定となすのは、道󠄃が窮まり進めないからである。
止まるから乱れるのである。
存續している時に亡びることを忘れない。
旣濟は未濟を忘れてはいけない。


〔東涯の解釋〕
濟は交わり作用しあうことである。
火が下に在って炎上し、水は上に在って下を潤す。
陰陽が互いに作用していることである。
陰陽六爻がそれぞれ正しいところにある。
二爻は陰で中を得て、上には坎つまり止がある。
だから始めは吉を得て、終には止まってしまい、衰乱の時代になる。
治乱盛衰は永遠に互いに作用し続ける。
陰陽が交わり互いに作用し、日が南中しているようであり、月󠄃が満月に近い状態である。
よくうまく行くといっても、ただ小のみである。
大吉ではない。
ただ正しさを守るべきである。
そうしなければ始めはうまく行っても、終いには乱れるのである。
易の戒めるところである。


〔根本通明の解釋〕
水火相和して、萬物悉く生育する。
何事も亨り達する。
小なるものの二爻目は、主爻となり、陰爻を以て陰位にある。
よって中を得て居り、小なるものが正しくして居る。
内卦は始まりで、萬物が盛んになって来るが、半ばを過ぎれば衰えが出て来るから、油断をせずに対策しなければならない。
[彖傳]
二爻目は柔で陰位にあり、九五は剛で陽位にあり、正しく剛柔である。
険難が除けて、天下泰平になる。
安楽になれば人は動かず、為すべきことを怠って、乱れが起って来る。
[象傳]
水火相和しているというものの、性質で言えば分かれる所がある。
水は火の上に在れば宜しいが、水の性質は下を好む。
又火の氣が何処までも上がり、互いに反対に為って相害する所が出て来る。
安楽なる内に災の出ない様に之を防がなければならない。

2/11(金) ䷍ 火天大有(かてんたいゆう)→天山遯(てんざんとん)

2/11(金) 火天大有(かてんたいゆう)→天山遯(てんざんとん)


【運勢】
活発に活動するのが望ましい時。
気を引き締め、先を見据えた選択をすると良い。
考え無しに進めば、道を見失なってしまうだろう。
上手く行かない事には執着せず、見切りを付ける事が大切である。


【結果】

本卦:火天大有(かてんたいゆう)
之卦:天山遯(てんざんとん)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
火天大有》
大有は元(おほ)いに亨る。
彖に曰はく、大有は柔尊󠄄意位を得て、大中にして上下之に應ず。大有といふ。その徳剛健にして、文明。天に應じて、時に行く。是を以て元いに亨る。


《之卦:
天山遯》
遯は亨る。小しく貞に利し。彖に曰く、遯は亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當りて應ず、時と與に行くなり。小しく貞に利しとは、浸して長ずるなり。遯の時義大なるや。象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡うせずして嚴にす。


【解釋】
《本卦:
火天大有》
〔王弼の解釋〕
大いに通らない。
どういう理由で大有を得られよう。
大有ならば必ず大吉である。
五爻は尊󠄄位に柔でいる。
中に居るのは大である。
陰が一つしかない。
上下応じている。
德が天に應ずれば、行くに時を失わない。
剛健は滞らない。
文明犯さず。
天に応じれば大。
時行きて違わない。
だから大いに通る。
大有は包容の象である。
だから勧善懲悪が美しいのである。
天德を順奉し。
ものの命を休す。


〔東涯の解釋〕
大有はそのあるところが大。
五爻は柔中尊󠄄位にいる。
上下の五つの陽がこれに応じている。
盛大である。
大とは陽のことで陽が沢山ある。
五爻が二爻と応じている。
これは智勇兼備である。
五爻に澤山の賢人が集まり、天命も之を助ける。
勝道󠄃というべきである。


〔根本通明の解釋〕
この卦は、大なる物多しと云うのは、天下皆賢人と云う義である。
賢人が多ければ、何事も亨らないことが無い。
「有」の字は富むという義、また多いという義にもなる。
『詩経』の魚麗篇に「旨且有(うまくして、かつ、おおし)」とあり、多いという義である。
「大有」は、「大いにある」と読んでは駄目で、「大なる物が多い」という義である。
大なる物は五爻目以外の陽爻で、大人・君子・賢人のことである。
しかしその様な人才は容易に得難く、盛んなる世であった堯舜の時で臣五人、周の国で十人しかなかった。
[彖傳]
賢人が多く朝廷に出で来、君は能く賢人の言を用いる。
上に居る賢人も、下に居る賢人も、皆君に応じて来る。
大中は、上卦が元は乾だったのが、真ん中に陰爻が出来たことを云う。
この卦を一人の天子の徳で言えば、剛健であり、時に従って能く行う。
[象傳]
火気が地の底から十分に上に昇って居り、万物が盛んになる所である。
下卦は乾の卦であるから十分に充ちている。
天下は至って富んでおり、人民は生活に不足が無い。
しかし三、四、五爻目には、兌の卦があり、楽しみに流れる傾向がある。
其処で、盛んな時には悪い者を遏(とど)め、善を掲げる。
何時の世でも、名君の時でも、悪人を無くすのは難しい。
この卦では、九四が悪人である。
この大臣は、君に諂う所を以て立身した人で、表面上は君子のようで君子では無い。


《之卦:
天山遯》
〔王弼、通解の解釋〕
遯の義爲るや、遯るれば乃ち通ずるなり。五を謂ふなり。剛位に當りて應ず。亢るを否ぐに非ざるなり。遯れて亢るを否がず。よく時と與に行ふ者なり。陰道浸して長ぜんと欲す。正道もまた未だ全く滅びず。故に小しく貞に利しなり。天の下に山有り、陰長ずるの象なり。

2/10(木) ䷖ 山地剥(さんちはく)→䷽ 雷山小過(らいさんしょうか)

2/10(木) 山地剥(さんちはく)→ 雷山小過(らいさんしょうか)


【運勢】
周りからの風当たりが強く、物事を前に進めるのが難しい時である。
この様な時は、謙虚に正しさを守り、小事にも目を配ると良い。
時間の余裕は心の余裕、何事も速やかに進める事が大切である。


【結果】

本卦:山地剥(さんちはく)
之卦:雷山小過(らいさんしょうか)
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻][四爻][三爻]


【原文】
《本卦:
山地剥》
剝は往く攸有るに利しからず。
彖に曰く、剝は剝なり。柔剛を變ずるなり。
往く攸有るに利しからずとは、小人長ずるなり。順にして之を止む。象を觀るなり。君子は消息盈虚を尚ぶ。天の行なり。
象に曰く、山、地に附く剝。上以て下を厚うし宅を安ず。


《之卦:
雷山小過》
小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。彖に曰く、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。象に曰く、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。


【解釋】
《本卦:
山地剥》
〔王弼、東涯の解釋〕
剝は割くの意󠄃である。
下から陰が侵食し、最後に上爻だけに陽が残っている。
これは徳の無い者がはびこり、有徳者が衰退している時である。
このような時は何か事を起こす時ではないと、強く戒めるべきである。


〔根本通明の解釋〕
剝は刀で削り取っていくという意味である。
徳の無い者が削り取りながら有徳者にせまっていくところである。
このような時には有徳者は遁れておくのが良いのである。
[彖傳]
剝にはものを破る、落とすという義もあるが、この場合は削り落とすの意󠄃である。
小人が世の中の隅々にはびこっているので、君子たるものはどこにも行かない方が良い。
そして正しい行いをつづけていかなければならない。
今はすべてが陰になろうとしているが、固く道徳を守り、一陽来復に備えておくべきである。
[象傳]
地の上に山がある。
地は民であり、山は君主である。
地が厚ければ山は盤石であるように、民の生活基盤が盤石であってこそ、君主は盤石なのである。
卦の形は牀のようである。
牀とは今の机のことで、一番上の上爻が机で、五爻までの陰爻が足である。


《之卦:
雷山小過》
〔王弼の解釋〕
飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。


〔東涯の解釋〕
陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。


〔根本通明の解釋〕
小過の卦は全体でみると
の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻にがある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。
[彖傳]
祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。
[象傳]
大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。

2/9(水) ䷢ 火地晋(かちしん)→䷤ 風火家人(ふうかかじん)

2/9(水) 火地晋(かちしん)→ 風火家人(ふうかかじん)


【運勢】
周りからの信頼に応え、役割を堅実に果たす事が大切である。
助けを求める社会よりも、助けを差し伸べる社会の方が健全である。
義務感からではなく、自主的に行動する事で、道は大きく開けるだろう。


【結果】

本卦:火地晋(かちしん)
之卦:風火家人(ふうかかじん)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 老陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
火地晋》
晋は康侯(しょうこう)用ゐて馬を錫(たま)ふこと蕃庶(ばんしよ)。晝日三接す。彖に曰く、晋は進むなり。明󠄃地上に出づ。順にして大明󠄃に麗(つ)く。柔進みて上行す。是を以て康侯用ゐて馬を錫(たま)ふ蕃庶。晝日三接すなり。象に曰く、明󠄃、地上に出づるは晋。君子以て自ら明德を照(あきらか)にす。


《之卦:
風火家人》
家人は女の貞によろし。彖に曰く、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。象に曰く、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


【解釋】
《本卦:
火地晋》
〔王弼、東涯の解釋〕
晋は進󠄃むである。地上に日が昇り、あまねく天下を照らす象である。陰が三つ上に登って太陽に付き従っている。これは名君に人々が仕える象である。そして立派な諸侯となり、王は恩恵を賜る。三陰は柔順の徳がある。君子は德を明らかにし、天下あまねくその恩恵を受ける。


〔根本通明の解釋〕
上卦の離は日であり、下卦の坤は地である。つまり地上に日が初めて出た所の象である。晋は日が出て万物が進むという義である。『説文解字』に「日出萬物進也」とあるように、太陽の働きで万物は育ち伸びてゆく。二・三・四爻目に艮がある。艮は東北の間であるから、将に日が出んとする所である。康侯は、諸侯の職分が民を康(やす)んずる所にあることに由来する。諸侯は天子に朝するに三度御目通りをするので「昼日三接」という。その時に諸侯は自国の名馬を献ずる。馬十匹を献ずることを錫(たま)うという。錫という字は古くは上下の区別なく、下から上へ差上げるのにも錫うという。『書経』にも「衆錫帝」とある。これが上から下に与える意味に限られるようになるのは、始皇帝の時からである。下から上へ差上げる時には、献ずる、奉るというようになる。蕃庶は馬十匹で多いことによる。
[彖傳]
日が出て万物が段々進んで来る、即ち天子が上に在って諸侯が進んで拝謁する所の象である。明は離の卦の象である。「大明に麗(つ)く」というのは、大明=乾の卦の真ん中に陰爻が麗いて離の卦になることである。天は大明、離は明である。「柔進みて上行す」というのは、元これは真っ暗の夜の象である地火明夷の卦であったことによる。五爻目の陰爻が二爻目にあり、それが上行して五爻目まで往く象である。
[象傳]
日が地の下にある真っ暗な状態は、欲に覆われて徳が明らかにならない状態である。君子は欲を取り払って、明徳を明らかにして四方を照らす。


《之卦:
風火家人》
〔王弼、東涯の解釋〕
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。家の外の他人のことは分からない。家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。四爻が主爻である。主に女性について説かれている。家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


〔根本通明の解釋〕
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。兩方中である。皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。婦と妻と二つの字がある。双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。中男と兄にも嫁がある。一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。物を煮たり焼いたりするのは竈である。竈をよく治めることが家を治める時の第一である。家族は秘め事をしてはいけない。