4/10(日) ䷀ 乾爲天(けんゐてん) 上爻

4/10(日) 乾爲天(けんゐてん) 上爻


【運勢】
大事を行うのに良い時である。
失敗を恐れず素直に行動し、志を同じくする仲間と協力し、好機を最大限に活かすと良い。
極端な選択は後悔の元となる。
何事も程々に、白黒付けるのではなく、柔軟な答えを導き出すと良い。

【結果】䷀◎
乾爲天(けんゐてん) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
乾は元いに亨る、貞に利し。
彖に曰く、大なるかな乾の元は、萬物資りて始まる、乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。
大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗じて以て天を御す。
乾道變化して、各おの性命を正し、大和を保合して、乃ち貞に利ろし。庶物に首出して、咸(あまね)く寧(やす)し。
象に曰く、天行は健なり。君子以て自ら彊めて息まず。


《爻辭》
上九。亢龍悔有り。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》乾、元亨利貞。
代義易を作られた其初めは元三畫の卦乃ち乾坤震巽坎離艮兌の八卦之を小成の卦と云ふ。
其小成の卦を二つ重ねた所で六畫になる之を大成の卦と云ふ、乃ち此乾の卦は以下六十四卦皆伏義之を名けたる所の大成の卦である。
乾此卦が天である。
設卦に乾天爲りとある、天は元亨利貞の四徳を以て萬物を生じ之れを養ふて之を成す、成して復始むる。
天の徳と云ふ者は宏大なるものである。其宏大なる徳と指すものは何であるとなれば萬物を生ずる所、是れが天の徳である。
生じた上には其物を成す、萬物此天の氣に因て始まって來る其れより段々萬物が出る。
始まつて出る所が元である。元は始と云ふ字で物の始まる所を元と云ふ。又此元の字が大ひなると訓む。
此天の元氣と云ふ物は世界中一杯に周つて居るから是れ程大ひなるものが無い。又萬物此元の氣を禀けて始まつて是も大なるに至る。
暢ひて段々大きくなる。其れが爲めに此元の字が始まりとも訓み、大なるとも訓み、又首とも訓む。
凡そ世の中に此天の元の徳より尊きものが無い。萬物の首らになつて居るから又首と云ふ義もある。
其元を禀けて生じた萬物が段々と暢びる。暢びる丈暢びて、往くべき所迄往きて、達する所があるから之を享と云ふ。享は暢びて通ずるの義がある。
利と云ふが宜しきを得るを利と云ふ。宜しきを得るとなれば、萬物暢びて宜しきを得る。
中にも長短がある。長くなつて宜しきものは長くなり、短ふして其れ丈けで宜しきものは短かき所に止まる、細き物もあり太き物もあり、細くなるべき物は細くなつて宜しきを得る、太くなるべきものは太くなつて宜しきを得る、此は皆利である。
又貞と云ふ事は總て萬物なる者は其物丈けに確りと出来るが正しいのである。
正しく出来た上には固まつて動か無い、此れが貞。貞は正しうして固しとふ義である。
其所で元は春になる。春は出づると云ふ義である、春者出也と云ふて動いて出づると云ふ義である。
其所で萬物、春で始まつて出て往つて其れから暢びる。
亨は夏になる、夏に至つて萬物十分に暢びて大きくなる。此夏と云ふ字が夏者假也で大ひなると云ふ字である。
秋と云ふ字が秋者收也就也で暢びた萬物が陰氣を以て之を引斂めて來るが收むるである。
引斂むる所で物就つて宜しきを得る。利は秋。貞は冬者藏也。
冬になれば、先づ其性の儘に凝つて固まる、固まつて翌年、相續して發生する迄之を蓄藏する。
五毅の類が米でも豆でも皆出來て、味ひの甘い物は甘く出來、辛く出來るべき物は辛く出來る、苦く出來るべき物は苦く出來る、又酸く出來る物は酸つばい。是れが皆正しい。
甘く出來る物が辛くなつては是れは正しく無い。又甘いでも酸つぱいでも無い様な物でも可けない。
總て天地の間に生ずる物は皆五味の性を含んで居る。五味と云へば酸い所、苦い所、甘い所、辛い所、䶢い所、其れを皆蓄へて居る。
是れは皆陰陽五行の氣を受けて居るものであるから必ず此五つの味がある。
其五つの味は、物に依て萬物に至る迄、各々其性分が異つて居る。其性分丈けの所確かりと其通に成れば、正しい其儘に凝つて固まるが貞である。


《爻辭》

4/9(土) ䷁ 坤爲地(こんゐち) 初爻

4/9(土) 坤爲地(こんゐち) 初爻


【運勢】
周りからの期待に応え、素直な気持ちで努力するのに良い時。
無理は続かない。ゆっくりと時間をかけて成長して行く事が大切である。
何気ない積み重ねが大きな力となる。
些細な事だと侮らず、問題の芽は早めに摘むと良い。


【結果】
䷁◎
坤爲地(こんゐち) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
坤は元(おほ)いに亨(とほ)る。牝馬の貞に利(よ)ろし。君子往くところ有り。先(さきだ)つときは迷ひ、後るるときは主を得るに利あり。西南には朋を得る。東北には朋を失ふ。安貞にして吉。
彖に曰く、至れるかな坤元。萬物、資(よ)りて生ず。乃ち順にして天を承(う)く。坤、厚くして物を載す。德无疆に合ふ。含弘光大にして品物、咸(ことごと)く亨る。牝馬は地類。地を行くこと疆なし。柔順利貞は君子の行ふところ。先だつときは迷ひて道󠄃を失ひ、後るるときは順にして常を得る。西南には朋を得る。乃はち類と行く。東北には朋を喪ふ。すなはち終に慶有り。安貞の吉は地の无疆に應ず。
象に曰く、地勢は坤。君子以て厚德者物を載す。


《爻辭》
初六。霜を履みて堅冰至る。
象に曰く、霜を履む堅冰とは、陰始めて凝るなり。其の道を馴致して堅冰に至るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
坤は貞によろしい。牝馬によい。馬下にあって行く。牝馬は柔順の至りである。柔順を尽くして後にうまく行く。牝馬の正しいものによろしい。西南は人を養う地である。坤の方角である。だから友を得る。東北は西南の逆である。友を失う。乾は龍を以て天を御し、坤は馬を以て地を行く。地は形の名である。坤は地を用いるものである。両雄は並び立たない。二人主が居るのは危うい。剛健と對をなす。長く領土を保つことが出来ない。順を致していない、地勢が順わない。その勢は順。


《爻辭》
霜を履むに始まり、堅冰に至る。所謂る至柔にして動くや剛なり。陰の道爲るや、卑弱を本とし、而る後に積著に至る者なり。故に霜を履むに取りて、以て其の始を明らかにす。陽の物爲るや、始に基づくに非ずして、以て著に至る者なり。故に出處を以て之を明らかにす。則ち初を以て潛と爲す。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
坤の爻はすべて陰。順の至りである。牝馬は柔であり強く行く。この卦は柔にして健である。主に遇うとは、陽に遇うことである。西南は陰、東北は陽。順の至りでうまく行く。君子まず行くところがあれば迷い、後に主を得る。西南に行くと友を得て、東北に行くとその友は離れる。正しいことだけをしていれば吉。天の気を承け萬物を生ず。陽に先んじてはならず、陽の後に行けばよい。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
坤は乾と對であり、乾は天、坤は地である。牝馬の話が出るが、これは乾の方が牡馬であることをも示している。臣たるもの、必ず朝󠄃廷に行って君に仕えなければならない。しかし、無学では全く役に立たないから、そのためには朋(とも)をもって助け合わなければならない。西南は坤である。
巽の卦、離の卦、坤の卦、澤兌の卦は陰の卦である。そこで、西南に陰の友が集まっている。朋は友と違う。一緒に勉強するもののことを朋というのである。友とは朋の中でも特に親しいものである。朋の字は陰で、友の字は陽である。始めのうちは陰の友達が必要である。そこで西南が良いのである。また、東北は朝󠄃廷を意味する。乾の気で萬物は始まり、坤の気で萬物に形が備わる。坤の卦は地の上に地を重ねているから、地盤は盤石である。天の気がどこまでも拡大していくのに、陰の気はどこまでも従うのである。牝馬が牡馬に従うように、臣下は君主に仕えるのである。先に行こうとしてはいけない。常に後ろについていくべきである。臣下は朋友を失うことになるが、君主に仕えることでそれを克服するだけの喜びを得る。慶(ケイ、よろこ)びは高級な臣下の卿(ケイ)に通じる字である。上に鹿の字が附くが、昔は鹿の皮を以て喜びを述べた。人々が集まってくるのである。
[大象傳]
地が二つも重なっているので盤石である。物を載せても耐えられる。つまり様々なことを任されても耐えられる存在なのである。
《爻辭》

4/8(金) ䷿ 火水未濟(かすいびせい) 変爻無し

4/8(金) ䷿ 火水未濟(かすいびせい) 変爻無し


【運勢】
目標を定め、出来る事から進めると良い。
成功への道のりは長い。
失敗を恐れて歩みを止めてはいけない。
何度でも立ち上がり、最後まで歩み続ける事が大切である。
諦めなければ、如何なる難局も乗り越えられる。


【結果】
䷿
火水未濟(かすいびせい) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
未濟は亨(とほ)る。小狐、汔(ほとん)ど濟(わた)る。其の尾を濡らす。利(よろ)しき攸(ところ)なし。彖に曰く、「未濟は亨る」とは、柔、中を得るなり。「小狐、汔(ほとん)ど濟(わた)る」とは、未だ中に出でざるなり。「其の尾濡らす利しき攸なし」とは、續いで終らざるなり。位に當たらざると雖も、剛柔應ずるなり。象に曰く、火、水上に在るは未濟。君子以て愼みて物を辨(わきま)へて方に居る。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
柔が中にあり、剛に違わない。よく剛健を納めるので、うまく行く。小狐が大きな川を渡ることができない。あと少しの所󠄃で実現できない。剛健が難を抜き、その後に可能になる。ほとんどわたれるが、危険を脱することができない。小狐渡れるだろうが、余力がない。もう少しで渡れるのであるが、力尽きる。終わりまで続けられない。今も険難の時である。未濟はまだ険難の時が終わらないの意󠄃味である。位に当たらないので未濟である。剛柔が応ずれば済む。


〔東涯の解釋〕
未濟は事が成就しないことである。火が上に在り、水が下に在る。上下交わらない。互いに用いないので未濟という。五爻は柔で中にいる。ことはよく通󠄃るが、初爻は陰で一番下にいて中に到らない。狐は陰の存在であり、積極的にやろうとすると失敗に終わる。始めはうまく行く。そして、下に止まっていればよいのである。いたずらに難局を打開しようとすれば失敗する。君子は外は時勢を見て、内は己の才をはかる。上が陽で下が陰である。互いに妨害しない。


〔根本通明の解釋〕
下は水上は火である。水は低きにあり火は上に昇るもので、居るべき場所にいるが、互いに和することが無い。互いが作用しないので、萬物が創造されない。しかし、両者あるべき場所に在る。しかし、いずれは互いに動き出し、交わり始めるのである。だから最終的には亨るのである。
坎は狐である。この卦の場合、小さな狐である。それが川を渡ろうとするが、終にはしっぽを濡らしてしまう。狐は川を渡る時にしっぽを濡らさないようにあげている。疲れてくるとしっぽが下がり、水につかって驚いて引き返してしまう。忍耐力が無いのである。忍耐力が無いと何事をしてもうまく行かない。気力が無いと何事も達成できないのである。
[彖傳]
柔が中を得ている。五爻のことである。これが主爻である。また初爻に關しては、あと少しのところまでやって、忍耐力なく引き下がる。この卦全体でみると、ことごとく全て位を外している。陰は陽に居て、陽は陰に居る。しかし、隣同士陰陽で相性が良く、うまく行っている。また、初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻、それぞれ応じている。最終的にはうまくいくのである。
[象傳]
火は南に居り、水は北に居る。自分の居場所をはっきりとしていて、混じるところが無い。何事もはっきりと分ける象である。
離はものを明󠄃らかにする。それぞれが自分のいる場所にいることを示している。

4/7(木) ䷽ 雷山小過(らいさんしょうか) 二爻初爻

4/7(木) 雷山小過(らいさんしょうか) 二爻初爻


【運勢】
無理せず控えめに過ごすのが良い時。
身の丈に合わない事を安易に請け負ってはいけない。
悪意がなくても、欲に流され無責任に取り組めば、いずれ間違いを犯す。
正しさを守り、地道に努力する事が大切である。


【結果】
䷽◎二⚪︎初
雷山小過(らいさんしょうか) 二爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[二爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。
彖に曰く、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。
象に曰く、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。


《爻辭》
[二爻 優先]
六二。其の祖󠄃を過ぎて其の妣に遇ふ。其の君に及ばずして其の臣に遇ふ。咎なし。象に曰く、其の君に及ばずとは、臣過ぐるべからざるなり。
[初爻]
初六。飛鳥以て凶。
象に曰く、飛鳥以て凶とは、如何ともすべからざるなり。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。


《爻辭》
[二爻 優先]
過ぎて遇うことができる。小過があって位に当たる。過ぎて遇󠄄うことが出來るのである。祖󠄃は初めである。妣は内に居て中を履む善いものである(二爻)。初爻を過ぎて二爻に居る。だからその祖󠄃(初爻)をすぎて、妣(二爻)にいるというのである。過󠄃ぎるけれども僭越には至らない。臣位を尽くすのみである。だからその君に及ばず、その君に遇󠄄うのは咎めがないというのである。
[初爻]
小過。上は逆にして下は順なり。而るに上卦に在るに應じ、進みて逆に之く。足を錯く所なし。飛鳥の凶なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。


《爻辭》
[二爻 優先]
三爻は陽で上に在るので父である。四爻はその上に在るから祖󠄃である。五爻は陰で祖󠄃の上に在るから祖󠄃妣である。君は五を指し、臣は四を指す。二爻は小過があり、三を過ぎて五に行く。しかし、陰と陰で応じない。そこで五爻まで行かずに四爻までにすれば陰陽が相性よい。咎めなし。陰が過ぎる時にあるので、戒めなければならない。
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
小過の卦は全体でみると
の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻にがある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。
[彖傳]
祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。
[象傳]
大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。


《爻辭》
[二爻 優先]
二爻は臣たるものの正しい位置である。君を拝するときはまずはじめに宗廟に参る。
艮は宗廟を表す。君にすぐにあうのは憚られることであり、まずは付近にいる臣下に仕えるべきである。
[象傳]
臣たるものが君以上ではいけない。それを戒めているのである。
[初爻]

4/6(水) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 変爻無し

4/6(水) 水雷屯(すいらいちゅん) 変爻無し


【運勢】
世の中が雷雨の様に勢い付き、混沌とし、困難の絶えない時。
問題を一人で抱え込んではいけない。
周りの力を借りて柔軟に対応する事が大切である。
何事も安易に判断せず、将来を見据え、堅実に土台を築くと良い。


【結果】

水雷屯(すいらいちゅん) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。
彖に曰く、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。
象に曰く、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。なやんで通ずることが出来ない状況である。ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。そのためには、正しさを固く守らねばならない。現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


〔根本通明の解釋〕
屯は止まり艱(なや)むという義である。下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。この人が進んで遂に侯になる所の卦である。雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。この雲雷の象によって世の中を治める。

4/5(火) ䷡ 雷天大壯(らいてんたいそう) 四爻初爻

4/5(火) 雷天大壯(らいてんたいそう) 四爻初爻


【運勢】
目の前の障害は自然と取り除かれる。勢いに乗って大事を進めるのに良い時。
ただ、何も考えず行動すれば余計な苦労をする。行動前にひと呼吸置くと良い。
信念を持ち堅実に正しさを守れば、何事も上手く行く。


【結果】
䷡◎四⚪︎初
雷天大壯(らいてんたいそう) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
大壯は貞に利し。
彖に曰く、大壯は大なる者󠄃、壯なるなり。剛以て動く。故に壯なり。大壯は貞に利しとは、大なる正しきなり。正大にして天地の情󠄃見るべし。
象に曰く、雷天上に在るは大壯。君子以て禮にあらざれば履まず。


《爻辭》
[四爻 優先]
貞にして吉。悔い亡ぶ。藩決して羸(ちぢ)まず。大輿の輹(とこしばり)に壮なり。
象に曰く、藩決して羸(ちぢ)まずとは、往くを尚(とうと)ぶ。
[初爻]
初九。趾に壯なり。征けば凶、孚有り。
象に曰く、趾に壯なりとは、其の孚、窮まるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
大は陽爻をいう。小の道は亡ぼうとしている。大は正を得る。故に利貞である。天地の情󠄃は正大である。廣く正しくあれば天地の情󠄃を見ることが出来よう。壮大で礼に違えば凶。凶であると壮を失う。だから君子は大壮でありながら礼を大切にするのである。


《爻辭》
[四爻 優先]
下は剛健で進む。憂慮すべきことがあろう。陽で陰に居る。行きて謙に違わず、壮を失わない。だから正しくしていれば吉で悔いがなくなるのである。すでに壮であり、上は陰で己の進󠄃む道󠄃ははっきり見える。
[初爻]
夫れ大壯を得る者、必ず能く自ら終へ成すなり。未だ物に陵ぎ犯さるる有らずして、其の壯なるを終ふるを得る者なり。下に在りて壯なり。故に趾に壯なりと曰ふなり。下に居りて剛壯なるを用ふ。斯を以て進めば、窮まりて凶なること必すべきなり。故に征けば凶、孚有りと曰ふなり。
其の信窮まると言ふ。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
陰が小で陽が大である。四つの陽が壮である。二陰は徐々に薄れていく。君子の道が長く続く時である。其れなのに正しくしていれば吉というのは何故か。人は辛い状況では戒めの気持ちを持つが、楽しい時はとかく邪の心が生じやすいのである。陽の道が盛んな時だからこそ、其の機を逃すべきではなく、ちょっとした間違いに警戒しなければならない。四つの陽がみんな正しいわけではない。私なく、天地の性である正大の道を実践すべきである。盛大な時であるが、つまずくこともある。君子は平素から礼法をまもる。昔の人は天命を畏んだ。雷ほど天威に似たものはない。常に礼を大切にすべき時である。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は大壮にあり、陽なのに陰に居る。悔いることもあろうが、必ず正しくあれば後に吉となるのである。咸の四爻と同じで、三がが昇ってきて陽を承けると、進行に妨害が入る。四爻の上は二陰がある。進んでも害はない。雄羊が柵が開いて逃げて角を矯めない。上爻を承ける。だから羊とは言わない。乾爲天の四爻に龍が居ないのと同じである。陽であり五爻の陰を承ける。これが輿のようで、よく大任にたえられる。剛壮な人が智略を用いて早く進めば悔いを残す。終に志を遂げることが出来ない。だから正しければ吉と忠告しているのである。昇進するときは注意が必要である。
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「大」の字は陽で、初爻目から四爻目まで重なっており、盛んな状態である。また「壮」の字は、鄭玄の解に「気力浸強之名」と有り、気力が浸(つ)いて強まって来たことだと云う。人の年齢で言えば、三十歳になり気力も積み重なって来た所である。剛いと云っても悪い方に強ければ害を為すので、正しい方に固まって居なければならない。
[彖傳]
大なるものが極めて剛くなった。卦徳では上卦の震は「動」、下卦の乾は「剛」である。従って、気力が強く動いて進む。また天の気が動き、萬物を生じる。人間の身体も天地の気を稟(う)けて居り、動いて事を行う時は正しくなければいけない。
[象傳]
雷の気は萬物を生じる所の気である。君子は礼に非ざれば履まずと云う。上卦の震は身体で言えば「足」であり、「礼」は天道天理を以て、履(ふ)んで往くことである。其処で礼に非ざる事であってはいけない。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四は震の卦の主爻であり、正しくする所で後悔が無くなる。併し四爻目から先は陰爻であり、先が開けているから、大いなる途と取る。然るに雷の如くに動いて進んで往く。
[象傳]
藩根は眼の前に無く、羸(つか)れる気遣いは不要である。最早動くべき時であるから、往く所を尚ぶ。四爻目は丁度旧暦の二月に當って居り、雷の鳴る時節であるから、時を得ている。雷が進めば、萬物が生まれ花も咲く。
華と云う字は震の卦の象である。
[初爻]

4/4(月) ䷖ 山地剥(さんちはく) 初爻

4/4(月) 山地剥(さんちはく) 初爻


【運勢】
悪人が多く蔓延り力を増す。物事を前に進めるのが困難な時。
正しさは内に秘めておくと良い。
何事も、土台が不安定では上手く行かない。
弱みにつけ込まれる事のない様に、冷静に己を俯瞰し、土台を固める事が大切である。


【原文】
《卦辭》
剝は往く攸有るに利しからず。
彖に曰く、剝は剝なり。柔剛を變ずるなり。
往く攸有るに利しからずとは、小人長ずるなり。順にして之を止む。象を觀るなり。君子は消息盈虚を尚ぶ。天の行なり。
象に曰く、山、地に附く剝。上以て下を厚うし宅を安ず。


《爻辭》
初六。牀を剥するに足を以てす。貞を蔑にす、凶。
象に曰く、牀を剥するに足を以てすとは、以て下を滅するなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
剝は割くの意󠄃である。下から陰が侵食し、最後に上爻だけに陽が残っている。これは徳の無い者がはびこり、有徳者が衰退している時である。このような時は何か事を起こす時ではないと、強く戒めるべきである。


《爻辭》
牀は、人の安んずる所以なり。牀を剥するに足を以てす、猶ほ牀の足を剥ぐと云ふがごときなり。蔑は猶ほ削るがごときなり。牀の足を剥ぐ、下を滅する道なり。下道始めて滅べば、剛隕ち柔長ず。則ち正削られて凶來たるなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
剝は刀で削り取っていくという意味である。徳の無い者が削り取りながら有徳者にせまっていくところである。このような時には有徳者は遁れておくのが良いのである。
[彖傳]
剝にはものを破る、落とすという義もあるが、この場合は削り落とすの意󠄃である。小人が世の中の隅々にはびこっているので、君子たるものはどこにも行かない方が良い。そして正しい行いをつづけていかなければならない。今はすべてが陰になろうとしているが、固く道徳を守り、一陽来復に備えておくべきである。
[象傳]
地の上に山がある。地は民であり、山は君主である。地が厚ければ山は盤石であるように、民の生活基盤が盤石であってこそ、君主は盤石なのである。卦の形は牀のようである。牀とは今の机のことで、一番上の上爻が机で、五爻までの陰爻が足である。
《爻辭》

4/3(日) ䷹ 兌爲澤(だゐたく) 四爻三爻

4/3(日) 兌爲澤(だゐたく) 四爻三爻


【運勢】
喜びを分かち合うのに良い時。
自分本位な考え方は身を滅ぼす。初めに意志の弱さを克服しなければならない。
真心で支え合える関係を育む事が大切である。
心を込めて恩に報いる事が出来れば、何事も上手く行くだろう。

【結果】 ䷹◎四⚪︎三
兌爲澤(だゐたく) 四爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
兌(だ)は亨(とほ)る。貞によろし。彖に曰く、兌は說󠄁(よろこ)ぶなり。剛は中にして柔は外。說󠄁(よろこ)びて貞によろし。ここを以て天に順(したが)ひて人に應ず。說󠄁(よろこ)びて以て民に先(さきだ)てば、民その労をわする。よろこびて以て難󠄄を犯せば、民その死をわする。說󠄁の大、民勧むかな。象に曰く、麗澤(れいたく)は兌。君子以て朋友講習す。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。商(はか)りて兌(よろこ)ぶ。未だ寧(やす)からず。介として疾めば喜び有り。
象に曰く、九四の喜は慶有るなり。
[三爻]
六三。來りて兌(よろこ)ぶ。凶。象に曰く、來りて兌ぶの凶は位当たらざればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
兌は喜ぶこと、嬉しいことである。この卦は
が二つ重なってできている。は内に强い意志を持ち、外に対しては温和な態度で臨むので、人との付き合いはうまく行き、人間関係は良好である。内に强い意志を持ち、外に対して温和な態度の人は、天道にも、人道にも逆らわない良い人である。喜びを大切にすれば、他の人はどんな労力も厭わずに協力してくれる。


《爻辭》
[王弼]
商は量る、裁く、制するの意󠄃である。介は隔てるの意󠄃。三爻はおもねりの喜びを用い、至尊󠄄の五爻に近づく。だから四爻が剛德を以て裁き、三爻を隔てる。内を正し、外を制す。だから未だ寧(やす)からずである。危機に近づき、邪を遠ざけ、疾病を隔てる。喜びがある。
[東涯]
四爻は兌にあって、上は五爻で中正である。三爻の陰柔に比の関係(相性が良い)で、從うところを考えている。取捨して未だ決まらない。だから心が安定しない。そして質は本来は陽剛、よく正しさを守る。邪悪を遠ざければ、喜びがある。前󠄃に從えば上り、惡に從えば崩れる。君子は親しみにくく、小人は付き合いやすい。剛德を大切にすれば喜びを得る。
[三爻]
陰柔の質で履むのはその位でない。来たりて喜びを求めるものである。正しくないのに喜びを求める。邪な佞人である。外を行くのを往とし、内を行くのを來とする。内に居て喜びを求める。陰柔で不中正。上に応じる者がいない。内卦の二つの陽について喜びを求める。間違っている。下に行って喜びを求めるようでは凶。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
兌は喜びである。自然と出る喜びが本当のもので、私心からの喜びは偽りである。立心偏のない「兌」が本来のもので、立心偏を添えた「悅」や言偏を添えた「說」になるのは後の事である。彖傳が「說」の字で書くのは、喜びを言葉で表すからである。上卦下卦とも兌であるのは、己と他者が互いに喜ぶ象である。互いに相助ける所があるので、何事も亨るのである。『中庸』に「致中和天地位」とある。この中和が兌の卦にあたる。中庸の道を行い、人がそれに服し、親しみ和合するなら、天地陰陽の気までも調和する。あくまで作られた喜びでなく、正しい所が無ければいけない。そこで「貞利」なのである。
[彖傳]
「兌悅也」というのは、沢山咸の「咸感也」と同様に、「心」の字の有無と同じである。「剛中」は二爻目、五爻目が陽爻で、それぞれ上卦下卦の中を得ていることを云う。「柔外」は三爻目、上爻が陰=柔らかであることを云う。つまり剛は明らかにして正しく、外の人には穏やかで柔らかに交わるのである。それによって自他ともに喜ぶのであり、正しい所にあるのがよろしい。この卦を天地人の三才に分けてみると、上の二爻が天、下の二爻が地、中の二爻が人となる。「天に順い」というのは、五爻目は天の正しい位で、其れに上六が陰爻で順っていることである。また「人に応ずる」は、人にあたる三爻目が陰爻で、地にあたる二爻目が陽爻であるから、人に応じているのである。己が先ず喜びを起こすことで、民も喜び順う。上下和順しているから、民は労苦を忘れて働き、戦争が起これば難を犯して戦ひ、死をも忘れて尽くすのである。
[象傳]
兌の卦を澤と言う。澤は潤うという義で物に湿潤の気を含んでいる。『国語』の「周語」に、澤は美(水)を鐘(あつ)めるとある。これが麗澤である。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四は名君の九五を輔ける大臣である。しかし傍らにいる巧言令色な小人の六三に迷わされる。九四は說び親しむ所を考えて未だ心が定まらない。其所で邪なる所の疾(六三)を隔てたなら喜びが出て来る。
[象傳]
九四の大臣に目出度き所の喜びが出て来ると共に、国家の大いなる慶びが出てくる。「慶」の字は一人の慶びでなく、大いなる慶びである。
[三爻]

4/2(土) ䷮ 澤水困(たくすいこん)→䷦ 水山蹇(すいさんけん)

4/2(土) 澤水困(たくすいこん)→ 水山蹇(すいさんけん)


【運勢】
努力しても内実が伴わない。
前進するのが困難な時。
好機はいずれ訪れる。今は修身斉家を心掛け、力を蓄える事が大切である。
困難な時にこそ、その者の真価が問われる。
正しさを堅く守ると良い。


【結果】

本卦:澤水困(たくすいこん)
之卦:水山蹇(すいさんけん)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 老陰][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻][三爻][二爻]


【原文】
《本卦:
澤水困》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。彖に曰く、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。象に曰く、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


《之卦:
水山蹇》
蹇(けん)は西南によろし。東北によろしからず。大人を見るによろし。貞にして吉。
彖に曰く、蹇は難󠄄なり。險(けん)前に在る。險を見てよく止まる。知なるかな。「蹇は西南によろし」とは、往きて中を得る。「東北によろしからず」とは、その道窮(きは)まるなり。「大人を見るによろし」とは、往きて功あるなり。蹇の時用大なるかな。
象に曰く、山上に水あるは蹇。君子以て身に反して德を修(をさ)む。


【解釋】
《本卦:
澤水困》
〔王弼、東涯の解釋〕
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


〔根本通明の解釋〕
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。


《之卦:
水山蹇》
〔王弼の解釋〕
西南は地であり、東北は山である。難󠄄しい平地を行けば解決は難しい。難󠄄しい山地を行けば道󠄃が窮まる。爻は全部位に当たっている。正しきを履んでいるのが、邦を正す道である。ただし、難に遇うと正を失う。それは良くない。小人には対処できない。難󠄄を除くには德を高めるしかない。


〔東涯の解釋〕
蹇は難である。進むことができない。前に難があり進めず、険難があるので止まる。蹇が変わると解になる。解の二爻が外卦の五爻に行って中を得る。だから、西南がよく、止まりて進まない。東北に利なし。五爻は位に当たって中正。君を得て、國を正すことが出來る。だから賢人に遇う時であるという。世が乱れているので、蹇に遇えば身を滅ぼす。時を待って行動せよ。我が身を反省して、德を修めよ。


〔根本通明の解釋〕
蹇は歩行が難󠄄しい状況である。西南がよい、上卦が
であるが、上に在る時は月󠄃である。二三四爻の互卦にもがある。これは三日月を表す。旧暦の三日に西南から現れ、東北になくなる。又西南は坤である。草莽にいてどこまでも学問をして學藝を磨くのかよい。何の能力もなく朝廷に出ようとしてはならない。艮は朝󠄃廷を表す。学問を修めたのなら、賢人に遇って、天下を経営するのに良い。
[彖傳]
の卦は大水であり、行けばおぼれてしまう。は止まるであるから、大水に行かずにとどまった。目の前に大水があるので、進めない。止まるべきところで止まるのが知である。西南に於いて学問を修めから、東北に行けば賢人に遇って、明君を得ることになる。今は無学であるから、進んでも利なし。険難の時代に生まれても大いに活躍できるのである。
[象傳]
君子は険難の時代には、良いことをしようとしてもうまく行かない。そこで、己を正しくして、だんだんと德を修めると二爻から上爻までは正しい位にいるが、初爻だけは陽の位に陰でいる。始めが正しくないといけない。だから君子はまず自分の修身から始めるのである。

4/1(金) ䷞ 澤山咸(たくざんかん) 三爻

4/1(金) 澤山咸(たくざんかん) 三爻


【運勢】
主体性を持って行動すべき時。
軽はずみな行動を慎み、誠実に正しさを守る事が大切である。
一刻千金。周りに流されて、無為に時を過ごしてはいけない。
献身的な努力が実を結ぶ。
初心にかえり、気を引き締めると良い。


【結果】
䷞◎
澤山咸(たくざんかん) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利(よろ)し。女を取る吉なり。
彖に曰く、咸は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨り、貞に利し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。


《爻辭》
九三。其の股に咸ず。執りて其れ隨ふ。往くは吝なり。
象に曰く、其の股に咸ずとは、また處らざるなり。志、人に隨ふに在り。執る所下なればなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
陰陽二気が揃ってはじめて萬物が化生する。天地万物の樣は感ずるところに現れる。同類でないものは心を通わせることが難󠄄しい。陰は陽に応じるものであるが、下でなければならない。下に在って初めて吉である。虚心になって人の意見を受け入れれば、物は感応する。


《爻辭》
股の物爲るや、足に隨ふ者なり。進めば動くを制すること能はず、退けば靜に處ること能はず。感ずる所股に在るは、志、人に隨ふに在る者なり。志人に隨ふに在るは、執る所もまた賎しきを以てす。斯を用ひて以て往けば、吝なること其れ宜なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
咸は感じることである。反転すると
雷風恒になる。恒の初爻がこの咸の上爻になったのである。恒の四爻が下って咸の三爻になったのである。つまり、柔が昇って剛が下りている。陰陽二気が通じ合っているのである。内卦は止まり、外卦は喜ぶ意󠄃である。艮の少男を兌の少女に下す。皆和順している。物事がうまく行き、正しくしていれば害はない。人が交わる時は、互いが得るものがないと心が通じ合わない。妄動して心の通わせあいが正しくないと、良くない。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
是は下経の始まりである。上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。兌は少女、艮は小男である。上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。
[彖傳]
咸は無心で咸じる所を尊ぶ。情欲の私があってはいけない。天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。
[象傳]
山上に水気が上っているのが咸の卦である。山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。我が満ちていてはいけない。
《爻辭》