5/21(土) ䷇ 水地比(すゐちひ)→䷣ 地火明󠄃夷(ちかめいい)

5/21(土) 水地比(すゐちひ)→ 地火明󠄃夷(ちかめいい)


【運勢】
周りと親しみ、協力し助け合い、信頼関係を育むのに良い時。
些細な事に惑わされてはいけない。
強い信念を持って行動すれば、自ずと道は開けるだろう。
気を引き締め、問題の解決に努めると良い。


【結果】

本卦:水地比(すゐちひ)
之卦:地火明󠄃夷(ちかめいい)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[五爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
水地比》
比は吉なり。原筮(げんぜい)。元永貞(げんえいてい)にして咎(とが)めなし。寧(やす)からざる方(まさ)に來たる。後るる夫は凶。彖に曰く、比は吉なり。比は輔(ほ)なり。下順從するなり。原筮、元永貞にして咎めなしとは、剛中(ごうちう)を以てなり。寧(やす)からざる方(まさ)に來たるとは、上下應ずるなり。象に曰く、地の上に水あるは比。先王(せんわう)以て萬國を建て、諸侯を親しむ。


《之卦:
地火明󠄃夷》
明󠄃夷は艱貞に利し。彖に曰く、明󠄃、地中に入るは明󠄃夷。内文明にして外柔順。以て大難を蒙る。文王これを以てす。「艱貞に利し」とは、その明󠄃を晦すなり。内艱にして能くその志を正す。箕子之を以てす。象に曰く、明󠄃地中に入るは明󠄃夷なり。君子以て衆に莅(のぞ)みて晦を用ゐて明󠄃なり。


【解釋】
《本卦:
水地比》
〔王弼の解釋〕
比の時にあり、筮によって咎なきを求めようとしている。元永貞であろうか。人が群れて互いに親しみ、元永貞で無ければ、凶邪の道である。もし主に遇わなければ、永貞といえども咎を免れることが出来ない。永貞で咎なき者は、ただ五爻のみであろう。上下に五爻以外に陽がない。すべて五爻に帰す。親しみ安心する。後れるものは凶である。


〔東涯の解釋〕
比は相附き比することである。九五が位を得ている。そしてほかの五陰がつき従う。多くのものが一人を助けている。吉である。元永貞の後に郡陰に当たれば咎めがない。まだ安住の地に居ないものがいる。どんな剛強の者でも咎を免れない。柔弱󠄃であれば猶更である。


〔根本通明の解釋〕
比は親密なる所である。比は密であり、密は物と物とが密着して間に隙間の無いことである。上卦は水、下卦は地である。水は地の中に浸み込んでくるから、水と土は離れることが無く、密着した状態である。五爻目は陽爻で天子にあたる。天子は人民と密着しており離れることが無い。ちょうど水と土の関係のようである。これは吉である。「筮」は神に吉凶を問い訊ねることで、「原」は再びという意で三度問うことである。つまり天子は神に吉凶を訪ねるのと同じように、諸々の人民へ何事も懇ろに問い訊ねて事を謀るのである。「元永貞」とは元徳を持つ人が、永く怠らず、貞しい所を守っていることである。これは堯舜(古代中国で徳をもって天下を治めた聖天子である堯(ぎょう)と舜(しゅん)。転じて、賢明なる天子の称のようなものである。「後夫凶」は、四方の国が名君に服しているのに、後に残って服せずに居る男が禍を受けることである。
[彖傳]
比は吉である。また互いに相輔けることである。「下順従」の「下」は下卦の坤=人民のことである。そして「順従」は坤の卦の象であり、人民が皆九五の天子のもとに集まってくることである。「不寧方来」は上から下まで残らず天子に応じて服して来ることをいう。「後夫凶」は名君に服さない者が、自ずから往くべき所がなくなり、その道に窮することをいう。
[象傳]
地の上に水があるのが比である。地に悉く浸み込んで来る水は、名君の徳性が深く人民の方へ浸み込んでいく例えである。君と民は親密な関係であり、離れようもない。こうした君民一体の関係に、皇統一系の象が含まれているのである。


《之卦:
地火明󠄃夷》
〔王弼の解釋〕
衆に莅むは顯明にして、百姓を蔽ひ僞る者なり。故に蒙を以て正を養ひ、明夷を以て衆に莅む。明を内に藏めれば、乃ち明を得るなり。明を外に顯かにすれば、乃ち辟くる所なり。


〔東涯の解釋〕
明󠄃夷は目をくらますことである。心の中では聡明で大きな徳を有しているが、外面は柔順である人、例えば文王のような人である。箕子は紂の親戚で國内にいたが、難󠄄に会い、内に志を正した。


〔根本通明の解釋〕
明らかなるものが傷ついて夷(や)ぶる。内卦の離は明らかなるもので、外卦の坤は欲である。前の卦の火地晋の明徳が欲のために夷ぶれ亡びようとする所の卦である。
[彖傳]
明らかなるものは地の底に這入って悉く失われる。明徳を身に懐いていながら、その明徳を外に現さずに巽順にして能く仕えている。その結果、柔順なる聖人は大難を蒙る。ちょうど文王と殷の紂王の無道なる時に該当する。
[象傳]
明らかなるものが地の中に這って真っ暗に為った所が明夷である。君子は万民の上に立って晦を用いる。天子は余り世間の事を細かい所まで見るようではいけない。

5/20(金) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 四爻初爻

5/20(金) 地雷復(ちらいふく) 四爻初爻


【運勢】
一陽来復。どんな災難に遭っても、運気は必ず好転する。
消極的な考え方を避け、積極的な人に倣うと良い。
偏った考え方を良しとしてはいけない。
精神の修養に努めると良い。
過ちは直ぐに改める事が大切である。


【結果】
䷗◎四⚪︎初
地雷復(ちらいふく) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
復は亨(とほ)る。出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。その道に反復す。七日にして來復す。往くところ有るによろし。彖に曰く、複は亨(とほ)る。剛反るなり。動いて順を以て行ふ。ここを以て出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。「その道に反復す。七日にして來復す」とは、天の行なり。「往くところ有るによろし」とは、剛長ずるなり。復はそれ天地の心を見るか。象に曰く、雷地中に在るは復。先王以て至日に關(せき)を閉(と)づ。商旅(しょうりょ)は行かず。后は方を省みず。


《爻辭》
[四爻 優先]
六四。中行獨復す。象に曰く、中行獨復すとは、以て道に從ふなり。
[初爻]
初九。遠からずして復る。悔に祗ることなし。元吉。
象に曰く、遠からざるの復は、以て身を修むるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
復はかえるの意󠄃味である。ひとつ前の
剝の上爻にあった陽爻が初爻に帰ったということである。一陽来復、また盛んになろうとしている。陰陽の運行が他の妨害を受けず、順調であるから、何か事をなすのに良い時期である。


《爻辭》
[四爻 優先]
四は上下各二陰有りて、厥中に處り、履に其の位を得て、初に應ず。獨復する所を得、道に順ひて反る。物之を犯すなし。故に中行獨復すと曰ふなり。四爻の上下どちらにも二陰があって、厥中の処にいる。其の位を得て、初爻と応じている。独り復の処に復するのである。道に従い、物を犯すことがない。故に「中行獨復す。」という。
[初爻]
最も復の初に處り、始めて復る者なり。復ること速からず、遂に迷ひに至りて凶。遠からずして復り、幾れ悔ありて反る。此を以て身を修め、患難遠し。之を事に錯けば、其れ殆ど庶幾からんや。故に元吉なり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
復は本の所に反(かえ)るという意である。一年で考えれば旧暦の十一月、つまり冬至にあたる。天の気が地の底に来ることで万物は生じる。この卦は天の万物を生じる所に、復(ま)た立ち反った所である。前の卦の山地剥は上九のみが陽爻で、それは碩果(せきか:大きく実った果実)を意味する。果実が地に落ちて復た芽が生える所の象である。「其道」とは、万物を生成する所の道である。「七日来復」とは、乾為天から一爻ずつ陽が減っていって全てが陰爻になり、復た新たに陽爻を生じるまで七段階の過程があることによる(乾為天→①天風姤→②天山遯→③天地否→④風地観→⑤山地剥→⑥坤為地→⑦地雷復)。雷気が往くに従って万物が発生する。また君子の勢いが昌(さか)んになれば道徳が行われる世となり、志ある者は朝廷に出て往って事を行うのが良い。それで「利有攸往」なのである。
[彖傳]
「復亨、剛反」とは、山地剥の陽爻が引っ繰り反ったのである。上卦の坤の卦徳(卦の基本的特徴)は順である。つまり天道天理に順って段々と動いて往く所であるから「動而以順行」なのである。七とは陽の発生する所の数で、これから段々と陽が長じて往く。「天地之心」は万物の生成である。
[象傳]
雷が地中に来たって居ることが「復」である。陽気は地の底へ来た所で未だ力が弱く、これを育てなければならない。そこで先王は一陽来復(いちようらいふく:陰暦十一月、冬至)の時期にあっては関門を閉ざして、商人や旅行者の往来をなくし、各人は家で静かにした。天子と雖も冬至の日には巡狩(じゅんしゅ:諸国の巡視)を罷めている。


《爻辭》
[四爻 優先][初爻]

皇武會 新年度挨拶

会長挨拶


我々皇學館武道硏究會は先月で二年目に入りました。皆様のご支援とご協力に深く感謝申し上げます。今年度も何卒よろしくお願い申し上げます。
嬉しいお知らせの後に恐縮ですが、昨今我が国の世相を見ますと、内憂外患に悩まされる事ばかり思い浮かぶのではないでしょうか。しかし平和ボケという言葉が象徴する様に日本人の危機感は希薄であります。それでも近頃は国家を憂う意識を持つ方が段々と増え始めている事は喜ばしい限りであります。
我々の研究会は、小さいながらも一歩一歩勉強会活動など行ってきました。今年度は着実に成果を上げながら、社会に貢献したいと考えております。
我々の研究会には、様々な宗教、政治思想に関係している人が多くいます。又、武士道は宗教関係なく賛同できる崇高な理念であり日本人を正しい道へと導きます。皇學館武道硏究會の目的とするところの思想信念を目指すものであるならば、何ら宗教宗派・政治思想にこだわりません。各界各層に於かれましても視野を広く持ち、祖国日本の繁栄と発展を望むものならば、小事にこだわることなく、大道に立って国家社会に貢献することを第一に考えるものであります。
我々の志は以下の通りであります。
「忠孝一致・敢為邁往・捨身取仁・質実剛健」
この気魂を持ち、精神的にも成長したいと思っていらっしゃる方、ご支援並びに、ご参加のほどよろしくお願い致します。

皇學館武道硏究會会長 小松原盛太


こんにちは、東洋文化硏究會会長の中島玄人です。
この度は、皇學館武道硏究會が設立から無事に一年経過された事、心よりお慶び申し上げます。
ここ数年の間、世界中がコロナの被害を受け人との接触を避ける様になり、諸活動のオンライン化が進みました。
ポストコロナ時代。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」との言葉通りに、歴史から教訓を得た者とそうでない者の差が明るみに出る時代です。
急速に変化する時代の荒波を超えて行くには、私達も歴史から学ぶ必要があります。
漢土の四書五経の一つ易経の雷風恆にはこの様に書かれています。恒=恆
「恆は亨る。咎なし。貞に利し。往く攸有るに利し。
彖に曰く。恆は久なり。剛上りて柔下る。雷風相ひ與す。巽にして動き、剛柔皆應ず。恆。恆は亨る。咎なし。貞に利しとは、その道に久しきなり。天地の道󠄃は恒久にしてやまず。往く攸有るに利しとは、終れば則ち始まり有るなり。日月は天を得てよく久しく照らす。四時は変化して、よく久しく成󠄃る。聖人はその道を久しくして天下化成す。その恆とするところをみて、天地萬物の情󠄃見るべし。
象に曰く、雷風は、恆なり。君子以て立ちて方を易へず。」
明治の漢学者、根本通明はこの様に纏めています。
「つね」は常と恒の二つがある。「常」の方は幾万年経っても少しも変わる所が無い。しかし「恒」の方は毎日変わり続けて居るが、幾万年経っても易わらない所が有る。
恒。時代の流れに柔軟に対応しながら、志は決して変えず次の時代へと繋げて行く。
正しく日本人が持つ「道」の精神です。
皇學館武道硏究會の志の中核も武士道です。
この時代にこの理念、図らずも歴史から学び、天が味方していると感じます。
有言実行。一年目は大きな一歩です。
一年続けられたなら、二年、三年と必ず続けられます。
様々な困難を乗り越えたからこそ、今日という日を迎えられたと感じています。
心より感謝と尊敬を込めて、お祝いとさせていただきます。

東洋文化硏究會会長 中島玄人


令和4年度 役員編成

顧問    高野裕基
会長    小松原
相談役   中島
相談役代行 竹内
副会長   高野
副会長補佐 柿坂
総務    野田


会の名称、紋変更

会の名称を[皇學館武道研究会]から[皇學館武道硏究會]へと変更した。それに伴い紋を変更した。

】皇學館武道研究会の紋
】皇學館武道硏究會の紋

令和4年5月20日付

5/19(木) ䷜ 坎爲水(かんゐすい)→䷪ 澤天夬(たくてんかい)

5/19(木) 坎爲水(かんゐすい)→ 澤天夬(たくてんかい)


【運勢】
困難の絶えない時。
思い悩み立ち止まれば、問題は先送りになり、進退極まる結果となるだろう。
迷いを振り切り、決断する事が大切である。
後悔のないよう、志を曲げず、何事も迅速に取組むと良い。


【結果】

本卦:坎爲水(かんゐすい)
之卦:澤天夬(たくてんかい)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[四爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
坎爲水》
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


《之卦:
澤天夬》
夬は王庭に揚ぐ。孚(まこと)有りて號ぶあやふきこと有り。吿ぐること邑よりす。戎に卽くによろしからず。往くところ有るによろし。彖に曰く、夬は決なり。剛、柔を決するなり。健にして說󠄁(よろこ)ぶ。決して和す。「王庭に揚ぐ」とは、柔五剛に乘ずればなり。「孚有りて號ぶ、あやうきこと有り」とは、それ危めば乃ち光るなり。「吿ぐること邑よりす。戎に卽くによろしからず」とは、尚ぶ所󠄃乃ち窮まるなり。「往くところ有るによろし」とは、剛長じて乃ち終るなり。象に曰く、澤、天に上るは夬。君子以て禄を施して下に及ぼす。德に居りて則ち忌む。


【解釋】
《本卦:
坎爲水》
〔王弼、東涯の解釋〕
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


〔根本通明の解釋〕
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖傳]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。信を失わず進んでゆくのが功である。二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象傳]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。そこで徳の行いを常にする。教育を重ね、徳を育てなければいけない。


《之卦:
澤天夬》
〔王弼、東涯の解釋〕
夬は決める、引き裂くの意󠄃味である。形は
剝の反対である。君子が勢いを持ち、徳のないもの(上爻)を征伐する象である。五陽に一陰が載っている。危うい状態に耐えきったら大きな功をなす。徳の無い者と戦うときはただ武力のみに頼るのでなく、誠実さを以て臨むべきである。終には徳の無い者は除かれ、平和になる。


〔根本通明の解釋〕
夬は円(まる)い物を欠いて割るという義である。上六の陰爻は大奸物(だいかんぶつ:悪知恵のはたらく心のひねくれた人間)である。それが九五の天子に近接している。巧言令色をもって諂って居るのが、段々と蔓延(はびこ)って害を為す。必ず上六を撃たねばならない。「揚于王庭」とは、この大臣の悪を明らかにして皆に告げる所である。「孚号」は、大臣を除くにあたり誠心をもって協力を呼び掛けるのに号(さけ)ぶ所である。天下はこれを信じ、協力は得られる。しかし兵を挙げて撃つのではない。早まってはいけない。[彖傳]
密接している悪を斬って除く。一番上の陰爻を切り離す。剛が柔を決する。柔の小人は五人の賢人君子の上に上がって権勢を専らにしているので、その罪を揚げるのである。厲(あやう)い所があるから容易に手を出してはならない。危ぶみ慎しんで、人民が騒がしくならないように能く鎮撫する。孚(まこと)を尊び、時を見て動かなければならない。早く往き過ぎると却って窮する所が出てくる。剛が次第に長じてくる所であるから、終(つい)には事を終え遂げることが出来る。
[象傳]
沢の水の気が、乾の天の上にあり、水気がまた下に戻ってくる。君子は恩沢を下々の方まで汎く施す。恩沢を上の方で置き蓄えて、吝(おし)み下へ及ぼさないのは君子にとって忌み嫌う所である。

5/18(水) ䷮ 澤水困(たくすいこん) 四爻初爻

5/18(水) 澤水困(たくすいこん) 四爻初爻


【運勢】
物事を前に進めるのが困難な時。
内実が伴わなければ信頼されない。
着飾ろうとせず、成果の出ない時は寡黙に努力し誠実さを体現すべきである。
希望を捨てず正しさを守り続ける事が大切である。好機は必ず訪れる。


【結果】
䷮◎四⚪︎初
澤水困(たくすいこん) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。彖に曰く、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。象に曰く、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。來ること徐々。金車(きんしや)に困(くる)しむ。吝(りん)なれども終はり有り。象に曰く、來ること徐々とは、志下に在るなり。位に當(あた)らずと雖(いへど)も、與(とも)有るなり。
[初爻]
初六。臀(とん)、株木(ちゅぼく)に困(くる)しむ。幽谷(ゆうこく)に入る。三歳、観ず。象に曰く、幽谷に入るとは、幽(くら)くして明らかならざるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は初爻を志しているが、二爻の金車(堅い車)に邪魔されている。金車とは二爻である。陽爻で剛く、物を載せるのによい車である。気の合う者󠄃がいても、間に障害があってなかなか会えないで困っている。しかも、初爻と二爻とは相性が良い。しかし、四爻は初爻と応じており、我慢すれば最終的には初爻と会うことが出來る。
[初爻]
最も底の下に處り、沈み滯り卑しく困しむ。居るに安んずる所なし。故に臀株木に困しむと曰ふなり。其の應ずるに之かんと欲すれども、二、其の路を隔つ。居れば則ち株木に困しみ、進めば拯ふを獲ず、必ず隱れ遯るる者なり。故に幽谷に入ると曰ふなり。困の道爲るや、數歳を過ぎざる者なり。困を以て藏しみ、困しみ解けば乃ち出づ。故に三歳まで覿ずと曰ふ。
幽と言ふは、明らかならざるの辭なり。明らかならざるに入りて、以て自ら藏するなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は初爻と応じており、四爻は陽爻、初爻は陰爻で陰陽も応じていて、非常に相性が良い。しかし、初爻は小人である。徳が無い。その諸初爻が助けを求めるので四爻は助けに向おうとするが、何分初爻は信用できないので、二の足を踏んでいる。しかも、二爻の賢人が初爻のところに行ってはならないと教え諭す。初爻を助けたいという気持ちに悩まされるが、二爻の諫めもあって、初爻のところに行かず小人と関わらずに済んだ。
[象傳]
志が下に在るというのは、四爻が初爻を助けようとすることである。四爻は陰の位に陽でいるが、二爻の賢人の助けを得て、世の中を救うことが出來る。
[初爻]

5/17(火) ䷡ 雷天大壯(らいてんたいそう) 変爻無し

5/17(火) 雷天大壯(らいてんたいそう) 変爻無し


【運勢】
勢いに流されやすい時。
冷静に状況を分析し、引き際を見極める事が大切である。
何も考えず行動すれば、余計な苦労をする事になる。行動前にひと呼吸置くと良い。
堅実に正しさを守れば、何事も上手く行く。


【結果】

雷天大壯(らいてんたいそう) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
大壯は貞に利し。彖に曰く、大壯は大なる者󠄃、壯なるなり。剛以て動く。故に壯なり。大壯は貞に利しとは、大なる正しきなり。正大にして天地の情󠄃見るべし。象に曰く、雷天上に在るは大壯。君子以て禮にあらざれば履まず。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
大は陽爻をいう。小の道は亡ぼうとしている。大は正を得る。故に利貞である。天地の情󠄃は正大である。廣く正しくあれば天地の情󠄃を見ることが出来よう。壮大で礼に違えば凶。凶であると壮を失う。だから君子は大壮でありながら礼を大切にするのである。


〔東涯の解釋〕
陰が小で陽が大である。四つの陽が壮である。二陰は徐々に薄れていく。君子の道が長く続く時である。其れなのに正しくしていれば吉というのは何故か。人は辛い状況では戒めの気持ちを持つが、楽しい時はとかく邪の心が生じやすいのである。陽の道が盛んな時だからこそ、其の機を逃すべきではなく、ちょっとした間違いに警戒しなければならない。四つの陽がみんな正しいわけではない。私なく、天地の性である正大の道を実践すべきである。盛大な時であるが、つまずくこともある。君子は平素から礼法をまもる。昔の人は天命を畏んだ。雷ほど天威に似たものはない。常に礼を大切にすべき時である。


〔根本通明の解釋〕
「大」の字は陽で、初爻目から四爻目まで重なっており、盛んな状態である。また「壮」の字は、鄭玄の解に「気力浸強之名」と有り、気力が浸(つ)いて強まって来たことだと云う。人の年齢で言えば、三十歳になり気力も積み重なって来た所である。剛いと云っても悪い方に強ければ害を為すので、正しい方に固まって居なければならない。
[彖傳]
大なるものが極めて剛くなった。卦徳では上卦の震は「動」、下卦の乾は「剛」である。従って、気力が強く動いて進む。また天の気が動き、萬物を生じる。人間の身体も天地の気を稟(う)けて居り、動いて事を行う時は正しくなければいけない。
[象傳]
雷の気は萬物を生じる所の気である。君子は礼に非ざれば履まずと云う。上卦の震は身体で言えば「足」であり、「礼」は天道天理を以て、履(ふ)んで往くことである。其処で礼に非ざる事であってはいけない。

5/16(月) ䷚ 山雷頤(さんらいい)→䷴ 風山漸(ふうざんぜん)

5/16(月) 山雷頤(さんらいい)→ 風山漸(ふうざんぜん)


【運勢】
鍛錬を積み前進するのに良い時。目標は細かく区切ると良い。
言葉の力を正しく活用出来れば、物事の成就に大きく近づくだろう。
成功者に倣うと良い。功を焦らず、地道に正しさを守る事が大切である。


【結果】

本卦:山雷頤(さんらいい)
之卦:風山漸(ふうざんぜん)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
山雷頤》
頤は貞吉。頤を觀て自ら口實を求む。彖に曰く、頤は貞吉とは養正しきときは則ち吉なるなり。頤を觀るとは其の養ふ所󠄃を觀るなり。天地は万物を養ひ聖人は賢を養ひて、以て萬民に及ぼす。頤の時大なるかな。象に曰く、山下に雷有るは頤。君子以て言語を慎み、飲食を節󠄄す。


《之卦:
風山漸》
漸は女歸いで吉。貞によろし。彖に曰く、漸は進󠄃むなり。女歸いで吉なり。進みて位を得るは往きて功あるなり。進󠄃むに正を以てす。以て邦を正すべきなり。その位剛。中をえる。止りて巽。動いて窮まらず。象に曰く、山上に木あるは漸。君子以て賢德にをりて風俗を善くす。


【解釋】
《本卦:
山雷頤》
〔王弼の解釋〕
言語飲食慎み節󠄄すべし。そのほかは言うまでもない。
〔東涯の解釋〕
頤はおとがいである。口実は食󠄃のことである。卦全体でみると初爻と上爻に陽がある。中は四つの陰である。人のあごを象る。あごは飲食をするところ。そして身を養う。だから養いの道󠄃である。正道であれば吉。食󠄃は人を養うものである。正道でなければ最終的には禍󠄃に苦しむ。質素なものを食すのが良い。
〔根本通明の解釋〕
頤は養うと云い、「オトガヒ」と訓む。丁度人の頤(あご)の象があり、
は口を開いた貌である。人の飲食する時に、上顎が動かず下顎が動くように、上卦の艮は動かず下卦の震が上の方に上がる。飲食を以て身体を養う。不正なことを以て飲食を得てはいけないが、正しき所を以てするので吉である。自分の求める所の物の、正と不正を能く観なければいけない。口の中に入れる物を皆口實と云う。艮は身体で、震は道徳である。
[彖傳]
正しき所を以て、身体ばかりではなく、道徳を養っていけば、吉である。不正の禄を受けてはいけない。天地は万物を養い、天子は賢人を養う。そして賢人の力を用いて万民を養う。天子は自身も学問を修め賢人の徳を備えて、是を以てあまねく万民を養う方法を心掛けなければいけない。
[象傳]
山下に雷気があり、是で以て万物を養う。君子は言語を慎んで徳を育う。人と話をするにも、道に背くこと、仁に違うことを言ってはいけない。言おうとする時に、控えて稽えるのが慎むことである。口に任せて言えば、後で信用を失うことになる。又飲食を節にするのは、身を養うことである。飲食は過ぎれば害を為す。


《之卦:
風山漸》
〔王弼の解釋〕
漸は漸進の卦である。止まりて巽。だから適度に進む。巽に留まるから進󠄃む。だから女嫁いで吉なのである。進んで正しいものを用いる。進んで位を得るとは五爻を指す。この卦は進むことを主る。漸進して位を得る。漸はようやく済むことや、順序良く進むことを言う。上卦は木德であり、下卦は山であるから山の上に木があり、順序正しい。また上卦は長女であり、下卦は小男であり、やはり順序が守られている。人生で最も重要な儀礼の一つが婚姻であり、順序正しく進めていくことが極めて重要である。秩序正しくあることが吉である。


〔東涯の解釋〕
漸は次順番通りに進むことである。巽は長女、進んで上に在る。進めることをゆつくりしなければならないのは、女が嫁ぐ時である。五爻が位を得て、剛が中にある。家を正し、功があるだろう。君子が仕えるときは、進󠄃むに礼を以てし、退󠄃くに義を以てする。五爻剛中の徳がある。


〔根本通明の解釋〕
漸は、小さな木が次第に成長して大木になるように、順序を立てて進んで往く意である。この卦は鴻雁(こうがん)の象を取っている。雁は水鳥で、陰鳥であるから、陽に能く従う。そのため婚礼の時には、雁を以て礼を行う。即ち、女が夫に従う義を取ったのである。また臣たるものは、必ず君に従う。国に生まれた者は、皆君に仕えなければならないと云う義も示している。
[彖傳]
女の嫁入りは、速やかにするものではない。六礼といって、六つの段に分かれており、順次進んで往って婚礼が成る。また天子は天下を治めるのに、先ず我が身を正しくする。正しい所を以て、国家を正しくすることが出来る。
[象傳]
山の上に木がある。君子はこの義を用いて、賢徳ある人物を高い所に据え、賢人の徳を以て社会風俗の悪い所を能く直して行く。

5/15(日) ䷺ 風水渙(ふうすいかん) 四爻初爻

5/15(日) 風水渙(ふうすいかん) 四爻初爻


【運勢】
物事を整理し無駄を省くのに良い時。
精神的な余裕が無い時に、状況を打開する案を思い付く事はない。
過去のしがらみを断つ事で、新たな道が生まれる。
冷静に周りの助けを借り、積極的に取り組む事が大切である。


【結果】
䷺◎四⚪︎初
風水渙(ふうすいかん) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
渙は、亨る。王有廟に假(いた)る。大川を涉るに利(よろ)し。貞に利(よろ)し。彖に曰く、渙は亨(とほ)る。剛來(きた)りて窮(きはまら)ず。柔、位を外に得て上同す。「王有廟に假(いた)る」とは、王乃ち中に在るなり。「大川を涉るに利(よろ)し」とは、木に乘じて功有るなり。象に曰く、風、水上を行くは渙。先王以て帝に亨して廟を立つ。


《爻辭》
[四爻 優先]
六四。其の羣を渙す。元吉。渙するとき丘なる有り。夷の思ふ所に匪ず。
象に曰く、其の羣を渙す、元吉とは、光大なるなり。
[初爻]
初六。用て拯ふ、馬壯なり。吉。
象に曰く、初六の吉は、順ふなり。

【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
渙とは散ること、問題が解決することである。王が散らばっている民心をまとめて、混乱を収拾し、宗廟(そうびょう)に先祖を祭り、天下を統一したことを表す。
は木であり、水の上に木があるから、舟が水に浮いている様を表すので、大きな川を渡るによいというのである。つまり大きな難題を解決できるのである。その時、常に正しさを守るべきである。


《爻辭》
[四爻 優先]
險難を踰え、位を得て巽を體し、五と志を合す。内には機密を掌り、外には命を宣化する者なり。故に能く羣の險を散らし、以て其の道を光いにす。然るに卑順に處り、自ら專らにするべからずして、自ら散らすの任を爲す。猶ほ丘墟にして匪夷の慮有り。元吉を得ると雖も、思ふ所忘るるべからざるなり。
[初爻]
渙は、散るなり。散の初に處り、乖れ散ること未だ甚しからず。故に以て遊行すべく、其の志を得て難を違るなり。危き劇に在らず、而る後に乃ち逃竄す。故に用て拯ふに馬壯んなり、吉と曰ふ。
難を觀て行き、險と爭はず。故に順なりと曰ふなり。

〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
渙は四方の水が散じて往く所の義である。下卦の坎は季節では冬、方位では北にあたり、水は冰(こお)る。氷は陰の固まりである。二・三・四爻目は震の卦で、春の真ん中(旧暦二月)であり、その時期には雷が鳴り氷が砕ける。『詩経』には、妻を娶るなら氷の泮(と)けないうちに娶れとある。妻を娶るのは陰を迎えることだからである。よって氷の融けた後には妻を迎えない。これは古からの礼である。氷が砕けて泮けるのは、渙の字と同じ義である。普通、陽は正しい方に取り、陰は悪い方に取るが、渙は悪い物を融かし砕いて正しい所にする。小人の悪い物が摧(くじ)けて無くなり、道徳の方が亨る所となる。
[彖傳]
剛は二爻目の陽爻である。坎=水であり、能く流れて何処までも達する所があるので「不窮」という。「柔」は四爻目の陰爻であり、これが巽の主爻である。有廟を假にするとは、廟を大いに盛んにすることである。天下の人は東西南北から集まり祭りを助ける。
[象傳]
風が水上を吹くのは、ちょうど二月である。氷が融けようとする時に風が吹き、氷は皆砕けて消えてしまう。これは天下の難が解ける所の象である。そこで先王は天を祭り、廟を立て、天下の諸侯皆集まって会するのである。
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]

5/14(土) ䷲ 震爲雷(しんゐらい)→䷀ 乾爲天(けんゐてん)

5/14(土) 震爲雷(しんゐらい)→ 乾爲天(けんゐてん)


【運勢】
全てに追い風が吹き、大事を行うのに良い時。
最後までやり遂げる事が大切である。
失敗を恐れず、果敢に挑戦する姿勢が求められる。
好機を最大限に活かすと良い。
覚悟を持ち臨めば何事も上手く行く。


【結果】

之卦:震爲雷(しんゐらい)
之卦:乾爲天(けんゐてん)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻][五爻][三爻][二爻]

【原文】
《本卦:
震爲雷》
震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり。笑言啞啞(ああ)たり。震百里を驚かす。匕鬯(ひちょう)を喪はず。彖に曰く、「震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり」とは、恐れて福を致すなり。「笑言(しょうげん)啞啞(ああ)たり。」とは、後に則あるなり。「震百里を驚かす」とは、遠きを驚かして邇(ちかき)を懼(おそ)れしむるなり。出でて以て宗廟社稷を守りて、以て祭主と爲すべきなり。象に曰く、しきりに雷するは震。君子以て恐懼(きょうく)脩省(しゅうせい)す


《之卦:
乾爲天》
乾は元いに亨る、貞に利し。彖に曰く、大なるかな乾の元は、萬物資りて始まる、乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗じて以て天を御す。乾道變化して、各おの性命を正し、大和を保合して、乃ち貞に利ろし。庶物に首出して、咸(あまね)く寧(やす)し。象に曰く、天行は健なり。君子以て自ら彊めて息まず。

【解釋】
《本卦:
震爲雷》
〔王弼、東涯の解釋〕
震は雷鳴を表す。上下両方とも震であり、雷鳴が轟くときは傲慢になった人々も恐れ、敬意を取り戻す。人々が恐れ敬いの心を取り戻せば、規則が守られ、幸福になる。雷鳴は遠方まで轟きわたり、人々を驚かせるが、そんな中でも先祖を祭り、神々を祭る人は重い責任にたえられる人である。


〔根本通明の解釋〕
前の卦は火風鼎である。鼎(かなえ)は天子の宝器のことで、日本では三種の神器にあたる。皇統一系は天道であって万世不易のものであるから、革命が起こっても必ず皇統一系に引き戻さなければならない。そのため火風鼎が示すように、皇后に子が無ければ、妾の子であっても皇位を嗣がせなければならない。こういう理由で鼎の卦の次に、震の卦を置いたのである。『序卦伝』にも「器を主(つかさ)どる者は長子にしくはなし。故にこれを受くるに震(しん)をもってす」とある。この震は皇太子の象である。皇太子はどのような困難に遭っても、何所までも忍耐して必ず位を嗣がなければならない。震は剛(つよ)いから亨る。また震は雷であり、この卦は雷を以て説く。卦全体の主になるのは初爻目である。虩虩(げきげき)とは恐懼する姿である。激しい雷には聖人といえども恐れ慎む。『論語』にも「迅雷風烈は必ず変ず」と出ている。大いなる災難が来るが、恐れ慎めば後には必ず福を得ることになる。天が天下を委任するに相応しい人だと思えば、禍(わざわい)を降して其の人の心身を苦しめる。艱難辛苦を経ることで忍耐力が養われて、後に大事を為せるのである。「笑言唖唖」とは、はじめ難に遭って苦しむが、後には安楽となり喜び笑う所となることである。「匕鬯(ひちょう)」は、宗廟の祭祀のときに天子自ら使う道具である。匕(ひ)は鼎の中の肉を掬(すく)い取る匙(さじ)である。鬯(ちょう)は鬱金草(うこんそう)という香草を入れて醸した酒のことである。この酒を地に撒くと香気が立ち上り、これによって神を降ろすのである。このように匕と鬯は、祭祀に於いて最も重要であることから、この卦で取り上げられるのである。身を砕くほどの雷が鳴っても、匕鬯を行える忍耐力が無ければいけない。
[彖傳]
「震亨、震来虩虩」と云うのは、災難に見舞われるも、恐れ慎んで徳を修めることで、遂に天の福を招く所となる。「笑言唖唖、後有則也」には、「後」という字が加えてあり、難と福の順序を失わないようになっている。雷により胆力を養い徳を修めた所で、皇太子が御殿から出て天子の位を継ぎ、宗廟社稷を守って祭る所の主人となることが出来る。乾為天四爻目の「或いは躍る」がこれにあたる。つまり天子が健在でも時によって皇太子が出て、宗廟社稷の祭祀を代わりに行えるだけの準備が出来ていることを意味する。
[象傳]
この卦は震が二つある。二度も三度も打ち重なって雷鳴が響く。君子は難に遭うことで、恐れ慎んで徳を修めて、我が身を省みる所が出てくるのである。


【解釋】
《之卦:
乾爲天》
〔王弼、東涯の解釋〕
無し


〔根本通明の解釋〕
乾、元亨利貞。代義易を作られた其初めは元三畫の卦乃ち乾坤震巽坎離艮兌の八卦之を小成の卦と云ふ。其小成の卦を二つ重ねた所で六畫になる之を大成の卦と云ふ、乃ち此乾の卦は以下六十四卦皆伏義之を名けたる所の大成の卦である。乾此卦が天である。設卦に乾天爲りとある、天は元亨利貞の四徳を以て萬物を生じ之れを養ふて之を成す、成して復始むる。天の徳と云ふ者は宏大なるものである。其宏大なる徳と指すものは何であるとなれば萬物を生ずる所、是れが天の徳である。生じた上には其物を成す、萬物此天の氣に因て始まって來る其れより段々萬物が出る。始まつて出る所が元である。元は始と云ふ字で物の始まる所を元と云ふ。又此元の字が大ひなると訓む。此天の元氣と云ふ物は世界中一杯に周つて居るから是れ程大ひなるものが無い。又萬物此元の氣を禀けて始まつて是も大なるに至る。暢ひて段々大きくなる。其れが爲めに此元の字が始まりとも訓み、大なるとも訓み、又首とも訓む。凡そ世の中に此天の元の徳より尊きものが無い。萬物の首らになつて居るから又首と云ふ義もある。其元を禀けて生じた萬物が段々と暢びる。暢びる丈暢びて、往くべき所迄往きて、達する所があるから之を享と云ふ。享は暢びて通ずるの義がある。利と云ふが宜しきを得るを利と云ふ。宜しきを得るとなれば、萬物暢びて宜しきを得る。中にも長短がある。長くなつて宜しきものは長くなり、短ふして其れ丈けで宜しきものは短かき所に止まる、細き物もあり太き物もあり、細くなるべき物は細くなつて宜しきを得る、太くなるべきものは太くなつて宜しきを得る、此は皆利である。又貞と云ふ事は總て萬物なる者は其物丈けに確りと出来るが正しいのである。正しく出来た上には固まつて動か無い、此れが貞。貞は正しうして固しとふ義である。其所で元は春になる。春は出づると云ふ義である、春者出也と云ふて動いて出づると云ふ義である。其所で萬物、春で始まつて出て往つて其れから暢びる。亨は夏になる、夏に至つて萬物十分に暢びて大きくなる。此夏と云ふ字が夏者假也で大ひなると云ふ字である。秋と云ふ字が秋は收なり就なりで暢びた萬物が陰氣を以て之を引斂めて來るが收むるである。引斂むる所で物就つて宜しきを得る。利は秋。貞は冬者藏なり。冬になれば、先づ其性の儘に凝つて固まる、固まつて翌年、相續して發生する迄之を蓄藏する。五毅の類が米でも豆でも皆出來て、味ひの甘い物は甘く出來、辛く出來るべき物は辛く出來る、苦く出來るべき物は苦く出來る、又酸く出來る物は酸つばい。是れが皆正しい。甘く出來る物が辛くなつては是れは正しく無い。又甘いでも酸つぱいでも無い様な物でも可けない。總て天地の間に生ずる物は皆五味の性を含んで居る。五味と云へば酸い所、苦い所、甘い所、辛い所、䶢い所、其れを皆蓄へて居る。是れは皆陰陽五行の氣を受けて居るものであるから必ず此五つの味がある。其五つの味は、物に依て萬物に至る迄、各々其性分が異つて居る。其性分丈けの所確かりと其通に成れば、正しい其儘に凝つて固まるが貞である。

5/13(金) ䷶ 雷火豐(らいかほう) 四爻三爻

5/13(金) 雷火豐(らいかほう) 四爻三爻


【運勢】
物事を前に進めるのに良い時である。
不安な気持ちに振り回される事無く、自らの考えに自信を持ち、明確な目標を定める事が大切である。
自分本位に行動せず一丸となって取り組めば、如何なる困難も乗り越えられる。


【結果】
䷶◎四⚪︎三
雷火豐(らいかほう) 四爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 老陽]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
豐は亨る。王、之に假る。憂ふる勿れ。日中に宜し。彖に曰く、豐は大なり。明󠄃以て動く。故に豐なり。王、之に假るとは、大を尚ぶなり。憂ふる勿れ。日中に宜しとは、天下を照らす宜しきなり。日中するときは則ち昃(かたむ)き、月󠄃盈(み)つるときは、則ち食󠄃す。天地の盈虚、時とともに消息す。而るを況や人に於いてをや。況や鬼神に於いてをや。象に曰く、雷電皆至るは豐。君子以て獄を折し刑を致す。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。其の蔀を豐にす。日中斗を見る。其の夷主に遇ふ、吉。象に曰く、其の蔀を豐にすとは、位當らざるなり。日中斗を見るとは、幽にして明ならざるなり。其の夷主に遇ふとは、吉の行なり。
[三爻]
九三。其の沛(はい)を豐にす。日中沫(あわ)を見る。その右肱を折る。咎なし。
象に曰く、其の沛(はい)を豐にすとは、大事に可ならざるをなり。その右肱を折るとは、終に用うべからざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
豐の義はひろめる、ひらく、微細にするである。隠れ滞っているものを通して天下の主となって、微隱にはうまく行かない。憂えは未だに収まっていない。だから、豐は亨に至るのである。そして憂えが無くなる。豐亨憂えなきの德を用い、天中に居るべきである。そして天下を照らす。


《爻辭》
[四爻 優先]
陽を以て陰に居り、其の蔀を豐にするなり。初を得て以て發し、夷主たれば吉なり。
[三爻]
沛は幡である。盛んな光を御す所以である。沫はかすかに暗い明りである。上爻と応じる。志陰にある。陰が陰に居てもまだ闇を免れない。日中沫を見ることをいう。明かりを施せば沫をみれる。用を施せば右ひじを折る。だから自分で守らなければならない。未だ用が足らない。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
豐は盛大である。知有りて動く。よくうまく行く。王者が大事業を起こす時である。火を日とし、下に在る。その徳の光明、あまねく四方を照らせば、憂うことなく、自然と豊大である。人は明󠄃がなければ物を照らすことできない。動かなければ事業は出来ない。明にしてよく動く。昔は湯王の徳を慕っていった。天が王に勇智を錫(たま)う。


《爻辭》
[四爻 優先]
[三爻]
旧本では沛を旆と書いた。王弼は幡とした。内を覆い、暗いことが甚だしい。右腕を折ってしまうと行動できなくなる。明の最上に居て、陽剛正を得て、上は上爻が陰。治めることが出来ない。二爻に比である。二は陰であり、陽に順う。暗い場所に居ても、上に頼るべき君主なし。右手を折って用いることが出来ない。位は正しい。陰暗の世に居て、明正の功があり、問題ない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「豊」は腆(あつ)いと云う義で、物が厚く充ち満ちて居ることである。世の中で云えば、天子が名君で政事が能く行き届いて居り、天下が盛んで富んでいることである。しかしながらどれだけ盛んであっても、衰える所も出て来る。下卦の離は日である。東に在る時は未だ日が低いが、日中になれば遍く東西南北を照らし届かない所は無い。ただし日が昃(かたむ)くといけない。
[彖傳]
天子の明徳は宜しく四海天下を照らすべきで、暗い所が出て来てはいけない。しかしながら日が南中すれば、やがては傾いて往く所がある。月も満ちれば、欠けて来る。天地の道は斯くの如きもので、いつまでも保つことは難しい。人間の主でなって居る所の鬼神と雖も、神明なることもあれば、時には神明ならざることもある。自然の勢いと云うものは、力を以て動かすことは出来ない。
[象傳]
雷と電が一書に来るのが豊の卦である。天下が皆富んで、上下安楽の時である。しかし安楽であると、自然と人の心には奢りが出て来るようになる。其処で刑罰を厳重にしなければいけない。


《爻辭》
[四爻 優先]
此れもどこ迄も君を惑はすのである。日中に大ひなる星を見る其處で之に誨へる言ばである。此九四は矢張大臣で居る。大臣たる者は飽迄君の明を蔽ふと云ふでは可けない。其所で其夷主に遇へば吉なり。夷主と云ふのは此初九を指して言ふ。其所で之に誨へる辭ばには兎角我身を全ふするには大臣の官を拗ちて其下賤なる所の我主とする其物に就て能く初九の賢人と親む様にしたならば吉であると云ふ所は速かに位を去れと云ふ事を諷諌するのである。其夷主に遇ふたならば吉である。
[象傳]
其蔀を豊にするは位當らざるなり。我身分は大臣の位に坐つて居る。其大臣の位は我が身に不相當である。小人の身を以て永く其所に居るべき譯のもので無い、其れを日中に斗を見ると云ふものは今の世の中が暗くなつて明かで無いと云ふものは此大臣が君を晦ますからである。其所で我れは大臣の地位を去つて其夷主に遇へば吉であると云ふものは行るなり、我が是迄居る所の位を去る所を言ふのである、行ると云ふは此位を棄て。去つて行く、然うすれば免れる。何時迄も富貴を貪つて居れば可けない。
[三爻]
六二は日中に北斗七星を見る程暗いが、九三に至っては小さな星まで見える程に愈々暗い。小人が盛んになって、我が寵愛を専らにするために、君の明徳を塞ぐ。九三は上六と応じて居る。上六は君の側で大臣の地位にあるが、最も小人であり、是が君を惑わす甚だしい者である。上六は豪傑で剛にして正しい所の九三を我が党派に引き込もうとするが、それを憂えた九三は自ら我が腕を折ってしまい、上六に対して用を為さないことを明らかにする。従って咎は無い。
[象傳]
小人が権勢を専らにして居れば、大事を行ってはいけない。右肱を折ると云うのは、誓って上六のための働きを為さないことを示す。