9/30(金) ䷸ 巽爲風(そんゐふう) 三爻

9/30(金) 巽爲風(そんゐふう) 三爻


【運勢】
優柔不断な振る舞いで顰蹙を買う時。
中庸の美徳を養い、明確な目的を持ち努力をすると良い。
厳しい指摘に反感を持つのでは無く、しっかり聞き従う事が大切である。
相手の意志を尊重出来る人は、相手から尊重される。


【結果】
䷸◎
巽爲風(そんゐふう) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
巽は小(すこ)し亨(とほ)る。往く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大人を見るに利し。
彖に曰く、重巽以て命を申(かさ)ね、剛、中正に巽して志行はる。柔皆剛に順ふ。是を以て小し亨る。往く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大人を見るに利し。
象に曰く、隨風は巽。君子以て命を申(かさ)ね、事を行ふ。


《爻辭》
九三。頻に巽ふ。吝なり。
象に曰く、頻に巽ふの吝は、志窮るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
巽の德であるから、少しうまく行く。上下ともに巽。令に違わず命が行われる。だから命が重なり、事が行われる時、上下ともに巽なのである。巽はよく仕えて行くことである。拒むものはない。大人は巽を用いて道がいよいよ盛んになる。剛が巽を用いる。中正に居るのは譲られたのである。明󠄃は間違えることがない。だから少しうまく行くのである。


《爻辭》
頻は、頻蹙。樂しまずして窮まる、已むを得ざるの謂なり。其の剛正なるを以て、四の乘る所と爲る。志窮まりて巽ふ。是を以て吝なるなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
巽は順である。一陰が二陽の下に居て陽に順っている。また、入るという意味もある。風、木、命令を意味する。五爻は剛で中正である。大人の象である。命令に重複がある。初爻と四爻は陰であり、陽に順う。大きなことは出来ないにしても、小さなことは出来る。命令は、剛が過ぎれば厳しすぎて民が従えず、乱れてしまう。柔が過ぎれば緩くなり、秩序が乱れてしまう。剛中の君に柔が順う状況なら、大きな成功は見れなくても、官職について君に仕えるのに支障はない。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
巽は四爻目の陰爻と初爻目の陰爻が卦の主である。陰爻は、上に重なる陽爻に順っていけば能く亨り、進んで事を行う所に宜しきを得る。この卦はもとは山風蠱から変わったものである。天子の晩年に政治が乱れ、崩御後に太子が即位した。そして朝廷に入り込んだ小人を除きさり、天下を斉(ととの)えた所の象である。古代、堯が隠居して舜に政を斉えさせたのは、まさに此の卦の義である。
[彖傳]
なし
[象傳]
巽は重ねて命令を下し、能く下へ諭す。是までの政の弊害を悉く除いた後で命令を下す。剛は五爻目で、中正の所に坐っており、思う通りに志が行われて往く。柔は初爻目で二・三爻目に順う。四爻目も五・上爻目に順う。そこで小人は大人を見て順い事を行うのが宜しい。
《爻辭》

9/29(木) ䷺ 風水渙(ふうすいかん)→䷥ 火澤睽(かたくけい)

9/29(木) 風水渙(ふうすいかん)→ 火澤睽(かたくけい)


【運勢】
物事を整理し無駄を省くのに良い時。
相手を貶めるのではなく、高め合える関係を築く事が大切である。
大事を行うには時期尚早である。
小事から着実に取り組み、視野を広げて行く事が大切である。


【結果】

本卦:風水渙(ふうすいかん)
之卦:火澤睽(かたくけい)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][初爻]


【原文】
《本卦:
風水渙》
渙は、亨る。王有廟に假(いた)る。大川を涉るに利し。貞に利し。
彖に曰く、渙は亨(とほ)る。剛來(きた)りて窮(きはまら)ず。柔、位を外に得て上同す。王有廟に假るとは、王乃ち中に在るなり。大川を涉るに利しとは、木に乘じて功有るなり。
象に曰く、風、水上を行くは渙。先王以て帝に亨して廟を立つ。


《之卦:
火澤睽》
睽は小事に吉。
彖に曰く、睽は火動いて上り、澤動いて下り、二女同居して、その志同じく行はれず。說󠄁(よろこ)びて明󠄃に麗(つ)き、柔進みて上行す。中を得て、剛に應ず。是を以て小事吉。天地睽(そむ)いてその事同じきなり。男女睽いて其の志通ずるなり。萬物睽いて其の事類するなり。睽の時用大なるかな。
象に曰く、上火下澤は睽。君子以て同じくして異なり。


【解釋】
《本卦:
風水渙》
〔王弼、東涯の解釋〕
渙とは散ること、問題が解決することである。王が散らばっている民心をまとめて、混乱を収拾し、宗廟(そうびょう)に先祖を祭り、天下を統一したことを表す。
は木であり、水の上に木があるから、舟が水に浮いている様を表すので、大きな川を渡るによいというのである。つまり大きな難題を解決できるのである。その時、常に正しさを守るべきである。


〔根本通明の解釋〕
渙は四方の水が散じて往く所の義である。下卦の坎は季節では冬、方位では北にあたり、水は冰(こお)る。氷は陰の固まりである。二・三・四爻目は震の卦で、春の真ん中(旧暦二月)であり、その時期には雷が鳴り氷が砕ける。『詩経』には、妻を娶るなら氷の泮(と)けないうちに娶れとある。妻を娶るのは陰を迎えることだからである。よって氷の融けた後には妻を迎えない。これは古からの礼である。氷が砕けて泮けるのは、渙の字と同じ義である。普通、陽は正しい方に取り、陰は悪い方に取るが、渙は悪い物を融かし砕いて正しい所にする。小人の悪い物が摧(くじ)けて無くなり、道徳の方が亨る所となる。
[彖傳]
剛は二爻目の陽爻である。坎=水であり、能く流れて何処までも達する所があるので「不窮」という。「柔」は四爻目の陰爻であり、これが巽の主爻である。有廟を假にするとは、廟を大いに盛んにすることである。天下の人は東西南北から集まり祭りを助ける。
[象傳]
風が水上を吹くのは、ちょうど二月である。氷が融けようとする時に風が吹き、氷は皆砕けて消えてしまう。これは天下の難が解ける所の象である。そこで先王は天を祭り、廟を立て、天下の諸侯皆集まって会するのである。


《之卦:
火澤睽》
〔王弼、東涯の解釋〕
睽は背くの意󠄃である。小さな事には吉である。二爻と五爻が相性が良く(応じている)、下の
沢が喜んで火につき従い、五爻が柔(陰)であり、二爻と応じてゐる。よって大きなことには用いるべきでないが、小事には良い。


〔根本通明の解釋〕
睽は互いに相反して和せざる所の卦である。『説文解字』には互いに反目する貌とある。上爻の離の卦は目である。下卦は兌の卦で癸(みずのと)で、この陰の卦が主となっている。陰は小事の方が吉であって、大事は良くない。
[彖傳]
火の性は動けば上がり、水は動けば下方へ流れる。また火は物を焼いて害し、水は物を潤して生じるから、その性質は反対である。人でいえば、家族が別々になって相争う所の卦である。兌の卦は少女で、巧言令色で旨く寵愛を得ており、内の方で権を握って居る。少女を大切にして、年を取っている離の中女を遠ざけて居れば、互いに嫉妬心が起こり、火が熾(さかん)になるように互いに害しあう。兌にも毀折の象がある。しかし反目は何時までも続くのではなく、相和する所の象もある。兌は說(よろこ)んで明らかなる方へ麗(つ)く。五爻目が陰爻で、二爻目は剛で陽爻である。君臣でいえば、君が弱く、臣が強いという卦である。君を輔ける者が少ないから、大事を行うのはいけない。小事が吉である。しかし君臣は国家の為に為すべき所があり、天地は萬物を生じさせ、夫婦は一家を興す。つまり半目し合っていても志は通じており、大いなる仕事を為す所がある。
[象傳]
上る方の火と、下る方の沢とで相背くが如くである。しかし君の為に尽くそうという所は皆同じである。人によって皆長じる所が異なっており、武をもって事(つか)える者がいれば、文をもってする者もいる。君子は是を用いて事を為す。

9/28(水) ䷠ 天山遯(てんざんとん)→䷩ 風雷益(ふうらいえき)

9/28(水) 天山遯(てんざんとん)→ 風雷益(ふうらいえき)


【運勢】
賢人に倣い執着心を手放すのに良い時。
無理に進んでも良い事は無い。ゆとりのある生活が求められる。
相手に寄り添い、誠意を持って正しさを守る事が大切である。
好機は主体性のある人に訪れる。


【結果】

本卦:天山遯(てんざんとん)
之卦:風雷益(ふうらいえき)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[四爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
天山遯》
遯は亨る。小しく貞に利し。
彖に曰く、遯は亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當りて應ず、時と與に行くなり。小しく貞に利しとは、浸して長ずるなり。遯の時義大なるや。
象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡うせずして嚴にす。


《之卦:
風雷益》
益(えき)は、往く攸(ところ)有るに利し。大川を涉るに利し。
彖に曰く、益は上を損して下を益す。民說󠄁(よろこ)ぶこと疆(かぎ)りなし、上より下に下る。其道󠄃大に光なり。往く攸(ところ)有るに利(よ)しとは、中正(ちうせい)にして慶(けい)有り。大川を涉るに利しとは、木道(もくどう)乃ち行く。益は動いてしかして巽(したが)ふ、日に進むこと疆(かぎ)りなし。天施し地生(しょう)ず。其益方(かた)なし。凡そ益の道󠄃は、時と偕(とも)に行ふ。
象に曰く、風雷は益。君子以て善を見れば則ち遷(うつ)り、過(あやまち)有れば則ち改む。


【解釋】
《本卦:
天山遯》
〔王弼、通解の解釋〕
遯の義なるや、遯るれば乃ち通ずるなり。五を謂ふなり。剛位に當りて應ず。亢を否ぐに非ざるなり。遯れて亢を否がず。よく時と與に行ふ者なり。陰道浸して長ぜんと欲す。正道もまた未だ全く滅びず。故に小しく貞に利しなり。天の下に山有り、陰長の象なり。


《之卦:
風雷益》
〔王弼、東涯の解釋〕
益は増すこと、増やすことである。
否の上卦の四爻が陽から陰となり、下爻の初爻が陰から陽になっているので、上が損をして下が得をした象である。上の者が損をして、下の者󠄃を助けることはとても良いことで、また二爻が陰、五爻が陽で、中正であるので、大事業をするのに好機である。上の者が動けば(震)、下の者が従う(巽)象である。


〔根本通明の解釋〕
この卦は、前の卦の山沢損と反対である。山沢損は地天泰より来た。そして地天泰は天地否から来た。天地否は、上卦は乾、下卦は坤である。坤は空しさの象で、人民の困窮する卦である。そこで九四の陽爻が下りて、初六の陰爻が上る。これで風雷益の卦になる。これが下を益するという義である。上卦の震は、農業の卦である。人民を富ますのは農業であり、これは何処までも推奨される。それで「利有攸往」である。こうして人民が富んでいれば、如何なる大難が起こっても踏み越えて往く所となる。よって「利渉大川」である。
[彖傳]
「損上益下」とは、天地否の九四の陽爻を一つ損(へ)らして、代わりに初六の陰爻を益すことである。そこで民が説(よろこ)ぶ。陽が段々進んで往けば兌の卦になる。農事が盛んになればなるほど、人民は利益を得る。天の気が地の底に下って万物が生じる。出で来たものは大きくなって花が咲き草木に光を生じる。よって「其道光大」となる。「中正にして慶(よろこ)び有り」とは、中正(二爻が陰、五爻が陽で、爻が定位通りであること)の五爻目の天子に、同じく中正の二爻目が応じることである。いわば名君と忠臣が相助けて人民を生育する所に、慶びが出で来る。「木道乃行」とは、震と巽に対応する五行が双方とも木であり、万物が盛んになることである。
[象傳]
上卦が巽=風で、下卦は震=雷である。雷が起こると、風はこれを助ける。また巽は外卦であり、修飾して能(よ)く齊(ととの)えるという所がある。つまり外の人が行いを修めて行く所を見れば、周囲の者も自ずから其の方へ従って遷って往く。そして過ちがあれば速やかに改める。震には過ぎるという象があり、もし往き過ぎれば、物を害してしまう。雷山小過は霆(激しい雷)である。雷は下から上に昇るが、霆は上から打ってくる。これは往き過ぎである。善い事も過ぎると害を為すから、これを改めなければいけない。

9/27(火) ䷜ 坎爲水(かんゐすい) 変爻無し

9/27(火) 坎爲水(かんゐすい) 変爻無し


【運勢】
大きく道を見失う時。
どんなに辛い状況でも、芯を曲げず自分を信じて行動する事が大切である。
思い悩み立ち止まれば、問題は先送りになり、進退極まる結果となるだろう。
やるべき事を整理して迅速に取組むと良い。


【結果】

坎爲水(かんゐすい) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。
彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。
象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


〔根本通明の解釋〕
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖傳]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。信を失わず進んでゆくのが功である。二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象傳]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。そこで徳の行いを常にする。教育を重ね、徳を育てなければいけない。

9/26(月) ䷐ 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し

9/26(月) 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し


【運勢】
相手を尊重し思いやるのに良い時。
自分本位で軽率な行動を続ければ、やがて取り返しのつかない事態になる。
高い志を持ち、誠実に先人の教えに従うと良い。
目標を明確にし、先を見据えて努力する事が大切である。


【結果】

澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
隨(ずゐ)は元(おほ)いに亨(とほ)る。貞に利し。咎なし。
彖に曰く、隨は剛に來たりて柔に下る。動いて說󠄁(よろこ)ぶは隨。元いに亨り、貞。咎めなし。しかして天下時に隨(したが)ふ。時に隨(したが)ふの義、大なるかな。
象に曰く、澤中に雷あるは隨。君子以て晦(みそか)に嚮(むか)ひて入りて宴息(えんそく)す。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
隨はしたがうの意󠄃味である。内卦は震で動き、外卦は兌であり、よろこぶの意󠄃である。君主が行動するとき、人々はよく協力してくれる、また思い通りにできる。人々は時機にしたがい行動する。


〔根本通明の解釋〕
随は後ろに随って行く義である。同じ「したがう」でも、従の字は左に付いても右に付いても従うだが、随の字は後ろに附いて行くという義である。初九はニに随う。二は三に随う。三は四に随い、四は五に随い、五は六に随う。先の方に随うという象があるが、何でも随へば良いわけではない。仁義礼智に外れないようにすれば咎が無い。
[彖傳]
初九の陽爻が二・三爻目に随っているので、剛柔に随う。下卦の震は雷なので動く。動いた先の兌が說ぶ。随うには正しき所をもってすれば、必ず大いに亨る。二・三・四爻目の艮は時の象がある。時は重要で、必ず随わなければならない。
[象傳]
兌は秋、雷は春である。春に雷が出で、秋に沢中に潜む。これは時に随うの義である。君子は晦に嚮(むか)う。晦は日の暮れる所である。

9/25(日) ䷿ 火水未濟(かすいびせい) 上爻四爻

9/25(日) ䷿ 火水未濟(かすいびせい) 上爻四爻


【運勢】
初心に返り、気を引き締めるのに良い時。
真摯な態度で見栄を張らずにいれば、周りから非難される事はない。
静かな自信を持つと良い。意欲的であれば大抵の事は順調に進む。
最後までやり遂げる事が大切である。


【結果】
䷿◎上⚪︎四
火水未濟(かすいびせい) 上爻四爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
未濟は亨(とほ)る。小狐、汔(ほとん)ど濟(わた)る。其の尾を濡らす。利(よろ)しき攸(ところ)なし。
彖に曰く、未濟は亨るとは、柔、中を得るなり。小狐、汔(ほとん)ど濟(わた)るとは、未だ中に出でざるなり。其の尾濡らす利しき攸なしとは、續いで終らざるなり。位に當たらざると雖も、剛柔應ずるなり。
象に曰く、火、水上に在るは未濟。君子以て愼みて物を辨(わきま)へて方に居る。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九。飲酒に孚あれば、咎なし。其の首を濡らせば孚有れども是を失ふ。
象に曰く、酒を飲みて首を濡らすとは、また節󠄄を知らざるなり。
[四爻]
九四。貞なれば吉にして悔亡ぶ。震ひて用て鬼方を伐つ。三年にして大國に賞せらるること有り。
象に曰く、貞なれば吉にして悔亡ぶとは、志行はるるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
柔が中にあり、剛に違わない。よく剛健を納めるので、うまく行く。小狐が大きな川を渡ることができない。あと少しの所󠄃で実現できない。剛健が難を抜き、その後に可能になる。ほとんどわたれるが、危険を脱することができない。小狐渡れるだろうが、余力がない。もう少しで渡れるのであるが、力尽きる。終わりまで続けられない。今も険難の時である。未濟はまだ険難の時が終わらないの意󠄃味である。位に当たらないので未濟である。剛柔が応ずれば済む。


《爻辭》
[上爻 優先]
未濟の極みである。既濟の逆である。任ずるところは当たる。任せるところが当たると、信じられる。疑いなくして喜ぶ。だから飲酒にまことがあり、咎められないという。よく物を信じられるので、喜びを得る。事が廃れるのを恐れないが、楽しみに耽ることが甚だしく、節󠄄を失するまでに至る。
[四爻]
未濟の時に處りて、險難の上に出づ。文明の初に居り、剛質を體し、以て至尊に近きなり。履むに其の位に非ずと雖も、志正に在れば、則ち吉にして悔亡ぶ。其の志行はるるを得て、其の威を禁ずること靡し。故に震ひて用て鬼方を伐つと曰ふなり。鬼方を伐つとは、衰を興すの征なり。故に衰を興すに至る毎に、義を取る。文明の初に處り、始めて難を出づ。其の德未だ盛ならず。故に三年と曰ふなり。五は尊位に居りて柔にして、文明の盛なるを體す。物の功を奪はざる者なり。故に以て大國之を賞するなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
未濟は事が成就しないことである。火が上に在り、水が下に在る。上下交わらない。互いに用いないので未濟という。五爻は柔で中にいる。ことはよく通󠄃るが、初爻は陰で一番下にいて中に到らない。狐は陰の存在であり、積極的にやろうとすると失敗に終わる。始めはうまく行く。そして、下に止まっていればよいのである。いたずらに難局を打開しようとすれば失敗する。君子は外は時勢を見て、内は己の才をはかる。上が陽で下が陰である。互いに妨害しない。


《爻辭》
[上爻 優先]
上爻は剛明󠄃の才を以て最上の位に居る。不安が無いわけではないが、天命に任せているので楽しみがあり、不安を忘れる。ただし、楽しみに耽るのが度を越せば、其の首を濡らすに至るという。注意しなければならない。
[四爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
下は水上は火である。水は低きにあり火は上に昇るもので、居るべき場所にいるが、互いに和することが無い。互いが作用しないので、萬物が創造されない。しかし、両者あるべき場所に在る。しかし、いずれは互いに動き出し、交わり始めるのである。だから最終的には亨るのである。
坎は狐である。この卦の場合、小さな狐である。それが川を渡ろうとするが、終にはしっぽを濡らしてしまう。狐は川を渡る時にしっぽを濡らさないようにあげている。疲れてくるとしっぽが下がり、水につかって驚いて引き返してしまう。忍耐力が無いのである。忍耐力が無いと何事をしてもうまく行かない。気力が無いと何事も達成できないのである。
[彖傳]
柔が中を得ている。五爻のことである。これが主爻である。また初爻に關しては、あと少しのところまでやって、忍耐力なく引き下がる。この卦全体でみると、ことごとく全て位を外している。陰は陽に居て、陽は陰に居る。しかし、隣同士陰陽で相性が良く、うまく行っている。また、初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻、それぞれ応じている。最終的にはうまくいくのである。
[象傳]
火は南に居り、水は北に居る。自分の居場所をはっきりとしていて、混じるところが無い。何事もはっきりと分ける象である。
離はものを明󠄃らかにする。それぞれが自分のいる場所にいることを示している。


《爻辭》
[上爻 優先]
上爻は戦も終わって君臣相和らいで宴会を開いている。宴会の時も君臣、よく身分を弁えていれば間違いがない。安楽に耽って、だんだん増長するようではいけない。
[象傳]
飲酒が行き過ぎて節度が無くなる。宴会もほどほどでやめなければならない。折角太平になっても、節度を忘れて安楽に耽ってばかりいると、また乱世になってしまう。
[四爻]

9/24(土) ䷻ 水澤節󠄄(すいたくせつ) 変爻無し

9/24(土) 水澤節󠄄(すいたくせつ) 変爻無し


【運勢】
無理をせず、拘りを捨てるのに良い時。
物事を秩序立て、堅実に進めると良い。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。度が過ぎる事は周りから理解されず、不和を生んでしまう。
相手の立場に立って考える事が大切である。


【結果】

水澤節󠄄(すいたくせつ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
節󠄄は亨(とほ)る。苦節貞(てい)すべからず。
彖に曰く、節󠄄は亨(とほ)る。剛柔(ごうじゅう)分かれて、剛中を得る。「苦節は貞すべからず」とは、その道窮(きは)まるなり。よろこびて以て險(けん)を行き、位にあたりて以て節󠄄(せつ)す。中正にして以て通ず。天地節󠄄して四時成り、節󠄄して以て度を制すれば財を傷(そこな)はず、民を害せず。
象に曰く、澤上に水あるは節󠄄。君子以て數度(すうど)を制し、德行を議(ぎ)す。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
坎は陽で兌は陰である。陽が上で陰が下である。剛柔が分かれている。剛柔が分かれて乱れない。剛が中を得て制となる。主節󠄄の義である。節󠄄で最大は剛柔が分かれている時である。節󠄄で苦を過ぎれば堪えられない。それでは正に復せない。喜んで險を冒さず、中を過ぎて節󠄄となれば道󠄃が窮まる。


〔東涯の解釋〕
節󠄄は分かれて度がある。竹の節のことである。陰陽が均等である。二爻と五爻が剛中である。節󠄄があれば通り、及ばないという弊害がない。上爻は陰柔で正を得て窮まれば、節󠄄を過ぎて窮まる。君子の道は中に適うを貴しとする。人は剛で折れず、柔で撓まなければよろしい。又偏ることがない。うまく行く。及ばないことを恐れるのでなく、行き過ぎることに注意すべきである。


〔根本通明の解釋〕
節は竹の節に由来する。中が空洞で通っているが、所々に節があり止まって堅く動かない。上卦は坎で水が流れて通じるが、下卦は兌で水が止まり、節の象がある。総ての事は竹の節の様に分限がある。天地の間にも、君と臣の間にも、一家の中にも各々身分に応じて為す所がある。しかし己の分を守るということも、度を越せば苦節となる。孟子に陳仲子という人物がおり、節義を守ることを徹底する余り、無道の君から受ける禄を穢れると言って嫌悪する。しかしそれでは生きていくことは出来ない。我が身を苦しめ無理をしてまで節を守ろうとしてはいけない。
[彖傳]
下卦が陰=柔で、上卦が陽=剛である。上卦の主爻は五爻目で、下卦の主爻は三爻目である。剛と柔が上下に分かれ、陽爻は皆中を得ている。「苦節不可貞」は行う所の道が窮して行えなくなることである。陳仲子の様に窮することになる。
[象傳]
沢の上に水が流れる。沢は四方に堤防があって水を溜めている。これが節である。程好い所に止まっている。君子は節に則って政を行う。

9/23(金) ䷞ 澤山咸(たくざんかん) 五爻二爻

9/23(金) 澤山咸(たくざんかん) 五爻二爻


【運勢】
鈍感であるが故に事なきを得る時。軽率な行動は慎むと良い。
公明正大な者に倣い、広い視野を持ち自然な感性を養うと良い。先入観を持たず、何事も素直に捉える事が大切である。
内実の伴う行動で誠意を示すと良い。


【結果】
䷞◎五⚪︎二
澤山咸(たくざんかん) 五爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利し。女を取る吉なり。
彖に曰く、咸は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨り、貞に利し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。其の脢に咸ず。悔なし。
象に曰く、其の脢に咸ずとは、志末きなり。
[二爻]
六二。その腓(こむら)に咸ず。凶。居れば吉。象に曰く、凶と雖(いえど)も居れば吉とは、順(したが)えば害あらざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
陰陽二気が揃ってはじめて萬物が化生する。天地万物の樣は感ずるところに現れる。同類でないものは心を通わせることが難󠄄しい。陰は陽に応じるものであるが、下でなければならない。下に在って初めて吉である。虚心になって人の意見を受け入れれば、物は感応する。


《爻辭》
[五爻 優先]
脢は、心の上にして、口の下なり。進みて大いに感ずること能はず、退くもまた志なきを爲さず。其の志淺末なり。故に悔なきのみ。
[二爻]
咸の道、轉り進み、拇を離れ腓に升る。腓の體は動き躁ぐ者なり。物に感じて以て躁ぐは、凶の道なり。躁ぐに由るが故に凶、居れば則ち吉なり。處るに剛に乘らず。故に以て居りて吉を獲るべし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
咸は感じることである。反転すると
雷風恒になる。恒の初爻がこの咸の上爻になったのである。恒の四爻が下って咸の三爻になったのである。つまり、柔が昇って剛が下りている。陰陽二気が通じ合っているのである。内卦は止まり、外卦は喜ぶ意󠄃である。艮の少男を兌の少女に下す。皆和順している。物事がうまく行き、正しくしていれば害はない。人が交わる時は、互いが得るものがないと心が通じ合わない。妄動して心の通わせあいが正しくないと、良くない。

《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
是は下経の始まりである。上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。兌は少女、艮は小男である。上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。
[彖傳]
咸は無心で咸じる所を尊ぶ。情欲の私があってはいけない。天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。
[象傳]
山上に水気が上っているのが咸の卦である。山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。我が満ちていてはいけない。
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]

9/22(木) ䷻ 水澤節󠄄(すいたくせつ) 上爻二爻

9/22(木) 水澤節󠄄(すいたくせつ) 上爻二爻


【運勢】
無理をして行き詰まる時。上手く行かないが後悔はない。
己の望まぬ道を進めば、上手く行ったとしても、選択を思い煩う事になる。
完璧に拘ってはいけない。困難な時こそ視野を広く、冷静さを保つ事が大切である。


【結果】
䷻◎上⚪︎二
水澤節󠄄(すいたくせつ) 上爻二爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
節󠄄は亨(とほ)る。苦節貞(てい)すべからず。
彖に曰く、節󠄄は亨(とほ)る。剛柔(ごうじゅう)分かれて、剛中を得る。「苦節は貞すべからず」とは、その道窮(きは)まるなり。よろこびて以て險(けん)を行き、位にあたりて以て節󠄄(せつ)す。中正にして以て通ず。天地節󠄄して四時成り、節󠄄して以て度を制すれば財を傷(そこな)はず、民を害せず。
象に曰く、澤上に水あるは節󠄄。君子以て數度(すうど)を制し、德行を議(ぎ)す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。苦節す。貞なれば凶。悔い滅ぶ。
象に曰く、苦節、貞なれば凶とは、その道窮まるなり。
[二爻]
九二。門庭出でざれば、凶。
象に曰く、門庭を出でざれば凶とは、時を失ひて極るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
坎は陽で兌は陰である。陽が上で陰が下である。剛柔が分かれている。剛柔が分かれて乱れない。剛が中を得て制となる。主節󠄄の義である。節󠄄で最大は剛柔が分かれている時である。節󠄄で苦を過ぎれば堪えられない。それでは正に復せない。喜んで險を冒さず、中を過ぎて節󠄄となれば道󠄃が窮まる。


《爻辭》
[上爻 優先]
上爻は苦節が行き過ぎている。苦節に固執してはいけない。しかし、極限まで行ったので、この苦節に堪えたなら道が開けるだろう。
[二爻]
初爻は已に之を造り、二爻に至りて宜しく其の制を宣ぶるべし。而るに故らに之を匿す。時を失うことの極なれば、則ち遂に廃す。故に「門庭を出でざれば則ち凶」である。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
節󠄄は分かれて度がある。竹の節のことである。陰陽が均等である。二爻と五爻が剛中である。節󠄄があれば通り、及ばないという弊害がない。上爻は陰柔で正を得て窮まれば、節󠄄を過ぎて窮まる。君子の道は中に適うを貴しとする。人は剛で折れず、柔で撓まなければよろしい。又偏ることがない。うまく行く。及ばないことを恐れるのでなく、行き過ぎることに注意すべきである。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
門庭は、門内の庭である。中門の外に在る。周禮、閽人門庭の埽を掌る。鄭氏は「門相当の地。疏という。中門外の地。之を門庭という」といっている。この爻は節にあり、陽を以て陰に居る。上に正応するものない。乗戻の質に懐いて、一節に固執する。退くこと知って、進むことを知らないものである。故に「門庭出でざれば、凶。」という。才能が有って、良い機会が遭う。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
節は竹の節に由来する。中が空洞で通っているが、所々に節があり止まって堅く動かない。上卦は坎で水が流れて通じるが、下卦は兌で水が止まり、節の象がある。総ての事は竹の節の様に分限がある。天地の間にも、君と臣の間にも、一家の中にも各々身分に応じて為す所がある。しかし己の分を守るということも、度を越せば苦節となる。孟子に陳仲子という人物がおり、節義を守ることを徹底する余り、無道の君から受ける禄を穢れると言って嫌悪する。しかしそれでは生きていくことは出来ない。我が身を苦しめ無理をしてまで節を守ろうとしてはいけない。
[彖傳]
下卦が陰=柔で、上卦が陽=剛である。上卦の主爻は五爻目で、下卦の主爻は三爻目である。剛と柔が上下に分かれ、陽爻は皆中を得ている。「苦節不可貞」は行う所の道が窮して行えなくなることである。陳仲子の様に窮することになる。
[象傳]
沢の上に水が流れる。沢は四方に堤防があって水を溜めている。これが節である。程好い所に止まっている。君子は節に則って政を行う。
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]

9/21(水) ䷩ 風雷益(ふうらいえき) 上爻

9/21(水) 風雷益(ふうらいえき) 上爻


【運勢】
益の極。私欲にまみれ、公に尽くす気持ちを失ってしまう時。
周りから信頼されず、物事は次第に上手く行かなくなるだろう。
献身的な行動が周りを感化する。
相手に寄り添い、誠意を持って正しさを守る事が大切である。


【結果】
䷩◎
風雷益(ふうらいえき) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
益(えき)は、往く攸(ところ)有るに利し。大川を涉るに利し。
彖に曰く、益は上を損して下を益す。民說󠄁(よろこ)ぶこと疆(かぎ)りなし、上より下に下る。其道󠄃大に光なり。往く攸(ところ)有るに利(よ)しとは、中正(ちうせい)にして慶(けい)有り。大川を涉るに利しとは、木道(もくどう)乃ち行く。益は動いてしかして巽(したが)ふ、日に進むこと疆(かぎ)りなし。天施し地生(しょう)ず。其益方(かた)なし。凡そ益の道󠄃は、時と偕(とも)に行ふ。
象に曰く、風雷は益。君子以て善を見れば則ち遷(うつ)り、過(あやまち)有れば則ち改む。


《爻辭》
上九。之を益すことなく、或いは之を撃つ。心を立つること恆勿し。凶。
象に曰く、之を益すことなしとは、偏の辭なり。或いは之を撃つとは、外自り來るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
益は増すこと、増やすことである。
否の上卦の四爻が陽から陰となり、下爻の初爻が陰から陽になっているので、上が損をして下が得をした象である。上の者が損をして、下の者󠄃を助けることはとても良いことで、また二爻が陰、五爻が陽で、中正であるので、大事業をするのに好機である。上の者が動けば(震)、下の者が従う(巽)象である。


《爻辭》
益の極に處り、盈に過ぎる者なり。益を求めて己なく、心恆なき者なり。厭ふなくして之求むれば、人與せざるなり。獨り唱へて和するなし。是れ偏の辭なり。人の道は盈つるを惡み、怨む者は一に非ず。故に或いは之を撃つと曰ふなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は、前の卦の山沢損と反対である。山沢損は地天泰より来た。そして地天泰は天地否から来た。天地否は、上卦は乾、下卦は坤である。坤は空しさの象で、人民の困窮する卦である。そこで九四の陽爻が下りて、初六の陰爻が上る。これで風雷益の卦になる。これが下を益するという義である。上卦の震は、農業の卦である。人民を富ますのは農業であり、これは何処までも推奨される。それで「利有攸往」である。こうして人民が富んでいれば、如何なる大難が起こっても踏み越えて往く所となる。よって「利渉大川」である。
[彖傳]
「損上益下」とは、天地否の九四の陽爻を一つ損(へ)らして、代わりに初六の陰爻を益すことである。そこで民が説(よろこ)ぶ。陽が段々進んで往けば兌の卦になる。農事が盛んになればなるほど、人民は利益を得る。天の気が地の底に下って万物が生じる。出で来たものは大きくなって花が咲き草木に光を生じる。よって「其道光大」となる。「中正にして慶(よろこ)び有り」とは、中正(二爻が陰、五爻が陽で、爻が定位通りであること)の五爻目の天子に、同じく中正の二爻目が応じることである。いわば名君と忠臣が相助けて人民を生育する所に、慶びが出で来る。「木道乃行」とは、震と巽に対応する五行が双方とも木であり、万物が盛んになることである。
[象傳]
上卦が巽=風で、下卦は震=雷である。雷が起こると、風はこれを助ける。また巽は外卦であり、修飾して能(よ)く齊(ととの)えるという所がある。つまり外の人が行いを修めて行く所を見れば、周囲の者も自ずから其の方へ従って遷って往く。そして過ちがあれば速やかに改める。震には過ぎるという象があり、もし往き過ぎれば、物を害してしまう。雷山小過は霆(激しい雷)である。雷は下から上に昇るが、霆は上から打ってくる。これは往き過ぎである。善い事も過ぎると害を為すから、これを改めなければいけない。
《爻辭》