【運勢】
社会の秩序が自然の力によって破壊される、困難な日になるだろう。
困難の中耐え、生き延びる事が大切である。
自然の法則を理解し、従う事で徳を得る事もできる。
【原文】
《卦辭》
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。
彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。
水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。
象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。
《爻辭》
上六、係(つな)くに、徽纏(きてん)を用ひて、叢棘に眞く。三歳得ず、凶。
象に曰く、上六道󠄃を失ふ。凶なること三歳なり。
【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《卦辞》
☵坎(水)は険難の卦である。
それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。
この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。
どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。
《爻辞》
上爻は陰惡の小人である。
小人は縄で縛られ牢屋に入れられて、三年たっても抜け出すことができない。
険難の最後(上爻)まで抗い続け、正しい心を持てないとこうなるのである。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。
しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。
たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。
この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。
この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖伝]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。
水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。
水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。
このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。
信を失わず進んでゆくのが功である。
二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。
山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。
また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象伝]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。
水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。
そこで徳の行いを常にする。
教育を重ね、徳を育てなければいけない。
《爻辞》
是は天下を紊(みだ)し危険を行う大臣の最悪の者である。
大臣と雖も最後は刑戮を加えなければいけない。
縄を以て是を捕縛し、牢へ入れて置く。
獄中に三年置いて教訓するが改心して善人になることはないだろう。
その為に獄から引き出して殺すことも已むを得ない。
[象伝]
上六は重罪を犯した者であるから凶である。
三年の間、悔い改める様に種々な教訓をするが、改心が得られない。
何処までも道を失っている。
三年経っても変わらなければ、是を殺さねばならない。