【運勢】
陽の強い働きは、陰と交わると損なわれる。
このまま流れに従えば、初爻の陰は次第に力を増し、進むべき正道は塞がれてしまうだろう。
ただ焦る必要は無い。
先ずは心を落ち着かせ、欲に惑わされない様注意すると良い。
【結果】䷫◎三
天風姤(てんぷうこう) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]
【原文】
《卦辭》
姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。
彖に曰はく、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。
象に曰はく、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。
《爻辭》
九三。臀に膚无し。其の行くこと次󠄄且。厲めば大なる咎无し。
象に曰はく、其の行くこと次󠄄且とは行きて未だ牽かれざるなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
姤は遇うことである。柔が剛に遇う。人でいうと女が男に遇󠄄うのである。一人の女が五人の男に遇󠄄う。大変強靭な女である。取るべきでない。剛が中正であるから天下はあまねく王化󠄃に帰すのである。言義は見えるところを表現しきれない。
《爻辭》
下卦の最上位に居るが二爻は初爻に依っている。応じるものが無い。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
姤は遇󠄄うことである。一陰が下に生じて、五つの陽にあったのである。一陰が五つの陽に対峙する。その大壮はすさまじいが、陽が必ず勝つ。このような陰を用いてはならない。陰陽が互いに對待(たいたい)することは、天地の常経である。陰が盛んであると陽が損なわれる。臣下が君主に背くのも、婦が夫を凌駕するのも皆陰が盛んだからである。姤の卦が戒めるところである。
《爻辭》
上に応じるものが無い。正しくしているが常に危険をはらんでいる。よくそのことを自覚していれば大きな咎はない。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は初六の陰爻が主役で、他の陽爻は賓客のような訳になる。
陰は長じて、次第に陽を侵食していく。
陰爻つまり女の方から、進んで陽爻に遇う所がある。
其処で女を娶るという方へ、この卦を用いてはならない。
[彖伝]
「遇」は多いがけない所で遇うと云う義である。
柔は剛に遇うと云うのは、女の方から進んで男に遇うという義である。
このような女を娶ると、次第に増長して往くから娶ってはならない。
剛中に遇うというのは、九五の剛が九二の賢人に遇う所を云う。
賢人は朝廷へ出ようとする初六を抑え止める。
そのため剛は賢人と相謀って、初六を正しくする。
[象伝]
天の下に風が旋ぐるように、天下に命令を下す。
四方に遍く告げ諭して、能く治め斉(ととの)える。
旧弊を除きはらって政を以て天下を新たにする。
《爻辭》
九三は初六の陰を求めようとする。しかし出掛けて行こうとすれば、九二に抑えられ行くことが出来ない。其所で動かずに坐っているが、丁度臀に疵(きず)がある様に安坐が出来ない。九二は九五の天子と深く結んでいるから、之を犯しては我が身が厲(あや)うい。しかし九二に抑えられて行かずに居る所であるから、大いなる咎は無い。
[象伝]
九三が行こうと歩き出しても、未だ初六の為に牽かれない。初六に牽かれると、矢張り小人の部に這入って我が身に害がある。九二の為に之を止められた所が幸いである。