【運勢】
困難な時が終わりを迎える。
これからの成果が自身に大きく影響するので、中正を守り、進み続けると良い。
初心を忘れず、平安な時も常に注意深くいる事が大切である。
【結果】 ䷾◎三⚪︎初
水火旣濟(すいかきせい) 三爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[三爻 優先][初爻]
【原文】
《卦辭》
旣濟は亨(とほ)る。小、貞に利し。初めには吉、終はりには亂る。
彖に曰はく、旣濟は亨るとは、小なる者、亨るなり。貞に利しとは、剛柔正して位當たる。初めは吉とは、柔、中を得るなり。終に止まれば則ち亂る。其の道󠄃窮まるなり。
象に曰はく、水、火の上に有るは旣濟。君子以て患を思ひて豫め之を防ぐ。
《爻辭》
[三爻 優先]
九三。高宗、鬼方を伐つ。三年にして之に克(か)つ。小人は用うること勿(なか)れ。
象に曰はく、三年にして之に克つとは、憊(つか)れたるなり。
[初爻]
初九。其の輪を曳く。其の尾を濡す。咎无し。
象に曰はく、其の輪を曳くとは、義咎无きなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
旣濟は完全に渡り切ったという意味である。
小は残らず渡り切った。
五爻と二爻が位に当たっているので、邪悪なことは出来ない。
ただ正しければ上手く行くのである。
柔が中を得たら、小はとおるのである。
柔は中を得ていないならば、小はまだ通らない。
小はまだうまく行っていない。
剛で正を得ているといっても、まだ旣に渡り切れていないのである。
だから旣濟の要は柔が中を得るにあるのである。
旣濟を安定となすのは、道󠄃が窮まり進めないからである。
止まるから乱れるのである。
存續している時に亡びることを忘れない。
旣濟は未濟を忘れてはいけない。
《爻辭》
[三爻 優先]
旣に渡りきった時、文明の終わりに居る。
衰えの末に居てよく渡り切ることができる。
君子はここに居て、よく挽回することができる。
小人であったら国を失うだろう。
[初爻]
初爻は旣濟の最初にあたり、初めて川を渡り切ったものである。
まだ川から上がったばかりで、乾いていない。
だから車輪を曳くのに、尾が濡れているのである。
まだ替えを作っていないけれども、心に未練なく、志は難を放棄している。
その義に於いては問題ない。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
濟は交わり作用しあうことである。
火が下に在って炎上し、水は上に在って下を潤す。
陰陽が互いに作用していることである。
陰陽六爻がそれぞれ正しいところにある。
二爻は陰で中を得て、上には坎つまり止がある。
だから始めは吉を得て、終には止まってしまい、衰乱の時代になる。
治乱盛衰は永遠に互いに作用し続ける。
陰陽が交わり互いに作用し、日が南中しているようであり、月󠄃が満月に近い状態である。
よくうまく行くといっても、ただ小のみである。
大吉ではない。
ただ正しさを守るべきである。
そうしなければ始めはうまく行っても、終いには乱れるのである。
易の戒めるところである。
《爻辭》
[三爻 優先]
高宗とは殷王の武丁である。
廟は高宗といふ。
鬼方とは夷のいる方である。
陽で陽に居る。
剛を作用させる至りである。
天下が旣に定まり、遠方の異民族を伐つ時代である。
まだよい成果がない。
戦争が三年続き、漸く勝利した。
徳の無い者を用いると、いたずらに略奪行為などをして侵略の害が甚だしい。
決して小人を用いてはならない。
國内に憂えが無くなり、遠征するが、なかなか勝てないものである。
国に勢いがあるからと言って武力で周りを脅してはならない。
武力行使は極力避けるべきで、秦の始皇帝や漢󠄃の武帝はこの戒めを忘れてしまい、國に災いをもたらした。
易が強く戒めるところである。
[初爻]
初爻は陽であって下に居る。
上に良く応じるものがあり、其の志は鋭く上昇志向である。
しかし初爻であり、大きなことが出來る立場ではない。
大願は遂󠄅には達成できない。
その車輪は曳かれ、馬は尻尾を濡らす。
そして進むことができない。
過ちはないので咎はない。
時勢には通塞がある。
時は悪くないが、遅れることは免れない。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
水火相和して、萬物悉く生育する。
何事も亨り達する。
小なるものの二爻目は、主爻となり、陰爻を以て陰位にある。
よって中を得て居り、小なるものが正しくして居る。
内卦は始まりで、萬物が盛んになって来るが、半ばを過ぎれば衰えが出て来るから、油断をせずに対策しなければならない。
[彖伝]
二爻目は柔で陰位にあり、九五は剛で陽位にあり、正しく剛柔である。
険難が除けて、天下泰平になる。
安楽になれば人は動かず、為すべきことを怠って、乱れが起って来る。
[象伝]
水火相和しているというものの、性質で言えば分かれる所がある。
水は火の上に在れば宜しいが、水の性質は下を好む。
又火の氣が何処までも上がり、互いに反対に為って相害する所が出て来る。
安楽なる内に災の出ない様に之を防がなければならない。
《爻辞》
[三爻 優先]
九三は険難を飛び越えて天下太平に為った。
其の熾んなる勢いに乗じて、鬼方を討つため、遠方へ兵を挙げて用いる。
鬼方は北方の蛮夷だが兵力が強く、三年掛かって漸く克った。
併し是れは事を好む小人が起こしたものである。
天子はこのような一仕事を望む小人を用いてはいけない。
[象伝]
三年掛って克ったのは、克っても負けた道理である。
三年もの間遠方へ往って戦った結果、国は極めて憊れてしまって居る。
之は戒むべき事である。
[初爻]
車の輪を曳いて、既に危険なる所を渉り越えて居る。
速やかに陸へ上ぼる事を急がなければいけない。
車を曳く牛が未だ水の中に這入って居るので、尾が濡れて居る内に、人が手伝って早く引き揚げなければならない。
心が緩まなければ、義に於いて咎は無し。
[象伝]
世の中の険難なる所を平げて天下を定めるには、賢人を用いなければいけない。