2/22(火) ䷨ 山澤損(さんたくそん)→䷁ 坤爲地(こんゐち)
【運勢】
目に見える資産を失うより、心を狭める方が人生を貧しくする。
大らかな心を持つと良い。
正道を守る上で、不必要な力は持つべきでない。
慣例や秩序に対して敬意を払い、従順さを示す事が大切である。
【結果】䷨→䷁
本卦:山澤損(さんたくそん)
之卦:坤爲地(こんゐち)
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[上爻][二爻][初爻]
【原文】
《本卦:䷨ 山澤損》
損はまこと有り元吉。咎めなし。貞すべし。往くところ有るによろし。曷(たれ)をかこれ用ゐん。二簋(にき)用ゐて享すべし。
彖に曰く、損は下を損して上を益す。その道󠄃上行す。損してまこと有り。元吉咎めなし。貞すべし。往くところ有るによろし。曷(たれ)をかこれ用ゐん。二簋(にき)もちゐて享すべし。二簋(にき)時あるに應じ、剛を損して柔を益す。時有り。損益盈虚時とともに行はる。
象に曰く、山下に澤あるは損。君子以て忿(いかり)を懲らし、欲を窒(ふさ)ぐ。
《之卦:䷁ 坤爲地》
坤は元(おほ)いに亨(とほ)る。牝馬の貞に利(よ)ろし。君子往くところ有り。先(さきだ)つときは迷ひ、後るるときは主を得るに利あり。西南には朋を得る。東北には朋を失ふ。安貞にして吉。
彖に曰く、至れるかな坤元。萬物、資(よ)りて生ず。乃ち順にして天を承(う)く。坤、厚くして物を載す。德无疆に合ふ。含弘光大にして品物、咸(ことごと)く亨る。牝馬は地類。地を行くこと疆なし。柔順利貞は君子の行ふところ。先だつときは迷ひて道󠄃を失ひ、後るるときは順にして常を得る。西南には朋を得る。乃はち類と行く。東北には朋を喪ふ。すなはち終に慶有り。安貞の吉は地の无疆に應ず。
象に曰く、地勢は坤。君子以て厚德者物を載す。
【解釋】
《本卦:䷨ 山澤損》
〔王弼の解釋〕
外卦の艮は陽であり、内卦の兌は陰である。
陰は陽に順うものである。
陽は上にとどまり、陰は喜んで順う。
下を損じて、上を益す。
上に上昇するということである。
損の道は下を損して上を益し、剛を損して柔を益す。
不足を補うものではない。
君子の道を長ずるわけでもない。
損して吉を得るには、ただ誠の心がある場合だけである。
だから元吉なのである。
剛を損して柔を益す、それで剛を消さない。
下を損して上を益す。
それで上を満たして剛を損して邪をなさない。
自然にはそれぞれ分というものが決まっている。
短き者󠄃が不足しているわけでなく、長者󠄃が余っているわけでもない。
損益とは、常なきものであり、だから時とともに動くのである。
〔東涯の解釋〕
損は減少である。
損䷨は泰䷊の三爻(陽)と上爻(陰)とを入れ替えたものである。
下が損して上が益する様である。
天子は下を益することで、自らも利益を得るものであるから、下を損させて、益を得ようとすることはよくないことである。
損は結果的に良い場合と悪い場合があるが、誠の心があれば問題はない。
あくまで正しくあろうとすべきである。
二つの簋(祖󠄃先を祭るときに用いる祭器)を用いて祭祀をすればよい。
損益は時に應じておこなわれるとよい。
〔根本通明の解釋〕
この卦は「損」を意味する。
損とは有る物を失って不足になることである。
前の卦の雷水解は、難が解ける卦である。
解ければ人の心が緩む。
緩めば損を生じる。
この卦は、もと地天泰の下卦三爻目を損して、上卦三爻目に益すことによる。
地天泰は下卦が乾であるから、下の方が満ちている。
つまり人民が富んでいる。
初爻目にはじまり、二爻目になると丁度良い加減になるが、三爻目になると度を過ぎてしまう。
そこで余りを以て上に献ずる。
そうして下卦は兌になり、上卦は艮になるのである。
上の方ではこれを止(と)める。
上は人民を十分に富ましたいので、献じなくてよいとするが、下は余剰を差上げる所を以て喜びとする。
兌の卦は喜びを意味している。
こうして上下富んでいるのは、上の徳義による。
互いに孚(まこと)があるので、元吉にして咎が無い。
しかし、是も程良い所でなければいけない。
そこで貞が大切である。
乾は満ちているから、奢りが生じる。
余剰は御祭用に献上するのが良い。
多くの献上物があっても、天子は二簋の祭器しか用いず倹約する。
八簋供えるべきところに、僅か二簋だけでも祭りは出来る。
孚を以てすれば供物が少なくとも神は是を享けるのである。
[彖傳]
損の卦は下を損(へ)らすから名付けられた。
下を損らして、上を益すのである。
下は上の為にどこまでも盡したいと思って行う。
「損而孚アリ、元吉咎ナシ」とは、前の彖の辭をここへ述べてきたのである。
二簋というのは倹約を言うが、損らすのも時による。
豊年で献上物が多ければ、益すこともある。
下は上に献上するが、上はこれを止めて、倹約をする。
内卦の剛を損らして、上卦の陰へ益すというのも時による。
凶年の時には上から下へ益して来ることもある。
損すべき時には損し、益すべき時には益す。
満ちるべき時には満ち、虚なるべき時には虚になる。
これも其の時節に従って時と共に行うのである。
[象傳]
山下に澤があるのは損である。
君子はこれを用いて怒りを徴らしめる。
この「徴」の字は「懲らす」という字と同じである。
これは止める義であり、元は乾の卦である。
乾は三畫とも剛である。
強い所に剛が重なり、気が立って怒りになる。
これを損らして、怒りを止めて、喜びに変ずるのである。
三爻目が上へ往って、上六の陰が下に来ると、兌の卦となる。
つまり喜ぶところとなる。
また欲は坤の卦の象である。
坤は吝嗇(りんしょく:極度に物惜しみすること)であって、どこまでも欲が深い。
上は坤の卦であるから、欲が盛んである。
その欲を窒(ふさ)ぐには、坤の上爻が変じて、艮になれば欲が止むのである。
《之卦:䷁ 坤爲地》
〔王弼の解釋〕
坤は貞によろしい。牝馬によい。馬下にあって行く。牝馬は柔順の至りである。柔順を尽くして後にうまく行く。牝馬の正しいものによろしい。西南は人を養う地である。坤の方角である。だから友を得る。東北は西南の逆である。友を失う。乾は龍を以て天を御し、坤は馬を以て地を行く。地は形の名である。坤は地を用いるものである。両雄は並び立たない。二人主が居るのは危うい。剛健と對をなす。長く領土を保つことが出来ない。順を致していない、地勢が順わない。その勢は順。
〔東涯の解釋〕
坤の爻はすべて陰。順の至りである。牝馬は柔であり強く行く。この卦は柔にして健である。主に遇うとは、陽に遇うことである。西南は陰、東北は陽。順の至りでうまく行く。君子まず行くところがあれば迷い、後に主を得る。西南に行くと友を得て、東北に行くとその友は離れる。正しいことだけをしていれば吉。天の気を承け萬物を生ず。陽に先んじてはならず、陽の後に行けばよい。
〔根本通明の解釋〕
坤は乾と對であり、乾は天、坤は地である。牝馬の話が出るが、これは乾の方が牡馬であることをも示している。臣たるもの、必ず朝󠄃廷に行って君に仕えなければならない。しかし、無学では全く役に立たないから、そのためには朋(とも)をもって助け合わなければならない。西南は坤である。☴巽の卦、☲離の卦、☷坤の卦、澤兌の卦は陰の卦である。そこで、西南に陰の友が集まっている。朋は友と違う。一緒に勉強するもののことを朋というのである。友とは朋の中でも特に親しいものである。朋の字は陰で、友の字は陽である。始めのうちは陰の友達が必要である。そこで西南が良いのである。また、東北は朝󠄃廷を意味する。乾の気で萬物は始まり、坤の気で萬物に形が備わる。坤の卦は地の上に地を重ねているから、地盤は盤石である。天の気がどこまでも拡大していくのに、陰の気はどこまでも従うのである。牝馬が牡馬に従うように、臣下は君主に仕えるのである。先に行こうとしてはいけない。常に後ろについていくべきである。臣下は朋友を失うことになるが、君主に仕えることでそれを克服するだけの喜びを得る。慶(ケイ、よろこ)びは高級な臣下の卿(ケイ)に通じる字である。上に鹿の字が附くが、昔は鹿の皮を以て喜びを述べた。人々が集まってくるのである。
[大象傳]
地が二つも重なっているので盤石である。物を載せても耐えられる。つまり様々なことを任されても耐えられる存在なのである。