【運勢】
徳のある人間は評価され、欲がある人間は評価されない。
徳を見定める事は難しいので、人は欲があるかないかを見て評価する。
道を大きくひらく事が出来るが、何事も行き過ぎない事が大切である。
【原文】
《卦辭》
晋は康侯(しょうこう)用ゐて馬を錫(たま)ふこと蕃庶(ばんしよ)。晝日三接す。
彖(たん)に曰(い)はく、晋は進むなり。明󠄃地上に出づ。順にして大明󠄃に麗(つ)く。柔進みて上行す。是を以て康侯用ゐて馬を錫(たま)ふ蕃庶。晝日三接すなり。
象に曰はく、明󠄃、地上に出づるは晋。君子以て自ら明德を照(あきらか)にす。
《爻辭》
上九。其の角に晋(すす)む。これ用ゐて邑(むら)を伐(う)つ。厲(あや)ふけれども吉なり。咎なし。貞なれども吝なり。
象に曰はく、「これ用ゐて邑を伐つ」とは、道󠄃未だ光らざるなり。
【解釋】
〔王弼、伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
晋は進󠄃むである。
地上に日が昇り、あまねく天下を照らす象である。
陰が三つ上に登って太陽に付き従っている。
これは名君に人々が仕える象である。
そして立派な諸侯となり、王は恩恵を賜る。
三陰は柔順の徳がある。
君子は德を明らかにし、天下あまねくその恩恵を受ける。
《爻辭》
上爻は進む所が極まったわけであるが、今も上爻は陽であり中庸でない。
このような状況では反逆者を討とうとしてもそこまで人々はついて来ないので、小さな村単位の反逆者を倒せるほどである。
勢いがない。
吉であり、問題はないが、後悔することも多い。
聖人が言うように中庸が大切である。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦は日を表し、下卦は地を表す。
太陽が昇ったばかりを象っている。
萬物も誕生すると、太陽と同じように進んでいく。
萬物は日の力を借りて生長するのである。
『説文解字』に「日出でて萬物進󠄃むなり」とあるのは、そういうことである。
康侯とは「国を平和にする臣下」の意味である。
そして、自分の国を平󠄃安に治める諸侯は、国情を君主に報告するために朝廷に來る。
一日に三回報告することになっていて、自分の国で生まれた名馬を献上するのである。
[彖傳]
太陽が地上に出て、大地をあまねく照らす様を表す。
天子が上に在って、諸侯が拝謁する所󠄃を表す。☲離は明󠄃である。
大明󠄃は☰乾であり、その真ん中の爻が下の☷地に影響されて陰になっているので、「順にして大明󠄃に麗く」というのである。
[象傳]
地の下に日があると真っ暗なように、陽の上に陰があると暗い。
陰は人の心の欲である。
欲があると徳が輝かないので、君子は自らの明徳を示すためにこの卦を参考にする。
『大学』で「大学の道󠄃は明徳を明󠄃らかにするに在り」とはこのことである。
《爻辭》
上爻は☲離の卦の一番上であり、離は兵の象である。
陽爻であるから、過剰に陽が强い。
角は先がとがった固いもので、要󠄃は兵器である。
討伐する相手は外国でなく、邑、これが実は大臣のことである。
大臣が国内で悪政を敷いているので、君主は討伐しなければならない。
それは危険なことであるが、国政にとっては吉である。
それは恥ずべきことである。
何故なら、君主が有徳者なら本來、大臣を討伐するようなことにはならないからである。
[象傳]
君主が大臣を討たなければならなくなったのは、まだ君主の徳が足りないからである。