【運勢】
大きな好機を得るが、慎重に進まなければ、好機を活かす事は出来ない。
助け合いの心が何より大切である。
人任せでいると、折角の好機があらぬ方向に進み、責任を取る事になる。
【原文】
《卦辭》
鼎は元(おほ)いに吉、亨(とほ)る。
彖に曰はく、鼎は象なり。木を以て火に巽れて、亨飪(かうじん)するなり。聖人亨(かう)して以て上帝を亨す。而して大いに亨して以て聖賢を養ふ。巽(そん)にして耳目(じもく)聡明(そうめい)。柔進みて上行す。中を得て剛に應ず。是を以て元いに亨る。
象に曰はく、木の上に火有るは鼎(てい)。君子以て位を正し、命を凝(あつ)む。
《爻辭》
九四。鼎足を折り、公の餗(そく)を覆(くつがへ)す。その形渥たり。凶。
象に曰はく、公の餗を覆すとは信に如何ぞや。
【解釋】
〔王弼、伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
古い制度が新しく刷新され、新しい制度が定着するので大吉である。
さらに、それが長くなる持続するので亨るという。
鼎(かなえ)は食べ物を煮炊きする器である。
程子はこの卦自体が鼎の形を象っているとする。
初爻が鼎の足で、二爻から四爻までが鼎の腹、五爻が口で、上爻が蓋であるとする。
下が木德であり、上が火德であるから、物の煮炊きに良いので、鼎とされるのである。
革の卦と対応しており、五爻と二爻が応じており、和順で聡明である。
だから、大吉なのである。
何かをする時に人の助けがあり、その人に任せられる。
君臣の心が通じ合っている。
おそらく、亨と烹は音が通じるので古代にはどちらも使われていたのであろう。
《爻辭》
[王弼]
四爻は上卦の土台にあたり、初爻と応じている。
その任に耐えられないので、足が折れるという。
そのせいで、尊󠄄位のひとの食事をこぼしてしまった。床が食べ物で濡れている。
[伊藤東涯]
諸本には「形渥」を「刑屋刂」とつくる。重い刑である。
陰の位なのに陽でいる。
この大臣は天下の賢人と力を合わせて行動しなければならない。
そこで応じている初爻を登用したが、実力がなく任に堪えなかった。
それで公(四爻)に大恥をかかせることになる。それを鼎の足が折れて、公の食事をこぼすと表現しているのである。
気が合うからと言って小人を用いてはならない。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
鼎は三足の鍋で、天下の宝器であり、王の象徴である。
日本でいうところの三種の神器である。
鼎は五味を調和することが出來る。
だから肉であれ、魚であれ、釜で煮た後、最後は鼎に移して味を調えたのである。
天地宗廟の祭祀に用いる神饌は鼎で調理され、賓客への御馳走も鼎が用いられた。
伏羲の時代には、一つの鼎が宝器であった。
もとより天地万物は一つのものから生じたわけで、天地人の三才は鼎の三足、それが鼎により調和されるのである。
それが黄帝の時代に三つの鼎になった。
三才を表すためであるという。
堯舜までは三つであった。
その後、夏王朝初代の禹王の時代に九つになった。
なぜなら、九州(漢󠄃土全体は九つの國に分かれていた)を象徴するためである。
周代まで九つであった。
政治も料理と同じで、五味を調和して誰にとってもおいしいものでなければならない。
だから鼎が王の象徴なのである。
王を助けるのは宰相であるが、この宰の字は肉を盛って料理をこしらえるという意味である。
そして十翼に鼎を主るのは長子であるとする。
つまり、皇太子が皇統を継ぐべきであるというのである。
それでこそ元吉なのである。
[彖傳]
初爻が鼎の足、二から四までに☰があるが、これは物が入る部分である。
五爻が耳、上爻が持ち運びのためのひもにあたる。五爻の耳に通すのである。
元来、鼎は門外で煮炊きするもので、宗廟の門外東である。
[象傳]
木の上に火がある。
火は物を煮炊きするのに必要であり、強すぎても弱すぎてもいけない。
火にも陰陽があり、陽の火は強すぎて、すぐにものが焦げてしまう。
逆に弱すぎると火が通らないで生のままである。
陰陽が程よい状態ではじめて煮炊きが可能である。
牛羊豚で鼎を分ける。
是を三鼎という。
三鼎は日月星を表す。
心は巽順で耳目がしっかりしている。
五爻の王は二爻の賢人を用いて大いに栄えるのである。
《爻辭》
四爻は大臣である。
この大臣は自分と気が合うという理由だけで、徳の無い初爻を用いてしまった。
それで、任に堪えず国政は混乱する。
丁度鼎の足が重みに堪えず、折れてしまい、中に入っていた料理がこぼれてしまうようなものである。
その料理というのが、宗廟に捧げる神饌で、八珍である。
八珍とは八つの珍味という意味で豪華な料理である。
八の数字にこだわらなくてよく、四方八方から極上の食材が集まったということである。
極上の料理も、それを担当する人間のせいで台無しになる。
政治も大臣の私心のせいで、変な人間に任せると大変なことになるのである。
その大臣に対する刑は至極ひどいもので、屋刂という。
小さな小屋で行われ、人に見せないために屋刂というもので覆いながら行われる。
駄目な人間を私心で雇ったら、大臣が罰を受けるのである。
[象傳]
政治の混乱が起こってはどうしようもない。
その悪人を私事で用いた大臣には極刑が施行されるのである。