6/19(日) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 五爻

6/19(日) 雷水解(らいすいかい) 五爻


【運勢】
立ち止まり悩むのではなく、力強く対応する事が大切である。
外寛内明を心掛け、模範的に行動すると良い。
一貫した姿勢で取り組む事が大切である。
感情的にならず、最後まで正しさを守れば、困難な問題も解決出来る。


【結果】
䷧◎
雷水解(らいすいかい) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
解は西南によろし。往くところなし。それ來たり復すれば吉。往くところあれば、夙(つと)にして吉。
彖に曰く、解は險(けん)以て動く。動いて險より免(まぬが)るるは解。「解は西南によろし」とは、往(い)きて衆を得るなり。「それ來たり復して吉」とは、乃(すなは)ち中を得るなり。「往くところ有れば夙にして吉」とは、往きて功あるなり。天地解(ひら)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作りて百果艸木(ひゃくかそうもく)皆甲拆(こうたく)す。解の時大なるかな。
象に曰く、雷雨作るは解。君子以て過ちを赦(ゆる)し、罪を宥(ゆる)す。


《爻辭》
六五。君子維(こ)れ解くことあり。吉。小人に孚有り。
象に曰く、君子解くこと有りとは、小人退󠄃くなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は衆である。難を解決し、危険を整える。利を衆に施す。また東北に困まらない。故に東北に利がないとは言わないのである。まだ、困難を解決するによくない。安に処する迷う。解とは困難を解決し、厄を除くことである。中を失わない。難があっても行けば、迅速であれば吉。難が無ければよく中に復す。難があれば厄を除く。


《爻辭》
五爻は尊󠄄位であり中である。また二爻の剛と応じている。解決することがあり、吉である。君子の道󠄃を以て難󠄄を解き、險を解決する。小人は暗いが、この君子に服して問題がないことを知っている。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
解は解散の意󠄃である。危険に居てよく動けば、険難を回避できる。卦は変じて蹇となる。二爻が蹇の外卦に行き、五爻が西南坤の方に行く。坤には地の象がある。險の中でよく動ける才でよく進み、よく止まる。どこでも通用する。君子は陰陽を和し、過失であれば赦して問わず、罪悪があれば、寛大にこれを宥す。仁政の至りである。解の道である。


《爻辭》
柔順中正であり、尊󠄄位に居る。下は二爻に応じている。徳のある君が位に居て、小人は自ずから遠ざかる。解けることがあれば、吉であり小人の去る効果がある。古より國の小人を除くには、大きければ兵を動かす。小さければ刑罰を用いる。力を費やさなければならない。有徳の君子であれば、物事は自然に変化し、小人は刑罰を用いなくても自然に退散する。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦の水山蹇(
、天下の険難なる所の卦)が解けた所の卦である。長い大乱で農業が廃れ、人民は衰えてしまっている。西南は坤の卦で、地の象である。地に五穀を植立てて、以て人民を養う。天下が平らいだなら、進んで事を為す所の仕事は無い。漸次人民を養えば宜しい。若し大乱が平らいでいても、進んで往く所の事柄があるならば、速やかに往ってこれを治めるのが宜しい。
[彖傳]
険難に屈せずに踏み越えて外へ出ることで、険難を免れた。西南は坤の卦で、衆口衆口という象がある。大勢の人民を我が方へ撫で育てるようにしなければいけない。既に大難は解けているから、多く仕事をし過ぎず、程良い所に止(とど)まるのが宜しい。往くべき所があるなら、往けば必ず功が出て来る。
[象傳]
天地に於いては万物を生じ育(やしな)う時である。君子に於いては仁を行う時であるから、人を殺めるのは良くない。其所で過ちを赦し、罪人を宥(なだ)める。善い事を為す心で行った悪事を過ちと云い、それならば無罪になる。しかし意あって悪事を為したのは、赦すわけにはいかないので流刑などに処す。


《爻辭》
六五の君子は、小人を解き放して天下を治める所があり、是は吉である。又小人だからと云って悉く殺す様な事は無く、其の徳を以て是迄の悪い所を改悛させて服せしめる。
[象傳]
君子の方で小人を解き放して棄てれば、小人は皆退いて遁れて往く。其所で天下は後に治まる。

6/18(土) ䷋ 天地否(てんちひ) 上爻三爻

6/18(土) 天地否(てんちひ) 上爻三爻


【運勢】
道理に合わない事が多くなり、世の中が乱れやすい時。
俗欲を抑え控えめに過ごすと良い。
無理に理解を求めず、志は内に秘め冷静に機会を待つ事が大切である。
長い目で見て判断すると良い。
最後には上手く行くだろう。


【結果】
䷋◎上⚪︎三
天地否(てんちひ) 上爻三爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
否は之(こ)れ人に匪ず。君子の貞によろしからず。大は往き、小は來る。
彖に曰く、「否は之れ人に匪ず。大は往き小は來る」とは、則ち是れ天地交はらずして、萬物通ぜざるなり。上下交はらずして天下邦无(な)きなり。内、陰にして外、陽。内、柔にして外剛。内小人にして外君子なり。小人は道󠄃長じ、君子は道󠄃消ゆるなり。
象に曰く、天地交はらざるは否。君子以て德を儉し難を避け、榮するに禄を以てすべからず。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九。否を傾く。先には否にして後には喜ぶ。
象に曰く、否終はるときは則ち傾く。何ぞ長かるべきや。
[三爻]
六三。羞(はぢ)を包む。
象に曰く、羞を包むとは、位當らざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
否者、閉塞なり。此卦、内坤にして外乾。卦變は泰にして興り相錯る。泰の三陽往きて外に居る、三陰來て内に居る。此の天氣は上騰して地氣は下降す。陰陽隔絶す。相交わりて通らざるの象有り。故に卦の名否に曰く、天地交わらず。則ち萬物成らず、萬物の生は人の大爲なし。故に辭系、人に匪ずと云ふ。上下否隔す、國その國非ず、君子、道を行ふ時に非ず。


《爻辭》
[上爻 優先]
長く世が乱れていたが、漸く否の時が終わりそうである。始めは傾いているが、後には通じて喜びにかわる。否の時は長続きしないものである。
[三爻]
すべて小人の道を用いる。上を承けて、位に当たらない。恥をかく。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
否は塞がる、匪人は悪人の意󠄃味である。天地が通じず、上下の意思が通わない様を表す。世の中が乱れる時である。君子が正しくしていても、臣下や国民には伝わらない。悪人が栄え、有徳者は德を隠す。このような時には、徳のある者は徳を隠し、控えめにするのが良い。


《爻辭》
[上爻 優先]
[三爻]
否の時にあり、陰柔で不中正である。陰なのに陽に居る。下卦の最上にをり、また陽に包まれおもねり汚れる。恥をかく。無道の時に仕え、どんなに高位についてもその徳はほめられたものでない。旣に時を計るのに暗く、又己の力量を量るのに短慮である。孔子は言はれた。邦に道無く、富栄えるは恥であると。羞を包むとはそういうことである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
否は塞がるの義である。天地陰陽の気が塞がっている。これは地天泰と反対である。こうした隔絶をつくったのは匪人である。匪人は人間でなく、悪の最も大なるものである。君子が正しい政治を行っても災を受け、小人が権力を握る。このような状態では咎を無くし、誉も出ないように謹慎しなければ危うい。大往小来は、陽が外の方へ往ってしまい、陰ばかりが内側に来ることである。
[彖傳]
天の気が上にあり下に降ってこない。地の気は下に滞って上に騰がっていかない。天地の気が交わらなければ、萬物は生長して往かない。上は上で高振って下を顧みず、下は下で上を上と思わず尽くす所が無い。君臣の道も、親子の道も無く、禽獣の住む所と変わらず、人間の国ではない。外卦は陽爻で内卦は陰爻である。これを一人の小人とすれば、内の心は柔弱で陰、外は無理に剛を偽って拵える。朝廷とすれば、内にばかり在って政務を執るのは小人、外に出て遠くの田舎にまで往くのは君子である。世の中が欲ばかり盛んになれば、道徳は廃れ、君子の正しい道は段々と消滅してくる。それを小人の道が長じて、君子の道が消するという。
[象傳]
天地陰陽の気が調和せず、萬物は害を受け、人間の身体も病弱になる。君子は我が身を全うすることを心掛け、なるべく徳を内に仕舞込んで用いない。徳を外に顕すと小人に憎まれて必ず害を受ける。官から禄を与えるといっても、出れば害に遭うから賢人は出てこない。そこで営するに禄をもってすべからず。後世の本には「栄」の字で書いてあるが、古い方の「営」が正しい。


《爻辭》
[上爻 優先]
人が否を傾け泰平にする。先には否であるが、後には喜びが出る。
[象傳]
否が終わるのは自然に終わるのではなく、人の力で傾けたのである。乱れた天下を志あるものが力を合わせて治めなければいけない。
[三爻]
包羞は恥を知らない小人の事である。六三において行う所は、羞の上に羞を重ねており、自分が利さえ得れば良いと思っている。君子と小人の違いは此の廉恥の有無である。
[象傳]
六三は尊い大臣の位に在るが、大臣に為るべき身分でない。羞を知る者ならば、自分から官を辞するであろうが、そのような事は無い。世が乱れ、段々小人の世の中に為って来たが、人民の方で朝廷に在る悪い役人を罷免させ、君子に直接出てもらいたいと願う心が起こる。

6/17(金) ䷦ 水山蹇(すいさんけん) 三爻

6/17(金) 水山蹇(すいさんけん) 三爻


【運勢】
どの道を選んでも厳しい時。
一旦引き、解決に適した時期が来るのを待つと良い。
積極的な行動は裏目に出る。
焦らず修身斉家を心掛け、力を蓄えると良い。
為せば成る。最後まで諦めず、公の為に尽くす事が大切である。


【結果】
䷦◎
水山蹇(すいさんけん) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
蹇(けん)は西南によろし。東北によろしからず。大人を見るによろし。貞にして吉。
彖に曰く、蹇は難󠄄なり。險(けん)前に在る。險を見てよく止まる。知なるかな。「蹇は西南によろし」とは、往きて中を得る。「東北によろしからず」とは、その道窮(きは)まるなり。「大人を見るによろし」とは、往きて功あるなり。蹇の時用大なるかな。
象に曰く、山上に水あるは蹇。君子以て身に反して德を修(をさ)む。


《爻辭》
九三。往けば蹇み來り反る。
象に曰く、往けば蹇み來り反るとは、内之れを喜ぶなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は地であり、東北は山である。難󠄄しい平地を行けば解決は難しい。難󠄄しい山地を行けば道󠄃が窮まる。爻は全部位に当たっている。正しきを履んでいるのが、邦を正す道である。ただし、難に遇うと正を失う。それは良くない。小人には対処できない。難󠄄を除くには德を高めるしかない。


《爻辭》
進めば則ち險に入り、來れば則ち位を得。故に往けば蹇み來り反ると曰ふ。下卦の主爲りて、是れ内の恃む所なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蹇は難である。進むことができない。前に難があり進めず、険難があるので止まる。蹇が変わると解になる。解の二爻が外卦の五爻に行って中を得る。だから、西南がよく、止まりて進まない。東北に利なし。五爻は位に当たって中正。君を得て、國を正すことが出來る。だから賢人に遇う時であるという。世が乱れているので、蹇に遇えば身を滅ぼす。時を待って行動せよ。我が身を反省して、德を修めよ。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
蹇は歩行が難󠄄しい状況である。西南がよい、上卦が
であるが、上に在る時は月󠄃である。二三四爻の互卦にもがある。これは三日月を表す。旧暦の三日に西南から現れ、東北になくなる。又西南は坤である。草莽にいてどこまでも学問をして學藝を磨くのかよい。何の能力もなく朝廷に出ようとしてはならない。艮は朝󠄃廷を表す。学問を修めたのなら、賢人に遇って、天下を経営するのに良い。
[彖傳]
の卦は大水であり、行けばおぼれてしまう。は止まるであるから、大水に行かずにとどまった。目の前に大水があるので、進めない。止まるべきところで止まるのが知である。西南に於いて学問を修めから、東北に行けば賢人に遇って、明君を得ることになる。今は無学であるから、進んでも利なし。険難の時代に生まれても大いに活躍できるのである。
[象傳]
君子は険難の時代には、良いことをしようとしてもうまく行かない。そこで、己を正しくして、だんだんと德を修めると二爻から上爻までは正しい位にいるが、初爻だけは陽の位に陰でいる。始めが正しくないといけない。だから君子はまず自分の修身から始めるのである。
《爻辭》

6/16(木) ䷣ 地火明󠄃夷(ちかめいい) 五爻二爻

6/16(木) 地火明󠄃夷(ちかめいい) 五爻二爻


【運勢】‬
問題を自力で解決するのが難しい時。
今は焦らず静かに機会を待つと良い。
進むべき道は理解している。考え過ぎると、かえって的外れになってしまう。
辛い時も、変わらず正しさを守り続ける事が大切である。


【結果】
䷣◎五⚪︎二
地火明󠄃夷(ちかめいい) 五爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
明󠄃夷は艱貞によろし。
彖に曰く、明󠄃、地中に入るは明󠄃夷。内文明にして外柔順。以て大難を蒙る。文王これを以てす。「艱貞によろし」とは、その明󠄃を晦すなり。内艱にして能くその志を正す。箕子之を以てす。
象に曰く、明󠄃地中に入るは明󠄃夷なり。君子以て衆に莅(のぞ)みて晦を用ゐて明󠄃なり。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。箕子の明夷る。貞しきに利あり。
象に曰く、箕子の貞とは、明息むべからざるなり。
[二爻]
六二。明夷る。左股に夷つく。用ひて拯ふ馬壯なり、吉。
象に曰く、六二の吉は、順にして以て則あるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
衆に莅むは顯明にして、百姓を蔽ひ僞る者なり。故に蒙を以て正を養ひ、明夷を以て衆に莅む。
明を内に藏めれば、乃ち明を得るなり。明を外に顯かにすれば、乃ち辟くる所なり。


《爻辭》
[五爻 優先]
最も晦きに近く、難と比しむを爲す。險なること茲くの如くよりなくして、斯の中に在り。猶ほ闇なること沒すること能はず、明なること息むべからず。正しくして危ふきを憂へず。故に貞しきに利あるなり。
[二爻]
左股を夷るとは、行きて壯んなること能はざるを示すなり。柔を以て中に居り、用て其の明を夷る。進みて類に殊ならず、退きて難に近からず。疑ひ憚ら見ず、順ひて以て則あるなり。故に用ひて馬を拯ふべきにして、壯んにして吉なり。其の翼を垂れず、然る後に乃ち免るるなり。
二爻は左の股を傷つけたとある。
これはまだ軽傷であり、幸い馬は元気なので、困難を克服できるとする。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
明󠄃夷は目をくらますことである。心の中では聡明で大きな徳を有しているが、外面は柔順である人、例えば文王のような人である。箕子は紂の親戚で國内にいたが、難󠄄に会い、内に志を正した。
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
明らかなるものが傷ついて夷(や)ぶる。内卦の離は明らかなるもので、外卦の坤は欲である。前の卦の火地晋の明徳が欲のために夷ぶれ亡びようとする所の卦である。
[彖傳]
明らかなるものは地の底に這入って悉く失われる。明徳を身に懐いていながら、その明徳を外に現さずに巽順にして能く仕えている。その結果、柔順なる聖人は大難を蒙る。ちょうど文王と殷の紂王の無道なる時に該当する。
[象傳]
明らかなるものが地の中に這って真っ暗に為った所が明夷である。君子は万民の上に立って晦を用いる。天子は余り世間の事を細かい所まで見るようではいけない。
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]

6/15(水) ䷷ 火山旅(かざんりょ) 五爻四爻

6/15(水) 火山旅(かざんりょ) 五爻四爻


【運勢】
先行きが見通せず、不安を感じる時。
楽な道に逃げず、苦難の中でも努力を続ける事が大切である。
初めは上手く行かない事も、最後には報われる。孤立を良しとせず、謙虚に人と接し信頼関係を築く事が大切である。


【結果】
䷷◎五⚪︎四
火山旅(かざんりょ) 五爻四爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
旅は小(すこ)し亨(とほ)る。旅、貞なれば吉。
彖に曰く、旅は小し亨る。柔、中を外に得て、剛に順ふ。止まりて明󠄃に麗(つ)く。是を以て小し亨る。旅、貞なれば吉なり。旅の時義、大なるかな。
象に曰く、山上に火有るは旅。君子以て明󠄃に慎みて、刑を用ゐて、獄を留めず。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。雉を射て一矢を亡ふ。終に以て譽命あり。
象に曰く、終に以て譽命ありとは、上に逮ぶなり。
[四爻]
九四。旅處に于てす。其の資斧を得。我が心快からず。
象に曰く、旅して處に于てすとは、未だ位を得ざるなり。其の資斧を得とは、心未だ快からざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
貞吉(ていきち)であることには達しておらず、ただ遠くに行くという状況に於いて貞吉なだけである。だから、特に重ねて「旅貞吉」とあるのである。物がその主を失うと散る。柔が剛に乘る。五爻は剛位に乘り、また外卦の中を得ている。陰は陽に従って、陽は尊󠄄位を得ていない。小し亨る。旅は大いに散る時で、物は元の場所󠄃を失う時である。


《爻辭》
[五爻 優先]
雉を射るに一矢を以てして、而も復た之を亡ふ。明らかに雉有りと雖も、終に得べからず。寄旅して進み、文明の中に處ると雖も、貴位に居りて、此の位終に有るべからざるなり。以て其れ能く禍福の萠すを知り、其の處に安んぜず。以て其の下に乘りて、上は上を承く。故に終に以て譽ありて命ぜ見るるなり。
[四爻]
斧は、荊棘を斫除して、以て其の舍を安んずる所以の者なり。上體の下に處ると雖も、物に先んぜず。然して尊位を得ずして、平坦の地を獲ず。處る所に于いて客し、其の次を得ず。而して其の資斧の地を得。故に其の心快からざるなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
旅は旅行である。五爻は陰で、順の徳がある。安全な場所で、命を待つ状況にないと言っても、柔順の徳がある。少しはうまく行くのである。旅で生き抜くには、ただ正しいだけでなく、智略も必要である。旅の時には、助けてくれる人も必要である。信用できない人に頼ってはならない。
《爻辭》
[五爻 優先][四爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は諸侯でいえば国を失い、大夫でいえば家を失ったものにあたる。一つ前に
雷火豐があるが、これが転倒してしまったのである。贅沢が過ぎて、身を滅ぼしてしまったのである。その後、旅に出る。旅に出ると、威張っていてはどうしようもないので、身を小さくしておくのが良い。謙遜の態度を守って、正しくしていればうまく行くのである。
[彖傳]
この卦の五爻の陰爻は、元々は
雷火豐の時には、内卦にいた。それが外に出たので、旅をするというのである。旅に出たはいいが、陰であり独立自尊の気概がない。そこで、上爻と四爻に依存している。このようにただ縮こまっていてはいけない。旅は大変危険なものであるから、ちゃんとした助けが必要で、公明正大な人間についていくべきである。怪しい人間は避けた方が良い。
[象傳]
山は動かず、火は行き過ぎる。この二つが同居しているのが旅である。君子は刑罰を慎まねばならない。なぜなら、旅に出て、家を離れ、國を離れたものが罪を犯すことがある。それはその土地の法をよく知らないから、無意識に犯しがちである。君子は一人一人を大切にしなければならないので、旅人だからと言っていい加減に裁いてはならない。慎重に刑罰を行うべきである。
《爻辭》
[五爻 優先][四爻]

6/14(火) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 四爻初爻

6/14(火) 水雷屯(すいらいちゅん) 四爻初爻


【運勢】
困難の絶えない時。
目標を明確にすると良い。
問題を一人で抱え込んではいけない。
周りの力を借りて自らの短所を補い、前へと進む事が大切である。
何事も安易に判断せず、堅実に土台を築き好機を待つと良い。


【結果】
䷂◎四⚪︎初
水雷屯(すいらいちゅん) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。彖に曰く、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。象に曰く、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


《爻辭》
[四爻 優先]
六四。馬に乘ること班如たり。婚媾(こんこう)を求めて往く。吉にして利しからざるなし。
象に曰く、求めて往く。明󠄃成なるなり。
[初爻]
初九。磐桓(はんかん)す。貞(てい)に居るに利(よろ)し。侯(こう)を建つるに利し。
象に曰く、磐桓すと雖(いえど)も、志正を行ふなり。貴を以て賤(いや)しきに下る、大いに民(たみ)を得ればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。なやんで通ずることが出来ない状況である。ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。そのためには、正しさを固く守らねばならない。現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


《爻辭》
[四爻 優先]
[王弼]
二爻は初爻と比の関係にあるが、正しさを守って初爻に従わない。己の志を害さない者である。好みの合う友を求めて往くと必ず受け容れてもらえる。
[東涯]
婚媾(こんこう)は初爻と応じていることを指し、四爻は陰柔であり屯に居る。そして柔順にして正に居る。智の德は従うべきところを知る。初爻の応じるものに求めて往く。人で屯に居る時は、自ら救済することが不可能であれが、よく応じる相手を探すことは出来、救済の力に頼り、可能なことも出てくる。
[初爻]
[王弼]
屯の初に處る。動けば則ち難生じ、以て進むべからず。故に磐桓なり。此の時に處るなり、其の利、安くにか在る。唯だ貞に居りて侯を建つるのみならざるや。夫れ亂を息めて以て靜なり。靜を守りて以て侯たり。民を安んじて正に在り、正を弘くして謙に在り。屯難の世、陰、陽を求む。弱、強を求む。民、其の主を思ふ時なり。初、其の首に處りて又た下なり。爻、斯の義を備ふ。宜しく其れ民を得るべきなり。
[東涯]
磐は盤と同じであり、盤垣である。難に進もうとしている貌である。この爻は、屯の初めで陽を以って下にいる。苦しい時で卑しく、その才を用い得ていない。故に盤垣である。ただ、正しくいて詐謀偽計を用いてはならなない。かわいがるのである。故に貞に利し。陽剛の才を持って緖陰の下にいる。民衆は、服従して、その心を得ている。故に侯(こう)を建つるに利しとなる。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
屯は止まり艱(なや)むという義である。下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。この人が進んで遂に侯になる所の卦である。雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。この雲雷の象によって世の中を治める。
《爻辭》
[四爻 優先]
六四と初九は位が応じて居る。そこで六四は初九の方へ往こうと思って馬に乗ったが、隣の九五から頻りに招かれ仕方なく一時馬を還した。しかし初九の方から婚媾を求めて来る。初九は天下に君たるべき存在であるから、其処へ往くのが吉である。
[象傳]
今は九五が権力が盛んであっても、後には良くない。初九から求めて来たのであれば、其方へ往くのが良いのは、明らかなる所である。
[初爻]

6/13(月) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 初爻

6/13(月) 水雷屯(すいらいちゅん) 初爻


【運勢】
世の中が雷雨の様に勢い付き、混沌とし、困難の絶えない時。
問題を一人で抱え込んではいけない。
周りの力を借りて柔軟に対応する事が大切である。
何事も安易に判断せず、今は堅実に土台を築き好機を待つと良い。


【結果】
䷂◎
水雷屯(すいらいちゅん) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。彖に曰く、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。象に曰く、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


《爻辭》
初九。磐桓(はんかん)す。貞(てい)に居るに利(よろ)し。侯(こう)を建つるに利し。
象に曰く、磐桓すと雖(いえど)も、志正を行ふなり。貴を以て賤(いや)しきに下る、大いに民(たみ)を得ればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。なやんで通ずることが出来ない状況である。ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。そのためには、正しさを固く守らねばならない。現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


《爻辭》
[王弼]
屯の初に處る。動けば則ち難生じ、以て進むべからず。故に磐桓なり。此の時に處るなり、其の利、安くにか在る。唯だ貞に居りて侯を建つるのみならざるや。夫れ亂を息めて以て靜なり。靜を守りて以て侯たり。民を安んじて正に在り、正を弘くして謙に在り。屯難の世、陰、陽を求む。弱、強を求む。民、其の主を思ふ時なり。初、其の首に處りて又た下なり。爻、斯の義を備ふ。宜しく其れ民を得るべきなり。
[東涯]
磐は盤と同じであり、盤垣である。難に進もうとしている貌である。この爻は、屯の初めで陽を以って下にいる。苦しい時で卑しく、その才を用い得ていない。故に盤垣である。ただ、正しくいて詐謀偽計を用いてはならなない。かわいがるのである。故に貞に利し。陽剛の才を持って緖陰の下にいる。民衆は、服従して、その心を得ている。故に侯(こう)を建つるに利しとなる。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
屯は止まり艱(なや)むという義である。下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。この人が進んで遂に侯になる所の卦である。雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。この雲雷の象によって世の中を治める。
《爻辭》

6/12(日) ䷰ 澤火革(たくかかく) 四爻

6/12(日) 澤火革(たくかかく) 四爻


【運勢】
物事を根本から改めるのに良い時。
悪い習慣を取り除き、良い習慣を積極的に取り入れる事が大切である。
周りからの意見を蔑ろにしてはいけない。
広い心で受け止め、糧にすると良い。
迷わず正しさを貫く事が大切である。


【結果】
䷰◎
澤火革(たくかかく) 四爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻]


【原文】
《卦辭》
革は已る日乃ち孚あり。元いに亨る。貞に利し。悔い亡ぶ。
彖に曰く、革は水火相ひ息し。二女同居して、其の志相得ざるを革と曰ふ。已る日にして乃ち孚あり。革めて之れを信にす。文明にして以て說󠄁(よろこ)ぶ。大いに亨るに正を以てす。革(あらた)めて當る。其の悔い乃ち亡ぶ。天地革りて四時成る。湯武革命。天に順ひて人に應ず。革の時大なるかな。
象に曰く、澤中に火有るは革。君子以て歷を治めて時を明󠄃にす。


《爻辭》
九四。悔い亡ぶ。改命を孚(まこと)とすること有り。吉。
象に曰く、改命の吉は、志を信ずるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
民は常識を学ぶことを共にすることが可能であるが、変動に共に適応していくことは難しい。共に成功を喜ぶことは出来るが、共に事業を始めることを考えるのは難しい。だから革の道は、即日は誠なく、日が終わる時には誠がある。誠があって元亨利貞で悔いが滅ぶのである。日が終わるころに誠が無ければ革に当たらない。後悔が生じるのである。変動を生じるものである。革めて其の悔いに当たれば、悔いを無くせる。不合に變が生じ、変が生じるところに不合が生じる。だから不合は革である。息とは變を生じることである。火は上に昇ろうとし、澤は下に降りようとする。水と火が戦い、その後に變が生じる。二女が同居している。水と火が近くにあって互いに適合しない。革めるところとなり信があれば、文明の喜びである。正しいことを履み行う。そして改める。天に應じ民に遵う。大成功する正しいものである。革めて大成功する。必ず正しさを失ってはいけない。


《爻辭》
初爻は下卦の最下位に居て四爻は上卦の最下位に居る。だからよく變ずることができる。応じるものなく悔い亡ぶ。水と火の際に居て、変動を体験するはじめである。後悔はなく、下を疑わない。志を信じて命を改める。大願を失わないので吉である。正直であれば信じられる。信じられるので命を改められるのである。さうすれば安んじて間違いはない。上卦の初めに居てはじめて命を宣言できる。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
革は変革である。已日は事を終える日のことである。澤は水である。火と水が互いに消しあっている。中女が下に居て、少女が上に居る。同居して志を一緒にしない。変革の兆候である。内は明るく外は喜びである。智があってよく和す。其れで革のはじめに居て、疑いを免れないが、最後まで達成できる。よく互いを信じることが出來、妨害や滞りがない。その正しさを失わない。革めて当を得ている。悔いは亡くなろう。非常の初めに在り、革の初めである。人々は旧習に安んじ、疑いや讒謗が生じる。非常の事をして、人心を察せず、軽挙妄動してはいけない。初めは疑われるが最後には信を得て悔いはなくなる。


《爻辭》
四爻は革にあり、不中不正である。君主の傍に居て下に味方がいない。悔いがあろう。しかし陽で改革の際に居る。その弊害を救うことができる。下も改まった命に従う。その後に吉となる。悪弊を改める才があり、悪弊を改める時に居て、二爻はまだ弱く、改まった暁には四爻は位を得る。誠の心を大切にすべきである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
己は十干の土の弟で、五行の半ばを過ぎた所である。其所で、最早革命を行わなければならない勢いになって居る。また己は五行に於いて、仁義礼智信の信に当たる。即ち己日は、天下の人の信用が出て来た所でもある。其所で後悔も亡びる。
[彖傳]
革は水と火の卦で、互いに相害する所である。此の卦は丁度、水火既済の相和する所と反対である。同じ家に女が二人一所に居る。兌は何処迄も下へ下がり、離は何処迄も上に上る。其所で互いに衝突する。革命は殷の湯武に始まる。之は止むを得ずして行ったものであるが、併し逆賊と云うのが正しい所である。天下一同の求める所に従うのが、人に応じる所である。併し革命に当たっては、真に大いなる目的を以て行うべきである。
[象傳]
沢の中に火が有り、火気の動く所に依って色々なものが変わって来る。火の字には、物の変化する所の義がある。君子は暦を第一に治め、春夏秋冬の時を間違わない様にしなければいけない。
《爻辭》

6/11(土) ䷲ 震爲雷(しんゐらい) 五爻

6/11(土) 震爲雷(しんゐらい) 五爻


【運勢】
勢いだけではどうにもならない時。
一難去ってまた一難、最後まで気を抜かずに進める事が大切である。
冷静に状況を分析して、問題点を見つけると良い。
望んだ成果が得られなくても、最後まで継続する事に意味がある。


【結果】
䷲◎
震爲雷(しんゐらい) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり。笑言啞啞(ああ)たり。震百里を驚かす。匕鬯(ひちょう)を喪はず。
彖に曰く、「震は亨(とほ)る。震の來たるとき虩虩(げきげき)たり」とは、恐れて福を致すなり。「笑言(しょうげん)啞啞(ああ)たり。」とは、後に則あるなり。「震百里を驚かす」とは、遠きを驚かして邇(ちかき)を懼(おそ)れしむるなり。出でて以て宗廟社稷を守りて、以て祭主と爲すべきなり。
象に曰く、しきりに雷するは震。君子以て恐懼(きょうく)脩省(しゅうせい)す。


《爻辭》
六五。震して往來す。厲し、億りて事有るを喪ふことなかれ。
象に曰く、震して往來す、厲しとは、行ひを危ぶむなり。其の事中に在り、喪ふことなきを大なりとす。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
震は雷鳴を表す。上下両方とも震であり、雷鳴が轟くときは傲慢になった人々も恐れ、敬意を取り戻す。人々が恐れ敬いの心を取り戻せば、規則が守られ、幸福になる。雷鳴は遠方まで轟きわたり、人々を驚かせるが、そんな中でも先祖を祭り、神々を祭る人は重い責任にたえられる人である。


《爻辭》
往けば則ち應なく、來れば則ち剛に乘る。恐れて往來し、危ふきを免れず。それ震の時に處りて、尊位を得れば、それすなはち事有るの機なり。而して懼れて往來し、將に其の事を喪はんとす。故に億、事有るを喪ふことなれと曰ふなり。
大いなれば則ち喪ふなし。往來すれば則ち危きなり。

〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦は火風鼎である。鼎(かなえ)は天子の宝器のことで、日本では三種の神器にあたる。皇統一系は天道であって万世不易のものであるから、革命が起こっても必ず皇統一系に引き戻さなければならない。そのため火風鼎が示すように、皇后に子が無ければ、妾の子であっても皇位を嗣がせなければならない。こういう理由で鼎の卦の次に、震の卦を置いたのである。『序卦伝』にも「器を主(つかさ)どる者は長子にしくはなし。故にこれを受くるに震(しん)をもってす」とある。この震は皇太子の象である。皇太子はどのような困難に遭っても、何所までも忍耐して必ず位を嗣がなければならない。震は剛(つよ)いから亨る。また震は雷であり、この卦は雷を以て説く。卦全体の主になるのは初爻目である。虩虩(げきげき)とは恐懼する姿である。激しい雷には聖人といえども恐れ慎む。『論語』にも「迅雷風烈は必ず変ず」と出ている。大いなる災難が来るが、恐れ慎めば後には必ず福を得ることになる。天が天下を委任するに相応しい人だと思えば、禍(わざわい)を降して其の人の心身を苦しめる。艱難辛苦を経ることで忍耐力が養われて、後に大事を為せるのである。「笑言唖唖」とは、はじめ難に遭って苦しむが、後には安楽となり喜び笑う所となることである。「匕鬯(ひちょう)」は、宗廟の祭祀のときに天子自ら使う道具である。匕(ひ)は鼎の中の肉を掬(すく)い取る匙(さじ)である。鬯(ちょう)は鬱金草(うこんそう)という香草を入れて醸した酒のことである。この酒を地に撒くと香気が立ち上り、これによって神を降ろすのである。このように匕と鬯は、祭祀に於いて最も重要であることから、この卦で取り上げられるのである。身を砕くほどの雷が鳴っても、匕鬯を行える忍耐力が無ければいけない。
[彖傳]
「震亨、震来虩虩」と云うのは、災難に見舞われるも、恐れ慎んで徳を修めることで、遂に天の福を招く所となる。「笑言唖唖、後有則也」には、「後」という字が加えてあり、難と福の順序を失わないようになっている。雷により胆力を養い徳を修めた所で、皇太子が御殿から出て天子の位を継ぎ、宗廟社稷を守って祭る所の主人となることが出来る。乾為天四爻目の「或いは躍る」がこれにあたる。つまり天子が健在でも時によって皇太子が出て、宗廟社稷の祭祀を代わりに行えるだけの準備が出来ていることを意味する。
[象傳]
この卦は震が二つある。二度も三度も打ち重なって雷鳴が響く。君子は難に遭うことで、恐れ慎んで徳を修めて、我が身を省みる所が出てくるのである。
《爻辭》

6/10(金) ䷰ 澤火革(たくかかく) 五爻

6/10(金) 澤火革(たくかかく) 五爻


【運勢】
取り巻く環境が変化する時。
迷わず正しさを貫く事が大切である。
相手を頭ごなしに否定してはいけない。
何事も広い心で受け止めて、自らの糧にすると良い。
先を見通す力を養い、不足の事態に備える事が大切である。


【結果】
䷰◎
澤火革(たくかかく) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
革は已る日乃ち孚あり。元いに亨る。貞に利し。悔い亡ぶ。
彖に曰く、革は水火相ひ息し。二女同居して、其の志相得ざるを革と曰ふ。已る日にして乃ち孚あり。革めて之れを信にす。文明にして以て說󠄁(よろこ)ぶ。大いに亨るに正を以てす。革(あらた)めて當る。其の悔い乃ち亡ぶ。天地革りて四時成る。湯武革命。天に順ひて人に應ず。革の時大なるかな。
象に曰く、澤中に火有るは革。君子以て歷を治めて時を明󠄃にす。


《爻辭》
九五。大人は虎變ず。未だ占はずして孚有り。
象に曰く、大人は虎變ずとは、其の文炳なるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
民は常識を学ぶことを共にすることが可能であるが、変動に共に適応していくことは難しい。共に成功を喜ぶことは出来るが、共に事業を始めることを考えるのは難しい。だから革の道は、即日は誠なく、日が終わる時には誠がある。誠があって元亨利貞で悔いが滅ぶのである。日が終わるころに誠が無ければ革に当たらない。後悔が生じるのである。変動を生じるものである。革めて其の悔いに当たれば、悔いを無くせる。不合に變が生じ、変が生じるところに不合が生じる。だから不合は革である。息とは變を生じることである。火は上に昇ろうとし、澤は下に降りようとする。水と火が戦い、その後に變が生じる。二女が同居している。水と火が近くにあって互いに適合しない。革めるところとなり信があれば、文明の喜びである。正しいことを履み行う。そして改める。天に應じ民に遵う。大成功する正しいものである。革めて大成功する。必ず正しさを失ってはいけない。


《爻辭》
未だ占はずして孚あり。時心を合するなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
革は変革である。已日は事を終える日のことである。澤は水である。火と水が互いに消しあっている。中女が下に居て、少女が上に居る。同居して志を一緒にしない。変革の兆候である。内は明るく外は喜びである。智があってよく和す。其れで革のはじめに居て、疑いを免れないが、最後まで達成できる。よく互いを信じることが出來、妨害や滞りがない。その正しさを失わない。革めて当を得ている。悔いは亡くなろう。非常の初めに在り、革の初めである。人々は旧習に安んじ、疑いや讒謗が生じる。非常の事をして、人心を察せず、軽挙妄動してはいけない。初めは疑われるが最後には信を得て悔いはなくなる。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
己は十干の土の弟で、五行の半ばを過ぎた所である。其所で、最早革命を行わなければならない勢いになって居る。また己は五行に於いて、仁義礼智信の信に当たる。即ち己日は、天下の人の信用が出て来た所でもある。其所で後悔も亡びる。
[彖傳]
革は水と火の卦で、互いに相害する所である。此の卦は丁度、水火既済の相和する所と反対である。同じ家に女が二人一所に居る。兌は何処迄も下へ下がり、離は何処迄も上に上る。其所で互いに衝突する。革命は殷の湯武に始まる。之は止むを得ずして行ったものであるが、併し逆賊と云うのが正しい所である。天下一同の求める所に従うのが、人に応じる所である。併し革命に当たっては、真に大いなる目的を以て行うべきである。
[象傳]
沢の中に火が有り、火気の動く所に依って色々なものが変わって来る。火の字には、物の変化する所の義がある。君子は暦を第一に治め、春夏秋冬の時を間違わない様にしなければいけない。
《爻辭》