2/5(土) ䷐ 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し

2/5(土) 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し


【運勢】
先人に倣い、自分本位な気持ちを抑え、相手を思い遣ると良い。
冷静に先を見通す事が出来れば、何事も順調に進められるだろう。
行動には責任が伴う。
どんな時も、与えられた役目を最後まで全うする事が大切である。


【結果】

澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
隨(ずゐ)は元(おほ)いに亨(とほ)る。
貞(てい)によろし。咎めなし。
彖に曰く、隨は剛に來たりて柔に下る。動いて說󠄁(よろこ)ぶは隨。元いに亨り、貞。咎めなし。しかして天下時に隨(したが)ふ。時に隨(したが)ふの義、大なるかな。
象に曰く、澤中に雷あるは隨。君子以て晦(みそか)に嚮(むか)ひて入りて宴息(えんそく)す。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
隨はしたがうの意󠄃味である。
内卦は震で動き、外卦は兌であり、よろこぶの意󠄃である。
君主が行動するとき、人々はよく協力してくれ、思い通りにできる。
人々は時機にしたがい行動する。


〔根本通明の解釋〕
随は後ろに随って行く義である。
同じ「したがう」でも、従の字は左に付いても右に付いても従うだが、随の字は後ろに附いて行くという義である。
初九はニに随う。
二は三に随う。
三は四に随い、四は五に随い、五は六に随う。
先の方に随うという象があるが、何でも随へば良いわけではない。
仁義礼智に外れないようにすれば咎が無い。
[彖傳]
初九の陽爻が二・三爻目に随っているので、剛柔に随う。
下卦の震は雷なので動く。
動いた先の兌が說ぶ。
随うには正しき所をもってすれば、必ず大いに亨る。
二・三・四爻目の艮は時の象がある。
時は重要で、必ず随わなければならない。
[象傳]
兌は秋、雷は春である。
春に雷が出で、秋に沢中に潜む。
これは時に随うの義である。
君子は晦に嚮(むか)う。
晦は日の暮れる所である。

2/4(金) ䷮ 澤水困(たくすいこん) 四爻二爻

2/4(金) 澤水困(たくすいこん) 四爻二爻


【運勢】
言葉では無く、行動で示す事が信頼に繋がる。
着飾ろうとせず、成果の出ない時は、寡黙に誠実さを体現すべきである。
困難な時にこそ、その者の真価が問われる。
正しさを守り、努力を続ければ、必ず好機が訪れる。


【結果】
䷮◎⚪︎
澤水困(たくすいこん) 四爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。
彖に曰く、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。
象に曰く、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。來ること徐々。金車(きんしや)に困(くる)しむ。吝(りん)なれども終はり有り。
象に曰く、來ること徐々とは、志下に在るなり。位に當(あた)らずと雖(いへど)も、與(とも)有るなり。
[二爻]
九二。酒食(しゆしよく)に困む。朱紱(しゅふつ)方(まさ)に來る。用ひて享祀(きやうし)するに利(よろ)し。征けば凶。咎なし。
象に曰く、酒食に困むとは、中、慶有るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は初爻を志しているが、二爻の金車(堅い車)に邪魔されている。
金車とは二爻である。
陽爻で剛く、物を載せるのによい車である。
気の合う者󠄃がいても、間に障害があってなかなか会えないで困っている。
しかも、初爻と二爻とは相性が良い。
しかし、四爻は初爻と応じており、我慢すれば最終的には初爻と会うことが出來る。
[二爻]
二爻は才徳ある人だが、初爻と三爻の陰に挟まれて動けない。
水は北方であり、朱紱(しゅふつ)は南方のものである。
遠方から人が来る。
自分から行こうとしてはならない。
留まっていれば、最終的には五爻の君に登用されるという意外な慶事がある。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は初爻と応じており、四爻は陽爻、初爻は陰爻で陰陽も応じていて、非常に相性が良い。しかし、初爻は小人である。徳が無い。
その諸初爻が助けを求めるので四爻は助けに向おうとするが、何分初爻は信用できないので、二の足を踏んでいる。
しかも、二爻の賢人が初爻のところに行ってはならないと教え諭す。
初爻を助けたいという気持ちに悩まされるが、二爻の諫めもあって、初爻のところに行かず小人と関わらずに済んだ。
[象傳]
志が下に在るというのは、四爻が初爻を助けようとすることである。
四爻は陰の位に陽でいるが、二爻の賢人の助けを得て、世の中を救うことが出來る。
[二爻]
九二は賢人である。
初六と六三の間で甚だ苦しめられ、酒も飲めず食も得られない。
食貧は『論語』にも『詩経』にもある。
「朱紱」は天子を指しており、紱は礼服の時に前方に垂れている朱で染めた服である。
天子は自ら賢人を招聘するため「方に来る」のである。
三顧の礼と同じである。
この時に九二の賢人は自分から君の方へ出向いてはいけない。
「征くは凶」である。
しかし咎が有るわけではない。
道徳を以て孚(まこと)を尽くす所なのである。
「享祀」は二・三・四爻が離の卦になっているから夏の象がある。
つまり夏の祀りである。
夏の祀りはお供え物を専らにするよりも、ただ孚を以て神を感じる所が主である。
[象傳]
酒食に困する中にして喜びがある。
やはり君子は小人を用いる時に当たっては窮している方が宜しい。
中庸の道を守っていれば、後には喜びが出てくる。

2/3(木) ䷪ 澤天夬(たくてんかい) 四爻二爻

2/3(木) 澤天夬(たくてんかい) 四爻二爻


【運勢】
困難な問題を先延ばしにしても、良い事はない。
時期が過ぎてしまい後悔する事のない様に、周りの意見に耳を傾け、迅速な決断を心掛けると良い。
慎みの心を忘れず、先人に倣い、正しさを守り続ける事が大切である。


【結果】
䷪◎⚪︎
澤天夬(たくてんかい) 四爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
夬は王庭に揚ぐ。孚(まこと)有りて號ぶあやふきこと有り。吿ぐること邑よりす。戎に卽くによろしからず。往くところ有るによろし。
彖に曰く、夬は決なり。
剛、柔を決するなり。健にして說󠄁(よろこ)ぶ。決して和す。「王庭に揚ぐ」とは、柔五剛に乘ずればなり。「孚有りて號ぶ、あやうきこと有り」とは、それ危めば乃ち光るなり。
「吿ぐること邑よりす。戎に卽くによろしからず」とは、尚ぶ所󠄃乃ち窮まるなり。「往くところ有るによろし」とは、剛長じて乃ち終るなり。
象に曰く、澤、天に上るは夬。君子以て禄を施して下に及ぼす。德に居りて則ち忌む。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。臀に膚なし。其の行くこと次且たり。羊を牽いて悔亡ぶ。言を聞きて信ぜず。
象に曰く、其の行くこと次且たりとは、位當らざればなり。言を聞いて信ぜずとは、聰明ならざればなり。
[二爻]
九二。惕れて號ぶ。莫夜に戎むること有り、恤ふること勿れ。
象に曰く、戎むること有り、恤ふること勿れとは、中道を得るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
夬は決める、引き裂くの意󠄃味である。
形は
剝の反対である。
君子が勢いを持ち、徳のないもの(上爻)を征伐する象である。
五陽に一陰が載っている。
危うい状態に耐えきったら大きな功をなす。
徳の無い者と戦うときはただ武力のみに頼るのでなく、誠実さを以て臨むべきである。
終には徳の無い者は除かれ、平和になる。


《爻辭》
[四爻 優先]
下、剛にして進み、己の據る所に非ず。必ず侵傷せ見れ、其の所を安んずる失ふ。故に臀に膚なし、其の行くこと次且たるなり。羊とは、牴狠にして移り難きの物なり。五を謂ふなり。五、夬の主爲りて、下の侵す所に非ず。若し五を牽けば、則ち悔亡ぶを得るべし。而れども己は剛にして亢、言を納るる能はず、自ら處る所に任じ、言を聞いて信ぜず。斯を以て行けば、凶なること知るべきなり。
[二爻]
健に居りて中を履み、斯を以て事を決す。能く己の度を審かにして、疑はざる者なり。故に惕れて號呼すること有り、莫夜に戎むること有りと雖も、憂へず惑はず。故に恤ふること勿れとなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
夬は円(まる)い物を欠いて割るという義である。
上六の陰爻は大奸物(だいかんぶつ:悪知恵のはたらく心のひねくれた人間)である。
それが九五の天子に近接している。
巧言令色をもって諂って居るのが、段々と蔓延(はびこ)って害を為す。
必ず上六を撃たねばならない。
「揚于王庭」とは、この大臣の悪を明らかにして皆に告げる所である。
「孚号」は、大臣を除くにあたり誠心をもって協力を呼び掛けるのに号(さけ)ぶ所である。
天下はこれを信じ、協力は得られる。
しかし兵を挙げて撃つのではない。
早まってはいけない。

[彖傳]
密接している悪を斬って除く。
一番上の陰爻を切り離す。
剛が柔を決する。
柔の小人は五人の賢人君子の上に上がって権勢を専らにしているので、その罪を揚げるのである。
厲(あやう)い所があるから容易に手を出してはならない。
危ぶみ慎しんで、人民が騒がしくならないように能く鎮撫する。
孚(まこと)を尊び、時を見て動かなければならない。
早く往き過ぎると却って窮する所が出てくる。
剛が次第に長じてくる所であるから、終(つい)には事を終え遂げることが出来る。
[象傳]
沢の水の気が、乾の天の上にあり、水気がまた下に戻ってくる。
君子は恩沢を下々の方まで汎く施す。
恩沢を上の方で置き蓄えて、吝(おし)み下へ及ぼさないのは君子にとって忌み嫌う所である。


《爻辭》
[四爻 優先]
[二爻]

2/2(水) ䷞ 澤山咸(たくざんかん) 二爻

2/2(水) 澤山咸(たくざんかん) 二爻


【運勢】
直感は大切にすべきだが、ただ考え無しに流される様ではいけない。
広い視野を持ち、冷静に物事を捉え、その上で判断する事が大切である。
軽率な行動を慎み、誠実に正しさを守れば、失敗を未然に防ぐ事が出来るだろう。


【結果】
䷞◎
澤山咸(たくざんかん) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利(よろ)し。女を取る吉なり。
彖に曰く、咸は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨り、貞に利し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。


《爻辭》
六二。その腓(こむら)に咸ず。凶。居れば吉。
象に曰く、凶と雖(いえど)も居れば吉とは、順(したが)えば害あらざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
陰陽二気が揃ってはじめて萬物が化生する。
天地万物の樣は感ずるところに現れる。
同類でないものは心を通わせることが難󠄄しい。
陰は陽に応じるものであるが、下でなければならない。
下に在って初めて吉である。
虚心になって人の意見を受け入れれば、物は感応する。


《爻辭》
咸の道、轉り進み、拇を離れ腓に升る。
腓の體は動き躁ぐ者なり。
物に感じて以て躁ぐは、凶の道なり。
躁ぐに由るが故に凶、居れば則ち吉なり。
處るに剛に乘らず。
故に以て居りて吉を獲るべし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
咸は感じることである。
反転すると
雷風恒になる。
恒の初爻がこの咸の上爻になったのである。
恒の四爻が下って咸の三爻になったのである。
つまり、柔が昇って剛が下りている。
陰陽二気が通じ合っているのである。
内卦は止まり、外卦は喜ぶ意󠄃である。
艮の少男を兌の少女に下す。
皆和順している。
物事がうまく行き、正しくしていれば害はない。
人が交わる時は、互いが得るものがないと心が通じ合わない。
妄動して心の通わせあいが正しくないと、良くない。


《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
是は下経の始まりである。
上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。
人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。
『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。
上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。
兌は少女、艮は小男である。
上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。
男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。
そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。
[彖傳]
咸は無心で咸じる所を尊ぶ。
情欲の私があってはいけない。
天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。
婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。
天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。
[象傳]
山上に水気が上っているのが咸の卦である。
山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。
それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。
我が満ちていてはいけない。


《爻辭》

2/1(火) ䷭ 地風升(ちふうしょう) 初爻

2/1(火) 地風升(ちふうしょう) 初爻


【運勢】
順調な時こそ謙虚な心を持つと良い。
些事を怠らない堅実さを持つと良い。
階段を一歩ずつ登る様に、冷静に着実に歩みを進める事が大切である。
己の向上心を信じて、歩み続ける事が出来れば、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷭◎
地風升(ちふうしょう) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
升は元(おほ)いに亨(とほ)る。大人を見るに用う。恤(うれ)ふることなかれ。南征して吉。彖に曰はく、柔は時を以て升(のぼ)る。巽にして順。剛中にして應ず。是を以て大いに亨(とほ)る。「大人を見るに用う。恤ふることなかれ」とは、慶あるなり。南征して吉とは、志行はるるなり。象に曰はく、地中に木を生ずる升。君子以て德に順(したが)ひ、小を積みて以て高大なり。


《爻辭》
初六。允(まこと)に升る。大吉。象に曰はく、允に升る、大吉とは、上、志を合わせるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
巽順で以て上るべし。陽爻が尊󠄄位に当たらない。厳しい剛の正しさがないので憂えを免れない。大人にあうのに用いる。憂うるなかれ。柔で南に行けば、大きな明󠄃につく。柔は時により上ることを得られる。純柔であれば自分で上ることが出来ない。剛が思いあがれば人は従わない。旣に時であり上った。また巽順である。剛中で応じている。だから大いにとおるのである。巽順で上った。大きな明に至る。志が通ったことを言う。


《爻辭》
允は當るなり。巽卦の三爻、皆升る者なり。其れ應ずる无しと雖も、升の初めに處り、九二九三と志を合はせ倶に升る。升に當る時、升れば必ず大いに得。是を以て大吉なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
升は変じて萃と通う。萃の内卦の三爻の陰が昇って外卦に行った。だから升という。内が巽で外が順。柔巽で人の心に從う。二爻は剛中で五爻と応じている。これは賢人が君を得た象である。その得失を憂うるなかれ。西南は坤
であり、上卦にある。だから前進して南に遠征する。進み上って吉である。君臣が遇うことは古來難󠄄しい。巽順の德を身につけ、柔中の君(五爻)に遇󠄄う。剛中の逸材(二爻)を重用して、賢人を好む時、進んで為すことがある。地中に木が生ずる象であるから、地道は木に敏感である。時に昇進する。もしその養いを得れば、長く続かないものはない。君子はこれを体してその徳に從う。次々に重ねて高明󠄃廣大となる。漸次進む。


《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
升は升(のぼ)って進むという義がある。昇と同じである。三・四・五爻の震の卦は陽木、下卦の巽は陰木である。地に陽木と陰木の芽が出ている。それが天を貫くまでに段々進んで往くのが升である。元亨の元は震で、亨は兌である。また震は仁で、兌は義であるから、この卦には仁義の象がある。震は長子で、仁義の徳が段々と上って行けば、天子の位に即(つ)く所があり、心配には及ばない。南に征くとは、南面の位に即くことをいう。
[彖傳]
太子は升るべき時を以て天子の位に升る。皇太子が二爻目になると陽爻であるから剛である。内卦の皇太子が剛で中庸の徳を備えているから、外卦の坤=天下皆その徳に応じて服する。心配には及ばない。必ず天子の位を相続して大いなる慶びが出てくる。
[象傳]
地の中に巽と震の卦がある。木が次第に上の方に進んで伸びて往く。君子はこの卦の象を用いて徳を順にする。巽は『説卦伝』に「高し」とある。


《爻辭》

〔朱熹の解釋〕
《卦辭》
升は、望みは大いに通る。大人に会う。心配する必要はない。前進すれば吉である。


《爻辭》
初六は、本当に昇進することができる。大吉である。

1/31(月) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 上爻二爻

1/31(月) 雷水解(らいすいかい) 上爻二爻


【運勢】
困難に直面した時は、立ち止まり悩むのではなく、力強く行動する事が大切である。
出来る事を積極的に進めて行き、解決に向けた流れを作ると良い。
一貫した姿勢で、中正を堅く守れば、充分な成果を得られるだろう。


【結果】
䷧◎⚪︎
雷水解(らいすいかい) 上爻二爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
解は西南によろし。往くところなし。それ來たり復すれば吉。往くところあれば、夙(つと)にして吉。彖(たん)に曰(い)はく、解は險(けん)以て動く。動いて險より免(まぬが)るるは解。「解は西南によろし」とは、往(い)きて衆を得るなり。「それ來たり復して吉」とは、乃(すなは)ち中を得るなり。「往くところ有れば夙にして吉」とは、往きて功あるなり。天地解(ひら)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作りて百果艸木(ひゃくかそうもく)皆甲拆(こうたく)す。解の時大なるかな。象に曰はく、雷雨作るは解。君子以て過ちを赦(ゆる)し、罪を宥(ゆる)す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。公用ひて隼を高墉の上に射る。これを獲てよろしからざることなし。象に曰く、公用ひて隼を射るとは、以て悖を解くなり。
[二爻]
九二。田して三狐を獲る。黄矢を得れば貞にして吉。
象に曰く、九二の貞吉は中道を得るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は衆である。難を解決し、危険を整える。利を衆に施す。また東北に困まらない。故に東北に利がないとは言わないのである。まだ、困難を解決するによくない。安に処する迷う。解とは困難を解決し、厄を除くことである。中を失わない。難があっても行けば、迅速であれば吉。難が無ければよく中に復す。難があれば厄を除く。


《爻辭》
[上爻 優先]
初は四の應となり、二は五の應となる。三は上に應ぜず、位を失ひて負ひて乘り、下體の上に處る。故に高墉と曰ふ。墉とは、隼の處る所に非ず、高とは、三の履む所に非ず。上六は、動の上に居り、解の極なり。將に荒れ悖るるを解きて、穢れ亂るるを除かんとする者なり。故に用て之を射る。極まりて後に動き、成りて後に擧ぐ。故に必ず之を獲て、利あらざるなきなり。
[二爻]
狐は隠れ潜むものである。
剛中で応じている。
五爻に任じられ、大変な時に居る。
危険の情勢を知っている。
物分かりが良く、潜伏したものを見つける。
黄色は中を表し、矢は直を表す。
枉直の實を失わない。よく正しくできる。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
解は解散の意󠄃である。危険に居てよく動けば、険難を回避できる。卦は変じて蹇となる。二爻が蹇の外卦に行き、五爻が西南坤の方に行く。坤には地の象がある。險の中でよく動ける才でよく進み、よく止まる。どこでも通用する。君子は陰陽を和し、過失であれば赦して問わず、罪悪があれば、寛大にこれを宥す。仁政の至りである。解の道である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
狐は人を惑わす動物である。
三匹の狐は二爻より上の三つの陰をさす。
黄色の矢は中直を表す。
剛中の才があり、五爻に応じ、三つの陰が上に在る。
よく三陰の小人を除くことが出來る。
智術を用いて政治をしてはならず、正直が大切である。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦の水山蹇(
、天下の険難なる所の卦)が解けた所の卦である。長い大乱で農業が廃れ、人民は衰えてしまっている。西南は坤の卦で、地の象である。地に五穀を植立てて、以て人民を養う。天下が平らいだなら、進んで事を為す所の仕事は無い。漸次人民を養えば宜しい。若し大乱が平らいでいても、進んで往く所の事柄があるならば、速やかに往ってこれを治めるのが宜しい。
[彖傳]
険難に屈せずに踏み越えて外へ出ることで、険難を免れた。西南は坤の卦で、衆口衆口という象がある。大勢の人民を我が方へ撫で育てるようにしなければいけない。既に大難は解けているから、多く仕事をし過ぎず、程良い所に止(とど)まるのが宜しい。往くべき所があるなら、往けば必ず功が出て来る。
[象傳]
天地に於いては万物を生じ育(やしな)う時である。君子に於いては仁を行う時であるから、人を殺めるのは良くない。其所で過ちを赦し、罪人を宥(なだ)める。善い事を為す心で行った悪事を過ちと云い、それならば無罪になる。しかし意あって悪事を為したのは、赦すわけにはいかないので流刑などに処す。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
九二は賢人で、六五の賢人を輔ける。
二・三・四爻目に離の卦がある。
離は狩りで、田で狐を狩る。
三匹の狐は、初六・六三・上六の三つである。
黄矢は黄金を以て飾り立てる矢で、黄と云う色は中庸の譬えである。
悪を除くのに遣り過ぎては、却って小人の激する所がある。
丁度程良い所を得ており、正しくして吉である。
[象傳]
九二は小人を悪む事が甚だしくない。
其の処分が如何にも中庸の道を得ており、小人においても感服する所があり、能く治まる。

1/30(日) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 五爻

1/30(日) 地雷復(ちらいふく) 五爻


【運勢】
一陽来復、何事も低迷が長く続いた後には、必ず良い事がある。
初心に立ち返り、消極的な考え方を避け、積極的な人に倣うと良い。
道徳心を篤く持つ事で、様々な問題を未然に防ぎ、悔いがないように進む事が出来るだろう。

【結果】䷗◎
地雷復(ちらいふく) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
復は亨(とほ)る。出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。その道に反復す。七日にして來復す。往くところ有るによろし。彖(たん)に曰(い)はく、複は亨(とほ)る。剛反るなり。動いて順を以て行ふ。ここを以て出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。「その道に反復す。七日にして來復す」とは、天の行なり。「往くところ有るによろし」とは、剛長ずるなり。復はそれ天地の心を見るか。象に曰はく、雷地中に在るは復。先王以て至日に關(せき)を閉(と)づ。商旅(しょうりょ)は行かず。后は方を省みず。


《爻辭》
六五。敦復す、悔なし。
象に曰く、敦復す、悔なしとは、中以て自考すなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
復はかえるの意󠄃味である。ひとつ前の
剝の上爻にあった陽爻が初爻に帰ったということである。一陽来復、また盛んになろうとしている。陰陽の運行が他の妨害を受けず、順調であるから、何か事をなすのに良い時期である。


《爻辭》
厚きに居りて中を履む。厚きに居りて則ち怨みなく、中を履みて則ち以て自考すべし。以て復を休くするの吉に及ぶこと足らざると雖も、厚きを守りて以て復る。悔いて危ぶむべきなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
復は本の所に反(かえ)るという意である。一年で考えれば旧暦の十一月、つまり冬至にあたる。天の気が地の底に来ることで万物は生じる。この卦は天の万物を生じる所に、復(ま)た立ち反った所である。前の卦の山地剥は上九のみが陽爻で、それは碩果(せきか:大きく実った果実)を意味する。果実が地に落ちて復た芽が生える所の象である。「其道」とは、万物を生成する所の道である。「七日来復」とは、乾為天から一爻ずつ陽が減っていって全てが陰爻になり、復た新たに陽爻を生じるまで七段階の過程があることによる(乾為天→①天風姤→②天山遯→③天地否→④風地観→⑤山地剥→⑥坤為地→⑦地雷復)。雷気が往くに従って万物が発生する。また君子の勢いが昌(さか)んになれば道徳が行われる世となり、志ある者は朝廷に出て往って事を行うのが良い。それで「利有攸往」なのである。
[彖傳]
「復亨、剛反」とは、山地剥の陽爻が引っ繰り反ったのである。上卦の坤の卦徳(卦の基本的特徴)は順である。つまり天道天理に順って段々と動いて往く所であるから「動而以順行」なのである。七とは陽の発生する所の数で、これから段々と陽が長じて往く。「天地之心」は万物の生成である。
[象傳]
雷が地中に来たって居ることが「復」である。陽気は地の底へ来た所で未だ力が弱く、これを育てなければならない。そこで先王は一陽来復(いちようらいふく:陰暦十一月、冬至)の時期にあっては関門を閉ざして、商人や旅行者の往来をなくし、各人は家で静かにした。天子と雖も冬至の日には巡狩(じゅんしゅ:諸国の巡視)を罷めている。
《爻辭》

1/29(土) ䷶ 雷火豐(らいかほう) 二爻

1/29(土) 雷火豐(らいかほう) 二爻


【運勢】
勢いのある時は、その勢いを正しい方向へ進めなければならない。
如何に遠回りであっても、周りから疑われない様に、注意して行動する事が大切である。
独善的にならず、公明正大さを心掛ければ、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷶◎
雷火豐(らいかほう) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
豐は亨る。王、之に假る。憂ふる勿れ。日中に宜し。
彖に曰く、豐は大なり。明󠄃以て動く。故に豐なり。王、之に假るとは、大を尚ぶなり。憂ふる勿れ。日中に宜しとは、天下を照らす宜しきなり。
日中するときは則ち昃(かたむ)き、月󠄃盈(み)つるときは、則ち食󠄃す。天地の盈虚、時とともに消息す。而るを況や人に於いてをや。況や鬼神に於いてをや。
象に曰く、雷電皆至るは豐。君子以て獄を折し刑を致す。


《爻辭》
六二。其の蔀を豐にす。日中斗を見る。往けば疑疾を得ん。孚有りて發若すれば吉。
象に曰く、孚有りて發若すとは、信以て志を發するなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
豐の義はひろめる、ひらく、微細にするである。
隠れ滞っているものを通して天下の主となって、微隱にはうまく行かない。
憂えは未だに収まっていない。
だから、豐は亨に至るのである。
そして憂えが無くなる。
豐亨憂えなきの德を用い、天中に居るべきである。そして天下を照らす。


《爻辭》
蔀は覆いである。光を遮るものである。明󠄃動の時に居て、自然に豐かにはなれない。光大の德で内に居る。陰で陰に居る。豐かなところに蔀がある。かすかにしてみえない。日中は明󠄃の盛である。北斗が見えるとは暗い事の極みである。だから往くと疑いを招く。そして中を履んで位に当たる。暗い場所に居て邪にならない。争うことがあれば、誠が大切である。闇に苦しまない。だから吉。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
豐は盛大である。
知有りて動く。
よくうまく行く。
王者が大事業を起こす時である。
火を日とし、下に在る。
その徳の光明、あまねく四方を照らせば、憂うことなく、自然と豊大である。
人は明󠄃がなければ物を照らすことできない。
動かなければ事業は出来ない。
明にしてよく動く。
昔は湯王の徳を慕っていった。
天が王に勇智を錫(たま)う。


《爻辭》
蔀は覆いである。北斗が暗いから見える。この爻には豐があり、明の主爻である。中正の徳がある。五爻が応じる。五爻は陰柔不正、よく動くことが出来ない。才があっても上が応じない。陰暗が甚だしくよく見えない。日中の一番盛に北斗が見える。五爻は柔暗、賢を下すことがきでない。もし行きて求めれば、人々の猜疑心を引き起こす。ただひたすら人に誠実にあるべきである。大変な賢人と暗愚の君、誠実のみである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「豊」は腆(あつ)いと云う義で、物が厚く充ち満ちて居ることである。
世の中で云えば、天子が名君で政事が能く行き届いて居り、天下が盛んで富んでいることである。
しかしながらどれだけ盛んであっても、衰える所も出て来る。
下卦の離は日である。
東に在る時は未だ日が低いが、日中になれば遍く東西南北を照らし届かない所は無い。
ただし日が昃(かたむ)くといけない。
[彖傳]
天子の明徳は宜しく四海天下を照らすべきで、暗い所が出て来てはいけない。
しかしながら日が南中すれば、やがては傾いて往く所がある。
月も満ちれば、欠けて来る。
天地の道は斯くの如きもので、いつまでも保つことは難しい。
人間の主でなって居る所の鬼神と雖も、神明なることもあれば、時には神明ならざることもある。
自然の勢いと云うものは、力を以て動かすことは出来ない。
[象傳]
雷と電が一書に来るのが豊の卦である。
天下が皆富んで、上下安楽の時である。
しかし安楽であると、自然と人の心には奢りが出て来るようになる。
其処で刑罰を厳重にしなければいけない。


《爻辭》
この卦は安楽の義が有り、小人が君に楽しみを勧め奢りを助長させる所がある。蔀(しとみ)は遮り塞ぐ物で、君の明徳を蔽って塞ぐ所が甚だ盛んである。六二は陰爻を以て陰位に在り、離の卦の主爻でもあるから、明徳ある賢人のことである。賢人が往って君を輔けようとするが、讒言が多い為に往けば君から疑われる。天子が惑いから覚めて、忠臣の精神に感じ入り、志を動かす様になれば吉である。
[象傳]
六二の信が六五の天子の志を動かす。其処で信以発志也と云う。

1/28(金) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 上爻

1/28(金) 水雷屯(すいらいちゅん) 上爻


【運勢】
様々な困難があり、悩みは絶えないが、悲観する事は無い。
峠は既に越えている。
不安に駆られる気持ちを抑えて、今は耐える事が大切である。
目標に向けて歩みを続ければ、時勢は良くなり、何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷂◎
水雷屯(すいらいちゅん) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。彖(たん)に曰はく、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。象に曰はく、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


《爻辭》
上六。馬に乘ること班如たり。泣血漣如たり。
象に曰く、泣血漣如たり。何ぞ長かるべきなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。なやんで通ずることが出来ない状況である。ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。そのためには、正しさを固く守らねばならない。現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


《爻辭》
上爻は険難の極みであり、煩わしいことが多い。助けてくれる人もなく、泣くほかない。憐れであるが、どうしようもない。その位に留まることも、長くはない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
屯は止まり艱(なや)むという義である。下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。この人が進んで遂に侯になる所の卦である。雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。この雲雷の象によって世の中を治める。


《爻辭》
上六は尊い位を失ってしまった所で、遁げようとするが往く所が無い。そこで復た馬を回えして唯立って泣いているより他ない。涙が尽きて血を流して泣いている。
[象傳]
ここに至って婦女子の如く唯泣いて居た所で仕方が無い。ここで一つ考えをもって気力を振るって為す所が無ければいけない。其処で何ぞ長うすべきという。

1/27(木) ䷎ 地山謙(ちさんけん)→䷠ 天山遯(てんざんとん)

1/27(木) 地山謙(ちさんけん)→ 天山遯(てんざんとん)


【運勢】
何事も謙虚な姿勢で望み、相手の気持ちに寄り添う事が大切である。
上手く行かない事には執着せず、進退極まる前に素早く身を引くと良い。
正しいと信じる道を進めば、災いを避ける事が出来るだろう。


【結果】

本卦:地山謙(ちさんけん)
之卦:天山遯(てんざんとん)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陰][四爻 老陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻][五爻][四爻]


【原文】
《本卦:
地山謙》
謙は亨(とほ)る。君子は終はり有り。彖に曰はく、謙はとほる。天道下濟して光明。地道卑(ひく)くして上行す。天道は盈(えい)を虧(か)きて、謙に益す。地道󠄃は盈を變じて謙に流る。鬼神は盈を害して謙に福す。人道は盈を惡(にく)みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑(ひく)くして踰ゆべからず。君子の終はりなり。


《之卦:
天山遯》
遯は亨る。小しく貞に利し。
彖に曰く、遯は亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當りて應ず、時と與に行くなり。小しく貞に利しとは、浸して長ずるなり。遯の時義大なるや。
象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡うせずして嚴にす。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《本卦:
地山謙》
謙は謙譲や謙遜の意󠄃味である。平面な地卦の下に高いはずの山卦がある様が謙遜を表す。謙譲の徳を持っている者は、どんなところでも歓迎されるし、尊敬される。しかし、謙譲の美徳は昇進するにつれて失いがちである。謙譲の美徳を持ち続けて、人の上に立つことは難しい。君子とは最後まで謙譲の美徳を全うすることができる人のことである。これを有終の美という。謙譲の美徳を有する者が上にいると、下の者を大切にするので、下の者は自分の実力を活かすことができる。また、謙譲の美徳を有する者が下にいると、周りの人がその徳を慕って昇進を求める。


《之卦:
天山遯》
遯の義爲るや、遯るれば乃ち通ずるなり。
五を謂ふなり。剛位に當りて應ず。亢るを否ぐに非ざるなり。遯れて亢るを否がず。よく時と與に行ふ者なり。
陰道浸して長ぜんと欲す。正道もまた未だ全く滅びず。故に小しく貞に利しなり。
天の下に山有り、陰長ずるの象なり。


〔根本通明の解釋〕
《本卦:
地山謙》
謙は「へりくだる」と言われるが、本当は「小さい」という意味である。我が身が小さくなって人の下に降って居る。古くは言偏の無い「兼」の字であった。小さいために一つで足らず合わせるという義である。他に口偏を附けた「嗛」の字もあり、子夏伝はそう書いている。口の中に入るだけの小さな物を含んでおり、嗛嗛之食という言葉は僅かの食物のことである。小さいというのが本来の義である。卦の象では地の下に山があり、人民の下に我が身を引き下げて小さくなって居る。二・三・四爻目に坎がある。水には功労があるが、低い所に居るので、謙遜の義がある。これなら何処へ行っても尊ばれ亨ることになる。しかし真実の謙虚さでなく、人望を得るために拵えて行うのは長く亨らない。
[彖傳]
天道下済とあるのは、上に在る天の陽気が降って来て地の徳を成すことである。元は乾の一番上にあった陽爻が下に降って九三となったのである。光明は三爻目に降りて来た陽爻である。また元は三爻目にあった陰爻が一番上に上がったから上行という。元の乾の卦が陽爻ばかりで剛に過ぎるので盈(えい)に虧(か)く。上に居るべき人が小さく為って、人の下に降るのが謙である。我が身を下しても人が侮って其の上を踰(こ)えて往くことは出来ない。卑い所に居れば居るほど人が尊んでくる。そうして君子は終を遂げる所となる。
[象傳]
上卦が地で下卦が山である。地の広い方から見れば山が小さい。天地の道理は何でも盈ちる所があり、それを虧かなければいけない。そこで多い方から取って、少ない方へ益す。政でも米を多い所から寡(すく)ない所に益すようにする。政は物の多少を量り、平らかにしなければいけない。


《之卦:
天山遯》