2/11(金) ䷍ 火天大有(かてんたいゆう)→天山遯(てんざんとん)

2/11(金) 火天大有(かてんたいゆう)→天山遯(てんざんとん)


【運勢】
活発に活動するのが望ましい時。
気を引き締め、先を見据えた選択をすると良い。
考え無しに進めば、道を見失なってしまうだろう。
上手く行かない事には執着せず、見切りを付ける事が大切である。


【結果】

本卦:火天大有(かてんたいゆう)
之卦:天山遯(てんざんとん)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
火天大有》
大有は元(おほ)いに亨る。
彖に曰はく、大有は柔尊󠄄意位を得て、大中にして上下之に應ず。大有といふ。その徳剛健にして、文明。天に應じて、時に行く。是を以て元いに亨る。


《之卦:
天山遯》
遯は亨る。小しく貞に利し。彖に曰く、遯は亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當りて應ず、時と與に行くなり。小しく貞に利しとは、浸して長ずるなり。遯の時義大なるや。象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡うせずして嚴にす。


【解釋】
《本卦:
火天大有》
〔王弼の解釋〕
大いに通らない。
どういう理由で大有を得られよう。
大有ならば必ず大吉である。
五爻は尊󠄄位に柔でいる。
中に居るのは大である。
陰が一つしかない。
上下応じている。
德が天に應ずれば、行くに時を失わない。
剛健は滞らない。
文明犯さず。
天に応じれば大。
時行きて違わない。
だから大いに通る。
大有は包容の象である。
だから勧善懲悪が美しいのである。
天德を順奉し。
ものの命を休す。


〔東涯の解釋〕
大有はそのあるところが大。
五爻は柔中尊󠄄位にいる。
上下の五つの陽がこれに応じている。
盛大である。
大とは陽のことで陽が沢山ある。
五爻が二爻と応じている。
これは智勇兼備である。
五爻に澤山の賢人が集まり、天命も之を助ける。
勝道󠄃というべきである。


〔根本通明の解釋〕
この卦は、大なる物多しと云うのは、天下皆賢人と云う義である。
賢人が多ければ、何事も亨らないことが無い。
「有」の字は富むという義、また多いという義にもなる。
『詩経』の魚麗篇に「旨且有(うまくして、かつ、おおし)」とあり、多いという義である。
「大有」は、「大いにある」と読んでは駄目で、「大なる物が多い」という義である。
大なる物は五爻目以外の陽爻で、大人・君子・賢人のことである。
しかしその様な人才は容易に得難く、盛んなる世であった堯舜の時で臣五人、周の国で十人しかなかった。
[彖傳]
賢人が多く朝廷に出で来、君は能く賢人の言を用いる。
上に居る賢人も、下に居る賢人も、皆君に応じて来る。
大中は、上卦が元は乾だったのが、真ん中に陰爻が出来たことを云う。
この卦を一人の天子の徳で言えば、剛健であり、時に従って能く行う。
[象傳]
火気が地の底から十分に上に昇って居り、万物が盛んになる所である。
下卦は乾の卦であるから十分に充ちている。
天下は至って富んでおり、人民は生活に不足が無い。
しかし三、四、五爻目には、兌の卦があり、楽しみに流れる傾向がある。
其処で、盛んな時には悪い者を遏(とど)め、善を掲げる。
何時の世でも、名君の時でも、悪人を無くすのは難しい。
この卦では、九四が悪人である。
この大臣は、君に諂う所を以て立身した人で、表面上は君子のようで君子では無い。


《之卦:
天山遯》
〔王弼、通解の解釋〕
遯の義爲るや、遯るれば乃ち通ずるなり。五を謂ふなり。剛位に當りて應ず。亢るを否ぐに非ざるなり。遯れて亢るを否がず。よく時と與に行ふ者なり。陰道浸して長ぜんと欲す。正道もまた未だ全く滅びず。故に小しく貞に利しなり。天の下に山有り、陰長ずるの象なり。

2/10(木) ䷖ 山地剥(さんちはく)→䷽ 雷山小過(らいさんしょうか)

2/10(木) 山地剥(さんちはく)→ 雷山小過(らいさんしょうか)


【運勢】
周りからの風当たりが強く、物事を前に進めるのが難しい時である。
この様な時は、謙虚に正しさを守り、小事にも目を配ると良い。
時間の余裕は心の余裕、何事も速やかに進める事が大切である。


【結果】

本卦:山地剥(さんちはく)
之卦:雷山小過(らいさんしょうか)
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻][四爻][三爻]


【原文】
《本卦:
山地剥》
剝は往く攸有るに利しからず。
彖に曰く、剝は剝なり。柔剛を變ずるなり。
往く攸有るに利しからずとは、小人長ずるなり。順にして之を止む。象を觀るなり。君子は消息盈虚を尚ぶ。天の行なり。
象に曰く、山、地に附く剝。上以て下を厚うし宅を安ず。


《之卦:
雷山小過》
小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。彖に曰く、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。象に曰く、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。


【解釋】
《本卦:
山地剥》
〔王弼、東涯の解釋〕
剝は割くの意󠄃である。
下から陰が侵食し、最後に上爻だけに陽が残っている。
これは徳の無い者がはびこり、有徳者が衰退している時である。
このような時は何か事を起こす時ではないと、強く戒めるべきである。


〔根本通明の解釋〕
剝は刀で削り取っていくという意味である。
徳の無い者が削り取りながら有徳者にせまっていくところである。
このような時には有徳者は遁れておくのが良いのである。
[彖傳]
剝にはものを破る、落とすという義もあるが、この場合は削り落とすの意󠄃である。
小人が世の中の隅々にはびこっているので、君子たるものはどこにも行かない方が良い。
そして正しい行いをつづけていかなければならない。
今はすべてが陰になろうとしているが、固く道徳を守り、一陽来復に備えておくべきである。
[象傳]
地の上に山がある。
地は民であり、山は君主である。
地が厚ければ山は盤石であるように、民の生活基盤が盤石であってこそ、君主は盤石なのである。
卦の形は牀のようである。
牀とは今の机のことで、一番上の上爻が机で、五爻までの陰爻が足である。


《之卦:
雷山小過》
〔王弼の解釋〕
飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。


〔東涯の解釋〕
陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。


〔根本通明の解釋〕
小過の卦は全体でみると
の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻にがある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。
[彖傳]
祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。
[象傳]
大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。

2/9(水) ䷢ 火地晋(かちしん)→䷤ 風火家人(ふうかかじん)

2/9(水) 火地晋(かちしん)→ 風火家人(ふうかかじん)


【運勢】
周りからの信頼に応え、役割を堅実に果たす事が大切である。
助けを求める社会よりも、助けを差し伸べる社会の方が健全である。
義務感からではなく、自主的に行動する事で、道は大きく開けるだろう。


【結果】

本卦:火地晋(かちしん)
之卦:風火家人(ふうかかじん)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 老陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
火地晋》
晋は康侯(しょうこう)用ゐて馬を錫(たま)ふこと蕃庶(ばんしよ)。晝日三接す。彖に曰く、晋は進むなり。明󠄃地上に出づ。順にして大明󠄃に麗(つ)く。柔進みて上行す。是を以て康侯用ゐて馬を錫(たま)ふ蕃庶。晝日三接すなり。象に曰く、明󠄃、地上に出づるは晋。君子以て自ら明德を照(あきらか)にす。


《之卦:
風火家人》
家人は女の貞によろし。彖に曰く、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。象に曰く、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


【解釋】
《本卦:
火地晋》
〔王弼、東涯の解釋〕
晋は進󠄃むである。地上に日が昇り、あまねく天下を照らす象である。陰が三つ上に登って太陽に付き従っている。これは名君に人々が仕える象である。そして立派な諸侯となり、王は恩恵を賜る。三陰は柔順の徳がある。君子は德を明らかにし、天下あまねくその恩恵を受ける。


〔根本通明の解釋〕
上卦の離は日であり、下卦の坤は地である。つまり地上に日が初めて出た所の象である。晋は日が出て万物が進むという義である。『説文解字』に「日出萬物進也」とあるように、太陽の働きで万物は育ち伸びてゆく。二・三・四爻目に艮がある。艮は東北の間であるから、将に日が出んとする所である。康侯は、諸侯の職分が民を康(やす)んずる所にあることに由来する。諸侯は天子に朝するに三度御目通りをするので「昼日三接」という。その時に諸侯は自国の名馬を献ずる。馬十匹を献ずることを錫(たま)うという。錫という字は古くは上下の区別なく、下から上へ差上げるのにも錫うという。『書経』にも「衆錫帝」とある。これが上から下に与える意味に限られるようになるのは、始皇帝の時からである。下から上へ差上げる時には、献ずる、奉るというようになる。蕃庶は馬十匹で多いことによる。
[彖傳]
日が出て万物が段々進んで来る、即ち天子が上に在って諸侯が進んで拝謁する所の象である。明は離の卦の象である。「大明に麗(つ)く」というのは、大明=乾の卦の真ん中に陰爻が麗いて離の卦になることである。天は大明、離は明である。「柔進みて上行す」というのは、元これは真っ暗の夜の象である地火明夷の卦であったことによる。五爻目の陰爻が二爻目にあり、それが上行して五爻目まで往く象である。
[象傳]
日が地の下にある真っ暗な状態は、欲に覆われて徳が明らかにならない状態である。君子は欲を取り払って、明徳を明らかにして四方を照らす。


《之卦:
風火家人》
〔王弼、東涯の解釋〕
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。家の外の他人のことは分からない。家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。四爻が主爻である。主に女性について説かれている。家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


〔根本通明の解釋〕
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。兩方中である。皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。婦と妻と二つの字がある。双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。中男と兄にも嫁がある。一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。物を煮たり焼いたりするのは竈である。竈をよく治めることが家を治める時の第一である。家族は秘め事をしてはいけない。

2/8(火) ䷶ 雷火豐(らいかほう) 四爻三爻

2/8(火) 雷火豐(らいかほう) 四爻三爻


【運勢】
物事を前に進めるのに良い時である。
不安な気持ちに振り回される事無く、自らの考えに自信を持ち、明確な目標を定める事が大切である。
自分本位に行動せず、一丸となって取り組めば、如何なる困難も乗り越えられる。


【結果】
䷶◎⚪︎
雷火豐(らいかほう) 四爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 老陽]
[三爻 老陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
豐は亨る。王、之に假る。憂ふる勿れ。日中に宜し。
彖に曰く、豐は大なり。明󠄃以て動く。故に豐なり。王、之に假るとは、大を尚ぶなり。憂ふる勿れ。日中に宜しとは、天下を照らす宜しきなり。
日中するときは則ち昃(かたむ)き、月󠄃盈(み)つるときは、則ち食󠄃す。天地の盈虚、時とともに消息す。而るを況や人に於いてをや。況や鬼神に於いてをや。
象に曰く、雷電皆至るは豐。君子以て獄を折し刑を致す。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。其の蔀を豐にす。日中斗を見る。其の夷主に遇ふ、吉。
象に曰く、其の蔀を豐にすとは、位當らざるなり。日中斗を見るとは、幽にして明ならざるなり。其の夷主に遇ふとは、吉の行なり。
[三爻]
九三。其の沛(はい)を豐にす。日中沫(あわ)を見る。その右肱を折る。咎なし。
象に曰く、其の沛(はい)を豐にすとは、大事に可ならざるをなり。その右肱を折るとは、終に用うべからざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
豐の義はひろめる、ひらく、微細にするである。
隠れ滞っているものを通して天下の主となって、微隱にはうまく行かない。
憂えは未だに収まっていない。
だから、豐は亨に至るのである。
そして憂えが無くなる。
豐亨憂えなきの德を用い、天中に居るべきである。そして天下を照らす。


《爻辭》
[四爻 優先]
陽を以て陰に居り、其の蔀を豐にするなり。初を得て以て發し、夷主たれば吉なり。
[三爻]
沛は幡である。盛んな光を御す所以である。沫はかすかに暗い明りである。上爻と応じる。志陰にある。陰が陰に居てもまだ闇を免れない。日中沫を見ることをいう。明かりを施せば沫をみれる。用を施せば右ひじを折る。だから自分で守らなければならない。未だ用が足らない。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
豐は盛大である。
知有りて動く。
よくうまく行く。
王者が大事業を起こす時である。
火を日とし、下に在る。
その徳の光明、あまねく四方を照らせば、憂うことなく、自然と豊大である。
人は明󠄃がなければ物を照らすことできない。
動かなければ事業は出来ない。
明にしてよく動く。
昔は湯王の徳を慕っていった。
天が王に勇智を錫(たま)う。


《爻辭》
[四爻 優先]
[三爻]
旧本では沛を旆と書いた。王弼は幡とした。内を覆い、暗いことが甚だしい。右腕を折ってしまうと行動できなくなる。明の最上に居て、陽剛正を得て、上は上爻が陰。治めることが出来ない。二爻に比である。二は陰であり、陽に順う。暗い場所に居ても、上に頼るべき君主なし。右手を折って用いることが出来ない。位は正しい。陰暗の世に居て、明正の功があり、問題ない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「豊」は腆(あつ)いと云う義で、物が厚く充ち満ちて居ることである。
世の中で云えば、天子が名君で政事が能く行き届いて居り、天下が盛んで富んでいることである。
しかしながらどれだけ盛んであっても、衰える所も出て来る。
下卦の離は日である。
東に在る時は未だ日が低いが、日中になれば遍く東西南北を照らし届かない所は無い。
ただし日が昃(かたむ)くといけない。
[彖傳]
天子の明徳は宜しく四海天下を照らすべきで、暗い所が出て来てはいけない。
しかしながら日が南中すれば、やがては傾いて往く所がある。
月も満ちれば、欠けて来る。
天地の道は斯くの如きもので、いつまでも保つことは難しい。
人間の主でなって居る所の鬼神と雖も、神明なることもあれば、時には神明ならざることもある。
自然の勢いと云うものは、力を以て動かすことは出来ない。
[象傳]
雷と電が一書に来るのが豊の卦である。
天下が皆富んで、上下安楽の時である。
しかし安楽であると、自然と人の心には奢りが出て来るようになる。
其処で刑罰を厳重にしなければいけない。


《爻辭》
[四爻 優先]
此れもどこ迄も君を惑はすのである。日中に大ひなる星を見る其處で之に誨へる言ばである。此九四は矢張大臣で居る。大臣たる者は飽迄君の明を蔽ふと云ふでは可けない。其所で其夷主に遇へば吉なり。夷主と云ふのは此初九を指して言ふ。其所で之に誨へる辭ばには兎角我身を全ふするには大臣の官を拗ちて其下賤なる所の我主とする其物に就て能く初九の賢人と親む様にしたならば吉であると云ふ所は速かに位を去れと云ふ事を諷諌するのである。其夷主に遇ふたならば吉である。
[象傳]
其蔀を豊にするは位當らざるなり。我身分は大臣の位に坐つて居る。其大臣の位は我が身に不相當である。小人の身を以て永く其所に居るべき譯のもので無い、其れを日中に斗を見ると云ふものは今の世の中が暗くなつて明かで無いと云ふものは此大臣が君を晦ますからである。其所で我れは大臣の地位を去つて其夷主に遇へば吉であると云ふものは行るなり、我が是迄居る所の位を去る所を言ふのである、行ると云ふは此位を棄て。去つて行く、然うすれば免れる。何時迄も富貴を貪つて居れば可けない。
[三爻]
六二は日中に北斗七星を見る程暗いが、九三に至っては小さな星まで見える程に愈々暗い。小人が盛んになって、我が寵愛を専らにするために、君の明徳を塞ぐ。九三は上六と応じて居る。上六は君の側で大臣の地位にあるが、最も小人であり、是が君を惑わす甚だしい者である。上六は豪傑で剛にして正しい所の九三を我が党派に引き込もうとするが、それを憂えた九三は自ら我が腕を折ってしまい、上六に対して用を為さないことを明らかにする。従って咎は無い。
[象傳]
小人が権勢を専らにして居れば、大事を行ってはいけない。右肱を折ると云うのは、誓って上六のための働きを為さないことを示す。

2/7(月) ䷔ 火雷噬嗑(からいぜいごう) 上爻三爻

2/7(月) 火雷噬嗑(からいぜいごう) 上爻三爻


【運勢】
悪事は早めに改める事が大切である。
驕慢さが極まると、過ちを指摘されても、素直に聞く事が出来なくなってしまう。
強情な人に対して、あれこれ難しく考える必要は無い。
規則に則り、冷静に対処すれば良い。


‪【結果】
䷔◎⚪︎
火雷噬嗑(からいぜいごう) 上爻

《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
噬嗑は亨(とほ)る。獄を用うるによろし。
彖に曰く、頤(おとがひ)の中に物有るを噬嗑といふ。噬(か)み嗑(あは)して亨る。剛柔分かれ、動いて明󠄃なり。雷電合して章なり。柔、中を得て、上行す。位に當たらざると雖も、獄を用うるに利しなり。
象に曰く、雷電は噬嗑。先王以て罰を明󠄃らかにし、法を勅ふ。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九。校(かせ)を何(にな)ひ、耳を滅する。凶。
象に曰く、校を何ひ、耳を滅するとは、聡明󠄃らかならざるなり。
[三爻]
六三。腊肉を噬みて、毒に遇ふ。小し吝なり。咎なし。
象に曰く、毒に遇ふとは、位當たらざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
噬はかむこと。
嗑は合わせることである。
物は親しくなかったら、間を開けるものである。
物が整わず、過ちがある。
噛み砕いて合わせると通ずる。
噛まなければ通じない。
刑に服して改心するのは獄の利である。
剛柔が分かれて動けば乱れず、明らかである。
雷電が合わされば明るい。
獄に用いるべきである。
五爻が主爻である。
五爻は位に当たっていないが、獄に用いるのに良い。


《爻辭》
[上爻 優先]
極刑に処す。
惡を積みて改めないものである。
いくら刑に服しても改めないので、絞首刑となり、耳を失う。
耳を失っても改めない。
これほどの凶はない。
[三爻]
下體の極に處りて、其の位に非ざるを履む。斯を以て物を食へば、其の物必ず堅なり。豈に唯だ堅なるのみならんや、將に其の毒に遇はんとす。噬は以て人を刑するを喩へ、腊は以て服さざるを喩へ、毒は以て怨み生ずるを喩ふ。然して四を承けて、剛に乘らず。其の正を失ふと雖も、刑するに順なるを侵さず。故に毒に遇ふと雖も、小し吝なり、咎なし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
噬嗑は嚙合わせることである。
物が口の中に入っている。
これを嚙合わせるのである。
上下に二陽があるが、これが口である。
四爻の陽爻が口の中のものである。
内卦は動いて外卦は明󠄃るい。
この卦は賁から来ており、賁の二爻が上に昇って五爻に来ている。
位に当たっていないが、君位に居て柔順の德と勢いを失っていない。
刑罰を執行するによい。
剛と柔が卦の中を得ており、偏りがない。


《爻辭》
[上爻 優先]
何は荷うである。
陽が最上に居る。
悪徳の限りを尽くしたので許されない。
かせのために耳を傷つけたということからも、凶であることが察せられよう。
初爻と上爻は受刑者であるが、初爻は足、上爻は耳である。
人は自らの過ちを聞けば、改めるものであるが、驕慢が行き過ぎると人に耳を貸さなくなってしまう。
耳を滅するの凶、恐るべし。
[三爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
噬は噛む、嗑は合わせるである。
口の中に物が一つある。
頤は上に動いて物をかむ。
上のあごは動かないものである。
飲食をする卦である。
堅いものが四爻に一つある。
骨である。
また、上と下とを通わせない悪人である。
悪人を取り締まるのが刑獄である。
刑獄を用いるによいというのは、そういうことである。
雷、火は造物者󠄃が天地の間の惡を砕くためにある。
[彖傳]
上は火で下は雷。
火は陰で雷は陽である。
雷は動く。
すると火が起こり、明るくなって、悪人がよく見えるようになる。
五爻は陰爻であり、位に当たっていないが、刑獄にはよい。
なぜなら、陽であったなら強すぎて苛烈な刑罰を下す。
それよりは陰の方が良い。
[象傳]
朱子学者は雷電を電雷にした方が良いという。
上が火で、これが電、下が雷というのである。
しかし其れは良くない。
文字に拘泥して道理に背いている。
この電は雷に発したものであるから、雷電で良いのである。
三四五爻に
がある。
是を法律とする。
世の中に悪人は絶えないものであるから、刑獄の必要性はなくならないのである。


《爻辭》
[上爻 優先]
何度も何度も罪を犯したものなので、処刑するしかない。
刑罰の時は足と耳に器械をつけるので耳が隠れる。
在任が生きる道がない。凶。
[象傳]
罪を犯した者には教官が来て、悪事をしてはならないと教え諭す。
この者󠄃は何度も罪を犯しているので、もう教え諭しも耳に入らない。
聡明でない。
[三爻]

2/6(日) ䷇ 水地比(すゐちひ) 四爻二爻

2/6(日) 水地比(すゐちひ) 四爻二爻


【運勢】
身近な人と親しみ、協力し助け合い、信頼関係を育むのに良い時である。
皆で役割を分担し、成果を共有する事が大切である。
善は急げ。
己の気持ちに誠実に向き合い、正しさを守る事が出来れば、道は大きく開けるだろう。


【結果】
䷇◎⚪︎
水地比(すゐちひ) 四爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
比は吉なり。原筮(げんぜい)。元永貞(げんえいてい)にして咎(とが)めなし。寧(やす)からざる方(まさ)に來たる。後るる夫は凶。彖(たん)に曰はく、比は吉なり。比は輔(ほ)なり。下順從するなり。原筮、元永貞にして咎めなしとは、剛中(ごうちう)を以てなり。寧(やす)からざる方(まさ)に來たるとは、上下應ずるなり。象に曰はく、地の上に水あるは比。先王(せんわう)以て萬國を建て、諸侯を親しむ。


《爻辭》
[四爻 優先]
六四。外、之を比す。貞にして吉。
象に曰く、外賢に比す。以て上に從ふなり。
[二爻]
六二。之れを比するに内よりす。貞吉。象に曰く、之れを比するに内よりすとは、自ら失はざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
比の時にあり、筮によって咎なきを求めようとしている。元永貞であろうか。人が群れて互いに親しみ、元永貞で無ければ、凶邪の道である。もし主に遇わなければ、永貞といえども咎を免れることが出来ない。永貞で咎なき者は、ただ五爻のみであろう。上下に五爻以外に陽がない。すべて五爻に帰す。親しみ安心する。後れるものは凶である。


《爻辭》
[四爻 優先]
外、五に比す、履みて其の位を得。比は賢を失はず、處りて位を失はず。故に貞にして吉なり。
[二爻]
比の時に處り、中に居りて位を得る。而して五、在るに繋ぎ應ず。他より來たること能はず。故にそれ内よりす、貞吉を得るのみ。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
比は相附き比することである。九五が位を得ている。そしてほかの五陰がつき従う。多くのものが一人を助けている。吉である。元永貞の後に郡陰に当たれば咎めがない。まだ安住の地に居ないものがいる。どんな剛強の者でも咎を免れない。柔弱󠄃であれば猶更である。


《爻辭》
[四爻 優先]
[二爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
比は親密なる所である。比は密であり、密は物と物とが密着して間に隙間の無いことである。上卦は水、下卦は地である。水は地の中に浸み込んでくるから、水と土は離れることが無く、密着した状態である。五爻目は陽爻で天子にあたる。天子は人民と密着しており離れることが無い。ちょうど水と土の関係のようである。これは吉である。「筮」は神に吉凶を問い訊ねることで、「原」は再びという意で三度問うことである。つまり天子は神に吉凶を訪ねるのと同じように、諸々の人民へ何事も懇ろに問い訊ねて事を謀るのである。「元永貞」とは元徳を持つ人が、永く怠らず、貞しい所を守っていることである。これは堯舜(古代中国で徳をもって天下を治めた聖天子である堯(ぎょう)と舜(しゅん)。転じて、賢明なる天子の称のようなものである。「後夫凶」は、四方の国が名君に服しているのに、後に残って服せずに居る男が禍を受けることである。
[彖傳]
比は吉である。また互いに相輔けることである。「下順従」の「下」は下卦の坤=人民のことである。そして「順従」は坤の卦の象であり、人民が皆九五の天子のもとに集まってくることである。「不寧方来」は上から下まで残らず天子に応じて服して来ることをいう。「後夫凶」は名君に服さない者が、自ずから往くべき所がなくなり、その道に窮することをいう。
[象傳]
地の上に水があるのが比である。地に悉く浸み込んで来る水は、名君の徳性が深く人民の方へ浸み込んでいく例えである。君と民は親密な関係であり、離れようもない。こうした君民一体の関係に、皇統一系の象が含まれているのである。


《爻辭》
[四爻 優先]
[二爻]

2/5(土) ䷐ 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し

2/5(土) 澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し


【運勢】
先人に倣い、自分本位な気持ちを抑え、相手を思い遣ると良い。
冷静に先を見通す事が出来れば、何事も順調に進められるだろう。
行動には責任が伴う。
どんな時も、与えられた役目を最後まで全うする事が大切である。


【結果】

澤雷隨(たくらいずゐ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
隨(ずゐ)は元(おほ)いに亨(とほ)る。
貞(てい)によろし。咎めなし。
彖に曰く、隨は剛に來たりて柔に下る。動いて說󠄁(よろこ)ぶは隨。元いに亨り、貞。咎めなし。しかして天下時に隨(したが)ふ。時に隨(したが)ふの義、大なるかな。
象に曰く、澤中に雷あるは隨。君子以て晦(みそか)に嚮(むか)ひて入りて宴息(えんそく)す。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
隨はしたがうの意󠄃味である。
内卦は震で動き、外卦は兌であり、よろこぶの意󠄃である。
君主が行動するとき、人々はよく協力してくれ、思い通りにできる。
人々は時機にしたがい行動する。


〔根本通明の解釋〕
随は後ろに随って行く義である。
同じ「したがう」でも、従の字は左に付いても右に付いても従うだが、随の字は後ろに附いて行くという義である。
初九はニに随う。
二は三に随う。
三は四に随い、四は五に随い、五は六に随う。
先の方に随うという象があるが、何でも随へば良いわけではない。
仁義礼智に外れないようにすれば咎が無い。
[彖傳]
初九の陽爻が二・三爻目に随っているので、剛柔に随う。
下卦の震は雷なので動く。
動いた先の兌が說ぶ。
随うには正しき所をもってすれば、必ず大いに亨る。
二・三・四爻目の艮は時の象がある。
時は重要で、必ず随わなければならない。
[象傳]
兌は秋、雷は春である。
春に雷が出で、秋に沢中に潜む。
これは時に随うの義である。
君子は晦に嚮(むか)う。
晦は日の暮れる所である。

2/4(金) ䷮ 澤水困(たくすいこん) 四爻二爻

2/4(金) 澤水困(たくすいこん) 四爻二爻


【運勢】
言葉では無く、行動で示す事が信頼に繋がる。
着飾ろうとせず、成果の出ない時は、寡黙に誠実さを体現すべきである。
困難な時にこそ、その者の真価が問われる。
正しさを守り、努力を続ければ、必ず好機が訪れる。


【結果】
䷮◎⚪︎
澤水困(たくすいこん) 四爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。
彖に曰く、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。
象に曰く、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。來ること徐々。金車(きんしや)に困(くる)しむ。吝(りん)なれども終はり有り。
象に曰く、來ること徐々とは、志下に在るなり。位に當(あた)らずと雖(いへど)も、與(とも)有るなり。
[二爻]
九二。酒食(しゆしよく)に困む。朱紱(しゅふつ)方(まさ)に來る。用ひて享祀(きやうし)するに利(よろ)し。征けば凶。咎なし。
象に曰く、酒食に困むとは、中、慶有るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は初爻を志しているが、二爻の金車(堅い車)に邪魔されている。
金車とは二爻である。
陽爻で剛く、物を載せるのによい車である。
気の合う者󠄃がいても、間に障害があってなかなか会えないで困っている。
しかも、初爻と二爻とは相性が良い。
しかし、四爻は初爻と応じており、我慢すれば最終的には初爻と会うことが出來る。
[二爻]
二爻は才徳ある人だが、初爻と三爻の陰に挟まれて動けない。
水は北方であり、朱紱(しゅふつ)は南方のものである。
遠方から人が来る。
自分から行こうとしてはならない。
留まっていれば、最終的には五爻の君に登用されるという意外な慶事がある。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。


《爻辭》
[四爻 優先]
四爻は初爻と応じており、四爻は陽爻、初爻は陰爻で陰陽も応じていて、非常に相性が良い。しかし、初爻は小人である。徳が無い。
その諸初爻が助けを求めるので四爻は助けに向おうとするが、何分初爻は信用できないので、二の足を踏んでいる。
しかも、二爻の賢人が初爻のところに行ってはならないと教え諭す。
初爻を助けたいという気持ちに悩まされるが、二爻の諫めもあって、初爻のところに行かず小人と関わらずに済んだ。
[象傳]
志が下に在るというのは、四爻が初爻を助けようとすることである。
四爻は陰の位に陽でいるが、二爻の賢人の助けを得て、世の中を救うことが出來る。
[二爻]
九二は賢人である。
初六と六三の間で甚だ苦しめられ、酒も飲めず食も得られない。
食貧は『論語』にも『詩経』にもある。
「朱紱」は天子を指しており、紱は礼服の時に前方に垂れている朱で染めた服である。
天子は自ら賢人を招聘するため「方に来る」のである。
三顧の礼と同じである。
この時に九二の賢人は自分から君の方へ出向いてはいけない。
「征くは凶」である。
しかし咎が有るわけではない。
道徳を以て孚(まこと)を尽くす所なのである。
「享祀」は二・三・四爻が離の卦になっているから夏の象がある。
つまり夏の祀りである。
夏の祀りはお供え物を専らにするよりも、ただ孚を以て神を感じる所が主である。
[象傳]
酒食に困する中にして喜びがある。
やはり君子は小人を用いる時に当たっては窮している方が宜しい。
中庸の道を守っていれば、後には喜びが出てくる。

2/3(木) ䷪ 澤天夬(たくてんかい) 四爻二爻

2/3(木) 澤天夬(たくてんかい) 四爻二爻


【運勢】
困難な問題を先延ばしにしても、良い事はない。
時期が過ぎてしまい後悔する事のない様に、周りの意見に耳を傾け、迅速な決断を心掛けると良い。
慎みの心を忘れず、先人に倣い、正しさを守り続ける事が大切である。


【結果】
䷪◎⚪︎
澤天夬(たくてんかい) 四爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[四爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
夬は王庭に揚ぐ。孚(まこと)有りて號ぶあやふきこと有り。吿ぐること邑よりす。戎に卽くによろしからず。往くところ有るによろし。
彖に曰く、夬は決なり。
剛、柔を決するなり。健にして說󠄁(よろこ)ぶ。決して和す。「王庭に揚ぐ」とは、柔五剛に乘ずればなり。「孚有りて號ぶ、あやうきこと有り」とは、それ危めば乃ち光るなり。
「吿ぐること邑よりす。戎に卽くによろしからず」とは、尚ぶ所󠄃乃ち窮まるなり。「往くところ有るによろし」とは、剛長じて乃ち終るなり。
象に曰く、澤、天に上るは夬。君子以て禄を施して下に及ぼす。德に居りて則ち忌む。


《爻辭》
[四爻 優先]
九四。臀に膚なし。其の行くこと次且たり。羊を牽いて悔亡ぶ。言を聞きて信ぜず。
象に曰く、其の行くこと次且たりとは、位當らざればなり。言を聞いて信ぜずとは、聰明ならざればなり。
[二爻]
九二。惕れて號ぶ。莫夜に戎むること有り、恤ふること勿れ。
象に曰く、戎むること有り、恤ふること勿れとは、中道を得るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
夬は決める、引き裂くの意󠄃味である。
形は
剝の反対である。
君子が勢いを持ち、徳のないもの(上爻)を征伐する象である。
五陽に一陰が載っている。
危うい状態に耐えきったら大きな功をなす。
徳の無い者と戦うときはただ武力のみに頼るのでなく、誠実さを以て臨むべきである。
終には徳の無い者は除かれ、平和になる。


《爻辭》
[四爻 優先]
下、剛にして進み、己の據る所に非ず。必ず侵傷せ見れ、其の所を安んずる失ふ。故に臀に膚なし、其の行くこと次且たるなり。羊とは、牴狠にして移り難きの物なり。五を謂ふなり。五、夬の主爲りて、下の侵す所に非ず。若し五を牽けば、則ち悔亡ぶを得るべし。而れども己は剛にして亢、言を納るる能はず、自ら處る所に任じ、言を聞いて信ぜず。斯を以て行けば、凶なること知るべきなり。
[二爻]
健に居りて中を履み、斯を以て事を決す。能く己の度を審かにして、疑はざる者なり。故に惕れて號呼すること有り、莫夜に戎むること有りと雖も、憂へず惑はず。故に恤ふること勿れとなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
夬は円(まる)い物を欠いて割るという義である。
上六の陰爻は大奸物(だいかんぶつ:悪知恵のはたらく心のひねくれた人間)である。
それが九五の天子に近接している。
巧言令色をもって諂って居るのが、段々と蔓延(はびこ)って害を為す。
必ず上六を撃たねばならない。
「揚于王庭」とは、この大臣の悪を明らかにして皆に告げる所である。
「孚号」は、大臣を除くにあたり誠心をもって協力を呼び掛けるのに号(さけ)ぶ所である。
天下はこれを信じ、協力は得られる。
しかし兵を挙げて撃つのではない。
早まってはいけない。

[彖傳]
密接している悪を斬って除く。
一番上の陰爻を切り離す。
剛が柔を決する。
柔の小人は五人の賢人君子の上に上がって権勢を専らにしているので、その罪を揚げるのである。
厲(あやう)い所があるから容易に手を出してはならない。
危ぶみ慎しんで、人民が騒がしくならないように能く鎮撫する。
孚(まこと)を尊び、時を見て動かなければならない。
早く往き過ぎると却って窮する所が出てくる。
剛が次第に長じてくる所であるから、終(つい)には事を終え遂げることが出来る。
[象傳]
沢の水の気が、乾の天の上にあり、水気がまた下に戻ってくる。
君子は恩沢を下々の方まで汎く施す。
恩沢を上の方で置き蓄えて、吝(おし)み下へ及ぼさないのは君子にとって忌み嫌う所である。


《爻辭》
[四爻 優先]
[二爻]

2/2(水) ䷞ 澤山咸(たくざんかん) 二爻

2/2(水) 澤山咸(たくざんかん) 二爻


【運勢】
直感は大切にすべきだが、ただ考え無しに流される様ではいけない。
広い視野を持ち、冷静に物事を捉え、その上で判断する事が大切である。
軽率な行動を慎み、誠実に正しさを守れば、失敗を未然に防ぐ事が出来るだろう。


【結果】
䷞◎
澤山咸(たくざんかん) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利(よろ)し。女を取る吉なり。
彖に曰く、咸は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨り、貞に利し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。


《爻辭》
六二。その腓(こむら)に咸ず。凶。居れば吉。
象に曰く、凶と雖(いえど)も居れば吉とは、順(したが)えば害あらざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
陰陽二気が揃ってはじめて萬物が化生する。
天地万物の樣は感ずるところに現れる。
同類でないものは心を通わせることが難󠄄しい。
陰は陽に応じるものであるが、下でなければならない。
下に在って初めて吉である。
虚心になって人の意見を受け入れれば、物は感応する。


《爻辭》
咸の道、轉り進み、拇を離れ腓に升る。
腓の體は動き躁ぐ者なり。
物に感じて以て躁ぐは、凶の道なり。
躁ぐに由るが故に凶、居れば則ち吉なり。
處るに剛に乘らず。
故に以て居りて吉を獲るべし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
咸は感じることである。
反転すると
雷風恒になる。
恒の初爻がこの咸の上爻になったのである。
恒の四爻が下って咸の三爻になったのである。
つまり、柔が昇って剛が下りている。
陰陽二気が通じ合っているのである。
内卦は止まり、外卦は喜ぶ意󠄃である。
艮の少男を兌の少女に下す。
皆和順している。
物事がうまく行き、正しくしていれば害はない。
人が交わる時は、互いが得るものがないと心が通じ合わない。
妄動して心の通わせあいが正しくないと、良くない。


《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
是は下経の始まりである。
上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。
人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。
『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。
上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。
兌は少女、艮は小男である。
上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。
男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。
そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。
[彖傳]
咸は無心で咸じる所を尊ぶ。
情欲の私があってはいけない。
天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。
婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。
天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。
[象傳]
山上に水気が上っているのが咸の卦である。
山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。
それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。
我が満ちていてはいけない。


《爻辭》