12/16(木) ䷑ 山風蠱(さんぷうこ) 上爻二爻

12/16(木) 山風蠱(さんぷうこ) 上爻二爻


【運勢】
風が山に阻まれて淀む様に、物事の腐敗は前進しない事から始まる。
現状に満足せず、多少無理をしてでも物事を前に進める事が大切である。
周りに流されず、自ら考え行動する者は、いずれ人を導く立場になるだろう。


【結果】
䷑◎⚪︎
山風蠱(さんぷうこ) 上爻二爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰はく、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰はく、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九。王侯に事(つか)へず。其の事を高尚にす。
象に曰はく、王侯に事へずとは、志則るべきなり。
[二爻]
九二。母の蠱を幹す。貞にすべからず。
象に曰はく、母の蠱を幹すとは、中道を得るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。
旣に巽また止まり、競争しない。
事有りて競争の煩いがない。
だから為すことがある。
為すことがあれば大いにうまく行く。
天下を治める。
蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。
德を進めて業を修めればうまく行く。
甲とは創制の令である。
古いものを以てしてはならない。
甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。
事によって令を述べる。
終われば始まる。
天の運行は四季のようである。


《爻辭》
[上爻 優先]
最上位にゐて位に縛られない。
王侯に仕えない。
その事を高尚とするのである。
[二爻]
内にして中に居り、宜しく母の事を幹るべし。故に母の蠱に幹たりと曰ふなり。婦人の性、正を全うすべき難し。宜しく己の剛を屈して、旣に幹りて且つ順ふべし。故に貞にすべからずと曰ふなり。幹りて中を失はず、中道を得るなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蠱は壊、腐敗のことである。
この卦は變じて隨となる。
隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。
だから、剛が上って柔が下るというのである。
強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。
内は巽順であり、よく物を止める。
天に十日有り。
甲に始まり癸で終わる。
甲は事の始めである。
甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。
前󠄃の事が終わろうとする。
腐敗を致す道である。
甲に後れるとは乙丙丁である。
乱が極まり治まるころである。
腐敗を治める道である。
治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。
上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。
そうすればうまく行くのである。


《爻辭》
[上爻 優先]
蠱にあり、陽剛の才で無位の地位に居る。
そして下に応じるものがない。
この賢者、事に当たる時、仕えることをしない。
其の志を降ろさず、吉凶に無干渉である。
治まるべきことがあり、おさめる能力を持っている者󠄃は進み躍り出る。
時に自分を知る者がいない。
ただ一人のみをおさめ、務めには出ない。
その抱負は悪くない。
[二爻]
五爻の母親の腐敗に二爻の子供が対処するという状況である。
ただし、子供は強く働きかけるべきではない。
母子の仲が悪くなるだけで、解決にはつながらない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。
蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。
三・四・五爻目に震の卦がある。
これは長子、即ち皇太子である。
上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。
巽は弱く姑息で敗れる。
晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。
そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。
元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。
皇太子が即位して政を改め天下を治める。
先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。
後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。
ニ・三・四爻目に兌の卦がある。
兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。
これは旧弊の政事を除く義である。
三・四・五爻目は震の卦である。
震は春で、新しい芽がまた出てくる。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九は道徳の高い賢人である。
王侯には事えず、世を離れている。
山澤の間に遁れて居り、傍らから道徳を振起する。
[象傳]
親の晩年になって政の敗れた時から世を避けて、幾ら朝廷に出よと命じられても出ない。
上卦は艮で高さ、下卦は巽で潔さの象がある。
道徳が高く潔白な志は、後世まで手本として行うべき所である。
[二爻]

12/15(水) ䷼ 風澤中孚(ふうたくちゅうふ) 三爻初爻

12/15(水) 風澤中孚(ふうたくちゅうふ) 三爻初爻


【運勢】
目の前の事に一喜一憂せず、冷静さを忘れず、正しさを堅く守ると良い。
素直な心を持ち、内実の伴う行動で誠意を示す事が大切である。
様々な事に思いを巡らして決断すれば、選択を悔いる事は無いだろう。


【結果】
䷼◎⚪︎
風澤中孚(ふうたくちゅうふ) 三爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[三爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
中孚は豚魚吉。大川を渉るに利し。貞に利し。
彖に曰はく、中孚は柔、内に在りて、剛、中を得る。說󠄁(よろこ)びて巽(したが)ふ。豚魚吉とは、信豚魚に及󠄃ぶなり。大川を渉るに利しとは、木に乘りて舟虚なるなり。中孚以て貞に利し。乃ち天に應ずるなり。
象に曰はく、澤上に風有るは中孚。君子以て獄を議し、死を緩(ゆる)す。


《爻辭》
[三爻 優先]
六三。敵を得て。或(あるひ)は鼓し或は罷み、或は泣き或は歌ふ。
象に曰く、或は鼓し或は罷むとは、位當らざればなり。
[初爻]
初九。虞れば吉。他有れば燕(やす)からず。
象に曰はく、初九。虞れば吉とは、志未だ變ぜざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
上四に徳があって初めて誠となる。信立ちて初めて国が治まる。柔が内に在り、剛が中を得ている。剛が中を得れば正直、柔が内に在れば、静順である。喜んで従う。競い合わない。魚は虫の潜り隠れるものである。豚は獣の卑しく弱いものである。競い合う道󠄃はない。中信の徳があつければ、どんなに弱い者󠄃でも信用に足る。木を船の空洞に用いればついに溺れない。


《爻辭》
[三爻 優先]
三は少陰の上に居り、四は長陰の下に居り。對して相比しまず。敵の謂なり。陰を以て陽に居り、進まんと欲する者なり。進まんと欲して敵を閡ぐ。故に或は鼓するなり。四は正を履みて五を承け、己の克つ所に非ず。故に或は罷むるなり。勝たずして退き、懼れて陵を侵さる。故に或は泣くなり。四は順を履み、物と校いず、退きて害は見ず。故に或は歌ふなり。其の力を量らず、進退恒なければ、憊るること知るべきなり。
[初爻]
虞は專の如し。信の初めにあり、四爻が応じている。吉を得る。志は変わらない。心を一に繋いでいる。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
孚は信である。豚魚は江豚である。大きな澤に住み、風が起これば必ず出現する。二陰が四陽の中にある。二爻と五爻は共に剛中の徳があり、心が誠実である。だから中孚というのである。己に信があれば物は必ず感じる。木が澤の上に在る。真ん中が空洞の舟であり、櫂もある。大難を過ごして、誠を守る。誠があれば物は何でも動かせる。まだ誠がない場合は物を動かせない。


《爻辭》
[三爻 優先]
[初爻]
虞は度である。陽で初爻に居る。四爻と応じており、信ずべきものを信じて往けば吉である。別のものを考えてしまうと、向かうところが分からず安心できない。陽は変動しやすい。人は君に仕える時も、友と交わる時も、師に学ぶ時も一つのことに専心すべきである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
心中に存する孚に感応して動く所が中孚である。我が孚が豚魚の様であれば吉である。豚魚は豕に似た魚の事である。平生は水の上に出ないが、風が出て来る時には必ず水面に出て来る。船に乗り魚を獲る者は、風信と名付け、風を人に示す所に間違いが無いと信じる。この豚魚を信じるが如く、孚があれば人の信用を得られ、危険を踏み越えて往くことが出来る。孚は正しい所を以てするので無ければいけない。
[彖傳]
内側の六三六四は柔で、九二九五の剛は中を得て居り、中庸を得て居る。下卦の兌は說びがあり人を愛し、上卦の巽は行いが謙遜で傲らない。其所で天下の人々は我が孚の精神に感じて、悪い者も自然と善き方へ化して来る。我が方の孚を人が信用する所は、豚魚に能く及んで居る。
[象傳]
この卦を大きく見て、初二爻を一つの陽爻、三四爻を一つの陰爻、五上爻を一つの陽爻とすれば、離の卦と解釈できる。離は明らかさの象があり、白と黒を判けるが如く、罪人の善悪を能く明らかにする。互體(ニ三四爻)は震の卦で、雷の如く決する所がある。また春の象があり、萬物を生育する如く恩恵が深く、処分を緩める所がある。


《爻辭》
[三爻 優先]
[初爻]
虞と云う字は祭りの名である。親を葬って我が家に帰って来て、桑の木を以て木牌を立て、親の魂魄を思い祭りを行う。虞祭ほど精神が凝る祭りは無い。其所で初九が虞祭の如くに、精神が凝れば吉である。外の所へ氣が動けば、親の魂が其所に安んじて留まらない。他の所へ心を狂わせず、燕の如く人を信じなければ、去って往く所がある。
[象傳]
親が死んで間もないため、親を慕う志は未だ変わらない。夜も昼も親を思って飲食が喉を通らないような精神でなければ、人の信用も出ないものである。

12/14(火) ䷘ 天雷无妄(てんらいむまう) 二爻

12/14(火) 天雷无妄(てんらいむまう) 二爻


【運勢】
未来を見据え堅実に行動する事は大切だが、成果が出るから努力するという思考は良くない。
成果の有無に関わらず、真剣に取り組む事が大切である。
私利私欲に惑わされず正道を貫けば、仁徳を養う事が出来るだろう。


【結果】
䷘◎
天雷无妄(てんらいむまう) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
无妄(むまう)は、元(おおい)に亨(とほ)る、貞に利(よろ)し。其れ正に匪(あら)ずんば眚(わざわい)有り。往く攸(ところ)有るに利(よろ)しからず。彖に曰く、无妄は剛外より來(きた)りて、内に主になり、動いて健。剛中にして應(おう)ず。大(おおい)に亨り以て正し。天の命なり。其正に匪ずんば眚有り、往く攸有るに利しからずとは、无妄の往く、何(いずく)にかゆかん。天命、祐(たす)けず、行かんかな。象に曰く、天の下に雷行き、物に无妄を與(あた)う。先王以て茂(さかん)に時に對(たい)して萬物を育す。


《爻辭》
六二。耕さずして穫(か)り。菑せずして畬す。則ち往く攸有るに利し。
象に曰はく、耕さずして穫る。未だ富まざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
動いて健とは震のことをいう。雷動して乾健である。剛中というのは五爻を言う。剛が外からきて、内卦の主爻となる。動いていよいよ健である。剛中で応じている。私欲が行われない。妄動することはない。无妄の道ができ、大吉。剛が外から来て内の柔邪の道は消失する。動いていよいよ健であれば剛直の道が通る。剛中にして応じれば斉明の德が通る。天の教命である。もし正しくないのであれば、往く攸有るによくない。茂は盛んなことである。物は皆あえて妄でない。その後に萬物はそれぞれその性を全うできる。時に対して物は育つ。是より盛んなことはない。


《爻辭》
代りが終りにできてつくらない。その果実を独り占めしない。臣道を尽くす。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
妄(もう)は、望と音に相近し。无妄は、希望することがない。『史記』では无望󠄇とかく。この卦をさかさにすると
山天大畜になる。主爻は初九である。无妄は予期せずに来るものである。卦体は震が動くで、乾が健やかである。五爻と二爻は応じている。まさに天命である。逆に正しくないことをしていれば、どんどん禍いを増す結果となる。舜禹が君で伊傅が臣であるようなものだ。


《爻辭》
穫は刈り取りである。菑は一年目の田である。畬は三年目である。柔順中正であり、五爻が応じている。才があるが人と競わない。望みがかなう人材である。古代の人は天の評価を求め人の評価を求めなかった。人の評価など自然についてくるものである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
无妄は欲がないということである。無望の意味である。『史記』や『戦国策』にも無欲の意味で使われている。ただ誠にのみ志すのである。志が正しくなければ、災いがおこる。
[彖傳]
外卦が天で、内卦が雷である。五爻と二爻が応じており、上下心が通う。天命を受けることを表す。その天命に従うのがよい。それ以外のことをしようとするのは、天命でないことをすることになるので、よろしくない。
[象傳]
天の下に雷があるのが无妄である。人間が无妄であるのは当然であるが、万物も无妄であるべきである。先王はこの无妄の卦を用いて、つとめて万物を育んだ。春夏秋冬、天に従った生き方をした。


《爻辭》
六二は陰爻を以て陰位にあり、慾が無く正しい。震は東の卦で農の象がある。菑は神田地で、開墾した計りだから実りが悪く、利が無い。畬は二年目の田地で、聊か利を得る。農民が田地を拓くのは、自分の慾でなく、君の為国家のために耕さなければいけない。利の為にするのでなければ、何処へ往っても利がある。
[象傳]
民が皆耕さないのであれば、利を専らにして富む所までは行かない。富を欲するのでなく、義を以てするのである。

12/13(月) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 上爻

12/13(月) 地雷復(ちらいふく) 上爻


【運勢】
運気は巡り元に戻るのが常だが、先行きが不透明な状況を良しとしてはいけない。
危機感を持って行動しなければ、低迷が長く続く事になるだろう。
取り返しが付かなくなる前に、恥を忍んで助けを求める事が大切である。


【結果】
䷗◎
地雷復(ちらいふく) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
復は亨(とほ)る。出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。その道に反復す。七日にして來復す。往くところ有るによろし。彖(たん)に曰(い)はく、複は亨(とほ)る。剛反るなり。動いて順を以て行ふ。ここを以て出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。「その道に反復す。七日にして來復す」とは、天の行なり。「往くところ有るによろし」とは、剛長ずるなり。復はそれ天地の心を見るか。象に曰はく、雷地中に在るは復。先王以て至日に關(せき)を閉(と)づ。商旅(しょうりょ)は行かず。后は方を省みず。


《爻辭》
上六。謎復す。凶にして、災眚(さいせい)有り。用って師(いくさ)を行(や)るに、終(つい)に大敗有り。其の國君を以てすれば、凶なり。十年に至りて征すること克わず。象に曰く、迷復の凶は、君道に反すればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
復はかえるの意󠄃味である。ひとつ前の
剝の上爻にあった陽爻が初爻に帰ったということである。一陽来復、また盛んになろうとしている。陰陽の運行が他の妨害を受けず、順調であるから、何か事をなすのに良い時期である。


《爻辭》
最も復の後に處り、是れ迷ふ者なり。迷を以て復を求む。故に復に迷ふと曰ふなり。之を用ふるに師を行れば、用て克つこと有り難きなり。終に必ず大敗す。之を用ふるに國に於いてすれば、則ち君道に反くなり。大敗して乃ち復り、斯の勢ひを量るなり。復りて十年之を脩むると雖も、猶ほ未だ能く征せざるがごときなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
復は本の所に反(かえ)るという意である。一年で考えれば旧暦の十一月、つまり冬至にあたる。天の気が地の底に来ることで万物は生じる。この卦は天の万物を生じる所に、復(ま)た立ち反った所である。前の卦の山地剥は上九のみが陽爻で、それは碩果(せきか:大きく実った果実)を意味する。果実が地に落ちて復た芽が生える所の象である。「其道」とは、万物を生成する所の道である。「七日来復」とは、乾為天から一爻ずつ陽が減っていって全てが陰爻になり、復た新たに陽爻を生じるまで七段階の過程があることによる(乾為天→①天風姤→②天山遯→③天地否→④風地観→⑤山地剥→⑥坤為地→⑦地雷復)。雷気が往くに従って万物が発生する。また君子の勢いが昌(さか)んになれば道徳が行われる世となり、志ある者は朝廷に出て往って事を行うのが良い。それで「利有攸往」なのである。
[彖傳]
「復亨、剛反」とは、山地剥の陽爻が引っ繰り反ったのである。上卦の坤の卦徳(卦の基本的特徴)は順である。つまり天道天理に順って段々と動いて往く所であるから「動而以順行」なのである。七とは陽の発生する所の数で、これから段々と陽が長じて往く。「天地之心」は万物の生成である。
[象傳]
雷が地中に来たって居ることが「復」である。陽気は地の底へ来た所で未だ力が弱く、これを育てなければならない。そこで先王は一陽来復(いちようらいふく:陰暦十一月、冬至)の時期にあっては関門を閉ざして、商人や旅行者の往来をなくし、各人は家で静かにした。天子と雖も冬至の日には巡狩(じゅんしゅ:諸国の巡視)を罷めている。
《爻辭》

12/12(日) ䷝ 離爲火(りゐか) 変爻無し

12/12(日) 離爲火(りゐか) 変爻無し


【運勢】
現状に即した柔軟な対応をするには、明確な目標や信念を持つ必要がある。
上に立つ者が模範となり、目標に向けて周りの者を牽引して行くと良い。
皆が正しさを共有すれば、自然と秩序は守られ、何事も上手く行くだろう。


【結果】

離爲火(りゐか) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
離は貞に利(よろ)し。亨(とほ)る。牝牛を畜(やしな)へば吉。
彖に曰はく、離は麗なり。日月は天に麗(つ)き、百穀草木は地に麗き、重明󠄃以て正に麗く。乃(すなは)ち天下を化成す。柔、中正に麗く。故に亨る。是を以て牝牛を畜へば吉なり。
象に曰はく、明󠄃兩たび作るは離。大人以て明󠄃を繼ぎ、四方を照らす。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
離は柔であることが正しい。だから、必ず正しくして後にうまく行く。陰爻が卦の真ん中にある。牝の善いものである。外は強くて内は柔らかい。牛の善いものである。柔順を良しとする。凶暴な動物を飼ってはならない。牝牛を飼うのが良い。それぞれのものが、あるべき場所にあるのが良い。陰爻が真ん中に在ればうまく行く。吉。強暴な動物を飼うべきでない。


〔東涯の解釋〕
離は附くということである。一陰が二陽の間についている。火であり、日であり、電気であり、德としては明󠄃である。皆柔順であることを知っている。明󠄃は正しくあるのに良い。世の中で明󠄃を用いれば、正を失いがちである。明󠄃が二つ重なる状態で正を忘れなければ、天下を化成することが可能である。坤では牝馬の貞によいとあったが、この離では牝牛である。柔順の徳というより、柔順な人に服するのが良い。智の至りである。明󠄃とは日のことである。前の日が没しても、次の日の出がある。君子はこれを体現し、前の王の明徳を継いでいくのである。


〔根本通明の解釋〕
離はつくの意󠄃味である。正しくあればどこまでもよい。陰が陽爻二つの間についている。この陰爻は坤からきた。牝牛は柔順であり、温厚である。二爻と五爻が牝牛であるから、柔順の徳をやしなうべきである。
[彖傳]
乾の卦の二爻と五爻に陰爻がついたのである。日月は天について天下をあまねく照らす。また百穀草木は地に附いて盛んである。明󠄃の上に明󠄃が重なっているので、重明󠄃という。それが皆正しい位置についている。日月が天下を照らすように、君主も今日も明日も正しさを失わずにいれば、あまねく天下を化すことが出来る。中正なる所󠄃に居るのは二爻である。牝牛というのは二爻のことである。天子は每日明徳を以て政治をしなければならない。

12/11(土) ䷄ 水天需(すいてんじゆ) 三爻

12/11(土) 水天需(すいてんじゆ) 三爻


【運勢】
無理に着飾ろうとせず、成果の出ない時は寡黙に努力し誠実さを体現すべきである。
想定外の出来事があっても、先ずは広い心で受け止める事が大切である。
自ら災厄を招いてしまう事の無い様に、慎重に行動すると良い。


【結果】
䷄◎
水天需(すいてんじゆ) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
需孚有り。光に亨る。貞にして吉。大川を渉るに利し。彖に曰はく、需は須なり。險前󠄃に在るなり。剛健にして陥らず。其の義、困窮せず。需は孚有り。光に亨る。貞吉とは、天位に位して以て中正なるなり。大川を渉るに利しとは、往きて功有るなり。
象に曰はく、雲、天に上るは需。君子以て飲食宴樂す。


《爻辭》
九三。泥に需つ。寇の至るを致す。
象に曰く、泥に需つとは、災ひ外に在るなり。我自り寇を致す。敬ひ愼めば敗れざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
天位に居るとは五爻のことである。中正。そして物を待つ。之が需道である。乾德で進めば亨る。童蒙は旣に德を持つ。


《爻辭》
剛を以て難に逼り、其の道を進まんと欲す。寇を招きて敵を致く所以なり。猶ほ需つこと有れば、其の剛を陷れず。寇の來たるなり、我自り招く所なり。敬ひ愼みて防ぎ備ふれば、以て敗れざるべし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
需は待つべきであるという卦である。下卦の陽は進もうとする。然し前には険難がある。我慢して待てば険難に陥らない。五爻が主爻である。五爻は剛中の才がある。能く待ってから進むことが出來る。心が弱い人は待つことができないで冒険して失敗し困窮する。忍耐は大切である。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
下卦の乾は三爻共に陽爻で賢人の象である。上卦の五爻目は陽爻を以て陽位にあり、明君である。しかしながら上卦の坎は水であり、天下が水に溺れる象がある。これは三四五爻目に離の卦があり、主爻となる六四の大臣が、火が物を害する様に天下の人民を苦しめている象である。其所で此の禍の元凶である大臣を、天下の賢人が撃ち拂わければならない。需と云うのは、須(ま)つと云う事である。上卦では力を盡したいと云う賢人を需(ま)ち、下卦では明君が賢人を求める所を需って居る。天子に孚が有り、賢人が国家の為に盡す時には、危険を冒してでも往く所に宜しき所がある。
[彖傳]
需は「須つ」と訓み、「待つ」とは違って、暫く控えると云う義である。険難を前に大事を行おうと思っても、速やかには行われない。天下の賢人は遠く慮る所があり、無理に川を渉って危険に陥らない。九五の天子は天位に居り、何処迄も正しく中庸である。其所で遂に孚の亨る所がある。
[象傳]
雲が天に上り十分に集まった所で雨が降る。即ち需つの象である。下に居る賢人は、時を需って居る間、飲食を以て身を養い、宴楽を以て心を養う。そして時が到れば雷の如くに進んで往くのである。
《爻辭》

12/10(金) ䷂ 水雷屯(すいらいちゅん) 四爻初爻

12/10(金) 水雷屯(すいらいちゅん) 四爻初爻


【運勢】
未来を見据え、堅実に行動する事が大切である。
先ずはしっかりと土台を固め、精力的な仲間を適材適所で活かすと良い。
様々な困難があり悩みは絶えないが、今を踏ん張れば、後には大きな成果を得られるだろう。


【結果】
䷂◎⚪︎
水雷屯(すいらいちゅん) 四爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[四爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
屯(ちゅん)は元(おほ)いに亨(おほ)る。貞(てい)によろし。往くところ有るに用ゐるなかれ。侯(こう)を建つるによろし。彖(たん)に曰はく、屯は剛柔始めて交はりて難生ず。険中に動く。大いに亨(とほ)りて貞し。雷雨の動く滿盈(まんえい)。天造󠄃草昧(てんぞうそうまい)。侯を建つるによろしくして、寧せず。象に曰はく、雲雷は屯。君子以て經綸(けいりん)す。


《爻辭》
[四爻 優先]
六四。馬に乘ること班如たり。婚媾(こんこう)を求めて往く。吉にして利しからざる无し。
象に曰はく、求めて往く。明󠄃成なるなり。
[初爻]
初九。磐桓(はんかん)す。貞(てい)に居るに利(よろ)し。侯(こう)を建つるに利し。象に曰はく、磐桓すと雖(いえど)も、志正を行ふなり。貴を以て賤(いや)しきに下る、大いに民(たみ)を得ればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
屯はなやみある象、また草が萌芽しはじめたところである。
なやんで通ずることが出来ない状況である。
ただし、時が至れば険難を脱して安泰な境地に至る。
そのためには、正しさを固く守らねばならない。
現在は草創期であり、社会の秩序がまだ整わない時である。
こういう時は、適材適所で良い人材を登用しなければならない。


《爻辭》
[四爻 優先]
[王弼]
二爻は初爻と比の関係にあるが、正しさを守って初爻に従わない。
己の志を害さない者である。
好みの合う友を求めて往くと必ず受け容れてもらえる。
[東涯]
婚媾(こんこう)は初爻と応じていることを指し、四爻は陰柔であり屯に居る。
そして柔順にして正に居る。
智の德は従うべきところを知る。
初爻の応じるものに求めて往く。
人で屯に居る時は、自ら救済することが不可能であれが、よく応じる相手を探すことは出来、救済の力に頼り、可能なことも出てくる。


[初爻]
[王弼]
屯の初めにいる。動けば則ち難を生じるので進んではならない。故に磐桓である。此の時によって、其の利、安くにか在る。唯だ貞に居て、侯を建てることのみてまある。乱れを息めて静かにする。静を守って侯たり。民を安んじて正に在り、正を弘くして謙に在り。屯難の世、陰、陽を求むめる。弱は、強を求める。民は、其の主を思う時である。初、其の主爻でまた、下である。爻、斯の義を備えている。宜しく其れ民を得るべきあるって、進むべきでない。故に磐桓するのである。宴安して成務を棄てるわけではない。故に磐桓すと雖(いえど)も、志正を行ふなり。なのである。
[東涯]
磐は盤と同じであり、盤垣である。難に進もうとしている貌である。この爻は、屯の初めで陽を以って下にいる。苦しい時で卑しく、その才を用い得ていない。故に盤垣である。ただ、正しくいて詭計詐謀を用いてはならず、かわいがるのである。故に貞に利し。陽剛の才を持って緖陰の下にいる。民衆は、服従して、その心を得ている。故に「侯(こう)を建つるに利し。」なのである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
屯は止まり艱(なや)むという義である。
下卦の震は、出で進んで往く所の卦であるが、目の前には大いなる水があり、往こうとしても往かれない。
水は険難の象で、外の世界は力の支配する恐ろしい状態で、軽々しく進めば難に遭う。
天下を治めるには、仁義礼智を具えた侯を建てなければならない。
[彖傳]
震は雷で気力が強く、如何なる険難に遭っても落胆して止まることは無い。
険難の中に在っても動いて出る所があり、始終は大いに亨る。
初九は侯となるべき人物で、仁徳を具えている。
この人が進んで遂に侯になる所の卦である。
雷が動いている中に、雨が降って来て、天地の間には萬物が一杯に生まれる。
真っ暗な世の中に侯を建て治めなければならない。
服し集まった者を以て治めれば良く、抵抗する様な者は勝手にさせておけばよい。
世の中の始まりは細やかに事を行ってはいけない。
[象傳]
経綸の経は縦糸、綸は横糸で、世を治めるのは一匹の布を織り立てる如きものである。
また雷は雷気が四方に敷き施し、ちょうど縦糸を竝べる所である。
綸は物を撚り合わせて集める方で、厚く集まった雲の象である。
この雲雷の象によって世の中を治める。


《爻辭》
[四爻 優先]
六四と初九は位が応じて居る。
そこで六四は初九の方へ往こうと思って馬に乗ったが、隣の九五から頻りに招かれ仕方なく一時馬を還した。
しかし初九の方から婚媾を求めて来る。
初九は天下に君たるべき存在であるから、其処へ往くのが吉である。
[象傳]
今は九五が権力が盛んであっても、後には良くない。
初九から求めて来たのであれば、其方へ往くのが良いのは、明らかなる所である。
[初爻]

12/9(木) ䷒ 地澤臨(ちたくりん) 上爻

12/9(木) 地澤臨(ちたくりん) 上爻


【運勢】
思いやりの心を大切にし、根気強く相手と向き合うと良い。
邪な考えに惑わされず、正しさをしっかりと守る事が大切である。
目標を達成するまで熱意を内に持ち続ければ、選択を悔いる事は無くなり何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷒◎
地澤臨(ちたくりん) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
臨は元(おほ)いに亨(とほ)る。八月󠄃に至りて凶有り。彖に曰はく、臨は剛浸して長ず。說󠄁(よろこ)びて順。剛中にして應ず。大いに亨りて以て正し。天の道󠄃なり。八月に至りて凶有りとは、消すること久しからず。


《爻辭》
上六。敦臨す。吉にして咎なし。
象に曰く、敦臨の吉は志内に在るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
臨は下を見下ろすこと、臨むことである。下から陽が二つ目まできており、たいへん勢いがある。また、上から下を見下ろす余裕がある。今はとても運気が良い。しかし、八月には悪いことが起きるので、そのための備えを忘れてはならない。


《爻辭》
坤の極に處り、敦を以てして臨む者なり。志賢を助くるに在りて、敦きを以て德をなす。剛の長ずる在りと雖も、剛の厚きを害はず。故に咎なきなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の坤は岸である。岸の高い所から、下の水に臨んでいる。臨は望とは違う。望は遠くを見ることで、臨は高所から下を見ることである。天子が尊い位から、下の万民を見るのが臨の卦である。一・二爻目の陽爻が段々盛んになっていく。九二は時で言えば旧暦十二月、十二支では丑の月である。次に三爻目が陽爻となれば地天泰、四爻目が陽爻となれば雷天大壮、五爻目が陽爻となれば沢天夬、上爻が陽爻となれば乾為天、初爻が陰爻となれば天風姤、二爻目が陰爻となれば天山遯、三爻目が陰爻となれば天地否となる。つまり、二爻目から数えて八ヶ月目に至って凶の卦となる。
[彖傳]
初爻目のみが陽爻の時は一陽来復で、初めて陽気の出た所の卦、地雷復である。続いて二陽になって此の臨となる。さらに三陽、四陽と長じて盛んになる。順は、心が說び行いにも現れる所で、天道に背き違う所の無い所である。剛中の九二の君子は徳があり、それに六五の天子が応じ、陰陽相和する所がある。そこで大いに亨る。明君は己を虚しくして賢人に能く応じるから何事も行われる。八ヶ月目で凶が出て来るのは、盛んなる中に予め戒めたのである。
[象傳]
地の上の高い所から下を俯瞰する。君子は思慮深くして物を教える。深く考えるのが兌の象である。教えを思うのは兌、無窮というのは坤である。萬物を生じるのに窮まりが無い。坤の地は良く兌の水を容れて、能く萬物を生じさせる。その様に上なる者が人民を能く保って往く所が尤疆である。
《爻辭》

12/8(水) ䷳ 艮爲山(ごんゐさん) 二爻

12/8(水) 艮爲山(ごんゐさん) 二爻


【運勢】
何事も、堂々とした姿勢で成果が出るまで堅実に続ける事が大切である。
思う様にいかない事があっても、焦ってあれこれ手を出す様ではいけない。
長い目で見て状況を判断し、失敗を最小限に成功を確実なものにすると良い。


【結果】
䷳◎
艮爲山(ごんいさん) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
その背に艮(とどま)り、その身を獲(え)ず。その庭に行きてその人を見ず。咎めなし。彖に曰はく、艮は止まるなり。時止まるときは則ち止まり、時行くときは、則ち行く。動靜(どうせい)その時を失はず。その道光明なり。その止まるに艮(とどま)るはその所に止まるなり。上下敵應(てきわう)して相ひ與(くみ)せず。ここを以て、その身を獲ず。その庭に行きてその人を見ず。咎めなきなり。象に曰はく、兼󠄄ねたる山は艮。君子以て思ふことその位を出ず。


《爻辭》
六二。其の腓に艮まる。拯(すく)はずして、其れ随ふ。其の心快(こころよ)からず。
象に曰く、拯(すく)はずして、其れ随ふとは、未だ退いて聴かざるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
艮はとどまる意󠄃である。山である。山が二つ重なるので兼山ともいう。應爻が一つもなく、互いに反発して人の顔をみようとしないので、背中しか見ないのである。どこかに向おうとすることなく、その地位にとどまるだけである。


《爻辭》
隨とは趾を謂ふなり。其の腓に止まる。故に其の趾拯はれざるなり。腓は躁を體して止まるに處り。而して其の隨を拯ふを得ず、又た退き聽きて安靜すること能はず。故に其の心快からざるなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
『説卦伝』にあるように、艮は止まるのが宜しい。しかし止まると云っても、進むべき時に止まっては弊害が生じるので、注意しなければならない。艮は人の身体でいえば背中に相当する。動くものは前にあり、背中は動かないからである。また欲は前の方から起こり、背中には欲が生じない。かつ世の中は欲の世界だが、背を向けていれば無欲でいられる。無欲であれば、我が身は無いのと同じである。我が身が無ければ、世間から訪ねて来る人もいない。荘子も「斉物論」で同様のことを言っている。人と交わらずに一人道を楽しんで居れば、何所からも咎を受けることはないのである。
[彖傳]
艮は止まるとある。三爻目、四爻目、五爻目に震の卦があるが、これは進み行くことを意味する。止まる方にばかり偏ってはいけない。また艮の卦には時の象があるが、これは止まるべき所に於いて止まるという意味である。動と静の双方を含んでいることになる。つまり自身に相応(ふさわ)しい所で止まり、行けば良い時になれば動いていくのである。初爻目と四爻目は陰爻同士、また二爻目と五爻目も陰爻同士、そして三爻目と上爻も陽爻同士であるから、いずれも相応じず親しまない。よって「其ノ身ヲ獲」ない。我が身に欲が無く、世間に望みを持たず、室から庭に出て行っても訪問者も見えず、従って咎を受けることもないのである。
[象傳]
「兼山ハ艮」とある。山が二つ重なっており、対立しているから、互いに動いて交わることがない。君子は自分の居所から外へ出ず、我が身を守っているので、外への考えが及ばないのである。
《爻辭》

12/7(火) ䷰ 澤火革(たくかかく) 上爻

12/7(火) 澤火革(たくかかく) 上爻


【運勢】
重要な選択を迫られた時は、自ら考え行動する事が大切である。
正しさを固く守れば、世の中が乱れ変革の時を迎えても対処出来るだろう。
予想以上に順調な事があっても、油断せず私利私欲に惑わされず堅実に進めると良い。


【結果】
䷰◎
澤火革(たくかかく) 上爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻]


【原文】
《卦辭》
革は已る日乃ち孚あり。元いに亨る。貞に利し。悔い亡ぶ。
彖に曰はく、革は水火相ひ息し。二女同居して、其の志相得ざるを革と曰ふ。已る日にして乃ち孚あり。革めて之れを信にす。文明にして以て說󠄁(よろこ)ぶ。大いに亨るに正を以てす。革(あらた)めて當る。其の悔い乃ち亡ぶ。天地革りて四時成る。湯武革命。天に順ひて人に應ず。革の時大なるかな。
象に曰はく、澤中に火有るは革。君子以て歷を治めて時を明󠄃にす。


《爻辭》
上六。君子は豹變す。小人は面を革む。征けば凶。貞に居れば吉。
象に曰く、君子は豹變すとは、其の文蔚たるなり。小人面はを革むとは、順にして以て君に從ふなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
民は常識を学ぶことを共にすることが可能であるが、変動に共に適応していくことは難しい。
共に成功を喜ぶことは出来るが、共に事業を始めることを考えるのは難しい。
だから革の道は、即日は誠なく、日が終わる時には誠がある。
誠があって元亨利貞で悔いが滅ぶのである。
日が終わるころに誠が無ければ革に当たらない。
後悔が生じるのである。
変動を生じるものである。
革めて其の悔いに当たれば、悔いを無くせる。
不合に變が生じ、変が生じるところに不合が生じる。
だから不合は革である。
息とは變を生じることである。
火は上に昇ろうとし、澤は下に降りようとする。
水と火が戦い、その後に變が生じる。
二女が同居している。
水と火が近くにあって互いに適合しない。革めるところとなり信があれば、文明の喜びである。
正しいことを履み行う。
そして改める。
天に應じ民に遵う。
大成功する正しいものである。
革めて大成功する。
必ず正しさを失ってはいけない。


《爻辭》
變の終はりに居り、變の道已に成る。君子は之に處り、能く其の文を成す。小人は成るを樂しめば、則ち面を變じて以て上に順ふなり。
命を改め制を創る。變の道已に成る。功成れば則ち事損し、事損すれば則ち爲すなし。故に居れば則ち正を得て吉なり。征けば則ち躁擾にして凶なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
革は変革である。
已日は事を終える日のことである。
澤は水である。
火と水が互いに消しあっている。
中女が下に居て、少女が上に居る。
同居して志を一緒にしない。
変革の兆候である。
内は明るく外は喜びである。
智があってよく和す。
其れで革のはじめに居て、疑いを免れないが、最後まで達成できる。
よく互いを信じることが出來、妨害や滞りがない。
その正しさを失わない。
革めて当を得ている。
悔いは亡くなろう。
非常の初めに在り、革の初めである。
人々は旧習に安んじ、疑いや讒謗が生じる。
非常の事をして、人心を察せず、軽挙妄動してはいけない。
初めは疑われるが最後には信を得て悔いはなくなる。


《爻辭》
[上爻]


〔根本通明の解釋〕
無し