12/6(月) ䷉ 天澤履(てんたくり) 変爻無し

12/6(月) 天澤履(てんたくり) 変爻無し


【運勢】‬
安請け合いをしてはいけない。
志ばかり高く実力が伴わないと、かえって事態を悪化させてしまう。
有言実行。自らの発言に責任を持ち、誠実に生きる事が大切である。
心に余裕を持てる範囲で出来る事を進めると良い。


【結果】

天澤履(てんたくり) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
虎の尾を履(ふ)む。人をくらはず。亨(とほ)る。彖に曰はく、履は柔、剛を履(ふ)む。說󠄁(よろこ)びて乾に應(わう)ず。ここを以て虎の尾を履(ふ)む。人をくらはず。亨る。剛中正。帝位を履(ふ)みて疚(やま)しからず。光明あるなり。象(しやう)に曰はく、上天下澤は履。君子以て上下を辨(わきま)へ民の志を定む。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
履は踏むことである。上卦は人で、下卦は虎とされる。下卦の虎が口を開いて人に噛みつこうとしている。人が虎の尾を履んで、大変危うい状況にあるが、機を見るに敏であり助かる。喜んで天命にしたがう心があれば無事に済む。

〔根本通明の解釋〕
下の兌の卦が虎で、虎は大臣の象である。革命の卦である沢火革では「虎変ず」とある。虎が乾の卦を履んで行く、つまり大臣が天子に咥ひ付くのである。天子が咥ひ付かれないようにするには、後ろに巡って虎の尾を履んで行けば良い。
[彖傳]
「履柔履剛也」は、乾が兌の前にある、つまり陰爻の兌=柔が陽爻の乾=剛を履んでいることである。虎は始めの内は従順であり、佞人(ねいじん:口先巧みにへつらう、心のよこしまな人)の巧言令色の卦である。天子の思召し通りに何でも其れを輔け、段々と立身し大臣と為ったが、いよいよ欲が深くなって君を侵す勢いとなり、天子は迂闊にしていると噛まれてしまう。そこで天子が虎の尾を履めば噛まれることはなく、道が亨るようになる。上九に「其旋元吉」とあり、上卦が下卦の下に旋(めぐ)って入れ替われば、沢天夬となり、虎の尾を履むことが出来る。そのため九五に「夬履」と云っている。沢天夬に「夬、揚于王庭。孚号、有厲」とあるのは、大臣を撃つことである。これを他の注解は全く書いておらず、下らない解釈ばかりである。
[象傳]
上に天があり、下に沢がある。沢は至って低い所であり、天地よりも天沢の方が猶低い所である。二・三・四爻目に離がある。離には礼儀の象意がある。そいて天沢の二字を用いて「辨上下」とある。つまり礼儀として上と下との区別を立てることである。上下の別を辨じて民の志を定めるのである。民は沢の如く、君は天の如きものであり、沢が上がって天に為るべき道は無い。「定民志」は、上を侵すべき道が無いという事が定まっていることである。

12/5(日) ䷜ 坎爲水(かんゐすい) 三爻

12/5(日) 坎爲水(かんゐすい) 三爻


【運勢】
どんなに辛い状況であっても、自らの芯を曲げない事が大切である。
あれこれ心配して思い悩んでも、状況が好転する事は無い。
失敗を犯さない様よく注意して普段通りの生活を送り、時が過ぎるのを静かに待つと良いだろう。


【結果】
䷜◎
坎爲水(かんゐすい) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。
彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。
象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


《爻辭》
六三。來るも之くも坎坎たり。險にして且つ枕ふ。坎窞に入る。用ふることなかれ。
象に曰く、來るも之くも坎坎たりとは、終に功なきなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


《爻辭》
旣に履むに其の位に非ずして、而も亦た兩坎の間に處り。出づれば則ち坎に之き、居れば則ち亦た坎なり。故に來るも之くも坎坎たりと曰ふなり。枕は、枝へて安んぜざるの謂ふなり。出づれば則ち之くなく、處れば則ち安んずるなし。故に險にして且つ枕なりと曰ふなり。來るも之くも皆坎なり。之を用ふる所なし。徒らに勞する而已。

12/4(土) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 上爻初爻

12/4(土) 雷水解(らいすいかい) 上爻初爻


【運勢】
積極的に新しい物事を進めると良い。
志を同じくする仲間と、公の場で正しい行いを続ければ、社会から信用を得られる。
問題の解決が困難な時は、立ち止まり悩むのでは無く、先ずは力強く行動する事が大切である。


【結果】
䷧◎⚪︎
雷水解(らいすいかい) 上爻初爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[上爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
解は西南によろし。往くところなし。それ來たり復すれば吉。往くところあれば、夙(つと)にして吉。彖(たん)に曰(い)はく、解は險(けん)以て動く。動いて險より免(まぬが)るるは解。「解は西南によろし」とは、往(い)きて衆を得るなり。「それ來たり復して吉」とは、乃(すなは)ち中を得るなり。「往くところ有れば夙にして吉」とは、往きて功あるなり。天地解(ひら)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作りて百果艸木(ひゃくかそうもく)皆甲拆(こうたく)す。解の時大なるかな。象に曰はく、雷雨作るは解。君子以て過ちを赦(ゆる)し、罪を宥(ゆる)す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。公用ひて隼を高墉の上に射る。これを獲てよろしからざることなし。
象に曰く、公用ひて隼を射るとは、以て悖を解くなり。
[初爻]
初六。咎なし。
象に曰く、剛柔の際、義咎なきなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は衆である。難を解決し、危険を整える。利を衆に施す。また東北に困まらない。故に東北に利がないとは言わないのである。まだ、困難を解決するによくない。安に処する迷う。解とは困難を解決し、厄を除くことである。中を失わない。難があっても行けば、迅速であれば吉。難が無ければよく中に復す。難があれば厄を除く。


《爻辭》
[上爻 優先]
初は四の應となり、二は五の應となる。三は上に應ぜず、位を失ひて負ひて乘り、下體の上に處る。故に高墉と曰ふ。墉とは、隼の處る所に非ず、高とは、三の履む所に非ず。上六は、動の上に居り、解の極なり。將に荒れ悖るるを解きて、穢れ亂るるを除かんとする者なり。故に用て之を射る。極まりて後に動き、成りて後に擧ぐ。故に必ず之を獲て、利あらざるなきなり。
[初爻]
解者、解くなり。屯難磐り結びて、是に於いて解くなり。蹇難の始、解の初めに處り、剛柔始めて散るの際に在り。將に罪厄を赦さんとし、以て其の險を夷らぐ。此の時に處り、位に煩はずして、咎なきなり。
或ひは過咎有るも、其の理に非ざるなり。義も猶ほ理のごときなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
解は解散の意󠄃である。危険に居てよく動けば、険難を回避できる。卦は変じて蹇となる。二爻が蹇の外卦に行き、五爻が西南坤の方に行く。坤には地の象がある。險の中でよく動ける才でよく進み、よく止まる。どこでも通用する。君子は陰陽を和し、過失であれば赦して問わず、罪悪があれば、寛大にこれを宥す。仁政の至りである。解の道である。


《爻辭》
[上爻 優先]
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦の水山蹇(
、天下の険難なる所の卦)が解けた所の卦である。長い大乱で農業が廃れ、人民は衰えてしまっている。西南は坤の卦で、地の象である。地に五穀を植立てて、以て人民を養う。天下が平らいだなら、進んで事を為す所の仕事は無い。漸次人民を養えば宜しい。若し大乱が平らいでいても、進んで往く所の事柄があるならば、速やかに往ってこれを治めるのが宜しい。
[彖傳]
険難に屈せずに踏み越えて外へ出ることで、険難を免れた。西南は坤の卦で、衆口衆口という象がある。大勢の人民を我が方へ撫で育てるようにしなければいけない。既に大難は解けているから、多く仕事をし過ぎず、程良い所に止(とど)まるのが宜しい。往くべき所があるなら、往けば必ず功が出て来る。
[象傳]
天地に於いては万物を生じ育(やしな)う時である。君子に於いては仁を行う時であるから、人を殺めるのは良くない。其所で過ちを赦し、罪人を宥(なだ)める。善い事を為す心で行った悪事を過ちと云い、それならば無罪になる。しかし意あって悪事を為したのは、赦すわけにはいかないので流刑などに処す。


《爻辭》
[上爻 優先]
[初爻]

12/3(金) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 三爻二爻

12/3(金) 地雷復(ちらいふく) 三爻二爻


【運勢】
一陽来復、何事も低迷が長く続いた後には必ず良い事がある。
失敗を繰り返しても、その度に反省し心を入れ替える様であれば、大きな失敗を犯す事は無い。
心に余裕を持ち、身近な人の助言は素直に聞く事が大切である。


【結果】

地雷復(ちらいふく) 三爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[三爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
復は亨(とほ)る。出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。その道に反復す。七日にして來復す。往くところ有るによろし。
彖(たん)に曰(い)はく、複は亨(とほ)る。剛反るなり。動いて順を以て行ふ。ここを以て出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。「その道に反復す。七日にして來復す」とは、天の行なり。「往くところ有るによろし」とは、剛長ずるなり。復はそれ天地の心を見るか。
象に曰はく、雷地中に在るは復。先王以て至日に關(せき)を閉(と)づ。商旅(しょうりょ)は行かず。后は方を省みず。


《爻辭》
[三爻 優先]
六三。頻(ひん)に復す。厲(あやふ)けれども咎め无(な)し。
象に曰はく、頻復の厲(れい)は、義咎(とが)め无(な)きなり。


[二爻]
六二。休復す。吉。
象に曰はく、休復の吉は以て仁に下ればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
復はかえるの意󠄃味である。
ひとつ前の
剝の上爻にあった陽爻が初爻に帰ったということである。
一陽来復、また盛んになろうとしている。
陰陽の運行が他の妨害を受けず、順調であるから、何か事をなすのに良い時期である。


《爻辭》
[三爻 優先]
[王弼]
三爻は迷いやすく心が動きやすいので、危険なことが多くある。
しかし、それでも正しい道に戻ることが出来る。
正しい道に戻れたのならば、問題はない。
[東涯]


[二爻]
[王弼]
位を得て中に当たる。
最も初爻に近く相和し、上に陽爻がない。
だからその親を疑い、陽を仁行となす。
初爻の上に在って、初爻に付き従う。
それを仁を下すというのである。
それでも中位にいて、仁に親しみ、隣と良好である。
復の大変良いところである。


[東涯]
休は美である。
この爻は複があり、柔順中正である。
初爻の剛健な賢人と親和性があり、下を志す。
これは複の美である。
人は偽りのない正直な人を友にすれば、自分の過ちを指摘してもらえる。
二爻はよく賢人に親しみ、これに順う。
すばらしいことである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
復は本の所に反(かえ)るという意である。
一年で考えれば旧暦の十一月、つまり冬至にあたる。
天の気が地の底に来ることで万物は生じる。
この卦は天の万物を生じる所に、復(ま)た立ち反った所である。
前の卦の山地剥は上九のみが陽爻で、それは碩果(せきか:大きく実った果実)を意味する。
果実が地に落ちて復た芽が生える所の象である。
「其道」とは、万物を生成する所の道である。
「七日来復」とは、乾為天から一爻ずつ陽が減っていって全てが陰爻になり、復た新たに陽爻を生じるまで七段階の過程があることによる(乾為天→①天風姤→②天山遯→③天地否→④風地観→⑤山地剥→⑥坤為地→⑦地雷復)。
雷気が往くに従って万物が発生する。
また君子の勢いが昌(さか)んになれば道徳が行われる世となり、志ある者は朝廷に出て往って事を行うのが良い。
それで「利有攸往」なのである。
[彖傳]
「復亨、剛反」とは、山地剥の陽爻が引っ繰り反ったのである。
上卦の坤の卦徳(卦の基本的特徴)は順である。
つまり天道天理に順って段々と動いて往く所であるから「動而以順行」なのである。
七とは陽の発生する所の数で、これから段々と陽が長じて往く。
「天地之心」は万物の生成である。
[象傳]
雷が地中に来たって居ることが「復」である。
陽気は地の底へ来た所で未だ力が弱く、これを育てなければならない。
そこで先王は一陽来復(いちようらいふく:陰暦十一月、冬至)の時期にあっては関門を閉ざして、商人や旅行者の往来をなくし、各人は家で静かにした。
天子と雖も冬至の日には巡狩(じゅんしゅ:諸国の巡視)を罷めている。


《爻辭》
[三爻 優先]
震の卦徳は動であり、変化が生じる。
『論語』で言えば、子路・子貢の様な、復(ふく)したり変わったり、また復したりする様なことである。
『論語』雍也第六に「子曰わく、回(かい)や其の心三月(さんがつ)仁に違(たが)わず。其の余(よ)は則(すなわ)ち日月(ひびつきづき)に至(いた)るのみ」とある(顔回は三ヶ月もの間、仁から離れることがなかったが、その他の者は日に一度か月に一度仁に復するのがせいぜいであった)。
このように頻(しき)りに復するから厲(あや)うい。
しかし厲ういけれども咎が無いのは、仁に始終復するからである。
[象傳]
過っても繰り返し仁に復するから咎が無いのである。


[二爻]
五爻目は上卦の中を得ている。
坤は順にして厚い。
情が敦(あつ)い所に、仁が復して来るので悔が無い。
[象傳]
中庸の徳があり、自らその徳を修めて往く。
「考」は成すという義で読まなければいけない。

12/2(木) ䷏ 雷地豫(らいちよ) 変爻無し

12/2(木) 雷地豫(らいちよ) 変爻無し


【運勢】
志を同じくする仲間が協力してくれるので、物事は順調に進むだろう。
気を緩め過ぎると、正しい判断が出来なくなるので危険である。
順調に進んでいる時ほど、焦らず状況を整理し正確な選択をする、慎重さが求められる。


【結果】

雷地豫(らいちよ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
豫は侯を建て師を行るによろし。
彖に曰はく、豫は剛應ぜられて、志行はる。順以て動くは豫。豫は順にして以て動く。故に天地も之の如し。而るを況んや侯を建て師を行るをや。天地順を以て動く。故に日月過(あやま)らずして、四時忒(たが)はず。聖人順を以て動く。則ち刑罰清くして民服す。豫の時義大なるかな。
象に曰はく、雷地を出でて、奮ふは豫。先王以て樂を作り、德を崇(たうと)び、之を上帝に殷薦して、以て祖󠄃考を配す。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
豫はあらかじめすることや、楽しいことを意味する。
四爻のみが陽爻で、その周りを陰爻が囲んで仲良くしている。
上卦は諸侯を表し、下卦は村を表すので、兵を率いる時である。
統率するには、下の者が楽しみ喜んで馳せ参じる状況でなければならない。
そして、順調に行動すれば、罰を与えることも少なくて、民はよく治まるのである。


〔根本通明の解釋〕
豫は象の中の最も大きなものをいう。
豫は舒(ゆる)やかという意味の舒、叙、序と同じで、物を急がず順序を踐(ふ)んで往く。
そこで必ず成功することから、悦び楽しむという義がある。
一方で、豫(あらかじ)めという義があるのは、十年も後の事を考えて今日から行動して往き、早計であることによる。
上卦の雷が下卦の地の上に出た象で、萬物が盛んになっていく。
天下が治まり安楽になるには、侯を建てるのが良い。
[彖傳]
四爻目は剛で震の主爻であり、天子である。
また長子でもあり、大臣にもなる。
この四爻目の剛に天下悉く応じる。
震は行くの義で、豫は順を以て動くの義であるから、天道天理に順って動いて行き、必ず悦びを得る所となる。
日月の運行、春夏秋冬の巡りに間違う所は無い。
三・四・五爻目の坎は法律の義がある。
法は備わっているが、用いずに民は服す所となる。
国家安楽であり、学問道徳を正しくする所があるから、義は大いなるかな、と言う。
[象傳]
豫は萬物皆悦ぶという義である。
この象を用いて作ったのは音楽である。
歌は最も古く、道徳功労を詩にして、詩を謡って天に誥(つ)げる。
そうしてその人の徳は愈々高く尊くなるのである。
殷薦というのは、有るだけの音楽を悉く奏することである。
黄帝、堯、舜、夏、殷、周を六代の楽という。
上帝を本にして祖考を合わせて祭り、音楽を殷(さか)んに奏す。

12/1(水) ䷎ 地山謙(ちさんけん) 五爻

12/1(水) 地山謙(ちさんけん) 五爻


【運勢】
何事も謙虚堅実な姿勢で望み、相手の気持ちに寄り添う事が大切である。
始めてみるまで結果は分からない、思い悩まず流れに身を任せると良い。
謙譲の美徳を蔑ろにする者は集団の不和を生むので、厳しく対処すべきである。


【結果】
䷎◎
地山謙(ちさんけん) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
謙は亨(とほ)る。君子は終はり有り。彖に曰はく、謙はとほる。天道下濟して光明。地道卑(ひく)くして上行す。天道は盈(えい)を虧(か)きて、謙に益す。地道󠄃は盈を變じて謙に流る。鬼神は盈を害して謙に福す。人道は盈を惡(にく)みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑(ひく)くして踰ゆべからず。君子の終はりなり。


《爻辭》
六五。富まずその鄰を以てす。侵伐に用ゐるによろし。よろしからざることなし。
象に曰はく、「侵伐に用ゐるよろし」とは、服せざるを征するなり。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《卦辭》
謙は謙譲や謙遜の意󠄃味である。
平面な地卦の下に高いはずの山卦がある様が謙遜を表す。
謙譲の徳を持っている者は、どんなところでも歓迎されるし、尊敬される。
しかし、謙譲の美徳は昇進するにつれて失いがちである。
謙譲の美徳を持ち続けて、人の上に立つことは難しい。
君子とは最後まで謙譲の美徳を全うすることができる人のことである。
これを有終の美という。
謙譲の美徳を有する者が上にいると、下の者を大切にするので、下の者は自分の実力を活かすことができる。
また、謙譲の美徳を有する者が下にいると、周りの人がその徳を慕って昇進を求める。


《爻辭》
五爻は王位であるが、富を持たないので、人を使役できず、仲間である二爻から上爻までの陰爻と共に行動するしかないとする。
遠方の服従しないものを討つのに好機である。
なぜなら、味方はその謙譲の美徳に従ってくれ、敵は服するからである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
謙は「へりくだる」と言われるが、本当は「小さい」という意味である。
我が身が小さくなって人の下に降って居る。
古くは言偏の無い「兼」の字であった。
小さいために一つで足らず合わせるという義である。
他に口偏を附けた「嗛」の字もあり、子夏伝はそう書いている。
口の中に入るだけの小さな物を含んでおり、嗛嗛之食という言葉は僅かの食物のことである。
小さいというのが本来の義である。
卦の象では地の下に山があり、人民の下に我が身を引き下げて小さくなって居る。
二・三・四爻目に坎がある。
水には功労があるが、低い所に居るので、謙遜の義がある。
これなら何処へ行っても尊ばれ亨ることになる。
しかし真実の謙虚さでなく、人望を得るために拵えて行うのは長く亨らない。
[彖傳]
天道下済とあるのは、上に在る天の陽気が降って来て地の徳を成すことである。
元は乾の一番上にあった陽爻が下に降って九三となったのである。
光明は三爻目に降りて来た陽爻である。
また元は三爻目にあった陰爻が一番上に上がったから上行という。
元の乾の卦が陽爻ばかりで剛に過ぎるので盈(えい)に虧(か)く。
上に居るべき人が小さく為って、人の下に降るのが謙である。
我が身を下しても人が侮って其の上を踰(こ)えて往くことは出来ない。
卑い所に居れば居るほど人が尊んでくる。
そうして君子は終を遂げる所となる。
[象傳]
上卦が地で下卦が山である。
地の広い方から見れば山が小さい。
天地の道理は何でも盈ちる所があり、それを虧かなければいけない。
そこで多い方から取って、少ない方へ益す。
政でも米を多い所から寡(すく)ない所に益すようにする。
政は物の多少を量り、平らかにしなければいけない。


《爻辭》
富まずというのは、天子が己を空虚にして邪の無いことである。
其の鄰を以ゆというのは、九三の賢人をはじめ周囲の人を能く用いることである。
侵伐は容易に出来るものでなく、謙遜の徳に天下皆服しているから勝利を得られる。
しかし是は外国を討つことが本義ではない。
[象傳]
若し国内に服することがなく、乱を起こす様な者があれば之を討つのが良い。

11/30(火) ䷕ 山火賁(さんかひ) 五爻初爻

11/30(火) 山火賁(さんかひ) 五爻初爻


【運勢】
感謝を伝える時は簡素に、そして迅速に行う。
外面を気にして、内実が伴わない様ではいけない。
誠実さが何より大切である。
新たに何かを始める時は、準備に力を掛け過ぎず、手元にある物で出来る事から進めると良い。


【結果】
䷕◎⚪︎
山火賁(さんかひ) 五爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 初陽]
《爻辭》
[五爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
賁は、亨る。小しく往く攸有るに利あり。彖に曰はく、賁は亨る。柔來たりて剛を文る。故に亨る。剛を分かちて上りて柔を文る。故に小しく往く攸有るに利あり。天文なり。文明にして以て止まるは、人文なり。天文を觀て以て時變を察し、人文を觀て以て天下を化成す。象に曰はく、山の下に火有るは、賁なり。君子以て庶政を明らかにし、敢へて獄を折むること无し。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。丘園を賁る。束帛戔戔たり。吝なれども終に吉。象に曰く、六五の吉は、喜び有るなり。
[初爻]
初九。其の趾を賁る。車を舍てて徒す。
象に曰く、車を舍てて徒すとは、義として乘らざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
剛柔分かたざれば、文何に由りてか生ず。故に坤の上六、來たりて二の位に居る。柔來たりて剛を文るの義也。柔來たりて剛を文り、位に居りて中を得。是を以て亨る。乾の九二、分かちて上位に居る。剛を分かちて上りて柔を文るの義也。剛上りて柔を文り、中の位を得ず、柔來たりて剛を文るの若くならず。故に小しく往く攸有るに利あり。


《爻辭》
[五爻 優先]
尊位を得ている。飾の主である。飾の盛たる者である。物に飾を施せば、其の道害はるる也。丘園に飾を施せば、盛なること焉より大なるは莫し。故に束帛を賁る。丘園乃ち落たり。丘園を賁る、束帛乃ち戔戔たり。用て儉なるを過ぐる莫く、泰んじて能く約やかなり。故に必ず吝なり、乃ち終に吉を得るのである。
[初爻]
賁の始めに在り、剛を以て下に處り。无位に居り、不義なるを棄つ。夫の徒歩するに安んじ、以て其の志に從ふ者なり。故に其の趾を飾る。車を舍てて徒す。義として乘らざるの謂ふなり。

11/29(月) ䷹ 兌爲澤(だゐたく) 二爻

11/29(月) 兌爲澤(だゐたく) 二爻


【運勢】
支える側の負担は軽く、支えられる側は充分な生活が維持出来る、健全な社会を目指して行く事が大切である。
邪な考えを避け献身的な心を持つと良い。
外寛内明を心掛け互いに協力すれば、悔いのない結果を得られるだろう。


【結果】
䷹◎
兌爲澤(だゐたく) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
兌(だ)は亨(とほ)る。貞によろし。彖(たん)に曰はく、兌は說󠄁(よろこ)ぶなり。剛は中にして柔は外。說󠄁(よろこ)びて貞によろし。ここを以て天に順(したが)ひて人に應ず。說󠄁(よろこ)びて以て民に先(さきだ)てば、民その労をわする。よろこびて
以て難󠄄を犯せば、民その死をわする。說󠄁の大、民勧むかな。
象に曰はく、麗澤(れいたく)は兌。君子以て朋友講習す。


《爻辭》
九二は。孚ありて兌ぶ。吉にして悔亡ぶ。
象に曰く、孚ありて兌ぶの吉は、志を信にするなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
兌は喜ぶこと、嬉しいことである。
この卦は
が二つ重なってできている。
は内に强い意志を持ち、外に対しては温和な態度で臨むので、人との付き合いはうまく行き、人間関係は良好である。
内に强い意志を持ち、外に対して温和な態度の人は、天道にも、人道にも逆らわない良い人である。
喜びを大切にすれば、他の人はどんな労力も厭わずに協力してくれる。


《爻辭》
說びて中を失はず、孚有る者なり。位を失ひて說び、孚ありて吉なれば乃ち悔亡ぶ者なり。
其の志信なるなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
兌は喜びである。
自然と出る喜びが本当のもので、私心からの喜びは偽りである。
立心偏のない「兌」が本来のもので、立心偏を添えた「悅」や言偏を添えた「說」になるのは後の事である。
彖伝が「說」の字で書くのは、喜びを言葉で表すからである。
上卦下卦とも兌であるのは、己と他者が互いに喜ぶ象である。
互いに相助ける所があるので、何事も亨るのである。
『中庸』に「致中和天地位」とある。この中和が兌の卦にあたる。
中庸の道を行い、人がそれに服し、親しみ和合するなら、天地陰陽の気までも調和する。
あくまで作られた喜びでなく、正しい所が無ければいけない。
そこで「貞利」なのである。
[彖傳]
「兌悅也」というのは、沢山咸の「咸感也」と同様に、「心」の字の有無と同じである。
「剛中」は二爻目、五爻目が陽爻で、それぞれ上卦下卦の中を得ていることを云う。
「柔外」は三爻目、上爻が陰=柔らかであることを云う。つまり剛は明らかにして正しく、外の人には穏やかで柔らかに交わるのである。
それによって自他ともに喜ぶのであり、正しい所にあるのがよろしい。
この卦を天地人の三才に分けてみると、上の二爻が天、下の二爻が地、中の二爻が人となる。
「天に順い」というのは、五爻目は天の正しい位で、其れに上六が陰爻で順っていることである。
また「人に応ずる」は、人にあたる三爻目が陰爻で、地にあたる二爻目が陽爻であるから、人に応じているのである。
己が先ず喜びを起こすことで、民も喜び順う。
上下和順しているから、民は労苦を忘れて働き、戦争が起これば難を犯して戦ひ、死をも忘れて尽くすのである。
[象傳]
兌の卦を澤と言う。
澤は潤うという義で物に湿潤の気を含んでいる。
『国語』の「周語」に、澤は美(水)を鐘(あつ)めるとある。
これが麗澤である。
《爻辭》

11/28(日) ䷝ 離爲火(りゐか)→䷫ 天風姤(てんぷうこう)

11/28(日) 離爲火(りゐか)→ 天風姤(てんぷうこう)


【運勢】
勢いや朗らかさも大切だが、何より素直である事が求められる。
邪な考えを避け、成果の出る時をじっくりと待つ事が大切である。
相手にお願いをする時は、迅速かつ明確な誠意ある対応を心掛けると良い。


【結果】

本卦:離爲火(りゐか)
之卦:天風姤(てんぷうこう)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老院][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
離爲火》
離は貞に利(よろ)し。亨(とほ)る。牝牛を畜(やしな)へば吉。
彖に曰はく、離は麗なり。日月は天に麗(つ)き、百穀草木は地に麗き、重明󠄃以て正に麗く。乃(すなは)ち天下を化成す。柔、中正に麗く。故に亨る。是を以て牝牛を畜へば吉なり。
象に曰はく、明󠄃兩たび作るは離。大人以て明󠄃を繼ぎ、四方を照らす。


《之卦:
天風姤》
姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。
彖に曰はく、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。
象に曰はく、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。


【解釋】
《本卦:
離爲火》
[王弼]
離は柔であることが正しい。だから、必ず正しくして後にうまく行く。陰爻が卦の真ん中にある。牝の善いものである。外は強くて内は柔らかい。牛の善いものである。柔順を良しとする。凶暴な動物を飼ってはならない。牝牛を飼うのが良い。それぞれのものが、あるべき場所にあるのが良い。陰爻が真ん中に在ればうまく行く。吉。強暴な動物を飼うべきでない。


[東涯]
離は附くということである。一陰が二陽の間についている。火であり、日であり、電気であり、德としては明󠄃である。皆柔順であることを知っている。明󠄃は正しくあるのに良い。世の中で明󠄃を用いれば、正を失いがちである。明󠄃が二つ重なる状態で正を忘れなければ、天下を化成することが可能である。坤では牝馬の貞によいとあったが、この離では牝牛である。柔順の徳というより、柔順な人に服するのが良い。智の至りである。明󠄃とは日のことである。前の日が没しても、次の日の出がある。君子はこれを体現し、前の王の明徳を継いでいくのである。


[根本通明]
離はつくの意󠄃味である。正しくあればどこまでもよい。陰が陽爻二つの間についている。この陰爻は坤からきた。牝牛は柔順であり、温厚である。二爻と五爻が牝牛であるから、柔順の徳をやしなうべきである。
[彖傳]
乾の卦の二爻と五爻に陰爻がついたのである。日月は天について天下をあまねく照らす。また百穀草木は地に附いて盛んである。明󠄃の上に明󠄃が重なっているので、重明󠄃という。それが皆正しい位置についている。日月が天下を照らすように、君主も今日も明日も正しさを失わずにいれば、あまねく天下を化すことが出来る。中正なる所󠄃に居るのは二爻である。牝牛というのは二爻のことである。天子は每日明徳を以て政治をしなければならない。


《之卦:
天風姤》
[王弼]
姤は遇うことである。
柔が剛に遇う。
人でいうと女が男に遇󠄄うのである。
一人の女が五人の男に遇󠄄う。
大変強靭な女である。
取るべきでない。
剛が中正であるから天下はあまねく王化󠄃に帰すのである。
言義は見えるところを表現しきれない。


[東涯]
姤は遇󠄄うことである。
一陰が下に生じて、五つの陽にあったのである。
一陰が五つの陽に対峙する。
その大壮はすさまじいが、陽が必ず勝つ。
このような陰を用いてはならない。
陰陽が互いに對待(たいたい)することは、天地の常経である。
陰が盛んであると陽が損なわれる。
臣下が君主に背くのも、婦が夫を凌駕するのも皆陰が盛んだからである。
姤の卦が戒めるところである。


[根本通明]
この卦は初六の陰爻が主役で、他の陽爻は賓客のような訳になる。
陰は長じて、次第に陽を侵食していく。
陰爻つまり女の方から、進んで陽爻に遇う所がある。
其処で女を娶るという方へ、この卦を用いてはならない。
[彖傳]
「遇」は多いがけない所で遇うと云う義である。
柔は剛に遇うと云うのは、女の方から進んで男に遇うという義である。
このような女を娶ると、次第に増長して往くから娶ってはならない。
剛中に遇うというのは、九五の剛が九二の賢人に遇う所を云う。
賢人は朝廷へ出ようとする初六を抑え止める。
そのため剛は賢人と相謀って、初六を正しくする。
[象傳]
天の下に風が旋ぐるように、天下に命令を下す。
四方に遍く告げ諭して、能く治め斉(ととの)える。
旧弊を除きはらって政を以て天下を新たにする。