9/8(木) ䷯ 水風井(すいふうせい)→䷏ 雷地豫(らいちよ)

9/8(木) 水風井(すいふうせい)→ 雷地豫(らいちよ)


【運勢】
困難な課題に取り組み、絆を深めるのに良い時。目標を明確にすると良い。
慎始敬終。最後まで気を抜かず、着実に進める事が大切である。
邪な考えに惑わされてはいけない。
賢人に倣い礼を尽くすと良い。


【結果】

本卦:水風井(すいふうせい)
之卦:雷地豫(らいちよ)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 老陰]
[三爻 老陽][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][三爻][二爻]


【原文】
《本卦:
水風井》
井は邑を改めて井を改めず。喪ふことなく得ることなし。往来井を井とす。汔(ほとん)ど至らんとして亦た未だ井に繘(ゐつ)せず。其の瓶を羸(やぶ)る凶。
彖に曰く、水に巽れて水を上ぐるは井。井は養ひて窮まらず。邑を改めて井を改めざるは乃ち剛中をっ以てなり。汔(ほとん)ど至らんとして未だ井に繘(ゐつ)せずとは、未だ功有らざるなり。其の瓶を羸(やぶ)る、是を以て凶なるなり。
象に曰く、木の上に水あるは井。君子以て民を勞し、勧め相(たす)く。


《之卦:
雷地豫》
豫は侯を建て師を行るに利し。
彖に曰く、豫は剛應ぜられて、志行はる。順以て動くは豫。豫は順にして以て動く。故に天地も之の如し。而るを況んや侯を建て師を行るをや。天地順を以て動く。故に日月過(あやま)らずして、四時忒(たが)はず。聖人順を以て動く。則ち刑罰清くして民服す。豫の時義大なるかな。
象に曰く、雷地を出でて、奮ふは豫。先王以て樂を作り、德を崇(たうと)び、之を上帝に殷薦して、以て祖󠄃考を配す。


【解釋】
《本卦:
水風井》
〔王弼の解釋〕
井は不変の徳がある。常にあり、変化しない。ほぼ到達するのに井の水が出てこない。井は水が出なければ意味がない。至る直前でこぼしてしまったら、汲まないのと同じである。剛中である。だからよくその場にとどまり、変わらない。


〔東涯の解釋〕
汔はほとんど、繘は井戸の水をくみ上げる綱、瓶は水を汲む器、羸は破れるの意󠄃。内卦は木、その徳は入る。外卦は水。木が水の下に入って水をくみ上げる。よく人を養い、極まることがないのである。二爻も五爻も剛中の才があり、常の徳がある。そして人々を養う。井の水は減りもしないし、増えもしない。往来の人々は、みなその恩恵にあずかる。また、井は水を汲んで初めて役に立つ。水をほとんどくみ上げたところで、綱が上まで来なかったり、器が壊れてしまっては、何の役にも立たない。君子が德を修め、世の中に不正がはびこっても常に一人正しさを守り、世の中にどんな禍󠄃があろうとも不易の道を進む。窮まったり、通ったりで増えも減りもしない。あまねく人々のためになる。終始励み、怠らない。そして成功をおさめるのである。其の志を挫くことは出来ない。


〔根本通明の解釋〕
此の井は、俗に言う井戸で、水を汲み上げて以て人を養う所である。井戸の水は人間の徳に譬えたものである。乃ち道徳である。邑が変わり、国が種々に変化しても、道徳は動かすべきものでない。井戸の水は幾ら汲んでも減じて無くなる事は無く、また汲まずに置いても溢れ出る事も無い。地の中に名水を掘り当て清水が湧出するのは、学問を修め仁義礼智の徳が湧き出でて来るが如くである。釣瓶縄を置かなければ之を汲み上げることが出来ないように、道徳ある人物を朝廷へ薦め挙げる人が無ければいけない。しかし、賢人を妬み釣瓶を壊す小人もあり、之は最も凶である。
[彖傳]
下卦の巽は五行では木の象である。其処で瓶に取る。上卦の水の中に瓶を入れる形である。井戸は、水を幾ら汲んで人を養っても尽きることは無い。賢人と云うものも道徳を以て多くの人に施し養うが、道徳は尽きることが無い。此の卦は二爻目と五爻目とも剛中を得ているから、中庸にして長く施して養う所がある。しかし折角井戸を掘っても繘(つるべ)が無い。学問道徳盛んな人があっても、朝廷において挙げて用いなければ養ったところの功が出て来ない。また釣瓶を蠃(や)ぶり、賢人を用いないように讒言を以て害する者がある。是を以て凶である。
[象傳]
木の上に水がある。即ち繘を井戸の中へ入れる形である。水は広く人を養うものであり、農業が最も盛んなるものである。君子は水を以て農民を良く励まし助ける所がある。


《之卦:
雷地豫》
〔王弼、東涯の解釋〕
豫はあらかじめすることや、楽しいことを意味する。四爻のみが陽爻で、その周りを陰爻が囲んで仲良くしている。上卦は諸侯を表し、下卦は村を表すので、兵を率いる時である。統率するには、下の者が楽しみ喜んで馳せ参じる状況でなければならない。そして、順調に行動すれば、罰を与えることも少なくて、民はよく治まるのである。


〔根本通明の解釋〕
豫は象の中の最も大きなものをいう。豫は舒(ゆる)やかという意味の舒、叙、序と同じで、物を急がず順序を踐(ふ)んで往く。そこで必ず成功することから、悦び楽しむという義がある。一方で、豫(あらかじ)めという義があるのは、十年も後の事を考えて今日から行動して往き、早計であることによる。上卦の雷が下卦の地の上に出た象で、萬物が盛んになっていく。天下が治まり安楽になるには、侯を建てるのが良い。
[彖傳]
四爻目は剛で震の主爻であり、天子である。また長子でもあり、大臣にもなる。この四爻目の剛に天下悉く応じる。震は行くの義で、豫は順を以て動くの義であるから、天道天理に順って動いて行き、必ず悦びを得る所となる。日月の運行、春夏秋冬の巡りに間違う所は無い。三・四・五爻目の坎は法律の義がある。法は備わっているが、用いずに民は服す所となる。国家安楽であり、学問道徳を正しくする所があるから、義は大いなるかな、と言う。
[象傳]
豫は萬物皆悦ぶという義である。この象を用いて作ったのは音楽である。歌は最も古く、道徳功労を詩にして、詩を謡って天に誥(つ)げる。そうしてその人の徳は愈々高く尊くなるのである。殷薦というのは、有るだけの音楽を悉く奏することである。黄帝、堯、舜、夏、殷、周を六代の楽という。上帝を本にして祖考を合わせて祭り、音楽を殷(さか)んに奏す。

9/7(水) ䷘ 天雷无妄(てんらいむまう) 変爻無し

9/7(水) 天雷无妄(てんらいむまう) 変爻無し


【運勢】
誠の心を持ち明るく過ごすのに良い時。
人こそ人の鏡。否定的な言動は避けると良い。
物事に執着せず、自然の成り行きに身を任せる事が大切である。
己の役割を理解し相手と向き合えば、間違いを犯す事はない。


【結果】

天雷无妄(てんらいむまう) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
无妄(むまう)は、元(おおい)に亨(とほ)る、貞に利(よろ)し。其れ正に匪(あら)ずんば眚(わざわい)有り。往く攸(ところ)有るに利(よろ)しからず。
彖に曰く、无妄は剛外より來(きた)りて、内に主になり、動いて健。剛中にして應(おう)ず。大(おおい)に亨り以て正し。天の命なり。其正に匪ずんば眚有り、往く攸有るに利しからずとは、无妄の往く、何(いずく)にかゆかん。天命、祐(たす)けず、行かんかな。
象に曰く、天の下に雷行き、物に无妄を與(あた)う。先王以て茂(さかん)に時に對(たい)して萬物を育す。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
動いて健とは震のことをいう。雷動して乾健である。剛中というのは五爻を言う。剛が外からきて、内卦の主爻となる。動いていよいよ健である。剛中で応じている。私欲が行われない。妄動することはない。无妄の道ができ、大吉。剛が外から来て内の柔邪の道は消失する。動いていよいよ健であれば剛直の道が通る。剛中にして応じれば斉明の德が通る。天の教命である。もし正しくないのであれば、往く攸有るによくない。茂は盛んなことである。物は皆あえて妄でない。その後に萬物はそれぞれその性を全うできる。時に対して物は育つ。是より盛んなことはない。


〔東涯の解釋〕
妄(もう)は、望と音に相近し。无妄は、希望することがない。『史記』では无望󠄇とかく。この卦をさかさにすると
山天大畜になる。主爻は初九である。无妄は予期せずに来るものである。卦体は震が動くで、乾が健やかである。五爻と二爻は応じている。まさに天命である。逆に正しくないことをしていれば、どんどん禍いを増す結果となる。舜禹が君で伊傅が臣であるようなものだ。


〔根本通明の解釋〕
无妄は欲がないということである。無望の意味である。『史記』や『戦国策』にも無欲の意味で使われている。ただ誠にのみ志すのである。志が正しくなければ、災いがおこる。
[彖傳]
外卦が天で、内卦が雷である。五爻と二爻が応じており、上下心が通う。天命を受けることを表す。その天命に従うのがよい。それ以外のことをしようとするのは、天命でないことをすることになるので、よろしくない。
[象傳]
天の下に雷があるのが无妄である。人間が无妄であるのは当然であるが、万物も无妄であるべきである。先王はこの无妄の卦を用いて、つとめて万物を育んだ。春夏秋冬、天に従った生き方をした。

9/6(火) ䷤ 風火家人(ふうかかじん) 二爻

9/6(火) 風火家人(ふうかかじん) 二爻


【運勢】
身近な事から始め、土台を堅めるのに良い時。外寛内明を心掛けると良い。
仁者は己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す。
相手を尊重すれば、相手からも自然と尊重される。
皆で支え合う事が大切である。


【結果】
䷤◎
風火家人(ふうかかじん) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
家人は女の貞に利し。
彖に曰く、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。
象に曰く、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


《爻辭》
六二。遂(と)ぐるところなし。中饋(ちゅうき)に在り。貞にして吉。
象に曰く、六二の吉は、順にして以て巽ふなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。家の外の他人のことは分からない。家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。四爻が主爻である。主に女性について説かれている。家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


《爻辭》
内に居りて中に處り、履むに其の位を得。陰を以て陽に應り、婦人の正しき義を盡くす。必ず遂ぐる所なく、中饋を職る。巽にして順ふのみ。是を以て貞にして吉なり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。兩方中である。皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。婦と妻と二つの字がある。双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。中男と兄にも嫁がある。一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。物を煮たり焼いたりするのは竈である。竈をよく治めることが家を治める時の第一である。家族は秘め事をしてはいけない。
《爻辭》

9/5(月) ䷤ 風火家人(ふうかかじん) 変爻無し

9/5(月) 風火家人(ふうかかじん) 変爻無し


【運勢】
身近な事から始め、土台を堅めるのに良い時。
親しき中にも礼儀あり。些細な行動も積み重なれば大きな結果となる。
相手への気配りがなければ、信頼関係は損なわれてしまう。
外寛内明を心掛け正直に過ごすと良い。


【結果】

風火家人(ふうかかじん) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
家人は女の貞に利し。
彖に曰く、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。
象に曰く、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。家の外の他人のことは分からない。家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。四爻が主爻である。主に女性について説かれている。家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


〔根本通明の解釋〕
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。兩方中である。皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。婦と妻と二つの字がある。双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。中男と兄にも嫁がある。一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。物を煮たり焼いたりするのは竈である。竈をよく治めることが家を治める時の第一である。家族は秘め事をしてはいけない。

9/4(日) ䷑ 山風蠱(さんぷうこ) 三爻

9/4(日) 山風蠱(さんぷうこ) 三爻


【運勢】
現状に満足しがちな時。
迅速で力強い行動が求められる。
良い習慣を取り入れる事が大切である。
気持ちを新たにし、過去の失敗を成功への足掛かりにすると良い。
不器用でも、恥ずかしがらず全力を尽くす事が大切である。


【結果】
䷑◎
山風蠱(さんぷうこ) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰く、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰く、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。


《爻辭》
九三。父の蠱を幹す。小しく悔有り。大なる咎なし。
象に曰く、父の蠱を幹すとは、終に咎なきなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。旣に巽また止まり、競争しない。事有りて競争の煩いがない。だから為すことがある。為すことがあれば大いにうまく行く。天下を治める。蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。德を進めて業を修めればうまく行く。甲とは創制の令である。古いものを以てしてはならない。甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。事によって令を述べる。終われば始まる。天の運行は四季のようである。


《爻辭》
剛を以て事を幹す、其れ應ずるなし。故に悔有るなり。其の位を得るを履み、正を以て父に幹す。小しく悔有りと雖も、終に大なる咎なし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蠱は壊、腐敗のことである。この卦は變じて隨となる。隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。だから、剛が上って柔が下るというのである。強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。内は巽順であり、よく物を止める。天に十日有り。甲に始まり癸で終わる。甲は事の始めである。甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。前󠄃の事が終わろうとする。腐敗を致す道である。甲に後れるとは乙丙丁である。乱が極まり治まるころである。腐敗を治める道である。治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。そうすればうまく行くのである。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。三・四・五爻目に震の卦がある。これは長子、即ち皇太子である。上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。巽は弱く姑息で敗れる。晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。皇太子が即位して政を改め天下を治める。先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。ニ・三・四爻目に兌の卦がある。兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。これは旧弊の政事を除く義である。三・四・五爻目は震の卦である。震は春で、新しい芽がまた出てくる。
《爻辭》

9/3(土) ䷶ 雷火豐(らいかほう)→䷫ 天風姤(てんぷうこう)

9/3(土) 雷火豐(らいかほう)→ 天風姤(てんぷうこう)


【運勢】
世の中が活気づき、努力が実を結ぶ時。
自分本位に行動せず、周りからの期待に誠実に応える事が大切である。
思いがけない所に問題は潜んでいる。
広い視野を持ち、慎重に状況を見極め判断すると良い。


【結果】

本卦:雷火豐(らいかほう)
之卦:天風姤(てんぷうこう)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[上爻][五爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
雷火豐》
豐は亨る。王、之に假る。憂ふる勿れ。日中に宜し。
彖に曰く、豐は大なり。明󠄃以て動く。故に豐なり。王、之に假るとは、大を尚ぶなり。憂ふる勿れ。日中に宜しとは、天下を照らす宜しきなり。日中するときは則ち昃(かたむ)き、月󠄃盈(み)つるときは、則ち食󠄃す。天地の盈虚、時とともに消息す。而るを況や人に於いてをや。況や鬼神に於いてをや。
象に曰く、雷電皆至るは豐。君子以て獄を折し刑を致す。


《之卦:
天風姤》
姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。
彖に曰く、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。
象に曰く、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。


【解釋】
《本卦:
雷火豐》
〔王弼の解釋〕
豐の義はひろめる、ひらく、微細にするである。隠れ滞っているものを通して天下の主となって、微隱にはうまく行かない。憂えは未だに収まっていない。だから、豐は亨に至るのである。そして憂えが無くなる。豐亨憂えなきの德を用い、天中に居るべきである。そして天下を照らす。


〔東涯の解釋〕
豐は盛大である。知有りて動く。よくうまく行く。王者が大事業を起こす時である。火を日とし、下に在る。その徳の光明、あまねく四方を照らせば、憂うことなく、自然と豊大である。人は明󠄃がなければ物を照らすことできない。動かなければ事業は出来ない。明にしてよく動く。昔は湯王の徳を慕っていった。天が王に勇智を錫(たま)う。


〔根本通明の解釋〕
「豊」は腆(あつ)いと云う義で、物が厚く充ち満ちて居ることである。世の中で云えば、天子が名君で政事が能く行き届いて居り、天下が盛んで富んでいることである。しかしながらどれだけ盛んであっても、衰える所も出て来る。下卦の離は日である。東に在る時は未だ日が低いが、日中になれば遍く東西南北を照らし届かない所は無い。ただし日が昃(かたむ)くといけない。
[彖傳]
天子の明徳は宜しく四海天下を照らすべきで、暗い所が出て来てはいけない。しかしながら日が南中すれば、やがては傾いて往く所がある。月も満ちれば、欠けて来る。天地の道は斯くの如きもので、いつまでも保つことは難しい。人間の主でなって居る所の鬼神と雖も、神明なることもあれば、時には神明ならざることもある。自然の勢いと云うものは、力を以て動かすことは出来ない。
[象傳]
雷と電が一書に来るのが豊の卦である。天下が皆富んで、上下安楽の時である。しかし安楽であると、自然と人の心には奢りが出て来るようになる。其処で刑罰を厳重にしなければいけない。

《之卦: 天風姤》
〔王弼の解釋〕
姤は遇うことである。柔が剛に遇う。人でいうと女が男に遇󠄄うのである。一人の女が五人の男に遇󠄄う。大変強靭な女である。取るべきでない。剛が中正であるから天下はあまねく王化󠄃に帰すのである。言義は見えるところを表現しきれない。


〔東涯の解釋〕
姤は遇󠄄うことである。一陰が下に生じて、五つの陽にあったのである。一陰が五つの陽に対峙する。その大壮はすさまじいが、陽が必ず勝つ。このような陰を用いてはならない。陰陽が互いに對待(たいたい)することは、天地の常経である。陰が盛んであると陽が損なわれる。臣下が君主に背くのも、婦が夫を凌駕するのも皆陰が盛んだからである。姤の卦が戒めるところである。


〔根本通明の解釋〕
この卦は初六の陰爻が主役で、他の陽爻は賓客のような訳になる。陰は長じて、次第に陽を侵食していく。陰爻つまり女の方から、進んで陽爻に遇う所がある。其処で女を娶るという方へ、この卦を用いてはならない。
[彖傳]
「遇」は多いがけない所で遇うと云う義である。柔は剛に遇うと云うのは、女の方から進んで男に遇うという義である。このような女を娶ると、次第に増長して往くから娶ってはならない。剛中に遇うというのは、九五の剛が九二の賢人に遇う所を云う。賢人は朝廷へ出ようとする初六を抑え止める。そのため剛は賢人と相謀って、初六を正しくする。
[象傳]
天の下に風が旋ぐるように、天下に命令を下す。四方に遍く告げ諭して、能く治め斉(ととの)える。旧弊を除きはらって政を以て天下を新たにする。

9/2(金) ䷉ 天澤履(てんたくり) 変爻無し

9/2(金) 天澤履(てんたくり) 変爻無し


【運勢】‬
自らの行いを省み、出来る事を一つずつ進めるのに良い時。
礼節を軽んじる者は大成しない。
俗欲に惑わされる事なく、誠実に生きる事が大切である。
相手を敬い、尊重し、柔軟な姿勢で共に力を合わせる事が大切である。


【結果】

天澤履(てんたくり) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
虎の尾を履(ふ)む。人をくらはず。亨(とほ)る。
彖に曰く、履は柔、剛を履(ふ)む。說󠄁(よろこ)びて乾に應(わう)ず。ここを以て虎の尾を履(ふ)む。人をくらはず。亨る。剛中正。帝位を履(ふ)みて疚(やま)しからず。光明あるなり。
象に曰く、上天下澤は履。君子以て上下を辨(わきま)へ民の志を定む。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
履は踏むことである。上卦は人で、下卦は虎とされる。下卦の虎が口を開いて人に噛みつこうとしている。人が虎の尾を履んで、大変危うい状況にあるが、機を見るに敏であり助かる。喜んで天命にしたがう心があれば無事に済む。


〔根本通明の解釋〕
下の兌の卦が虎で、虎は大臣の象である。革命の卦である沢火革では「虎変ず」とある。虎が乾の卦を履んで行く、つまり大臣が天子に咥ひ付くのである。天子が咥ひ付かれないようにするには、後ろに巡って虎の尾を履んで行けば良い。
[彖傳]
「履柔履剛也」は、乾が兌の前にある、つまり陰爻の兌=柔が陽爻の乾=剛を履んでいることである。虎は始めの内は従順であり、佞人(ねいじん:口先巧みにへつらう、心のよこしまな人)の巧言令色の卦である。天子の思召し通りに何でも其れを輔け、段々と立身し大臣と為ったが、いよいよ欲が深くなって君を侵す勢いとなり、天子は迂闊にしていると噛まれてしまう。そこで天子が虎の尾を履めば噛まれることはなく、道が亨るようになる。上九に「其旋元吉」とあり、上卦が下卦の下に旋(めぐ)って入れ替われば、沢天夬となり、虎の尾を履むことが出来る。そのため九五に「夬履」と云っている。沢天夬に「夬、揚于王庭。孚号、有厲」とあるのは、大臣を撃つことである。これを他の注解は全く書いておらず、下らない解釈ばかりである。
[象傳]
上に天があり、下に沢がある。沢は至って低い所であり、天地よりも天沢の方が猶低い所である。二・三・四爻目に離がある。離には礼儀の象意がある。そいて天沢の二字を用いて「辨上下」とある。つまり礼儀として上と下との区別を立てることである。上下の別を辨じて民の志を定めるのである。民は沢の如く、君は天の如きものであり、沢が上がって天に為るべき道は無い。「定民志」は、上を侵すべき道が無いという事が定まっていることである。

9/1(木) ䷑ 山風蠱(さんぷうこ) 初爻

9/1(木) 山風蠱(さんぷうこ) 初爻


【運勢】
現状に満足して堕落しがちな時。
悪い習慣を改め、良い習慣を取り入れる事が大切である。
規則正しい生活を心がけ、堅実に土台を築き、凛とした姿勢で臨むと良い。
問題は先延ばしにせず、迅速に対処する事が大切である。


【結果】
䷑◎
山風蠱(さんぷうこ) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]

【原文】
《卦辭》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰く、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰く、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。


《爻辭》
初六。父の蠱に幹す、子有り。考咎なし。厲けれども終に吉。
象に曰く、父の蠱を幹すとは、意、考に承くるなり。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。旣に巽また止まり、競争しない。事有りて競争の煩いがない。だから為すことがある。為すことがあれば大いにうまく行く。天下を治める。蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。德を進めて業を修めればうまく行く。甲とは創制の令である。古いものを以てしてはならない。甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。事によって令を述べる。終われば始まる。天の運行は四季のようである。


《爻辭》
事の首に處り、始めて任ぜ見るる者なり。柔にして巽なるの質を以て、父の事を幹す。能く先の軌を承け、其の任に堪ふ者なり。故に子有りと曰ふなり。任ぜられて事の首爲り、能く其の事を幹す。考乃ち咎なきなり。故に子有り、考咎なしと曰ふなり。事の首に當たる。是を以て危きなり。能く其の事に堪ふ。故に終に吉なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蠱は壊、腐敗のことである。この卦は變じて隨となる。隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。だから、剛が上って柔が下るというのである。強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。内は巽順であり、よく物を止める。天に十日有り。甲に始まり癸で終わる。甲は事の始めである。甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。前󠄃の事が終わろうとする。腐敗を致す道である。甲に後れるとは乙丙丁である。乱が極まり治まるころである。腐敗を治める道である。治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。そうすればうまく行くのである。
《爻辭》

〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。三・四・五爻目に震の卦がある。これは長子、即ち皇太子である。上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。巽は弱く姑息で敗れる。晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。皇太子が即位して政を改め天下を治める。先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。ニ・三・四爻目に兌の卦がある。兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。これは旧弊の政事を除く義である。三・四・五爻目は震の卦である。震は春で、新しい芽がまた出てくる。
《爻辭》

8/31(水) ䷀ 乾爲天(けんゐてん)→䷮ 澤水困(たくすいこん)

8/31(水) 乾爲天(けんゐてん)→ 澤水困(たくすいこん)


【運勢】
変化が激しく苦難が絶えない時。
平常心を保つ事が大切である。
選択を誤れば、失敗が続き信頼を失う。
失敗を恐れ何もしなければ、何も得られない。
積極的な姿勢で不撓不屈の精神を体現すると良い。


【結果】

本卦:乾爲天(けんゐてん)
之卦:澤水困(たくすいこん)
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 老陽]
《爻辭》
[上爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
乾爲天》
乾は元いに亨る、貞に利し。
彖に曰く、大なるかな乾の元は、萬物資りて始まる、乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗じて以て天を御す。乾道變化して、各おの性命を正し、大和を保合して、乃ち貞に利ろし。庶物に首出して、咸(あまね)く寧(やす)し。
象に曰く、天行は健なり。君子以て自ら彊めて息まず。


《之卦:
澤水困》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。
彖に曰く、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。
象に曰く、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


【解釋】
《本卦:
乾爲天》
〔王弼、東涯の解釋〕
〔根本通明の解釋〕
代義易を作られた其初めは元三畫の卦乃ち乾坤震巽坎離艮兌の八卦之を小成の卦と云ふ。其小成の卦を二つ重ねた所で六畫になる之を大成の卦と云ふ、乃ち此乾の卦は以下六十四卦皆伏義之を名けたる所の大成の卦である。乾此卦が天である。設卦に乾天爲りとある、天は元亨利貞の四徳を以て萬物を生じ之れを養ふて之を成す、成して復始むる。天の徳と云ふ者は宏大なるものである。其宏大なる徳と指すものは何であるとなれば萬物を生ずる所、是れが天の徳である。生じた上には其物を成す、萬物此天の氣に因て始まって來る其れより段々萬物が出る。始まつて出る所が元である。元は始と云ふ字で物の始まる所を元と云ふ。又此元の字が大ひなると訓む。此天の元氣と云ふ物は世界中一杯に周つて居るから是れ程大ひなるものが無い。又萬物此元の氣を禀けて始まつて是も大なるに至る。暢ひて段々大きくなる。其れが爲めに此元の字が始まりとも訓み、大なるとも訓み、又首とも訓む。凡そ世の中に此天の元の徳より尊きものが無い。萬物の首らになつて居るから又首と云ふ義もある。其元を禀けて生じた萬物が段々と暢びる。暢びる丈暢びて、往くべき所迄往きて、達する所があるから之を享と云ふ。享は暢びて通ずるの義がある。利と云ふが宜しきを得るを利と云ふ。宜しきを得るとなれば、萬物暢びて宜しきを得る。中にも長短がある。長くなつて宜しきものは長くなり、短ふして其れ丈けで宜しきものは短かき所に止まる、細き物もあり太き物もあり、細くなるべき物は細くなつて宜しきを得る、太くなるべきものは太くなつて宜しきを得る、此は皆利である。又貞と云ふ事は總て萬物なる者は其物丈けに確りと出来るが正しいのである。正しく出来た上には固まつて動か無い、此れが貞。貞は正しうして固しとふ義である。其所で元は春になる。春は出づると云ふ義である、春者出也と云ふて動いて出づると云ふ義である。其所で萬物、春で始まつて出て往つて其れから暢びる。亨は夏になる、夏に至つて萬物十分に暢びて大きくなる。此夏と云ふ字が夏者假也で大ひなると云ふ字である。秋と云ふ字が秋者收也就也で暢びた萬物が陰氣を以て之を引斂めて來るが收むるである。引斂むる所で物就つて宜しきを得る。利は秋。貞は冬者藏也。冬になれば、先づ其性の儘に凝つて固まる、固まつて翌年、相續して發生する迄之を蓄藏する。五毅の類が米でも豆でも皆出來て、味ひの甘い物は甘く出來、辛く出來るべき物は辛く出來る、苦く出來るべき物は苦く出來る、又酸く出來る物は酸つばい。是れが皆正しい。甘く出來る物が辛くなつては是れは正しく無い。又甘いでも酸つぱいでも無い様な物でも可けない。總て天地の間に生ずる物は皆五味の性を含んで居る。五味と云へば酸い所、苦い所、甘い所、辛い所、䶢い所、其れを皆蓄へて居る。是れは皆陰陽五行の氣を受けて居るものであるから必ず此五つの味がある。其の五つの味は、物に依て萬物に至る迄、各々其性分が異つて居る。其性分丈けの所確かりと其通に成れば、正しい其儘に凝つて固まるが貞である。


《之卦:
澤水困》
〔王弼、東涯の解釋〕
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


〔根本通明の解釋〕
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。

8/30(火) ䷏ 雷地豫(らいちよ)→䷰ 澤火革(たくかかく)

8/30(火) 雷地豫(らいちよ)→ 澤火革(たくかかく)


【運勢】
己の目標を明確にし、時代の荒波を乗り越えるのに良い時。
緩慢さが過ぎると、やるべき事に力が入らず、取り返しのつかない結果を生んでしまう。
思い切って行動し、良い習慣を取り入れる事が大切である。


【結果】

本卦:雷地豫(らいちよ)
之卦:澤火革(たくかかく)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[五爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
雷地豫》
豫は侯を建て師を行るに利し。
彖に曰く、豫は剛應ぜられて、志行はる。順以て動くは豫。豫は順にして以て動く。故に天地も之の如し。而るを況んや侯を建て師を行るをや。天地順を以て動く。故に日月過(あやま)らずして、四時忒(たが)はず。聖人順を以て動く。則ち刑罰清くして民服す。豫の時義大なるかな。
象に曰く、雷地を出でて、奮ふは豫。先王以て樂を作り、德を崇(たうと)び、之を上帝に殷薦して、以て祖󠄃考を配す。


《之卦:
澤火革》
革は已る日乃ち孚あり。元いに亨る。貞に利し。悔い亡ぶ。
彖に曰く、革は水火相ひ息し。二女同居して、其の志相得ざるを革と曰ふ。已る日にして乃ち孚あり。革めて之れを信にす。文明にして以て說󠄁(よろこ)ぶ。大いに亨るに正を以てす。革(あらた)めて當る。其の悔い乃ち亡ぶ。天地革りて四時成る。湯武革命。天に順ひて人に應ず。革の時大なるかな。
象に曰く、澤中に火有るは革。君子以て歷を治めて時を明󠄃にす。


【解釋】
《本卦:
雷地豫》
〔王弼、東涯の解釋〕
豫はあらかじめすることや、楽しいことを意味する。四爻のみが陽爻で、その周りを陰爻が囲んで仲良くしている。上卦は諸侯を表し、下卦は村を表すので、兵を率いる時である。統率するには、下の者が楽しみ喜んで馳せ参じる状況でなければならない。そして、順調に行動すれば、罰を与えることも少なくて、民はよく治まるのである。


〔根本通明の解釋〕
豫は象の中の最も大きなものをいう。豫は舒(ゆる)やかという意味の舒、叙、序と同じで、物を急がず順序を踐(ふ)んで往く。そこで必ず成功することから、悦び楽しむという義がある。一方で、豫(あらかじ)めという義があるのは、十年も後の事を考えて今日から行動して往き、早計であることによる。上卦の雷が下卦の地の上に出た象で、萬物が盛んになっていく。天下が治まり安楽になるには、侯を建てるのが良い。
[彖傳]
四爻目は剛で震の主爻であり、天子である。また長子でもあり、大臣にもなる。この四爻目の剛に天下悉く応じる。震は行くの義で、豫は順を以て動くの義であるから、天道天理に順って動いて行き、必ず悦びを得る所となる。日月の運行、春夏秋冬の巡りに間違う所は無い。三・四・五爻目の坎は法律の義がある。法は備わっているが、用いずに民は服す所となる。国家安楽であり、学問道徳を正しくする所があるから、義は大いなるかな、と言う。
[象傳]
豫は萬物皆悦ぶという義である。この象を用いて作ったのは音楽である。歌は最も古く、道徳功労を詩にして、詩を謡って天に誥(つ)げる。そうしてその人の徳は愈々高く尊くなるのである。殷薦というのは、有るだけの音楽を悉く奏することである。黄帝、堯、舜、夏、殷、周を六代の楽という。上帝を本にして祖考を合わせて祭り、音楽を殷(さか)んに奏す。


《之卦:
澤火革》
〔王弼の解釋〕
民は常識を学ぶことを共にすることが可能であるが、変動に共に適応していくことは難しい。共に成功を喜ぶことは出来るが、共に事業を始めることを考えるのは難しい。だから革の道は、即日は誠なく、日が終わる時には誠がある。誠があって元亨利貞で悔いが滅ぶのである。日が終わるころに誠が無ければ革に当たらない。後悔が生じるのである。変動を生じるものである。革めて其の悔いに当たれば、悔いを無くせる。不合に變が生じ、変が生じるところに不合が生じる。だから不合は革である。息とは變を生じることである。火は上に昇ろうとし、澤は下に降りようとする。水と火が戦い、その後に變が生じる。二女が同居している。水と火が近くにあって互いに適合しない。革めるところとなり信があれば、文明の喜びである。正しいことを履み行う。そして改める。天に應じ民に遵う。大成功する正しいものである。革めて大成功する。必ず正しさを失ってはいけない。


〔東涯の解釋〕
革は変革である。已日は事を終える日のことである。澤は水である。火と水が互いに消しあっている。中女が下に居て、少女が上に居る。同居して志を一緒にしない。変革の兆候である。内は明るく外は喜びである。智があってよく和す。其れで革のはじめに居て、疑いを免れないが、最後まで達成できる。よく互いを信じることが出來、妨害や滞りがない。その正しさを失わない。革めて当を得ている。悔いは亡くなろう。非常の初めに在り、革の初めである。人々は旧習に安んじ、疑いや讒謗が生じる。非常の事をして、人心を察せず、軽挙妄動してはいけない。初めは疑われるが最後には信を得て悔いはなくなる。

〔根本通明の解釋〕
己は十干の土の弟で、五行の半ばを過ぎた所である。其所で、最早革命を行わなければならない勢いになって居る。また己は五行に於いて、仁義礼智信の信に当たる。即ち己日は、天下の人の信用が出て来た所でもある。其所で後悔も亡びる。
[彖傳]
革は水と火の卦で、互いに相害する所である。此の卦は丁度、水火既済の相和する所と反対である。同じ家に女が二人一所に居る。兌は何処迄も下へ下がり、離は何処迄も上に上る。其所で互いに衝突する。革命は殷の湯武に始まる。之は止むを得ずして行ったものであるが、併し逆賊と云うのが正しい所である。天下一同の求める所に従うのが、人に応じる所である。併し革命に当たっては、真に大いなる目的を以て行うべきである。
[象傳]
沢の中に火が有り、火気の動く所に依って色々なものが変わって来る。火の字には、物の変化する所の義がある。君子は暦を第一に治め、春夏秋冬の時を間違わない様にしなければいけない。