8/27(金) ䷻ 水澤節󠄄(すいたくせつ) 上爻二爻

【運勢】
自ら選んだ道を進めば、上手く行かなくても後悔はしない。
自ら選んだ道以外を進めば、上手く行く可能性が高いが、その選択を思い煩う事になるだろう。
苦しい時だからこそ、視野を広く冷静で居る事が大切になる。


【結果】
䷻◎⚪︎
水澤節󠄄(すいたくせつ) 上爻二爻
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 少陰][三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
節󠄄は亨(とほ)る。苦節貞(てい)すべからず。彖(たん)に曰はく、節󠄄は亨(とほ)る。剛柔(ごうじゅう)分かれて、剛中を得る。「苦節は貞すべからず」とは、その道窮(きは)まるなり。よろこびて以て險(けん)を行き、位にあたりて以て節󠄄(せつ)す。中正にして以て通ず。天地節󠄄して四時成り、節󠄄して以て度を制すれば財を傷(そこな)はず、民を害せず。象に曰はく、澤上に水あるは節󠄄。君子以て數度(すうど)を制し、德行を議(ぎ)す。


《爻辭》
[上爻 優先]
上六。苦節す。貞なれば凶。悔い滅ぶ。
象に曰はく、苦節、貞なれば凶とは、その道窮まるなり。
[二爻]
九二。門庭出でざれば、凶。
象に曰はく、門庭を出でざれば凶とは、時を失ひて極るなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辞》
坎は陽で兌は陰である。陽が上で陰が下である。剛柔が分かれている。剛柔が分かれて乱れない。剛が中を得て制となる。主節󠄄の義である。節󠄄で最大は剛柔が分かれている時である。節󠄄で苦を過ぎれば堪えられない。それでは正に復せない。喜んで險を冒さず、中を過ぎて節󠄄となれば道󠄃が窮まる。


《爻辭》
[上爻 優先]
上爻は苦節が行き過ぎている。
苦節に固執してはいけない。
しかし、極限まで行ったので、この苦節に堪えたなら、道が開けるだろう。
[二爻]
初爻は已に之を造り、二爻に至りて宜しく其の制を宣ぶるべし。而るに故らに之を匿す。時を失うことの極なれば、則ち遂に廃す。故に「門庭を出でざれば則ち凶」である。


〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辞》
節󠄄は分かれて度がある。竹の節のことである。陰陽が均等である。二爻と五爻が剛中である。節󠄄があれば通り、及ばないという弊害がない。上爻は陰柔で正を得て窮まれば、節󠄄を過ぎて窮まる。君子の道は中に適うを貴しとする。人は剛で折れず、柔で撓まなければよろしい。又偏ることがない。うまく行く。及ばないことを恐れるのでなく、行き過ぎることに注意すべきである。


《爻辭》
[上爻 優先]
無し
[二爻]
門庭は、門内の庭である。中門の外に在る。周禮、閽人門庭の埽を掌る。鄭氏は「門相当の地。疏という。中門外の地。之を門庭という」といっている。この爻は節にあり、陽を以て陰に居る。上に正応するものない。乗戻の質に懐いて、一節に固執する。退くこと知って、進むことを知らないものである。故に「門庭出でざれば、凶。」という。才能が有って、良い機会が遭う。


〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
節は竹の節に由来する。中が空洞で通っているが、所々に節があり止まって堅く動かない。上卦は坎で水が流れて通じるが、下卦は兌で水が止まり、節の象がある。総ての事は竹の節の様に分限がある。天地の間にも、君と臣の間にも、一家の中にも各々身分に応じて為す所がある。しかし己の分を守るということも、度を越せば苦節となる。孟子に陳仲子という人物がおり、節義を守ることを徹底する余り、無道の君から受ける禄を穢れると言って嫌悪する。しかしそれでは生きていくことは出来ない。我が身を苦しめ無理をしてまで節を守ろうとしてはいけない。
[彖伝]
下卦が陰=柔で、上卦が陽=剛である。上卦の主爻は五爻目で、下卦の主爻は三爻目である。剛と柔が上下に分かれ、陽爻は皆中を得ている。「苦節不可貞」は行う所の道が窮して行えなくなることである。陳仲子の様に窮することになる。
[象伝]
沢の上に水が流れる。沢は四方に堤防があって水を溜めている。これが節である。程好い所に止まっている。君子は節に則って政を行う。


《爻辭》
[上爻 優先]
[二爻]
無し

8/26(木) ䷉ 天澤履(てんたくり) 三爻

【運勢】‬
何かを成し遂げよう、進めようとする気持ちは大切である。
その為には、自分自身何が出来て、何が出来ないのかを理解しなければならない。
その場の気持ちに流されて、安請け合いしてしまう事は、危険で無謀だといえる。


【結果】
䷉◎
天澤履(てんたくり) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
虎の尾を履(ふ)む。人をくらはず。亨(とほ)る。
彖に曰はく、履は柔、剛を履(ふ)む。說󠄁(よろこ)びて乾に應(わう)ず。ここを以て虎の尾を履(ふ)む。人をくらはず。亨る。剛中正。帝位を履(ふ)みて疚(やま)しからず。光明あるなり。
象(しやう)に曰はく、上天下澤は履。君子以て上下を辨(わきま)へ民の志を定む。


《爻辭》
六三。眇(すがめ)能く視󠄃る。跛(ば)能く履む。虎の尾を履む。人を咥(わら)ふ。凶なり。武人大君と爲る。
象に曰はく、眇能く視󠄃るとは、以て明󠄃有りとするに足らざるなり。跛能く履むとは、以て與に行ふに足らざるなり。
人を咥ふ凶は位当たらざればなり。武人大君と爲るとは、志剛なればなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の卦辞〕
履は踏むことである。上卦は人で、下卦は虎とされる。下卦の虎が口を開いて人に噛みつこうとしている。人が虎の尾を履んで、大変危うい状況にあるが、機を見るに敏であり助かる。喜んで天命にしたがう心があれば無事に済む。


〔王弼の爻辞〕
履の時に居る時は、陽が陽に居ても不謙と言われる。陰が陽に居て、陽の上に乗るなんてもってのほかである。すがめるものである。行動すれば跛である。その様な時に、危険な状況になれば、寅に噛まれる。志剛健があるが、履むところを確認しない。武は人をあなどろうとする。大君と為り、進めば凶を免れない。志は五爻にある。頑ななこと甚だしい。
〔伊藤東涯の爻辞〕
眇は片目が小さいこと。跛は足が不自由なこと。虎の尾を履み、この爻は履の下卦の一番上に居て、不中不正である。才がなく志が高い。成功したいと願っている。武人が大君と為り、志は强いが凶である。荒󠄃い武人は先を見通せず、時を得ることが出来ない。そしてその強さを恣にして、結局敗れてしまうのである。往々にしてあることである。剛を履んでことを爲すことは出来ない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
下の兌の卦が虎で、虎は大臣の象である。
革命の卦である沢火革では「虎変ず」とある。
虎が乾の卦を履んで行く、つまり大臣が天子に咥ひ付くのである。
天子が咥ひ付かれないようにするには、後ろに巡って虎の尾を履んで行けば良い。
[彖伝]
「履柔履剛也」は、乾が兌の前にある、つまり陰爻の兌=柔が陽爻の乾=剛を履んでいることである。
虎は始めの内は従順であり、佞人(ねいじん:口先巧みにへつらう、心のよこしまな人)の巧言令色の卦である。
天子の思召し通りに何でも其れを輔け、段々と立身し大臣と為ったが、いよいよ欲が深くなって君を侵す勢いとなり、天子は迂闊にしていると噛まれてしまう。
そこで天子が虎の尾を履めば噛まれることはなく、道が亨るようになる。
上九に「其旋元吉」とあり、上卦が下卦の下に旋(めぐ)って入れ替われば、沢天夬となり、虎の尾を履むことが出来る。
そのため九五に「夬履」と云っている。
沢天夬に「夬、揚于王庭。孚号、有厲」とあるのは、大臣を撃つことである。
これを他の注解は全く書いておらず、下らない解釈ばかりである。
[象伝]
上に天があり、下に沢がある。
沢は至って低い所であり、天地よりも天沢の方が猶低い所である。
二・三・四爻目に離がある。
離には礼儀の象意がある。
そいて天沢の二字を用いて「辨上下」とある。
つまり礼儀として上と下との区別を立てることである。
上下の別を辨じて民の志を定めるのである。
民は沢の如く、君は天の如きものであり、沢が上がって天に為るべき道は無い。
「定民志」は、上を侵すべき道が無いという事が定まっていることである。


《爻辞》
三爻目は虎の口である。
至って剛情で、不正なる者である。
目や足が片方しか無いのは、邪(よこしま)な心の譬えである。
虎は君を犯して、大君となる勢いである。
天子は油断できない。
そこで虎の後ろに旋って、尾を履んで往く。
[象伝]
片目や片方の足では、明らかに見ることは出来ず、人に追いつくことも出来ない。
六三は陰爻を以て陽位にあり、陽を犯す所の象がある。
乱臣賊子の懼れるべき所を示す。

8/25(水) ䷻ 水澤節󠄄(すいたくせつ) 変爻無し

【運勢】
世の中は複雑で、そこに一貫性を求める事は難しい。
複雑な状況を解決するには、陰陽何方にも偏らない評価が大切になる。
定期的に区切り再評価する、そうして正しい事とは何か問い続ける事が、過ちを防ぐだろう。


【結果】

水澤節󠄄(すいたくせつ) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
《卦辭》
節󠄄は亨(とほ)る。苦節貞(てい)すべからず。
彖(たん)に曰はく、節󠄄は亨(とほ)る。剛柔(ごうじゅう)分かれて、剛中を得る。「苦節は貞すべからず」とは、その道窮(きは)まるなり。よろこびて以て險(けん)を行き、位にあたりて以て節󠄄(せつ)す。中正にして以て通ず。天地節󠄄して四時成り、節󠄄して以て度を制すれば財を傷(そこな)はず、民を害せず。
象に曰はく、澤上に水あるは節󠄄。君子以て數度(すうど)を制し、德行を議(ぎ)す。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辞》
坎は陽で兌は陰である。
陽が上で陰が下である。
剛柔が分かれている。
剛柔が分かれて乱れない。
剛が中を得て制となる。
主節󠄄の義である。
節󠄄で最大は剛柔が分かれている時である。
節󠄄で苦を過ぎれば堪えられない。
それでは正に復せない。
喜んで險を冒さず、中を過ぎて節󠄄となれば道󠄃が窮まる。


〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辞》
節󠄄は分かれて度がある。
竹の節のことである。
陰陽が均等である。
二爻と五爻が剛中である。
節󠄄があれば通り、及ばないという弊害がない。
上爻は陰柔で正を得て窮まれば、節󠄄を過ぎて窮まる。
君子の道は中に適うを貴しとする。
人は剛で折れず、柔で撓まなければよろしい。
又偏ることがない。
うまく行く。
及ばないことを恐れるのでなく、行き過ぎることに注意すべきである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
節は竹の節に由来する。
中が空洞で通っているが、所々に節があり止まって堅く動かない。
上卦は坎で水が流れて通じるが、下卦は兌で水が止まり、節の象がある。
総ての事は竹の節の様に分限がある。
天地の間にも、君と臣の間にも、一家の中にも各々身分に応じて為す所がある。
しかし己の分を守るということも、度を越せば苦節となる。
孟子に陳仲子という人物がおり、節義を守ることを徹底する余り、無道の君から受ける禄を穢れると言って嫌悪する。
しかしそれでは生きていくことは出来ない。
我が身を苦しめ無理をしてまで節を守ろうとしてはいけない。
[彖伝]
下卦が陰=柔で、上卦が陽=剛である。
上卦の主爻は五爻目で、下卦の主爻は三爻目である。
剛と柔が上下に分かれ、陽爻は皆中を得ている。
「苦節不可貞」は行う所の道が窮して行えなくなることである。
陳仲子の様に窮することになる。
[象伝]
沢の上に水が流れる。
沢は四方に堤防があって水を溜めている。
これが節である。
程好い所に止まっている。
君子は節に則って政を行う。

8/24(火) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 上爻三爻

【運勢】
畜の極み、蓄えた力が際限無く溢れる時。
地道な努力が実り、停滞して居た物事が進むからといって、勢い余って安易な行動に出てはいけない。
堅実に筋道を立てる、これまで通りの方法を改めて意識すると良い。


【結果】
䷙◎⚪︎
山天大畜(さんてんたいちく) 上爻三爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
大畜は貞に利(よろ)し。家食󠄃せざる吉。大川を渉るによろし。
彖に曰はく。大畜は剛健篤實輝光。日にその德を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは大正なり。家食󠄃せずして吉。賢を養ふなり。大川を渉るによろしとは、天に應ずるなり。
象に曰はく、天山中に在るは大畜。君子以て多く前言往行(わうこう)を識して、以てその德を畜(やしな)ふ。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九。何ぞ天の衢。亨る。
象に曰はく、何ぞ天の衢とは道󠄃大いに行はるるなり。
[三爻]
九三。良馬逐(お)ふ、艱貞(かんてい)に利し。
日に輿衛を閑(なら)ふ、往くところ有るに利し。
象に曰く、往くところ有るに利しとは、志を上合するなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辞》
大畜は大きく蓄へる、とどむることである。
剛健篤実でますます徳が高くなることを表す卦である。
剛い者が最上位に登り、賢者を尊んで賢者を養う。
賢者は家から出て朝廷に仕えはじめた。
吉である。
大事業をするのに良い時である。


《爻辞》
[上爻 優先]
〔王弼の解釋〕
畜の極みに居て、大いに亨る時に至り、どうして止める必要があろう。
〔東涯の解釋〕
天衢は天の路である。空の中の広く障害がないことをいう。畜が極り變ずる。吉凶禍福は交互に起こるものである。極まれば通る。止まっていても永遠に留まり続けることはなく、泰であってもずっと泰であることはない。
[三爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
大畜は、君が臣を止めて畜(やしな)う卦である。
大は君のことである。
大畜とは反対に小畜という卦がある。
小畜は、臣の方が君を止めるという卦である。
小は臣のことである。
上卦の艮は身体である。
三・四・五爻目の震は仁である。
また二・三・四爻目に兌は義である。
つまり仁義の徳を身の内に具えていることになる。
畜の字は、止めるというだけでなく、之を育てて善くするという義がある。
徳を十分に養はねばならない。
君は、臣の早く出世を求める心を抑えて、十分に学問を以て徳を養わせるのである。
また養われる側も、貞所を守るのが良いので、「利貞」という。
「不家食吉」とは、学問道徳のある人物は君に用いられ、禄を以て養われる所となる。
そのため賢人は家に居って食することは無い。
朝廷に招かれた賢人は、危険なことがあっても之を踏み越えて往くのが良い。
そこで「利渉大川」という。
[彖伝]
天子に剛健なる徳が具わっている。
政務を執っても疲れることがなく、篤実である。
篤実は艮の卦の象である。
また艮の陽爻が上にあり、光輝く所がある。
「日新」というのは、乾の卦で象で、日々昇り沈んでいく太陽である。
「其徳剛上」は、上九を指していう。
上九は剛にして一番上に居る。
[象伝]
上卦の艮は山、其の山の中に天がある。
山中には天の元気が十分に満ちている。
火気と水気の働きで草木が良く生じ、禽獣も繁殖する。
これが大畜である。
「前言」は震の象である。
また震は行くという事もある。
(王弼)畜の極みに居て、大いに亨る時に至り、どうして止める必要があろう。
(東涯)天衢は天の路である。空の中の広く障害がないことをいう。畜が極り變ずる。吉凶禍福は交互に起こるものである。極まれば通る。止まっていても永遠に留まり続けることはなく、泰であってもずっと泰であることはない。


《爻辞》
[上爻 優先]
「衢」は街の事であり、四方八方から集まって来る要路の事である。朝廷に出るのは、背中に天を荷う事であり、天に代わって万民を生育する。志が大いに行われ、亨る。
[象伝]
要路に坐って、天より禀けた道徳を十分に行う。道とは天の道であり、萬物を生じ萬物を育う所の道である。
[三爻]

8/23(月) ䷤ 風火家人(ふうかかじん) 五爻二爻

【運勢】
家は夫と妻が居て始めて構成され、
夫が剛健中正、妻が柔順である事が道理である。
同様に、国や個人を構成する要素にも夫と妻の役割がある。
役割を果たし守る事が、広い視野で見て集団の維持に大切だと言える。


【結果】
䷤◎⚪︎
風火家人(ふうかかじん) 五爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
家人は女の貞によろし。
彖に曰はく、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。
象に曰はく、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。王家を有つに假る。恤ふることなくして吉。
象に曰はく、王家を有つに假るとは、交々相愛するなり。
[二爻]
六二。遂(と)ぐるところなし。中饋(ちゅうき)に在り。貞にして吉。
象に曰く、六二の吉は、順にして以て巽ふなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。
家の外の他人のことは分からない。
家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。
四爻が主爻である。主に女性について説かれている。
家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


《爻辭》
[五爻 優先]
[王弼の爻辭]
假は至の意。正しくしかも応じている。
尊󠄄位に居て巽を体する。
王がこの道に至れば、一家をなす。
尊󠄄位に居て、家の道󠄃に明るければ、王化󠄃できないものはない。
父は父、子は子、兄は兄、弟は弟、夫は夫、婦人は婦人、みな仲睦まじく、楽しい。
家の道は正しく、家を正せば天下も定まる。
[東涯の爻辭]
假は至である。
陽剛中正である。
尊󠄄位に居て二爻も柔順中正で応じている。
この天子は位正しく、御成婚に至る。
古より天子の后妃は、色々問題を起こし、德を保つものが少なかった。
天子と后妃が德を大切にして親しくあることが最善である。
[二爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。
家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。
この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。
国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。
兩方中である。
皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。
これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。
子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。
家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。
婦と妻と二つの字がある。
双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。
中男と兄にも嫁がある。
一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。
物を煮たり焼いたりするのは竈である。
竈をよく治めることが家を治める時の第一である。
家族は秘め事をしてはいけない。


《爻辭》
[五爻 優先]
「假」は「おおい(覆い)にす」と読む。九五の天子は四海を以て家とし、天下の人民を皆悉く我が家の子とする。天下も悉く天子を以て我が親の如くに親しく和して居れば、争いも起こらない。
[象伝]
一家の者が兄弟夫婦相愛するように、天下の間悉く迭(たがい)に相愛する。
[二爻]

8/22(日) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 五爻

【運勢】
賢人が、始めから学問道徳に優れた人物であった訳では無い。
日の出前の暗闇の様な、誰もが注目しない時に地道な努力を続けて来た結果なのである。
その努力に倣い、勢いに流されず、謙虚堅実な行動を取ると良い。


【結果】
䷙◎
山天大畜(さんてんたいちく) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
大畜は貞に利(よろ)し。家食󠄃せざる吉。大川を渉るによろし。
彖に曰はく。大畜は剛健篤實輝光。日にその德を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは大正なり。家食󠄃せずして吉。賢を養ふなり。大川を渉るによろしとは、天に應ずるなり。
象に曰はく、天山中に在るは大畜。君子以て多く前言往行(わうこう)を識して、以てその德を畜(やしな)ふ。


《爻辭》
六五。豕の牙を豶す。吉。
象に曰く、六五の吉は、慶あるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辞》
大畜は大きく蓄へる、とどむることである。
剛健篤実でますます徳が高くなることを表す卦である。
剛い者が最上位に登り、賢者を尊んで賢者を養う。
賢者は家から出て朝廷に仕えはじめた。
吉である。
大事業をするのに良い時である。


《爻辞》


〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
大畜は、君が臣を止めて畜(やしな)う卦である。
大は君のことである。
大畜とは反対に小畜という卦がある。
小畜は、臣の方が君を止めるという卦である。
小は臣のことである。
上卦の艮は身体である。
三・四・五爻目の震は仁である。
また二・三・四爻目に兌は義である。
つまり仁義の徳を身の内に具えていることになる。
畜の字は、止めるというだけでなく、之を育てて善くするという義がある。
徳を十分に養はねばならない。
君は、臣の早く出世を求める心を抑えて、十分に学問を以て徳を養わせるのである。
また養われる側も、貞所を守るのが良いので、「利貞」という。
「不家食吉」とは、学問道徳のある人物は君に用いられ、禄を以て養われる所となる。
そのため賢人は家に居って食することは無い。
朝廷に招かれた賢人は、危険なことがあっても之を踏み越えて往くのが良い。
そこで「利渉大川」という。
[彖伝]
天子に剛健なる徳が具わっている。
政務を執っても疲れることがなく、篤実である。
篤実は艮の卦の象である。
また艮の陽爻が上にあり、光輝く所がある。
「日新」というのは、乾の卦で象で、日々昇り沈んでいく太陽である。
「其徳剛上」は、上九を指していう。
上九は剛にして一番上に居る。
[象伝]
上卦の艮は山、其の山の中に天がある。
山中には天の元気が十分に満ちている。
火気と水気の働きで草木が良く生じ、禽獣も繁殖する。
これが大畜である。
「前言」は震の象である。
また震は行くという事もある。


《爻辞》

8/21(土) ䷵ 雷澤歸妹(らいたくきまい)→䷰ 澤火革(たくかかく)

【運勢】
目先の機会に囚われず、長い目で見て今は待つ事が大切である。
急な方針変更は、道理に適っていても周りからの理解を得られない。
目標を高く示し、周りと協力して堅実に進めて行くと良いだろう。


【結果】

本卦:雷澤歸妹(らいたくきまい)
之卦:澤火革(たくかかく)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 老陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻][三爻][二爻]


【原文】
《本卦:
雷澤歸妹》
婦妹は征けば凶。利(よろ)しき攸(ところ)无し。
彖に曰はく、歸妹は天地の大義なり。天地交はらざれば萬物興らず。歸妹は人の終始なり。說󠄁(よろこ)びて以て動く。妹を歸く所󠄃なり。征けば凶とは位に当たらざるなり。利しき攸无しとは、柔、剛に乘ずればなり。
象に曰はく、澤上に雷有るは歸妹。君子以て終を永くし敝(へい)を知る。


《之卦:
澤火革》
革は已る日乃ち孚あり。元いに亨る。貞に利し。悔い亡ぶ。
彖に曰はく、革は水火相ひ息し。二女同居して、其の志相得ざるを革と曰ふ。已る日にして乃ち孚あり。革めて之れを信にす。文明にして以て說󠄁(よろこ)ぶ。大いに亨るに正を以てす。革(あらた)めて當る。其の悔い乃ち亡ぶ。天地革りて四時成る。湯武革命。天に順ひて人に應ず。革の時大なるかな。
象に曰はく、澤中に火有るは革。君子以て歷を治めて時を明󠄃にす。


〔王弼の解釋〕
《本卦:
雷澤歸妹》
妹は少女のことである。
兌は小陰で、震は長陽である。
小陰が長陽を承けるので、よろこんで動く。
妹を嫁がせる象である。
陰陽が既に合って長と少が交わった。
天地の大義、人倫の終始と言える。
少女を長男に嫁がせる。
少女は嬉しくない。
不正を犯し、それを喜んで動くのは邪道である。
終には敝を知る。


《之卦:
澤火革》
民は常識を学ぶことを共にすることが可能であるが、変動に共に適応していくことは難しい。
共に成功を喜ぶことは出来るが、共に事業を始めることを考えるのは難しい。
だから革の道は、即日は誠なく、日が終わる時には誠がある。
誠があって元亨利貞で悔いが滅ぶのである。
日が終わるころに誠が無ければ革に当たらない。
後悔が生じるのである。
変動を生じるものである。
革めて其の悔いに当たれば、悔いを無くせる。
不合に變が生じ、変が生じるところに不合が生じる。
だから不合は革である。
息とは變を生じることである。
火は上に昇ろうとし、澤は下に降りようとする。
水と火が戦い、その後に變が生じる。
二女が同居している。
水と火が近くにあって互いに適合しない。革めるところとなり信があれば、文明の喜びである。
正しいことを履み行う。
そして改める。
天に應じ民に遵う。
大成功する正しいものである。
革めて大成功する。
必ず正しさを失ってはいけない。


〔伊藤東涯の解釋〕
《本卦:
雷澤歸妹》
婦人のことを嫁とも歸ともいう。
兌は少女、震は長男である。
これは婦人が嫁ぐ時に礼を失している。
二爻から五爻まで位を得ていない。
三爻と五爻の陰爻が陽の上に居る。
これは陰として正しくない。
夫が先に声をかけて、それに妻は随うのである。
これは天地の大義である。
父母の命、媒酌の言を待ち、礼を尽くす。
その後にそれぞれがその道を尽くして家道󠄃がなる。
正しい道に由らないと、その夫婦は礼儀を乱し、制御できなくなる。


《之卦:
澤火革》
革は変革である。
已日は事を終える日のことである。
澤は水である。
火と水が互いに消しあっている。
中女が下に居て、少女が上に居る。
同居して志を一緒にしない。
変革の兆候である。
内は明るく外は喜びである。
智があってよく和す。
其れで革のはじめに居て、疑いを免れないが、最後まで達成できる。
よく互いを信じることが出來、妨害や滞りがない。
その正しさを失わない。
革めて当を得ている。
悔いは亡くなろう。
非常の初めに在り、革の初めである。
人々は旧習に安んじ、疑いや讒謗が生じる。
非常の事をして、人心を察せず、軽挙妄動してはいけない。
初めは疑われるが最後には信を得て悔いはなくなる。


〔根本通明の解釋〕
《本卦:
雷澤歸妹》
上卦は震で長男、下卦は兌で少女である。
兄たる六五の天子は、六三の我が妹を以て、諸侯に嫁がせる。
兌は巧言令色で、男子を玩ぶ象がある。
しかし婚姻は必ず男子の方から求めるべきものだから、女子の方から征くのは凶である。
[彖伝]
夫婦の道は、天地陰陽の道である。
陰陽が正しく交わって、萬物が生じる。
天地の大義は、人の大倫である。
孟子も、男女室に拠るは、人の大倫と云う。
兌は說び、震は動く。
これは妹が帰ぐ所の義にあたる。
三爻目の陰が、一・二爻目の陽の上に乗っており、柔が剛を凌ぐ所がある。
これは戒めなければならず、この女が征けば凶である。
[象伝]
澤上に雷がある。
雷が動けば、澤も随って動く。
これは男子が動いて事を行い、女子がこれに応じる象である。
婚姻を終生の永いものとするには、後々弊害が出ないように能く対策し、始めを慎まなければならない。


《之卦:
澤火革》
己は十干の土の弟で、五行の半ばを過ぎた所である。其所で、最早革命を行わなければならない勢いになって居る。また己は五行に於いて、仁義礼智信の信に当たる。即ち己日は、天下の人の信用が出て来た所でもある。其所で後悔も亡びる。
[彖伝]
革は水と火の卦で、互いに相害する所である。此の卦は丁度、水火既済の相和する所と反対である。同じ家に女が二人一所に居る。兌は何処迄も下へ下がり、離は何処迄も上に上る。其所で互いに衝突する。革命は殷の湯武に始まる。之は止むを得ずして行ったものであるが、併し逆賊と云うのが正しい所である。天下一同の求める所に従うのが、人に応じる所である。併し革命に当たっては、真に大いなる目的を以て行うべきである。
[象伝]
沢の中に火が有り、火気の動く所に依って色々なものが変わって来る。火の字には、物の変化する所の義がある。君子は暦を第一に治め、春夏秋冬の時を間違わない様にしなければいけない。

8/20(金) ䷫ 天風姤(てんぷうこう) 三爻

【運勢】
陽の強い働きは、陰と交わると損なわれる。
このまま流れに従えば、初爻の陰は次第に力を増し、進むべき正道は塞がれてしまうだろう。
ただ焦る必要は無い。
先ずは心を落ち着かせ、欲に惑わされない様注意すると良い。


【結果】
䷫◎
天風姤(てんぷうこう) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。
彖に曰はく、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。
象に曰はく、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。


《爻辭》
九三。臀に膚无し。其の行くこと次󠄄且。厲めば大なる咎无し。
象に曰はく、其の行くこと次󠄄且とは行きて未だ牽かれざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
姤は遇うことである。柔が剛に遇う。人でいうと女が男に遇󠄄うのである。一人の女が五人の男に遇󠄄う。大変強靭な女である。取るべきでない。剛が中正であるから天下はあまねく王化󠄃に帰すのである。言義は見えるところを表現しきれない。


《爻辭》
下卦の最上位に居るが二爻は初爻に依っている。応じるものが無い。


〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
姤は遇󠄄うことである。一陰が下に生じて、五つの陽にあったのである。一陰が五つの陽に対峙する。その大壮はすさまじいが、陽が必ず勝つ。このような陰を用いてはならない。陰陽が互いに對待(たいたい)することは、天地の常経である。陰が盛んであると陽が損なわれる。臣下が君主に背くのも、婦が夫を凌駕するのも皆陰が盛んだからである。姤の卦が戒めるところである。


《爻辭》
上に応じるものが無い。正しくしているが常に危険をはらんでいる。よくそのことを自覚していれば大きな咎はない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は初六の陰爻が主役で、他の陽爻は賓客のような訳になる。
陰は長じて、次第に陽を侵食していく。
陰爻つまり女の方から、進んで陽爻に遇う所がある。
其処で女を娶るという方へ、この卦を用いてはならない。
[彖伝]
「遇」は多いがけない所で遇うと云う義である。
柔は剛に遇うと云うのは、女の方から進んで男に遇うという義である。
このような女を娶ると、次第に増長して往くから娶ってはならない。
剛中に遇うというのは、九五の剛が九二の賢人に遇う所を云う。
賢人は朝廷へ出ようとする初六を抑え止める。
そのため剛は賢人と相謀って、初六を正しくする。
[象伝]
天の下に風が旋ぐるように、天下に命令を下す。
四方に遍く告げ諭して、能く治め斉(ととの)える。
旧弊を除きはらって政を以て天下を新たにする。


《爻辭》
九三は初六の陰を求めようとする。しかし出掛けて行こうとすれば、九二に抑えられ行くことが出来ない。其所で動かずに坐っているが、丁度臀に疵(きず)がある様に安坐が出来ない。九二は九五の天子と深く結んでいるから、之を犯しては我が身が厲(あや)うい。しかし九二に抑えられて行かずに居る所であるから、大いなる咎は無い。
[象伝]
九三が行こうと歩き出しても、未だ初六の為に牽かれない。初六に牽かれると、矢張り小人の部に這入って我が身に害がある。九二の為に之を止められた所が幸いである。

8/19(木) ䷄ 水天需(すいてんじゆ)→䷉ 天澤履(てんたくり)

【運勢】
自然の巡りは悠久の中で不変であり、時が過ぎれば必ず雨が降る。
同様に、物事も中正を守り進めれば、自然の内に成就するだろう。
礼儀を重んじ、無理をしない身の丈に合った学び方を模索すると良い。


【結果】

本卦:水天需(すいてんじゆ)
之卦:天澤履(てんたくり)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻][四爻][三爻]


【原文】
《本卦:
水天需》
需孚有り。光に亨る。貞にして吉。大川を渉るに利し。
彖に曰はく、需は須なり。險前󠄃に在るなり。剛健にして陥らず。其の義、困窮せず。需は孚有り。光に亨る。貞吉とは、天位に位して以て中正なるなり。大川を渉るに利しとは、往きて功有るなり。
象に曰はく、雲、天に上るは需。君子以て飲食宴樂す。


《之卦:
天澤履》
虎の尾を履む。人をくらはず。亨る。
彖に曰はく、履は柔、剛を履む。說󠄁(よろこ)びて乾に應ず。ここを以て虎の尾を履む。人をくらはず。亨る。剛中正。帝位を履みて疚(やま)しからず。光明あるなり。
象に曰はく、上天下澤は履。君子以て上下を辨(わきま)へ民の志を定む。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《本卦:
水天需》
天位に居るとは五爻のことである。中正。そして物を待つ。之が需道である。乾德で進めば亨る。童蒙は旣に德を持つ。


《之卦:
天澤履》
履は踏むことである。上卦は人で、下卦は虎とされる。下卦の虎が口を開いて人に噛みつこうとしている。人が虎の尾を履んで、大変危うい状況にあるが、機を見るに敏であり助かる。喜んで天命にしたがう心があれば無事に済む。


〔伊藤東涯の解釋〕
《本卦:
水天需》
需は待つべきであるという卦である。下卦の陽は進もうとする。然し前には険難がある。我慢して待てば険難に陥らない。五爻が主爻である。五爻は剛中の才がある。能く待ってから進むことが出來る。心が弱い人は待つことができないで冒険して失敗し困窮する。忍耐は大切である。


《之卦:
天澤履》
虎は剛猛な獣であり、噛みついてくる。この卦は内が兌で外が乾である。六三がこの卦の主爻である。一柔を以て進んで、三剛の後に接して、害を見て、今まさに驚こうとしている。虎の尾を履む象が有る。故に、このように辞に係っていて、このことから卦の名がついている。兌の徳はよろこぶことである。内卦の兌に上体の乾が応じている。なので危険から免れないといっても、傷を負わずにいられるので、亨るのである。人は内に和順の徳を積んでいて、上には器遇の主が有る。危ない場所にいたとしても、なぜ、亨らないと憂うのだろうか。柔は六三のことであり、剛は三陽を指す。
この象伝には別の一義を発していて、九五が就く。其の徳を賛すると称している。尊位に居て、疚しいことがない。履の道は光明のものである。この上天下澤の象がある。君子は之を見て、上下関係をはっきりさせる。民心の志が定まり、反乱がおきないようにする。礼は履である。


〔根本通明の解釋〕
《本卦:
水天需》
下卦の乾は三爻共に陽爻で賢人の象である。上卦の五爻目は陽爻を以て陽位にあり、明君である。しかしながら上卦の坎は水であり、天下が水に溺れる象がある。これは三四五爻目に離の卦があり、主爻となる六四の大臣が、火が物を害する様に天下の人民を苦しめている象である。其所で此の禍の元凶である大臣を、天下の賢人が撃ち拂わければならない。需と云うのは、須(ま)つと云う事である。上卦では力を盡したいと云う賢人を需(ま)ち、下卦では明君が賢人を求める所を需って居る。天子に孚が有り、賢人が国家の為に盡す時には、危険を冒してでも往く所に宜しき所がある。
[彖伝]
需は「須つ」と訓み、「待つ」とは違って、暫く控えると云う義である。険難を前に大事を行おうと思っても、速やかには行われない。天下の賢人は遠く慮る所があり、無理に川を渉って危険に陥らない。九五の天子は天位に居り、何処迄も正しく中庸である。其所で遂に孚の亨る所がある。
[象伝]
雲が天に上り十分に集まった所で雨が降る。即ち需つの象である。下に居る賢人は、時を需って居る間、飲食を以て身を養い、宴楽を以て心を養う。そして時が到れば雷の如くに進んで往くのである。


《之卦:
天澤履》
下の兌の卦が虎で、虎は大臣の象である。
革命の卦である沢火革では「虎変ず」とある。
虎が乾の卦を履んで行く、つまり大臣が天子に咥ひ付くのである。
天子が咥ひ付かれないようにするには、後ろに巡って虎の尾を履んで行けば良い。
[彖伝]
「履柔履剛也」は、乾が兌の前にある、つまり陰爻の兌=柔が陽爻の乾=剛を履んでいることである。
虎は始めの内は従順であり、佞人(ねいじん:口先巧みにへつらう、心のよこしまな人)の巧言令色の卦である。
天子の思召し通りに何でも其れを輔け、段々と立身し大臣と為ったが、いよいよ欲が深くなって君を侵す勢いとなり、天子は迂闊にしていると噛まれてしまう。
そこで天子が虎の尾を履めば噛まれることはなく、道が亨るようになる。
上九に「其旋元吉」とあり、上卦が下卦の下に旋(めぐ)って入れ替われば、沢天夬となり、虎の尾を履むことが出来る。
そのため九五に「夬履」と云っている。
沢天夬に「夬、揚于王庭。孚号、有厲」とあるのは、大臣を撃つことである。
これを他の注解は全く書いておらず、下らない解釈ばかりである。
[象伝]
上に天があり、下に沢がある。
沢は至って低い所であり、天地よりも天沢の方が猶低い所である。
二・三・四爻目に離がある。
離には礼儀の象意がある。
そいて天沢の二字を用いて「辨上下」とある。
つまり礼儀として上と下との区別を立てることである。
上下の別を辨じて民の志を定めるのである。
民は沢の如く、君は天の如きものであり、沢が上がって天に為るべき道は無い。
「定民志」は、上を侵すべき道が無いという事が定まっていることである。

8/18(水) ䷢ 火地晋(かちしん) 五爻三爻

【運勢】
太陽が昇り地を遍く照らす様に、堂々とした力強い行動が相手を感化させる。
周りからの信頼に応え、率先して物事に当たると良い。
違いを認め考えを尊重する、互いに切磋琢磨し進む事で道を大きく開く事が出来るだろう。


【結果】
䷢◎⚪︎
火地晋(かちしん) 五爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
晋は康侯(しょうこう)用ゐて馬を錫(たま)ふこと蕃庶(ばんしよ)。晝日三接す。
彖(たん)に曰(い)はく、晋は進むなり。明󠄃地上に出づ。順にして大明󠄃に麗(つ)く。柔進みて上行す。是を以て康侯用ゐて馬を錫(たま)ふ蕃庶。晝日三接すなり。
象に曰はく、明󠄃、地上に出づるは晋。君子以て自ら明德を照(あきらか)にす。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。悔い亡ぶ。失得(しっとく)恤(うれ)ふる勿れ。往けば吉、利(よろ)しからざるなし。
象に曰く、失得恤ふる勿れとは、往きて慶び有るなり。
[三爻]
六三。衆允(まこと)とす。悔い亡ぶ。
象に曰く、衆之を允(まこと)とする。志上行するなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
晋は進󠄃むである。地上に日が昇り、あまねく天下を照らす象である。陰が三つ上に登って太陽に付き従っている。これは名君に人々が仕える象である。そして立派な諸侯となり、王は恩恵を賜る。三陰は柔順の徳がある。君子は德を明らかにし、天下あまねくその恩恵を受ける。


《爻辭》
[五爻 優先]
柔にして尊位を得ていて、陰、明主となる。察を用ひずに、代はらずして下任せることができる。故に位に当たっていなくとも、其の悔消せて、失得心配するな。各々其れ司る有り、すばやく行動していけば、利あらざるない。
[三爻]
現状は不安定であるが、志は下の二つの陰に押されて上を目指す。
上昇志向の下の者に信頼されて進めば後悔することはない。


〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
上卦の離は日であり、下卦の坤は地である。
つまり地上に日が初めて出た所の象である。
晋は日が出て万物が進むという義である。
『説文解字』に「日出萬物進也」とあるように、太陽の働きで万物は育ち伸びてゆく。
二・三・四爻目に艮がある。
艮は東北の間であるから、将に日が出んとする所である。
康侯は、諸侯の職分が民を康(やす)んずる所にあることに由来する。
諸侯は天子に朝するに三度御目通りをするので「昼日三接」という。
その時に諸侯は自国の名馬を献ずる。
馬十匹を献ずることを錫(たま)うという。
錫という字は古くは上下の区別なく、下から上へ差上げるのにも錫うという。
『書経』にも「衆錫帝」とある。
これが上から下に与える意味に限られるようになるのは、始皇帝の時からである。
下から上へ差上げる時には、献ずる、奉るというようになる。
蕃庶は馬十匹で多いことによる。
[彖伝]
日が出て万物が段々進んで来る、即ち天子が上に在って諸侯が進んで拝謁する所の象である。
明は離の卦の象である。
「大明に麗(つ)く」というのは、大明=乾の卦の真ん中に陰爻が麗いて離の卦になることである。
天は大明、離は明である。
「柔進みて上行す」というのは、元これは真っ暗の夜の象である地火明夷の卦であったことによる。
五爻目の陰爻が二爻目にあり、それが上行して五爻目まで往く象である。
[象伝]
日が地の下にある真っ暗な状態は、欲に覆われて徳が明らかにならない状態である。
君子は欲を取り払って、明徳を明らかにして四方を照らす。


《爻辞》
[五爻 優先]
データ無し
[三爻]
六三は六二と一緒になって君の為に尽くす所がある。
そこで衆は之を允(まこと)として信用しているから、悔は亡ぶ。
六三は陰を以て陽の位にあるので悔が出るべき所であるが、誠の深い所を以て悔は亡ぶ。
[象伝]
六三の志はどこまでも六五の為に尽くす所があるので上行する。
六二と力を合わせて君の為に尽くすのである。