7/13 (月) ䷢ 火地晋(かちしん) 上爻


【運勢】

徳のある人間は評価され、欲がある人間は評価されない。

徳を見定める事は難しいので、人は欲があるかないかを見て評価する。

道を大きくひらく事が出来るが、何事も行き過ぎない事が大切である。

【原文】

《卦辭》

晋は康侯(しょうこう)用ゐて馬を錫(たま)ふこと蕃庶(ばんしよ)。晝日三接す。

彖(たん)に曰(い)はく、晋は進むなり。明󠄃地上に出づ。順にして大明󠄃に麗(つ)く。柔進みて上行す。是を以て康侯用ゐて馬を錫(たま)ふ蕃庶。晝日三接すなり。

象に曰はく、明󠄃、地上に出づるは晋。君子以て自ら明德を照(あきらか)にす。

《爻辭》

上九。其の角に晋(すす)む。これ用ゐて邑(むら)を伐(う)つ。厲(あや)ふけれども吉なり。咎なし。貞なれども吝なり。

象に曰はく、「これ用ゐて邑を伐つ」とは、道󠄃未だ光らざるなり。

【解釋】

〔王弼、伊藤東涯の解釋〕

《卦辭》

晋は進󠄃むである。

地上に日が昇り、あまねく天下を照らす象である。

陰が三つ上に登って太陽に付き従っている。

これは名君に人々が仕える象である。

そして立派な諸侯となり、王は恩恵を賜る。

三陰は柔順の徳がある。

君子は德を明らかにし、天下あまねくその恩恵を受ける。

《爻辭》

上爻は進む所が極まったわけであるが、今も上爻は陽であり中庸でない。

このような状況では反逆者を討とうとしてもそこまで人々はついて来ないので、小さな村単位の反逆者を倒せるほどである。

勢いがない。

吉であり、問題はないが、後悔することも多い。

聖人が言うように中庸が大切である。

〔根本通明の解釋〕

《卦辭》

上卦は日を表し、下卦は地を表す。

太陽が昇ったばかりを象っている。

萬物も誕生すると、太陽と同じように進んでいく。

萬物は日の力を借りて生長するのである。

『説文解字』に「日出でて萬物進󠄃むなり」とあるのは、そういうことである。

康侯とは「国を平和にする臣下」の意味である。

そして、自分の国を平󠄃安に治める諸侯は、国情を君主に報告するために朝廷に來る。

一日に三回報告することになっていて、自分の国で生まれた名馬を献上するのである。

[彖傳]

太陽が地上に出て、大地をあまねく照らす様を表す。

天子が上に在って、諸侯が拝謁する所󠄃を表す。☲離は明󠄃である。

大明󠄃は☰乾であり、その真ん中の爻が下の☷地に影響されて陰になっているので、「順にして大明󠄃に麗く」というのである。

[象傳]

地の下に日があると真っ暗なように、陽の上に陰があると暗い。

陰は人の心の欲である。

欲があると徳が輝かないので、君子は自らの明徳を示すためにこの卦を参考にする。

『大学』で「大学の道󠄃は明徳を明󠄃らかにするに在り」とはこのことである。

《爻辭》

上爻は☲離の卦の一番上であり、離は兵の象である。

陽爻であるから、過剰に陽が强い。

角は先がとがった固いもので、要󠄃は兵器である。

討伐する相手は外国でなく、邑、これが実は大臣のことである。

大臣が国内で悪政を敷いているので、君主は討伐しなければならない。

それは危険なことであるが、国政にとっては吉である。

それは恥ずべきことである。

何故なら、君主が有徳者なら本來、大臣を討伐するようなことにはならないからである。

[象傳]

君主が大臣を討たなければならなくなったのは、まだ君主の徳が足りないからである。

7/12 (日) ䷘ 天雷无妄(てんらいむまう) 四爻

【運勢】

予期せずして、世の中を変える出来事が起こるだろう。

心の内に秘めている欲があるが、それに従わず、穏やかであれば良い。

今日、「やるべき事」がある人は、正しさを守り、行う事が大切である。

【原文】

《卦辭》

无妄(むまう)は、元(おおい)に亨(とほ)る、貞に利(よろ)し。其れ正に匪(あら)ずんば眚(わざわい)有り。往く攸(ところ)有るに利(よろ)しからず。

彖に曰く、无妄は剛外より來(きた)りて、内に主になり、動いて健。剛中にして應(おう)ず。大(おおい)に亨り以て正し。天の命なり。其正に匪ずんば眚有り、往く攸有るに利しからずとは、无妄の往く、何(いずく)にかゆかん。天命、祐(たす)けず、行かんかな。

象に曰く、天の下に雷行き、物に无妄を與(あた)う。先王以て茂(さかん)に時に對(たい)して萬物を育す。

《爻辭》

九四。貞(てい)すべし。咎(とが)无(な)し。

象に曰く、貞すべし。咎无しとは、固(かた)く之れを有するなり。

【解釋】

〔王弼、伊藤東涯の解釋〕

《卦辭》

妄(もう)は、望と音に相近し。

无妄は、希望することがない。

『史記』では无望󠄇とかく。

この卦をさかさにすると䷙山天大畜になる。

主爻は初九である。

无妄は予期せずに来るものである。

卦体は震が動くで、乾が健やかである。

五爻と二爻は応じている。

まさに天命である。

逆に正しくないことをしていれば、どんどん禍いを増す結果となる。

舜禹が君で伊傅が臣であるようなものだ。

《爻辭》

陰の四爻に陽であるので、謙順を失いがちである。

至尊󠄄の五爻に近いので、正しいものをつけるべきである。

初爻と応じていない。

何もしようとせず、正しさを守っていればよい。

〔根本通明の解釋〕

《卦辞》

无妄は欲がないということである。

無望の意味である。

『史記』や『戦国策』にも無欲の意味で使われている。

ただ誠にのみ志すのである。

志が正しくなければ、災いがおこる。

[彖伝]

外卦が天で、内卦が雷である。

五爻と二爻が応じており、上下心が通う。

天命を受けることを表す。

その天命に従うのがよい。

それ以外のことをしようとするのは、天命でないことをすることになるので、よろしくない。

[象伝]

天の下に雷があるのが无妄である。

人間が无妄であるのは当然であるが、万物も无妄であるべきである。

先王はこの无妄の卦を用いて、つとめて万物を育んだ。

春夏秋冬、天に従った生き方をした。

《爻辞》

四爻は陰の位に陽がきているので、正しくあるべきと戒めている。

[象伝]

四爻は、仁の徳を初爻と共に大切に育めば問題ない。