7/2 (木) ䷞ 澤山咸(たくざんかん) 上爻

【運勢】

自分の心持ちを良く考え行動する事で、思慮深く、秩序を守り生きる事が出来る。

心持ちを理解したからと言って、欲に忠実であってはいけない。

直く、正しく生きるのが良いだろう。

【原文】

《卦辭》

咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利(よろ)し。女を取る吉なり。

彖に曰はく、咸(かん)は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨(とほ)り、貞に利(よろ)し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。

象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。

《爻辭》

上六。その輔、頬舌(けふぜつ)に咸ず。

象に曰く、その輔、頬舌(けふぜつ)に咸ずとは、口說󠄁に膝(あぐる)なり。

【解釋】

〔王弼、通解の解釋〕

《卦辞》

咸は感じる、互いに好意的であるの意味である。

剛柔が相応じて助け合うので思い通りに行くという。

柔がのぼり、剛が下るので、結婚に最適とされる。

当然夫婦になってからも咸を大切にしなければならない。

喜びがあっても、羽目を外すのは良くない。

正しくあろうとすべきである。

《爻辞》

上爻は好意的であることが行き過ぎてしまった爻である。

言葉巧みに人を喜ばせようとするが、内実が伴っていない。

これでは人はついて来ない。

〔根本通明の解釋〕

《卦辞》

是は下経の始まりである。

上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。

人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。

『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。

上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。

兌は少女、艮は小男である。

上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。

男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。

そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。

[彖伝]

咸は無心で咸じる所を尊ぶ。

情欲の私があってはいけない。

天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。

婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。

天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。

[象伝]

山上に水気が上っているのが咸の卦である。

山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。

それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。

我が満ちていてはいけない。

《爻辞》

上六は人の顔にあたり、口の両脇の上を輔という。

また頬は鼻を挟んで両方に有る。

其れを以て人が說ぶのを説いたのである。

人が說ぶと、頬が必ず和らいで来る。

女は顔色口を巧みにする様ではいけない。

[象伝]

媵(よう)は婚姻の際に付添って往く女である。

これが口を以て人を說ばせ、万端のことを能く行うので、上六の婦人が自分から男の家に往って機嫌を取る様ではいけない。

また九三の男は止まるべき所は止まって時を待って迎えなければいけない。

7/1 (水) ䷥ 火沢睽(かたくけい) 上爻

7/1 (水) ䷥ 火沢睽(かたくけい) 上爻

【運勢】

周囲の人と相反するので、協力する事は出来ない。

しかし、自分の信念は持っているので、一人で出来ることは上手く行くだろう。

相反するとは否定では無いので、周りを害するのであれば上手く行かないだろう。

【原文】

《卦辭》

睽は小事吉。

彖(たん)に曰はく、睽(けい)は火動いて上り、澤動いて下り、二女同居して、その志同じく行はれず。說󠄁(よろこ)びて明󠄃に麗(つ)き、柔進みて上行す。中を得て、剛に應ず。是を以て小事吉。天地睽(そむ)いてその事同じきなり。男女睽(そむ)いて其の志通ずるなり。萬物睽(そむ)いて其の事類するなり。睽(けい)の時用大なるかな。

象に曰はく、上火下澤は睽(けい)。君子以て同じくして異なり。

《爻辭》

上九。睽孤(けいこ)。豕(ぶた)の塗を負ふを見る。鬼を一車に載す。先には之れが弧を張り、後には之れが弧を說󠄁く。寇するに匪(あら)ず婚媾(こんこう)せん。雨に遇󠄄ふときはすなはち吉なり。

象に曰はく、雨に遇ふの吉は群疑亡ぶるなり。

【解釋】

〔王弼、通解の解釋〕

《卦辞》

睽は背くの意󠄃である。

小さな事には吉である。

二爻と五爻が相性が良く(応じている)、下の☱沢が喜んで☲火につき従い、五爻が柔(陰)であり、二爻と応じてゐる。

よって大きなことには用いるべきでないが、小事には良い。

《爻辞》

上爻は猜疑心が深い。

三爻とは相性が良いが信用しない。

毛嫌いして来るものを弓で威嚇して拒絶するが、猜疑心も終わりを迎え、最後には誤解が解ける。

〔根本通明の解釋〕

《卦辞》

睽は互いに相反して和せざる所の卦である。

『説文解字』には互いに反目する貌とある。

上爻の離の卦は目である。

下卦は兌の卦で癸(みずのと)で、この陰の卦が主となっている。

陰は小事の方が吉であって、大事は良くない。

[彖伝]

火の性は動けば上がり、水は動けば下方へ流れる。

また火は物を焼いて害し、水は物を潤して生じるから、その性質は反対である。

人でいえば、家族が別々になって相争う所の卦である。

兌の卦は少女で、巧言令色で旨く寵愛を得ており、内の方で権を握って居る。

少女を大切にして、年を取っている離の中女を遠ざけて居れば、互いに嫉妬心が起こり、火が熾(さかん)になるように互いに害しあう。

兌にも毀折の象がある。

しかし反目は何時までも続くのではなく、相和する所の象もある。

兌は說(よろこ)んで明らかなる方へ麗(つ)く。

五爻目が陰爻で、二爻目は剛で陽爻である。

君臣でいえば、君が弱く、臣が強いという卦である。

君を輔ける者が少ないから、大事を行うのはいけない。

小事が吉である。

しかし君臣は国家の為に為すべき所があり、天地は萬物を生じさせ、夫婦は一家を興す。

つまり半目し合っていても志は通じており、大いなる仕事を為す所がある。

[象伝]

上る方の火と、下る方の沢とで相背くが如くである。

しかし君の為に尽くそうという所は皆同じである。

人によって皆長じる所が異なっており、武をもって事(つか)える者がいれば、文をもってする者もいる。

君子は是を用いて事を為す。

《爻辞》

上九と九四が睽孤である。

独りに為り、助けてくれる者が無い。

睽孤は六三を疑っており、泥を背中に塗り付けた豕(ぶた)のように不潔なるものと見ている。

また車一杯に乗った悪人達で鬼の様に嫌悪すべきものが、相集って来る。

そこでこれら六三を弧で射ようとするが、心を落ち着けて考えてみれば、そのようなものでは無かった。

六三は兌の卦の主爻であり、我に対して說びあるもので、相和する所のものだった。

上九の陽と六三の陰は互いに親しくするべきである。

陰陽和すれば雨が降る。

大いに吉を得る。

そこで上九が六三と交わって互いに往来すると、雷天大壮の卦になる。

そうなると、仲春二月の卦となり、萬物花が咲いて說ばしき所になる。

[象伝]

睽弧が六三を悪人と見ていたが、その疑いが悉く晴れた。