【運勢】
思うように物事が進むので、事業を起こせば成功するだろう。
素直な事が大切である。
誠意が有れば、周りとの関係を良好に保てるので良い。
良い状態を維持するには、欲を抑え、理性的に生きる必要がある。
【原文】
《卦辭》
泰は小往き、大來る。吉にして亨る。
彖に曰はく、泰は小往き大來る。吉にして亨る。則ち是れ天地交はりて、萬物通ずるなり。上下交はりて其の志同じきなり。内陽にして外陰。内健にして外順。内君子にして外小人。君子は道󠄃長じ、小人は道󠄃消するなり。
象に曰はく、天地交はるは泰。后以て天地の道󠄃を財成󠄃し、天地の宜しきを輔相し、以て民を左右す。
《爻辭》
平󠄃にして陂(かたむ)かざるは无く、往きて復らざるは无し。艱貞にして咎无し。其の孚(まこと)を恤(うれ)ふることなかれ。食󠄃において福有り。
象に曰はく、往きて復らざること无しとは、天地の際なり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
泰は物が大いに通る時である。
上下がよく通じれば、物はその節󠄄を失う。
《爻辭》
乾は上に基づき、坤は下に基づくので、泰を得たら、下りて升に与するのである。
三爻は天地の際に居り、まさに元の場所に帰ろうとしてゐる。
元ある場所に帰ると、上はその尊さを守り、下はその卑しさを守る。
だから行けば戻らないのである。
天地の閉じようとし、平らな道が坂になろうとする所󠄃で、時は大きく変わろうとする。
世は大きく変わろうとしているが、それでも正しさを守る。
動いても応じているものを失わない。
難でも正しくある。
正義を失わない。
だから問題はない。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
泰は通󠄃るという意味である。
卦は否と逆である。
否の三爻の陰が外卦に行き、三陽が下に来たのである。
陽は大であり、陰は小である。
天気が下降して地気が上昇したのである。
陰陽がよく通じているのである。
人は世の中で、人と交際しながら生きていく。
上は下をおさめ、下のものは上のものを助ける。
君臣上下から親戚や町の仲間にまで言えることである。
そして天下は治まるのである。
よく通るので吉である。
《爻辭》
陂は平らでないことである。
難を知りながら正しくある。
三爻は泰の時にあり、内卦の上に在る。
まさに中間を過ぎようとしている。
予防の道󠄃をいうのである。
平󠄃らで歩きやすい道もいつかは坂道になるし、行ってしまったものも最後には戻るのである。
もし難󠄄を知って正しくいれば問題ない。
期待する所󠄃の得失をとわず、自ずから福禄をえる。
これが開物成務の道である。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
泰の字は滑らかという義で、天地陰陽の気が流動して滞らず、能く万物を成長させる。
太、代、世も皆通じる意味である。
外卦が坤で、内卦が乾であるから、小は外の方に往き、大は内の方に来る。
地の底で陽が三つになって、盛んになる。
一ヶ年で考えれば、丁度旧暦の正月にあたる。
旧暦の十一月に一陽来復するため、初爻目が十一月、二爻目が十二月、三爻目が正月となる。
この卦は天の元気が地に十分に充ちて居る所の卦である。
世の中で譬えてみれば、天子の恩沢が人民の間に一杯に溢れて居り、下々の者もそれに随って上の方に事(つか)え、上下相交わる所の卦である。
その為、是より吉なる所の卦は無い。
[彖伝]
天の気が下に降り、地の気が上に昇り、天地の気の交わった所で、万物が発生する。
地の中に陽気が十分に充ちており、陽気に随って陰気が外の方に昇っていく所である。
一人の人にしてみれば、乾は心が十分に剛く、且つ外の行いは順従で人に抵抗しない。
又世の中で譬えてみれば、内に在って事を用いるのは君子、外へ出て君子に使われているのは皆小人である。
又世の道徳上の事にとってみれば、君子たる所の仁義の道が段々と盛んになって行き、小人の方の道は段々と滅びる所となる。
[象伝]
天地が交わり万物の生成が盛んになる。
しかし人間がこれを輔けなければ、天地の造化は昌(さか)んになる様なものではない。
天地があり、人間というものがあって、天地を輔けるから天地人、これを三才という。
即ち君と書かずに后(きみ)の字を書いたのは、天地を承けてこれを相(たす)けるためである。
財の字は裁に通じ、物を計って余計な所は裁り、少ない所はこれを補う。
天子が天下を治め人民を取り扱うのは、我が家に生まれた赤子を養育する様な物で、倒れない様に右からも左からも手を引いて輔ける。
そうして民を左右するのである。
《爻辞》
九三は乾の卦の終わりで、平らかな状況も陂(かたむ)き、一変する所がある。
油断が出来ない。
内に居た坤の小人が外へ出たのが、復た帰って来ないという道理は無く、必ず来るのが自然の理である。
しかし苦しんでも正しい所を何処までも行って往けば、陂むかんとする所を持ち直すことが出来る。
九三は下卦の一番上で大臣である。
太平が長く続いて、人の心に怠りや奢りが生じ弊害が盛んになって来ても、誠を以て行っていけば大臣は大臣だけの食禄を得る所に於いては差し支えが無い。
[象伝]
天地が交わり、下にあるべき地が上の方へ往ったのであるから、傾いて下に落ちてこないという道理は無いと云う戒めである。
これを耐えて太平を長く保って往くには、上たる者は己を虚しくして、下の賢人に能く下らなければいけない。