9/13 (日) ䷻ 水澤節󠄄(すいたくせつ) 五爻初爻

【運勢】

こだわりを持ち過ぎると、周囲の環境に気が立ってしまい、良くない。

難しく考えず、世の中の流れに従って過ごす事が大切である。

そうする事で、不安定な世の中を穏やかに過ごす事が出来るだろう。

【結果】 ䷻◎五⚪︎初
水澤節󠄄(すいたくせつ) 五爻初爻

《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陽]

《爻辭》
[五爻 優先][初爻]

【原文】
《卦辭》
節󠄄は亨(とほ)る。苦節貞(てい)すべからず。

彖(たん)に曰はく、節󠄄は亨(とほ)る。剛柔(ごうじゅう)分かれて、剛中を得る。「苦節は貞すべからず」とは、その道窮(きは)まるなり。よろこびて以て險(けん)を行き、位にあたりて以て節󠄄(せつ)す。中正にして以て通ず。天地節󠄄して四時成り、節󠄄して以て度を制すれば財を傷(そこな)はず、民を害せず。

象に曰はく、澤上に水あるは節󠄄。君子以て數度(すうど)を制し、德行を議(ぎ)す。

《爻辭》
[五爻 優先]
九五。甘節󠄄す。吉。往けば尚(くは)ふること有り。

象に曰はく、甘節󠄄の吉は、位に居て中するなり。

[初爻]
初九。戶庭を出でず。咎无し。

象に曰はく、戶庭を出でずとは、通塞を知るなり。

【解釋】
〔王弼と東涯の解釋〕
《卦辞》
節󠄄とはほどほどであることである。

この卦は陰陽の數が等しく調和がとれている。

また節目である。

物事には節目を設けて区切る必要がある。

自然界には四季があり、物には度量衡が設けられている。

陰陽が均等にあり、上卦下卦ともに陽が中をえている。

よろこび☱を以て難󠄄☵に当たるとうまく行く。

《爻辞》
[王弼と東涯の五爻 優先]
五爻は剛健中正であり、ほどほどの節度があり、苦痛でない。

このまま行動していけば、良い結果が得られるだろう。

[王弼の初爻]
節󠄄の初めであり、離散したものを整えて、制度を立てるものである。

故に通則を明らかにし、険偽を熟慮する。戶の外の庭に出ず、謹慎を續ける。

その後には事は整ってきて問題が無くなる。

[伊藤東涯の初爻]
内卦を戶といい、外卦を門という。

戸外の庭は中門の内側にある。

だから庭を戶庭という。

初爻は陽で一番下に居る。

上に正応があり、無暗に上に進む事は無い。

達成できることが無くても、行き過ぎることもない。

己の才能が外に出て達成できることがあっても、時勢が合わなければ、自分の場所󠄃をくらまし、時を待って行動すべきである。

せっかちに先を急いでは禍にあってはいけない。

伊尹が畎畝の中に居て、堯舜の道を楽しみ、終身したようなものである。

君子の道である。

〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
節は竹の節に由来する。

中が空洞で通っているが、所々に節があり止まって堅く動かない。

上卦は坎で水が流れて通じるが、下卦は兌で水が止まり、節の象がある。

総ての事は竹の節の様に分限がある。

天地の間にも、君と臣の間にも、一家の中にも各々身分に応じて為す所がある。

しかし己の分を守るということも、度を越せば苦節となる。

孟子に陳仲子という人物がおり、節義を守ることを徹底する余り、無道の君から受ける禄を穢れると言って嫌悪する。

しかしそれでは生きていくことは出来ない。

我が身を苦しめ無理をしてまで節を守ろうとしてはいけない。

[彖伝]
下卦が陰=柔で、上卦が陽=剛である。

上卦の主爻は五爻目で、下卦の主爻は三爻目である。

剛と柔が上下に分かれ、陽爻は皆中を得ている。

「苦節不可貞」は行う所の道が窮して行えなくなることである。

陳仲子の様に窮することになる。

[象伝]
沢の上に水が流れる。

沢は四方に堤防があって水を溜めている。

これが節である。

程好い所に止まっている。

君子は節に則って政を行う。

《爻辞》
[五爻 優先]
九五の天子は明君である。

節は十分に倹約して、程好き所を苦しまずに甘んじ楽しんで行う。

後世で言うなら漢の文帝である。

文帝は物見櫓を作るのに大工に見積もらせた所、百金掛かると言われ、人民の負担を考えて作るのをやめた。

また女の服は一尺も二尺も裾を下へ曳くものであるが、下を曳くだけの物は無用であるといって皇后の召物迄も短くした。

宮中の女は皇后に習い、皆男の着物のように短くした。

文帝は倹約を第一とし、それを甘んじて楽しんだ。

[象伝]
甘節の吉は天子の位に居って如何にも中庸の所を行うのである。

《爻辞》
[初爻]
約象(三四五爻)は艮で、互體(二三四爻)は震である。

震の卦徳は動であるが、上には山があり、また下には沢があるから、出ようとして止める。

其所で家の戸口、庭の門から外へ出ない。

初九は陽爻を以て、陽位にあるから動かないのが正しい。

[象伝]
道徳の通る時と塞がって行われない時がある。

今は道徳の行われない時であるから、外へ出ずに道を楽しんで居る方が宜しい。

世間へ出ない為に咎を受け様が無い。

9/12 (土) ䷎ 地山謙(ちさんけん) 三爻初爻

【運勢】

常に控えめな態度で有れば、周りと不和が起こる事は無い。

自分を良く見て貰おうという欲を抑える事で、信頼を得られるだろう。

周りの意見に惑わされず、何事も責任を持ち、貫き続ける事が大切である。

【結果】 ䷗◎三⚪︎初

地山謙(ちさんけん) 三爻初爻

《卦辭》

[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]

[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陽]

《爻辭》

[三爻 優先][初爻]

【原文】

《卦辭》

謙は亨(とほ)る。君子は終はり有り。

彖に曰はく、謙はとほる。天道下濟して光明。地道卑(ひく)くして上行す。天道は盈(えい)を虧(か)きて、謙に益す。地道󠄃は盈を變じて謙に流る。鬼神は盈を害して謙に福す。人道は盈を惡(にく)みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑(ひく)くして踰ゆべからず。君子の終はりなり。

《爻辭》

[三爻 優先]

九三。勞謙す。君子、終有りて吉。

象に曰はく、勞謙す。君子とは、萬民服するなり。

[初爻]

初六。謙謙す。君子大川を渉るに用ふれば吉。

象に曰はく、謙謙す。君子とは卑しうして以て自ら牧(やしな)ふなり。

【解釋】

〔王弼と東涯の解釋〕

《卦辞》

謙は謙譲や謙遜の意󠄃味である。

平面な地卦の下に高いはずの山卦がある様が謙遜を表す。

謙譲の徳を持っている者は、どんなところでも歓迎されるし、尊敬される。

しかし、謙譲の美徳は昇進するにつれて失いがちである。

謙譲の美徳を持ち続けて、人の上に立つことは難しい。

君子とは最後まで謙譲の美徳を全うすることができる人のことである。

これを有終の美という。

謙譲の美徳を有する者が上にいると、下の者を大切にするので、下の者は自分の実力を活かすことができる。

また、謙譲の美徳を有する者が下にいると、周りの人がその徳を慕って昇進を求める。

〔王弼の爻辭〕

[三爻 優先]

三爻は下卦の極みにある。

進んでその位を得た。

上下陽がないから、その民を上下に分ける。

澤山の陰が三爻を宗源とする。

尊さでこれに勝るものはない。

謙の世に在っては尊󠄄に安んずることが出来ない。

上は下を承けて安らかになる。

ひたすら謙に努めることは怠りではない。

だから吉である。

[初爻]

謙の最下位に居て、謙の中の謙である。

よく謙を体する謙である。

それは君子のみである。

大難を渡るに用いる。

害はない。

牧は養うである。

〔伊藤東涯の爻辭〕

[三爻 優先]

勞謙とは労あって謙であることである。

三爻は謙の時にあって、剛であり下卦の最上に居る。

上下にある五つの陰が三爻を宗とする。

三爻は上下の陰に勲功があって謙譲の美徳を有する。

小人がこの爻に居たら功を誇って自ら腐敗していく。

君子だけがよく最後まで謙譲を守り吉である。

これは卦の主爻である。

世の中、人に誇る功労がない人でも人の上に行きたがるが、天下国家に大勲功があったのに謙譲の態度を崩さないで下に留まる。

だから萬民が宗源とするのである。

克己して礼に復す。天下は仁に帰す。

[初爻]

謙謙は謙にして謙である、乾乾というのと同じである。

初爻は謙にあって柔で下に居る。

謙にして謙の象がある。

君子が険難を渡れば吉を得る。

険難の時にあり、人は剛壮を以てやればよいと思うが、時運が災いしていることを知らない。

また力を以て避けるべきでもない。

必ず謙遜すべきで、そして自らを養い大難に当たれば成功する。

柔庸の才を以て、厄に居て謙であるべきである。

〔根本通明の解釋〕

《卦辞》

謙は「へりくだる」と言われるが、本当は「小さい」という意味である。

我が身が小さくなって人の下に降って居る。

古くは言偏の無い「兼」の字であった。

小さいために一つで足らず合わせるという義である。

他に口偏を附けた「嗛」の字もあり、子夏伝はそう書いている。

口の中に入るだけの小さな物を含んでおり、嗛嗛之食という言葉は僅かの食物のことである。

小さいというのが本来の義である。

卦の象では地の下に山があり、人民の下に我が身を引き下げて小さくなって居る。

二・三・四爻目に坎がある。

水には功労があるが、低い所に居るので、謙遜の義がある。

これなら何処へ行っても尊ばれ亨ることになる。

しかし真実の謙虚さでなく、人望を得るために拵えて行うのは長く亨らない。

[彖伝]

天道下済とあるのは、上に在る天の陽気が降って来て地の徳を成すことである。

元は乾の一番上にあった陽爻が下に降って九三となったのである。

光明は三爻目に降りて来た陽爻である。

また元は三爻目にあった陰爻が一番上に上がったから上行という。

元の乾の卦が陽爻ばかりで剛に過ぎるので盈(えい)に虧(か)く。

上に居るべき人が小さく為って、人の下に降るのが謙である。

我が身を下しても人が侮って其の上を踰(こ)えて往くことは出来ない。

卑い所に居れば居るほど人が尊んでくる。

そうして君子は終を遂げる所となる。

[象伝]

上卦が地で下卦が山である。

地の広い方から見れば山が小さい。

天地の道理は何でも盈ちる所があり、それを虧かなければいけない。

そこで多い方から取って、少ない方へ益す。

政でも米を多い所から寡(すく)ない所に益すようにする。

政は物の多少を量り、平らかにしなければいけない。

《爻辞》

[三爻 優先]

九三は賢人で天下の為に功労があっても深く謙遜する。

君子は孚の大業を遂げても、初めの頃と変わることなく能く謙遜する。

終りと云うのは艮の卦が終わる象である。

[象伝]

天下第一の功労道徳があっても、深く我が身を下して謙遜をして居り、その徳は普く天下に通じる。

[初爻]

初六は謙の卦の一番下で、山で言えば一番麓の方である。

其所で君子は、謙遜の上に謙遜を重ねる。

そうして謙遜の徳を育てて往けば、危険な大川を渉る時でも、助けてくれる者が多く、必ず吉である。

[象伝]

謙の上に謙を重ねる君子は、人よりも我が身を低くして、其れで自分の徳を育う。