8/21(日) ䷥ 火澤睽(かたくけい) 変爻無し

8/21(日) 火澤睽(かたくけい) 変爻無し


【運勢】
何かと対立しがちな時。
事を荒立ててはいけない。
大事を行うには時期尚早である。まずは物事の根幹を整えると良い。
忙中閑あり。
現実的な目標を立て、小事から着実に取り組み、視野を広げて行く事が大切である。


【結果】

火澤睽(かたくけい) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
睽は小事に吉。
彖に曰く、睽(けい)は火動いて上り、澤動いて下り、二女同居して、その志同じく行はれず。說󠄁(よろこ)びて明󠄃に麗(つ)き、柔進みて上行す。中を得て、剛に應ず。是を以て小事吉。天地睽(そむ)いてその事同じきなり。男女睽(そむ)いて其の志通ずるなり。萬物睽(そむ)いて其の事類するなり。睽(けい)の時用大なるかな。
象に曰く、上火下澤は睽(けい)。君子以て同じくして異なり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
睽は背くの意󠄃である。小さな事には吉である。二爻と五爻が相性が良く(応じている)、下の
沢が喜んで火につき従い、五爻が柔(陰)であり、二爻と応じてゐる。よって大きなことには用いるべきでないが、小事には良い。


〔根本通明の解釋〕
睽は互いに相反して和せざる所の卦である。『説文解字』には互いに反目する貌とある。上爻の離の卦は目である。下卦は兌の卦で癸(みずのと)で、この陰の卦が主となっている。陰は小事の方が吉であって、大事は良くない。
[彖傳]
火の性は動けば上がり、水は動けば下方へ流れる。また火は物を焼いて害し、水は物を潤して生じるから、その性質は反対である。人でいえば、家族が別々になって相争う所の卦である。兌の卦は少女で、巧言令色で旨く寵愛を得ており、内の方で権を握って居る。少女を大切にして、年を取っている離の中女を遠ざけて居れば、互いに嫉妬心が起こり、火が熾(さかん)になるように互いに害しあう。兌にも毀折の象がある。しかし反目は何時までも続くのではなく、相和する所の象もある。兌は說(よろこ)んで明らかなる方へ麗(つ)く。五爻目が陰爻で、二爻目は剛で陽爻である。君臣でいえば、君が弱く、臣が強いという卦である。君を輔ける者が少ないから、大事を行うのはいけない。小事が吉である。しかし君臣は国家の為に為すべき所があり、天地は萬物を生じさせ、夫婦は一家を興す。つまり半目し合っていても志は通じており、大いなる仕事を為す所がある。
[象傳]
上る方の火と、下る方の沢とで相背くが如くである。しかし君の為に尽くそうという所は皆同じである。人によって皆長じる所が異なっており、武をもって事(つか)える者がいれば、文をもってする者もいる。君子は是を用いて事を為す。

8/20(土) ䷈ 風天小畜(ふうてんしょうちく) 五爻

8/20(土) 風天小畜(ふうてんしょうちく) 五爻


【運勢】
協力して土台を築くのに良い時。
心に余裕無くして複雑な問題は解決出来ない。
冷静さを保つ事で最良の結果が得られる。
正道を守る事は大切だが、結果として不和を生む様ではいけない。寛容な心を持つと良い。


【結果】
䷈◎
風天小畜(ふうてんしょうちく) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
小畜は亨る。密雲雨ふらず。我が西郊よりす。
彖に曰く、小畜は柔、位を得て、上下之に應ずるを小畜といふ。健にして巽。剛中にして志行はる。乃(すなは)ち亨(とほ)る。密雲雨ふらずとは、往くを尚ぶなり。我、西郊よりすとは、施、行はれざるなり。
象に曰く、風天上を行くは小畜。君子以て文德を懿(よ)くす。


《爻辭》
九五。孚有り攣如たり。富むに其の鄰を以てす。
象に曰く、孚有り攣如たりとは、獨り富まざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
大を養い、健をとどめることが出来ない。強い志があれば、うまく行く。四爻が主爻である。二陰四爻は陰に陰でおり、初爻と応じている。三爻は乗り越えることが出来ない。小畜の勢いは密雲を作るに足る。しかし雨を降らすには至らない。陽の上の陰が薄く、今初爻の復道󠄃を抑えることが出来ない。下の方は往くを尊び、上爻だけが三爻の路を固めることが出来る。もし四爻五爻も上爻のように善畜であったなら、よく雨をふらせる。旣に設けられているが、行われない状態である。彖傳は卦全体を言い、象傳は四爻に特化して説明する。


《爻辭》
五爻は尊󠄄位にいて二爻を疑っていない。二爻が来ても拒まない。陽で陽に居る。盛んであり、実がある。専ら固まらない。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
畜はとどめる、制止の意󠄃である。一陰が四爻に在り、五爻はこれに従っている。陽は大であり、陰は小である。二爻五爻は剛であり、中を得る。君子が君を得ることを表すので、うまく行くという。二三四爻に
澤がある。岐周󠄃より西で陰陽が交わり雨を降らそうとするが、陽気がまだ盛んであり、まだ降らない。剛のものが害をなせば柔のものが救う。陽が陰をとどめることが出来ていない。文德は礼樂教化をいう。


《爻辭》
五爻は相従う。鄰とは四爻をさす。陽が中を得ている。四つある陽爻を信じて、引き連れあう。同類が力を合わせ、陽が回復することを望む。邪は正に勝てないこと久しく、勢いなく人従わない。友なく、ことは成就しない。五爻は旣に尊く、友が多い。誠の心を以て仲間を大切にする。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
畜は育成するの意󠄃味である。育ててよいものにしていくことである。小は陰、大は陽である。又止めるの意󠄃味がある。君が悪い方に行くのをとどめ、良い方に導くことである。小は臣であり、君に対するものである。君を諫めるのは難しい。君を徹底して批判するのは正しくない。至誠を以て諫めるのが良い。密雲というのは細かな雲が集まって大きくなることを言う。それは二三四爻の
澤をさす。雲は陰である。陰が集まっているが陽が作用しないと雨は降らない。上卦の風が雲を吹き払ってしまい、雨が降らない。兌は西である。東は陽、西は陰である。西の方に雲ができる。臣下(陰)が天下をよくしようと志す。しかし君主(陽)がそれに応じない。
[彖傳]
四爻が主爻である。これは人に譬えるなら周󠄃公旦であり、その徳を慕って人々が集まってくる。下卦は
であるから意志が強い。意志が強いが謙遜を忘れていない。下のものが天下をよくしようとどこまでも志すが、君主がそれに応じてくれない。それでも下のものはどこまでも誠を尽くして君に訴える。どこまでも諦めないのである。そして上爻に達すると雨が降る。君主に至誠が通じたのである。そして、恩沢があるが、まだその時でない。
[象傳]
風が天の上をふいて雲が散じたり集まったりして、いろいろな模様ができる。


《爻辭》
五爻は四爻と手を取っている。何事をするにも四爻の力が必要である。誠が盛んになって、それで富む。四爻の大臣を用いるようになったからである。
[象傳]
五爻も誠が盛んであるが、四爻の方が盛んである。君臣ともに誠がある。

8/19(金) ䷩ 風雷益(ふうらいえき)→䷞ 澤山咸(たくざんかん)

8/19(金) 風雷益(ふうらいえき)→ 澤山咸(たくざんかん)


【運勢】
皆が大いに益する時。
賢人に従い、公に尽くすと良い。
相手の気持ちに寄り添い、誠意を持って正しさを守る事が大切である。
広い視野を持ち冷静に物事を捉え、直感に従い判断する事が大切である。


【結果】

本卦:風雷益(ふうらいえき)
之卦:澤山咸(たくざんかん)
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 老陰]
[三爻 老陰][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[上爻][四爻][三爻][初爻]


【原文】
《本卦:
風雷益》
益(えき)は、往く攸(ところ)有るによろし。大川を涉るに利し。
彖に曰く、益は上を損して下を益す。民說󠄁(よろこ)ぶこと疆(かぎ)りなし、上より下に下る。其道󠄃大に光なり。往く攸(ところ)有るに利(よ)しとは、中正(ちうせい)にして慶(けい)有り。大川を涉るに利しとは、木道(もくどう)乃ち行く。益は動いてしかして巽(したが)ふ、日に進むこと疆(かぎ)りなし。天施し地生(しょう)ず。其益方(かた)なし。凡そ益の道󠄃は、時と偕(とも)に行ふ。
象に曰く、風雷は益。君子以て善を見れば則ち遷(うつ)り、過(あやまち)有れば則ち改む。


《之卦:
澤山咸》
咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利(よろ)し。女を取る吉なり。
彖に曰く、咸は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨り、貞に利し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。


【解釋】
《本卦:
風雷益》
〔王弼、東涯の解釋〕
益は増すこと、増やすことである。
否の上卦の四爻が陽から陰となり、下爻の初爻が陰から陽になっているので、上が損をして下が得をした象である。上の者が損をして、下の者󠄃を助けることはとても良いことで、また二爻が陰、五爻が陽で、中正であるので、大事業をするのに好機である。上の者が動けば(震)、下の者が従う(巽)象である。


〔根本通明の解釋〕
この卦は、前の卦の山沢損と反対である。山沢損は地天泰より来た。そして地天泰は天地否から来た。天地否は、上卦は乾、下卦は坤である。坤は空しさの象で、人民の困窮する卦である。そこで九四の陽爻が下りて、初六の陰爻が上る。これで風雷益の卦になる。これが下を益するという義である。上卦の震は、農業の卦である。人民を富ますのは農業であり、これは何処までも推奨される。それで「利有攸往」である。こうして人民が富んでいれば、如何なる大難が起こっても踏み越えて往く所となる。よって「利渉大川」である。
[彖傳]
「損上益下」とは、天地否の九四の陽爻を一つ損(へ)らして、代わりに初六の陰爻を益すことである。そこで民が説(よろこ)ぶ。陽が段々進んで往けば兌の卦になる。農事が盛んになればなるほど、人民は利益を得る。天の気が地の底に下って万物が生じる。出で来たものは大きくなって花が咲き草木に光を生じる。よって「其道光大」となる。「中正にして慶(よろこ)び有り」とは、中正(二爻が陰、五爻が陽で、爻が定位通りであること)の五爻目の天子に、同じく中正の二爻目が応じることである。いわば名君と忠臣が相助けて人民を生育する所に、慶びが出で来る。「木道乃行」とは、震と巽に対応する五行が双方とも木であり、万物が盛んになることである。
[象傳]
上卦が巽=風で、下卦は震=雷である。雷が起こると、風はこれを助ける。また巽は外卦であり、修飾して能(よ)く齊(ととの)えるという所がある。つまり外の人が行いを修めて行く所を見れば、周囲の者も自ずから其の方へ従って遷って往く。そして過ちがあれば速やかに改める。震には過ぎるという象があり、もし往き過ぎれば、物を害してしまう。雷山小過は霆(激しい雷)である。雷は下から上に昇るが、霆は上から打ってくる。これは往き過ぎである。善い事も過ぎると害を為すから、これを改めなければいけない。


《之卦:
澤山咸》
〔王弼の解釋〕
陰陽二気が揃ってはじめて萬物が化生する。天地万物の樣は感ずるところに現れる。同類でないものは心を通わせることが難󠄄しい。陰は陽に応じるものであるが、下でなければならない。下に在って初めて吉である。虚心になって人の意見を受け入れれば、物は感応する。


〔東涯の解釋〕
咸は感じることである。反転すると
雷風恒になる。恒の初爻がこの咸の上爻になったのである。恒の四爻が下って咸の三爻になったのである。つまり、柔が昇って剛が下りている。陰陽二気が通じ合っているのである。内卦は止まり、外卦は喜ぶ意󠄃である。艮の少男を兌の少女に下す。皆和順している。物事がうまく行き、正しくしていれば害はない。人が交わる時は、互いが得るものがないと心が通じ合わない。妄動して心の通わせあいが正しくないと、良くない。


〔根本通明の解釋〕
是は下経の始まりである。上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。兌は少女、艮は小男である。上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。
[彖傳]
咸は無心で咸じる所を尊ぶ。情欲の私があってはいけない。天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。
[象傳]
山上に水気が上っているのが咸の卦である。山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。我が満ちていてはいけない。

8/18(木) ䷢ 火地晋(かちしん) 五爻二爻

8/18(木) 火地晋(かちしん) 五爻二爻


【運勢】
機会に恵まれ万事順調な時。
堂々とした力強い姿勢が相手を感化させる。周りの信頼に応え、率先して取り組むと良い。
自分本位にならず、相手の考えを尊重すると良い。
互いに切磋琢磨する事で道は大きく開けるだろう。


【結果】
䷢◎五⚪︎二
火地晋(かちしん) 五爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
晋は康侯(しょうこう)用ゐて馬を錫(たま)ふこと蕃庶(ばんしよ)。晝日三接す。
彖に曰く、晋は進むなり。明󠄃地上に出づ。順にして大明󠄃に麗(つ)く。柔進みて上行す。是を以て康侯用ゐて馬を錫(たま)ふ蕃庶。晝日三接すなり。
象に曰く、明󠄃、地上に出づるは晋。君子以て自ら明德を照(あきらか)にす。


《爻辭》
[五爻 優先]
六五。悔い亡ぶ。失得恤(うれ)ふる勿れ。往けば吉、利しからざるなし。
象に曰く、失得恤ふる勿れとは、往きて慶び有るなり。
[二爻]
六二。晉如。愁如。貞にして吉。茲の介福を其の王母に受く。
象に曰く、茲の介福を受くとは、中正を以てなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
晋は進󠄃むである。地上に日が昇り、あまねく天下を照らす象である。陰が三つ上に登って太陽に付き従っている。これは名君に人々が仕える象である。そして立派な諸侯となり、王は恩恵を賜る。三陰は柔順の徳がある。君子は德を明らかにし、天下あまねくその恩恵を受ける。


《爻辭》
[五爻 優先]
柔にして尊位を得、陰、明主と爲る。能く察を用ひず、代はらずして下任ぜらるるなり。故に位に當たらずと雖も、能く其の悔消え、失得恤ふる勿れなり。各々其れ司る有り、斯を術して以て往けば、利あらざるなきなり。
[二爻]
進みて應ずるなく、其の徳昭らかならず。故に晉如、愁如と曰ふ。中に居りて位を得、順ひて正なるを履む。以て應じて其の志を回とするなからず、晦きに處りて能く其の誠を致す者なり。德を脩むるに斯を以てすれば、幽昧なるに聞こゆ。正を得るの吉なり。故に貞にして吉と曰ふ。母とは、内に處りて德を成す者なり。鳴鶴陰に在れば、則ち其の子之に和す。誠を闇に立つれば、闇も亦た之に應ず。故に其の初、愁如たれども、貞を履みて回とせず。則ち乃ち茲の大いなる福を其の王母に受くなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の離は日であり、下卦の坤は地である。つまり地上に日が初めて出た所の象である。晋は日が出て万物が進むという義である。『説文解字』に「日出萬物進也」とあるように、太陽の働きで万物は育ち伸びてゆく。二・三・四爻目に艮がある。艮は東北の間であるから、将に日が出んとする所である。康侯は、諸侯の職分が民を康(やす)んずる所にあることに由来する。諸侯は天子に朝するに三度御目通りをするので「昼日三接」という。その時に諸侯は自国の名馬を献ずる。馬十匹を献ずることを錫(たま)うという。錫という字は古くは上下の区別なく、下から上へ差上げるのにも錫うという。『書経』にも「衆錫帝」とある。これが上から下に与える意味に限られるようになるのは、始皇帝の時からである。下から上へ差上げる時には、献ずる、奉るというようになる。蕃庶は馬十匹で多いことによる。
[彖傳]
日が出て万物が段々進んで来る、即ち天子が上に在って諸侯が進んで拝謁する所の象である。明は離の卦の象である。「大明に麗(つ)く」というのは、大明=乾の卦の真ん中に陰爻が麗いて離の卦になることである。天は大明、離は明である。「柔進みて上行す」というのは、元これは真っ暗の夜の象である地火明夷の卦であったことによる。五爻目の陰爻が二爻目にあり、それが上行して五爻目まで往く象である。
[象傳]
日が地の下にある真っ暗な状態は、欲に覆われて徳が明らかにならない状態である。君子は欲を取り払って、明徳を明らかにして四方を照らす。
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]

8/17(水) ䷠ 天山遯(てんざんとん) 上爻二爻

8/17(水) 天山遯(てんざんとん) 上爻二爻


【運勢】
困難が間近に迫る時。
心の余裕を保つ事が大切である。
周りの意見に惑わされてはいけない。正しいと思う道を信じて進むと良い。
何事も中途半端は良くない。
最後までやり遂げ、価値ある結果を得る事が大切である。


【結果】
䷠◎上⚪︎二
天山遯(てんざんとん) 上爻二爻
《卦辭》
[上爻 老陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[上爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
遯は亨る。小しく貞に利し。
彖に曰く、遯は亨るとは、遯れて亨るなり。剛位に當りて應ず、時と與に行くなり。小しく貞に利しとは、浸して長ずるなり。遯の時義大なるや。
象に曰く、天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、惡うせずして嚴にす。


《爻辭》
[上爻 優先]
上九。肥遯す、利しからざることなし。
象に曰く、肥遯す、利あらざるなしとは、疑ふ所なきなり。
[二爻]
六二。之を執ふるに黃牛の革を用てす。之を勝げて説くことなし。
象に曰く、執ふるに黃牛を用てすとは、志を固うするなり。


【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《卦辭》
遯の義なるや、遯るれば乃ち通ずるなり。五を謂ふなり。剛位に當りて應ず。亢を否ぐに非ざるなり。遯れて亢を否がず。よく時と與に行ふ者なり。陰道浸して長ぜんと欲す。正道もまた未だ全く滅びず。故に小しく貞に利しなり。天の下に山有り、陰長の象なり。


《爻辭》
[上爻 優先]
最も外の極に處り、内に應ずるなし。超然として志を絶ち、心に疑ひ顧みるなし。憂患累ぬること能はず、矰繳及ぶこと能はず。是を以て肥遯す、利あらざるなしなり。
[二爻]
内に居り中に處り、遯の主なり。物皆遯る。己のみ何を以て之を固くす。能く理を中にし順を厚くするの道を執り、以て之を固くするが若きなり。則ち之を勝げて説くことなし。

8/16(火) ䷜ 坎爲水(かんゐすい) 二爻初爻

8/16(火) 坎爲水(かんゐすい) 二爻初爻


【運勢】
困難が絶えず大きく道を見失う時。
どんなに辛い状況でも芯を曲げず、自分を信じ行動する事が大切である。
軽はずみな言動は避けると良い。
自らの役目を果たす事が大切である。
正しさを守り努力すれば小事は叶う。


【結果】
䷜◎二⚪︎初
坎爲水(かんゐすい) 二爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 老陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[二爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。
彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。
象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


《爻辭》
[二爻 優先]
九二。坎に險有り。求めて小しく得。
象に曰く、求めて小しく得とは、未だ中を出でざるなり。
[初爻]
初六。習坎。坎窞に入る。凶。
象に曰く、習坎、坎に入るとは。道を失ひて凶なるなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


《爻辭》
[二爻 優先]
[王弼]
履むに其の位を失ふ。故に坎と曰ふ。上に應じ援くるなし。故に險有りと曰ふ。坎にして險有り。未だ險の中を出づること能はざるなり。中に處りて初、三と相得。故に以て求めて小しく得べきなり。初、三未だ以て大いに援くると爲すに足らず。故に求めて小しく得と曰ふ。
[東涯]
この爻は坎にあり坎に陥っていて、二陰の中にいる。故に險有りという。険の地のところに至る。未だ困難から抜け出すことできない。しかし其の才は剛中である。苟も求める所があるのならば小しく得ることができる。正に険難の地にいて、剛中の才があると雖も未だ平穏にならない。則ち未だ功有らざるなり。唯君子は戒慎の心あれば、時が至らないことはない。故にその事を全うする。
[初爻]
習坎は、習ねて險難の事を爲すなり。最も坎の底に處り、坎窞に入る者なり。重險に處りて復た坎の底に入る。其の道を失ひて凶なり。險を行きて自ら濟ふこと能はず、坎を習ねて坎窞に入る。道を失ひて窮まりて坎の底に在り、上は應じ援けて以て自ら濟ふべきことなし。是を以て凶なり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖傳]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。信を失わず進んでゆくのが功である。二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象傳]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。そこで徳の行いを常にする。教育を重ね、徳を育てなければいけない。
《爻辭》
[二爻 優先][初爻]

8/15(月) ䷮ 澤水困(たくすいこん) 三爻二爻

8/15(月) 澤水困(たくすいこん) 三爻二爻


【運勢】
不満を感じやすい時。
相手に多くを求めると辛い思いをする。
自分で自分を認める事が大切である。
何事も、来る者拒まず去る者追わずの精神で取り組むと良い。
困難は長く続かない。平常心を保つ事が大切である。


【結果】
䷮◎三⚪︎二
澤水困(たくすいこん) 三爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻 優先][二爻]


【原文】
《卦辭》
困は亨(とほ)る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言ふ有り。信ぜられず。
彖に曰く、困は剛、揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚(たうと)べば乃ち窮まるなり。
象に曰く、澤に水なきは困。君子以て命を致して志を遂ぐ。


《爻辭》
[三爻 優先]
六三。石に困(くる)しみ、蒺藜(しつれい)に拠る。其の宮に入り、其の妻を見ず。凶。
象に曰く、蒺藜に拠るとは、剛に乗るなり。其の宮に入り、其の妻を見ずとは、不祥なるなり。
[二爻]
九二。酒食(しゆしよく)に困む。朱紱(しゅふつ)方(まさ)に來る。用ひて享祀(きやうし)するに利し。征けば凶。咎なし。
象に曰く、酒食に困むとは、中、慶有るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
困は苦しむことである。しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。正しく生きるということは元々困難なものである。それでも正しいことを続けていかなければならない。徳のない人にはできないことである。口で立派なことを言っているだけでは駄目である。行動が伴わないと信用されない。


《爻辭》
[三爻 優先]
石の物爲るや、堅にして納れざる者なり。四を謂ふなり。三は陰を以て陽に居り、志武き者なり。四は自ら初を納れ、己を受けざる者なり。二は據る所に非ずして、剛の乘る所に非ず。上には比しみて石に困しみ、下には蒺藜に據る。應ずるなくして入れば、焉んぞ配耦を得ん。困に在りて斯に處れば、凶其れ宜なるなり。
[二爻]
二爻は才徳ある人だが、初爻と三爻の陰に挟まれて動けない。
水は北方であり、朱紱(しゅふつ)は南方のものである。遠方から人が来る。自分から行こうとしてはならない。留まっていれば、最終的には五爻の君に登用されるという意外な慶事がある。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
上卦の兌は堤防で水を止めて置く所である。他方、下卦の坎は流れる水である。つまり堤防の底から水が流れており、貯えた水が尽きて無くなる。即ち水不足による困となる。『説文解字』には、古廬(古き家)とあり、家の用を為さないことが困とある。しかし人というものは、困難に遭うことで益々奮発し気力が振るう。其れで大いに亨る所がある。孟子にも、天が国家の大事を任せ得ると思う人間に対しては、天の方から困難を与えるとある。九二は剛中で中を得ており大人(たいじん)であるが、初爻と三爻目の二陰=小人(しょうじん)に一陽が挟まれている。つまり君子が小人の為に苦しめられる所の象である。もし讒言に罹っても、正しきを弁ずるのはいけない。ここで君子は争わずに時を待たねばならない。
[彖傳]
「剛弇(おお)はるる」というのは、二爻目が陰爻に挟まれていることである。「険以説」というのは、困難の中にあって困らず、身が苦しくても心は道を失わず、亨る所となる。「言あるも信ぜられず」というのは、困難に遭った時に正しい所を弁じてはかえって窮する。それで言わない方が良いのである。
[象傳]
水が無くなり窮する所となるが、君子は天より享けた命=道徳を行う。何処までも履(ふ)んで行こうとする志を遂げるのである。


《爻辭》
[三爻 優先]
[二爻]
九二は賢人である。初六と六三の間で甚だ苦しめられ、酒も飲めず食も得られない。食貧は『論語』にも『詩経』にもある。「朱紱」は天子を指しており、紱は礼服の時に前方に垂れている朱で染めた服である。天子は自ら賢人を招聘するため「方に来る」のである。三顧の礼と同じである。この時に九二の賢人は自分から君の方へ出向いてはいけない。「征くは凶」である。しかし咎が有るわけではない。道徳を以て孚(まこと)を尽くす所なのである。「享祀」は二・三・四爻が離の卦になっているから夏の象がある。つまり夏の祀りである。夏の祀りはお供え物を専らにするよりも、ただ孚を以て神を感じる所が主である。
[象傳]
酒食に困する中にして喜びがある。やはり君子は小人を用いる時に当たっては窮している方が宜しい。中庸の道を守っていれば、後には喜びが出てくる。

8/14(日) ䷆ 地水師(ちすゐし) 初爻

8/14(日) 地水師(ちすゐし) 初爻


【運勢】
結果が求められる時。
皆を正しい道へ導く志操堅固な者が必要とされる。
何事も最初が肝心である。
気を引き締め目標を明確にし、迅速に行動する事が大切である。
初志貫徹。一度決めたら最後までやり遂げる事が大切である。


【結果】
䷆◎
地水師(ちすゐし) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
師は貞なり。丈人なれば咎なし。
彖に曰く、師は衆なり。貞は正なり。能く衆を以て正す。以て王たるべし。剛中にして應ず。險を行ひて順。此れを以て天下を毒し、而して民之に從ふ。吉又何の咎あらんや。
象に曰く、地中に水あれば師。君子以て民を容れ衆を畜(たくは)ふ。


《爻辭》
初六。師出づるに律を以てす。否なれば臧きも凶。
象に曰く、師出づるに律を以てす、律を失へば凶なり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
丈人とは莊󠄂嚴の称である。師の正しいものである。戦争が起こり民を動かす。功罪はない。だから吉。咎めはない。毒は戦争のことである。


《爻辭》
師の始め爲り。師を齊ふる者なり。衆を齊ふるに律を以てす。律を失へば則ち散る。故に師出づるに律を以てす。律、失ふべからず。律を失ひて臧ければ、何ぞ否に異ならん。令を失ひて功有るは、法の赦さざる所なり。故に師出づるに律を以てせざれば。臧からずして皆凶。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
師は衆のことである。古は陳では五人を伍とした。それを集めて二千五百人になると師といつた。だから師とは軍のことである。内卦は水で外卦は地である。二爻のみが陽である。衆陰をすべて下卦に居る。丈人は老成した人のこと。二爻は剛中で応じている。主爻である。険難の時にあり、柔順である。天下に戦争の危機があり、人々は従う。老成の優秀な人を得て成功する。古より兵法には二つある。暴徒を誅し、乱を平らげ、民の害を除くのが兵を用いる時の根本である。良將を任じればよく尽くしてくれるので兵の要である。だから先王は戦えば必ず勝利したのである。土地は人民が居るところである。君子は庶民をよく束ねて軍団を維持する。普段は生業を保証し、戦争の時は軍人として招集したのである。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
師は師(いく)さの卦である。師さには、軍と師と旅と三つある。軍(いく)さは一万ニ千五百人、その次の師さは二千五百人、その次の旅(いくさ)は五百人である。此処で師と云うのは、軍と旅とを内に兼ねる意味である。師さを用いるには、正当性がなければいけない。丈人は年の長じた人のことである。これは先に生まれたものであり、次男や三男でなく、長子であれば吉である。戦争に勝った上に、正しい師さである故、咎が無い。
[彖傳]
国内の人民を以て兵を組立て、以て無道なる者を討って、之を正しくする。そうして天下に王たるべき徳が成る。二爻目が陽爻であり、剛中を得て居る。中庸の徳があり、天下悉く応じる所がある。毒の字は馬融の解に「毒者治也」とある。毒薬を以て邪を除いて能く治まる所がある。師さに勝って、その正しき所を見れば、之を咎める者も無い。
[象傳]
外卦は坤で地、内卦は坎で水である。其所で地の中に水があるという象である。また坤は国であり、地中に水が含まれているように、国内の男子は皆兵隊である。君子は多くの民を能く畜(やし)なう。
《爻辭》

8/13(土) ䷅ 天水訟(てんすいしょう) 五爻四爻

8/13(土) 天水訟(てんすいしょう) 五爻四爻


【運勢】
道理に従い物事を整理できる時。
複雑な問題は、大局的な視点から中正を守り解決すると良い。
負の感情に流されてはいけない。争いに執着すれば禍根が残るだろう。
志を改め、前向きな視点を持つ事が大切である。


【結果】
䷅◎五⚪︎四
天水訟(てんすいしょう) 五爻四爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 老陽]
[三爻 少陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
訟は孚有り。窒がる。惕(おそ)れ中するは吉。終はれば凶。大人を見るに利し。大川を渉るに利しからず。
彖に曰く、訟は上剛下險。險にして、健なるは訟。訟は孚有り窒り、惕(おそ)れて中すれば吉とは、剛來たりて中を得るなり。終はれば凶とは、訟、成すべからざるなり。大人を見るに利しとは、中正を尚(たうと)ぶなり。大川を涉るに利しからずとは、淵に入るなり。
象に曰く、天と水と違ひ行くは訟。君子以て事を作(な)すに始を謀(はか)る。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。訟、元吉。
象に曰く、訟、元吉とは、中正を以てなり。
[四爻]
九四。訟を克くせず。復りて命に卽き、渝へて安貞なれば吉。
象に曰く、復りて命に卽く、渝へて安貞とは、失はざるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
訟は訴える、訴訟の意󠄃味である。外は剛健で、内は陰険である徳の無い人は訴訟を好む。結局のところ、訴訟に勝つことは出来ない。


《爻辭》
[五爻 優先]
尊󠄄位であり、訟の卦の主爻である。中正の考えに基づいて曲直を判断すれば、誤ることはない。公正であれば偏ることなく、邪になることもない。だから、大いに吉である。強すぎれば過酷過ぎ、弱すぎればいい加減になる。中正が第一である。
[四爻]
上に處りて下と訟ひ、以て改變するべき者なり。故に其の咎大ならず。若し能く反りて本の理に從ひ、前の命を變ふれば、貞に安んじて犯されず、其の道を不失はず。仁を爲すは己に由る。故に吉にして之に從ふ。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
五爻は王の位であるが、この王は物事の是非を弁えた裁判が出來る。大川とは内卦の
を表す。訴訟の結果、原告も被告も最終的には損をする。やらない方が良い。
《爻辭》
[五爻 優先][四爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
天水訟の前の卦の需は飲食の道である。飲食の次に生じるのは、慾による争いである。そこで訟の卦となる。『説文解字』によれば、訟は争である。鄭玄の解には「辨財曰訟」とあり、金から争いが生じ、裁判するのが訟である。訟は容易に起こすべきでなく、誰もが尤もと頷く所が必要である。つまり孚(まこと)が無ければならない。孚は坎の象で水である。水の潮汐は正確で間違いが無いことに由来する。また水は危険なものという象でもある。窒は塞ぐの義で、自分の争いの心を引きとめることである。一旦訟えても仲裁の流れが出て来たなら、中頃で止めるのが良い。剛情にして遂げ終えるのは凶である。
[彖傳]
訟の大なる所では上と下との争いになり、上は何処までも剛にして、下を圧制したり税を課したりする。三・四・五爻目の巽の卦は、利益を志向する象である。そうなれば下は抵抗し、危険で険悪なる心が生じてくる。一旦訟を持ち出すも、上から仲裁の諭しがあれば、中頃で訟を取り下げ止めるのが良い。五爻目は中を得ている陽爻で明君であるから、必ず喜んで服する所となるだろう。
[象傳]
天と水は本は分かれて反対になる所があるが、元来は同じものである。訟をするにも何事においても、抑々の始まりを考えてみなければいけない。


《爻辭》
[五爻 優先]
この五爻の天子は中正である。大いに吉。
[象傳]
天子がどこまでも中世の正しき所を以てするのである。それで中正なりという。
[四爻]

8/12(金) ䷖ 山地剥(さんちはく)→䷅ 天水訟(てんすいしょう)

8/12(金) 山地剥(さんちはく)→ 天水訟(てんすいしょう)


【運勢】
物事を前に進めるのが困難な時。
徳のない者を相手にせず、正しさは内に秘めておくと良い。
負の感情に流されてはいけない。争いに執着しても禍根が残るだけである。
認め合いの精神が大切である。


【結果】

本卦:山地剥(さんちはく)
之卦:天水訟(てんすいしょう)
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陰][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 老陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][二爻]


【原文】
《本卦:
山地剥》
剝は往く攸有るに利しからず。
彖に曰く、剝は剝なり。柔剛を變ずるなり。往く攸有るに利しからずとは、小人長ずるなり。順にして之を止む。象を觀るなり。君子は消息盈虚を尚ぶ。天の行なり。
象に曰く、山、地に附く剝。上以て下を厚うし宅を安ず。


《之卦:
天水訟》
訟は孚有り。窒がる。惕(おそ)れ中するは吉。終はれば凶。大人を見るに利し。大川を渉るに利ろしからず。
彖に曰く、訟は上剛下險。險にして、健なるは訟。訟は孚有り窒り、惕(おそ)れて中すれば吉とは、剛來たりて中を得るなり。終はれば凶とは、訟、成すべからざるなり。大人を見るに利しとは、中正を尚(たうと)ぶなり。大川を涉るに利しからずとは、淵に入るなり。
象に曰く、天と水と違ひ行くは訟。君子以て事を作(な)すに始を謀(はか)る。


【解釋】
《本卦:
山地剥》
〔王弼、東涯の解釋〕
剝は割くの意󠄃である。下から陰が侵食し、最後に上爻だけに陽が残っている。これは徳の無い者がはびこり、有徳者が衰退している時である。このような時は何か事を起こす時ではないと、強く戒めるべきである。


〔根本通明の解釋〕
剝は刀で削り取っていくという意味である。徳の無い者が削り取りながら有徳者にせまっていくところである。このような時には有徳者は遁れておくのが良いのである。
[彖傳]
剝にはものを破る、落とすという義もあるが、この場合は削り落とすの意󠄃である。小人が世の中の隅々にはびこっているので、君子たるものはどこにも行かない方が良い。そして正しい行いをつづけていかなければならない。今はすべてが陰になろうとしているが、固く道徳を守り、一陽来復に備えておくべきである。
[象傳]
地の上に山がある。地は民であり、山は君主である。地が厚ければ山は盤石であるように、民の生活基盤が盤石であってこそ、君主は盤石なのである。卦の形は牀のようである。牀とは今の机のことで、一番上の上爻が机で、五爻までの陰爻が足である。


《之卦:
天水訟》
〔王弼の解釋〕
訟は訴える、訴訟の意󠄃味である。外は剛健で、内は陰険である徳の無い人は訴訟を好む。結局のところ、訴訟に勝つことは出来ない。


〔東涯の解釋〕
五爻は王の位であるが、この王は物事の是非を弁えた裁判が出來る。大川とは内卦の
を表す。訴訟の結果、原告も被告も最終的には損をする。やらない方が良い。


〔根本通明の解釋〕
天水訟の前の卦の需は飲食の道である。飲食の次に生じるのは、慾による争いである。そこで訟の卦となる。『説文解字』によれば、訟は争である。鄭玄の解には「辨財曰訟」とあり、金から争いが生じ、裁判するのが訟である。訟は容易に起こすべきでなく、誰もが尤もと頷く所が必要である。つまり孚(まこと)が無ければならない。孚は坎の象で水である。水の潮汐は正確で間違いが無いことに由来する。また水は危険なものという象でもある。窒は塞ぐの義で、自分の争いの心を引きとめることである。一旦訟えても仲裁の流れが出て来たなら、中頃で止めるのが良い。剛情にして遂げ終えるのは凶である。
[彖傳]
訟の大なる所では上と下との争いになり、上は何処までも剛にして、下を圧制したり税を課したりする。三・四・五爻目の巽の卦は、利益を志向する象である。そうなれば下は抵抗し、危険で険悪なる心が生じてくる。一旦訟を持ち出すも、上から仲裁の諭しがあれば、中頃で訟を取り下げ止めるのが良い。五爻目は中を得ている陽爻で明君であるから、必ず喜んで服する所となるだろう。
[象傳]
天と水は本は分かれて反対になる所があるが、元来は同じものである。訟をするにも何事においても、抑々の始まりを考えてみなければいけない。