【運勢】
自分の心持ちを良く考え行動する事で、思慮深く、秩序を守り生きる事が出来る。
心持ちを理解したからと言って、欲に忠実であってはいけない。
直く、正しく生きるのが良いだろう。
【原文】
《卦辭》
咸(かん)は亨(とほ)る。貞に利(よろ)し。女を取る吉なり。
彖に曰はく、咸(かん)は感なり。柔上りて剛下る。二氣、感應(かんわう)して以て相與(そうよ)す。止(とどま)りて說󠄁(よろこ)ぶ。男、女に下る。是を以て亨(とほ)り、貞に利(よろ)し。女を取りて、吉なり。天地感じて萬物化生す。聖人人心を感ぜしめて、天下和平󠄃。その感ずる所を觀て、天地萬物の情見るべし。
象に曰く、山上に澤有るは咸。君子以て虚にして人に受く。
《爻辭》
上六。その輔、頬舌(けふぜつ)に咸ず。
象に曰く、その輔、頬舌(けふぜつ)に咸ずとは、口說󠄁に膝(あぐる)なり。
【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《卦辞》
咸は感じる、互いに好意的であるの意味である。
剛柔が相応じて助け合うので思い通りに行くという。
柔がのぼり、剛が下るので、結婚に最適とされる。
当然夫婦になってからも咸を大切にしなければならない。
喜びがあっても、羽目を外すのは良くない。
正しくあろうとすべきである。
《爻辞》
上爻は好意的であることが行き過ぎてしまった爻である。
言葉巧みに人を喜ばせようとするが、内実が伴っていない。
これでは人はついて来ない。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
是は下経の始まりである。
上経は天地を以て示した所で、下経は人を以て示す所である。
人倫の道は夫婦が始まりであるので、此の卦が下経の始まりなのである。
『序卦伝』では、この卦の始めに宇宙の発生の順番を「天地、萬物、男女、夫婦、父子、君臣、上下、礼儀」としており、夫婦は父子君臣に先立つ。
上卦は沢、下卦は山で、沢の水気が山の上に十分に上った象であり、山の気と沢の気と相交わっている。
兌は少女、艮は小男である。
上は外、下は内であるから、男子が外から妻を迎え入れる所の象である。
男女正しき所を以て相感じるのであり、情欲の私を以て感じるのではいけない。
そこで「咸」の字は下心のつく「感」を使わない。
[彖伝]
咸は無心で咸じる所を尊ぶ。
情欲の私があってはいけない。
天の気が地の気の下に来て、地の気が上に上る所である。
婚姻の礼は皆男子の方から女の方へ下って求める。
天地陰陽相感じることで、萬物が生じるのである。
[象伝]
山上に水気が上っているのが咸の卦である。
山から豊富な水が出てくるのは、山には土が満ちているようで、水気を受け容れるだけの虚なる所がある。
それが為に君子も我を虚しくして、人に教えを受ける所がある。
我が満ちていてはいけない。
《爻辞》
上六は人の顔にあたり、口の両脇の上を輔という。
また頬は鼻を挟んで両方に有る。
其れを以て人が說ぶのを説いたのである。
人が說ぶと、頬が必ず和らいで来る。
女は顔色口を巧みにする様ではいけない。
[象伝]
媵(よう)は婚姻の際に付添って往く女である。
これが口を以て人を說ばせ、万端のことを能く行うので、上六の婦人が自分から男の家に往って機嫌を取る様ではいけない。
また九三の男は止まるべき所は止まって時を待って迎えなければいけない。