【運勢】
悩みを抱えるが、早急に解決しようと焦ってはいけない。
どの道を通っても厳しいのは、今が行くべき時では無いからである。
進んだ先で大成するので、その時に備え、学と徳を積むと良いだろう。
【原文】
《卦辭》
蹇(けん)は西南によろし。東北によろしからず。大人を見るによろし。貞にして吉。彖に曰はく、蹇は難󠄄なり。險(けん)前に在る。險を見てよく止まる。知なるかな。「蹇は西南によろし」とは、往きて中を得る。「東北によろしからず」とは、その道窮(きは)まるなり。「大人を見るによろし」とは、往きて功あるなり。蹇の時用大なるかな。象に曰はく、山上に水あるは蹇。君子以て身に反して德を修(をさ)む。
《爻辭》
往けば蹇(なや)み、來れば譽(ほまれ)あり。
象に曰はく、「往けば蹇み、來れば譽あり」とは、宜しく待つべきなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は地であり、東北は山である。
難󠄄しい平地を行けば解決は難しい。
難󠄄しい山地を行けば道󠄃が窮まる。
爻は全部位に当たっている。
正しきを履んでいるのが、邦を正す道である。
ただし、難に遇うと正を失う。
それは良くない。
小人には対処できない。
難󠄄を除くには德を高めるしかない。
《爻辭》
難の始めの所󠄃であり、止まるの始めである。
事前に危ないことが分かり、其時を待つ。
往けば難󠄄に遇い、来れば誉ありである。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
蹇は難である。
進みことができない。
前に難があり進めず、険難があるので止まる。蹇が変わると解になる。
解の二爻が外卦の五爻に行って中を得る。
だから、西南がよく、止まりて進まない。
東北に利なし。
五爻は位に当たって中正。
君を得て、國を正すことが出來る。
だから賢人に遇う時であるという。
世が乱れているので、蹇に遇えば身を滅ぼす。
時を待って行動せよ。
我が身を反省して、德を修めよ。
《爻辭》
君子は安全な場所にいて、天命の時を待つ。
小人は往きて難󠄄に遇い、破滅する。
時を待ちて動け。
名誉を求めない。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
蹇は歩行が難󠄄しい状況である。
西南がよい、上卦が☵であるが、上に在る時は月󠄃である。
二三四爻の互卦にも☵がある。
これは三日月を表す。
旧暦の三日に西南から現れ、東北になくなる。
又西南は坤である。
草莽にいてどこまでも学問をして學藝を磨くのかよい。
何の能力もなく朝廷に出ようとしてはならない。
艮は朝󠄃廷を表す。
学問を修めたのなら、賢人に遇って、天下を経営するのに良い。
[彖傳]
☵の卦は大水であり、行けばおぼれてしまう。
☶は止まるであるから、大水に行かずにとどまった。
目の前に大水があるので、進めない。
止まるべきところで止まるのが知である。
西南に於いて学問を修めから、東北に行けば賢人に遇って、明君を得ることになる。
今は無学であるから、進んでも利なし。
険難の時代に生まれても大いに活躍できるのである。
[象傳]
君子は険難の時代には、良いことをしようとしてもうまく行かない。
そこで、己を正しくして、だんだんと德を修めると二爻から上爻までは正しい位にいるが、初爻だけは陽の位に陰でいる。
始めが正しくないといけない。
だから君子はまず自分の修身から始めるのである。
《爻辭》
外に行くのではなく、内に入ってとどまっておけば、それが誉であるという。
つまり、時を待つべきである。
[象傳]
時を待たねばならない。
無闇に進むのは良くない。