【運勢】
世の為、人の為に、という献身の心持ちはあるが、内実が伴わない。
落ち着きを持って、些事をこなす事で、良き友を得られるだろう。
常に周囲の立派な人を模範として、徳を養うと良い。
【原文】
《卦辭》
小畜は亨る。密雲雨ふらず。我が西郊よりす。
彖に曰はく、小畜は柔、位を得て、上下之に應ずるを小畜といふ。健にして巽。剛中にして志行はる。乃(すなは)ち亨(とほ)る。密雲雨ふらずとは、往くを尚ぶなり。我、西郊よりすとは、施、行はれざるなり。
象に曰はく、風天上を行くは小畜。君子以て文德を懿(よ)くす。
《爻辭》
九五。孚有り攣如たり。富むに其の鄰を以てす。
象に曰はく、孚有り攣如たりとは、獨り富まざるなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
大を養い、健をとどめることが出来ない。
強い志があれば、うまく行く。
四爻が主爻である。
二陰四爻は陰に陰でおり、初爻と応じている。
三爻は乗り越えることが出来ない。
小畜の勢いは密雲を作るに足る。
しかし雨を降らすには至らない。
陽の上の陰が薄く、今初爻の復道󠄃を抑えることが出来ない。
下の方は往くを尊び、上爻だけが三爻の路を固めることが出来る。
もし四爻五爻も上爻のように善畜であったなら、よく雨をふらせる。
旣に設けられているが、行われない状態である。
彖傳は卦全体を言い、象傳は四爻に特化して説明する。
《爻辭》
五爻は尊󠄄位にいて二爻を疑っていない。
二爻が来ても拒まない。
陽で陽に居る。
盛んであり、実がある。専ら固まらない。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
畜はとどめる、制止の意󠄃である。
一陰が四爻に在り、五爻はこれに従っている。
陽は大であり、陰は小である。
二爻五爻は剛であり、中を得る。
君子が君を得ることを表すので、うまく行くという。
二三四爻に☱澤がある。
岐周󠄃より西で陰陽が交わり雨を降らそうとするが、陽気がまだ盛んであり、まだ降らない。
剛のものが害をなせば柔のものが救う。
陽が陰をとどめることが出来ていない。
文德は礼樂教化をいう。
《爻辭》
五爻は相従う。
鄰とは四爻をさす。
陽が中を得ている。
四つある陽爻を信じて、引き連れあう。
同類が力を合わせ、陽が回復することを望む。
邪は正に勝てないこと久しく、勢いなく人従わない。
友なく、ことは成就しない。
五爻は旣に尊く、友が多い。
誠の心を以て仲間を大切にする。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
畜は育成するの意󠄃味である。
育ててよいものにしていくことである。
小は陰、大は陽である。
又止めるの意󠄃味がある。
君が悪い方に行くのをとどめ、良い方に導くことである。
小は臣であり、君に対するものである。
君を諫めるのは難しい。
君を徹底して批判するのは正しくない。
至誠を以て諫めるのが良い。
密雲というのは細かな雲が集まって大きくなることを言う。
それは二三四爻の☱澤をさす。
雲は陰である。
陰が集まっているが陽が作用しないと雨は降らない。
上卦の風☴が雲を吹き払ってしまい、雨が降らない。
兌は西である。
東は陽、西は陰である。
西の方に雲ができる。
臣下(陰)が天下をよくしようと志す。
しかし君主(陽)がそれに応じない。
[彖傳]
四爻が主爻である。
これは人に譬えるなら周󠄃公旦であり、その徳を慕って人々が集まってくる。
下卦は☰であるから意志が強い。
意志が強いが謙遜を忘れていない。
下のものが天下をよくしようとどこまでも志すが、君主がそれに応じてくれない。
それでも下のものはどこまでも誠を尽くして君に訴える。
どこまでも諦めないのである。
そして上爻に達すると雨が降る。
君主に至誠が通じたのである。
そして、恩沢があるが、まだその時でない。
[象傳]
風が天の上をふいて雲が散じたり集まったりして、いろいろな模様ができる。
《爻辭》
五爻は四爻と手を取っている。
何事をするにも四爻の力が必要である。
誠が盛んになって、それで富む。
四爻の大臣を用いるようになったからである。
[象傳]
五爻も誠が盛んであるが、四爻の方が盛んである。
君臣ともに誠がある。