【運勢】
物事の土台がしっかりしており、秩序が乱れる事は無い。
人間社会での価値観に囚われると、先に進めなくなってしまうだろう。
率先して、物事に取り組む事で、人々に君子の道を説く事が出来る。
【原文】
《卦辭》
坤は元(おほ)いに亨(とほ)る。牝馬の貞に利(よ)ろし。君子往くところ有り。先(さきだ)つときは迷ひ、後るるときは主を得るに利あり。西南には朋を得る。東北には朋を失ふ。安貞にして吉。彖に曰はく、至れるかな坤元。萬物、資(よ)りて生ず。乃ち順にして天を承(う)く。坤、厚くして物を載す。德无疆に合ふ。含弘光大にして品物、咸(ことごと)く亨る。牝馬は地類。地を行くこと疆なし。柔順利貞は君子の行ふところ。先だつときは迷ひて道󠄃を失ひ、後るるときは順にして常を得る。西南には朋を得る。乃はち類と行く。東北には朋を喪ふ。すなはち終に慶有り。安貞の吉は地の无疆に應ず。象に曰はく、地勢は坤。君子以て厚德者物を載す。
《爻辭》
六五。黃裳は元吉なり。
象に曰はく、「黃裳元吉」とは、文、中に在るなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
坤は貞によろしい。
牝馬によい。
馬下にあって行く。
牝馬は柔順の至りである。
柔順を尽くして後にうまく行く。
牝馬の正しいものによろしい。
西南は人を養う地である。
坤の方角である。
だから友を得る。
東北は西南の逆である。
友を失う。
乾は龍を以て天を御し、坤は馬を以て地を行く。
地は形の名である。
坤は地を用いるものである。
両雄は並び立たない。
二人主が居るのは危うい。
剛健と對をなす。
長く領土を保つことが出来ない。
順を致していない、地勢が順わない。
その勢は順。
《爻辭》
黄色は中の色である。
裳は下を飾る。
坤は臣の道󠄃。
下を飾り、剛健さが無い。
そして物の情勢を極める。
理を通す。
柔順にして尊󠄄位にいる。
武を用いるのは良くない。
陰が盛んで、陽に変わられることも予想できない、文人が中を得る。
美の極みである。
大吉。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
坤の爻はすべて陰。
順の至りである。
牝馬は柔であり強く行く。
この卦は柔にして健である。
主に遇うとは、陽に遇うことである。
西南は陰、東北は陽。
順の至りでうまく行く。
君子まず行くところがあれば迷い、後に主を得る。
西南に行くと友を得て、東北に行くとその友は離れる。
正しいことだけをしていれば吉。
天の気を承け萬物を生ず。
陽に先んじてはならず、陽の後に行けばよい。
《爻辭》
黃は中の色である。
上を衣と言い下を裳という。
この爻は柔順中正で最尊󠄄位に居る。
自ら其の裳を着る。
元吉である。
君子の徳は人に承認されることを求めない。
盛徳の至りである。
坤は地の道󠄃である。
だから五爻だからと言って君主ではない。
ただ君子の道󠄃を言う。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
坤は乾と對であり、乾は天、坤は地である。
牝馬の話が出るが、これは乾の方が牡馬であることをも示している。
臣たるもの、必ず朝󠄃廷に行って君に仕えなければならない。
しかし、無学では全く役に立たないから、そのためには朋(とも)をもって助け合わなければならない。
西南は坤である。
☴巽の卦、☲離の卦、☷坤の卦、澤兌の卦は陰の卦である。
そこで、西南に陰の友が集まっている。
朋は友と違う。
一緒に勉強するもののことを朋というのである。
友とは朋の中でも特に親しいものである。
朋の字は陰で、友の字は陽である。
始めのうちは陰の友達が必要である。
そこで西南が良いのである。
また、東北は朝󠄃廷を意味する。
乾の気で萬物は始まり、坤の気で萬物に形が備わる。
坤の卦は地の上に地を重ねているから、地盤は盤石である。
天の気がどこまでも拡大していくのに、陰の気はどこまでも従うのである。
牝馬が牡馬に従うように、臣下は君主に仕えるのである。
先に行こうとしてはいけない。
常に後ろについていくべきである。
臣下は朋友を失うことになるが、君主に仕えることでそれを克服するだけの喜びを得る。
慶(ケイ、よろこ)びは高級な臣下の卿(ケイ)に通じる字である。
上に鹿の字が附くが、昔は鹿の皮を以て喜びを述べた。
人々が集まってくるのである。
[大象傳]
地が二つも重なっているので盤石である。
物を載せても耐えられる。
つまり様々なことを任されても耐えられる存在なのである。
《爻辭》
鄭玄(じょうげん)の説に従うと、舜が堯に試されて政治をし、周󠄃公が成王が幼少だったので政をしたことを表すという。
坤は臣たるべきものであり、五爻の君主の座にいるはずがない。
それなのに鄭玄は臣下が君子を代行したという。正しいことではない。
鄭玄は『書経』の注釈で周󠄃公旦が王位についたかのような書き方をしているほどである。
この坤は陰であるから、皇后を表すとするのが正しい。
腰より下に着るものを裳といい、腰より上に着るものを衣という。
衣裳の衣が天子、裳が皇后である。
黄色は五行の土の色である。
乾爲天の五爻の王の配偶の皇后である。
だから元吉である。