【運勢】
様々な不安から焦りを感じるが、事を急に進めてはいけない。
急に進めても、周りの理解を得られず、世の中に乱れが生じてしまうだろう。
何事も無理に理解を求めるのでは無く、慎ましくいる事が大切である。
【結果】 ䷋◎五
天地否(てんちひ) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻]
【原文】
《卦辭》
否は之(こ)れ人に匪ず。君子の貞によろしからず。大は往き、小は來る。
彖に曰はく、「否は之れ人に匪ず。大は往き小は來る」とは、則ち是れ天地交はらずして、萬物通ぜざるなり。上下交はらずして天下邦无(な)きなり。内、陰にして外、陽。内、柔にして外剛。内小人にして外君子なり。小人は道󠄃長じ、君子は道󠄃消ゆるなり。
象に曰はく、天地交はらざるは否。君子以て德を儉し難を避け、榮するに禄を以てすべからず。
《爻辭》
九五。否を休む。大人は吉。其れ亡びん亡びんと。苞桑(ひょうそう)に繫がる。
象に曰はく、大臣の吉は位正しく當るなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辞》
無し
《爻辞》
尊󠄄位に居て位に当たる。
よく否の道を休める。
否を小人に施すのが否の休である。
ただ大人だけが後にもその様で居られる。
だから大人は吉という。
君子の道が消える時、己が尊󠄄位に居てどうして安心できようか。
心に危機感が生じる。
だから固まるをえるのである。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辞》
否は塞がる、匪人は悪人の意󠄃味である。
天地が通じず、上下の意思が通わない様を表す。
世の中が乱れる時である。
君子が正しくしていても、臣下や国民には伝わらない。
悪人が栄え、有徳者は德を隠す。
このような時には、徳のある者は徳を隠し、控えめにするのが良い。
《爻辞》
休は息(そく)であり、止まるである。
否を休める者とは時の否を止めるのである。
其れ亡ぶ其れ亡ぶとはそれ雨それ雨というように、言葉を重ねて警告しているのである。
苞は草が生い茂っている様、苞桑とは固く結ばれることの譬えである。
否の時にあり、陽で中正。
尊󠄄位に居て、剛陽の君である。
よく天下の否をおさめる。
否が旣に終息しても、まだ否を離れられない時がある。
だから安心して気を緩めてはならない。
深謀遠慮して、危険を警戒し、不動の体制が必要である。
動揺してはいけない。
痛みやかゆみが取れてもすぐに体が健康と言えないのと同じである。
否の時は徹底した警戒が必要である。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
否は塞がるの義である。
天地陰陽の気が塞がっている。
これは地天泰と反対である。
こうした隔絶をつくったのは匪人である。
匪人は人間でなく、悪の最も大なるものである。
君子が正しい政治を行っても災を受け、小人が権力を握る。
このような状態では咎を無くし、誉も出ないように謹慎しなければ危うい。
大往小来は、陽が外の方へ往ってしまい、陰ばかりが内側に来ることである。
[彖伝]
天の気が上にあり下に降ってこない。
地の気は下に滞って上に騰がっていかない。
天地の気が交わらなければ、萬物は生長して往かない。
上は上で高振って下を顧みず、下は下で上を上と思わず尽くす所が無い。
君臣の道も、親子の道も無く、禽獣の住む所と変わらず、人間の国ではない。
外卦は陽爻で内卦は陰爻である。
これを一人の小人とすれば、内の心は柔弱で陰、外は無理に剛を偽って拵える。
朝廷とすれば、内にばかり在って政務を執るのは小人、外に出て遠くの田舎にまで往くのは君子である。
世の中が欲ばかり盛んになれば、道徳は廃れ、君子の正しい道は段々と消滅してくる。
それを小人の道が長じて、君子の道が消するという。
[象伝]
天地陰陽の気が調和せず、萬物は害を受け、人間の身体も病弱になる。
君子は我が身を全うすることを心掛け、なるべく徳を内に仕舞込んで用いない。
徳を外に顕すと小人に憎まれて必ず害を受ける。官から禄を与えるといっても、出れば害に遭うから賢人は出てこない。
そこで営するに禄をもってすべからず。
後世の本には「栄」の字で書いてあるが、古い方の「営」が正しい。
《爻辞》
九五の天子は明君で、天下が大いに乱れていても、緩(ゆっ)くりと休息し時を見ている。
大事は急にすると却って大乱を起こす。
能く能く時期を見なければいけない。
九五の天子は六二の賢人を挙げて用いるが、天子は何時亡びるかと日夜惕(おそ)れ慎まれる。
そして遂に苞桑に繁る。
苞は集まるという義、桑は根が丈夫な物である。
つまり如何なる大風でも倒れることが無い大丈夫な所に、我が身を繋ぎ止めたのである。
これは堯の時代に天下が大いに乱れたが、鯀、共工、驩兜、三苗の悪人等を免職せず、舜を挙げて自身は緩くりとして居られた。
そして時が来たら是等の小人を皆刑戮し、天下が安泰と為った所である。
[象伝]
天子は明君で、賢人を挙げて天下の乱を平らげ、復た泰平の世に戻した。
世の中が乱れたり治まったりするのは天運であるが、仕方無いと手を拱(こまね)いて黙って見て居るべきものではない。
乱を引っ繰り返して泰平に引き戻すのは人間の道である。