【運勢】
とても上手く行っていたが、行き過ぎて大きく転じてしまい、力を失う事になる。
力が無いので、徳を持たなければ、助けてもらう事は出来ない。
幸いに、助けてくれる人が居るので、進む事が出来るだろう。
【原文】
《卦辭》
旅は小(すこ)し亨(とほ)る。旅、貞なれば吉。
彖に曰はく、旅は小し亨る。柔、中を外に得て、剛に順ふ。止まりて明󠄃に麗(つ)く。是を以て小し亨る。旅、貞なれば吉なり。旅の時義、大なるかな。
象に曰はく、山上に火有るは旅。君子以て明󠄃に慎みて、刑を用ゐて、獄を留めず。
《爻辭》
六二。旅、次󠄄に卽(つ)く。其の資を懐き、童僕の貞を得たり。
象に曰はく、「童僕の貞を得たり」とは、終ひに尤无きなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
貞吉(ていきち)であることには達しておらず、ただ遠くに行くという状況に於いて貞吉なだけである。
だから、特に重ねて「旅貞吉」とあるのである。
物がその主を失うと散る。
柔が剛に乘る。
五爻は剛位に乘り、また外卦の中を得ている。
陰は陽に従って、陽は尊󠄄位を得ていない。
小し亨る。
旅は大いに散る時で、物は元の場所󠄃を失う時である。
《爻辭》
次󠄄は旅先で安んずることである。
二爻は位にあたっており、旅で必ず宿舎を得る。
資金も懐にある。
童僕の正しい者を得る。
〔伊藤東涯の解釋〕
旅は旅行である。
五爻は陰で、順の徳がある。
安全な場所で、命を待つ状況にないと言っても、柔順の徳がある。
少しはうまく行くのである。
旅で生き抜くには、ただ正しいだけでなく、智略も必要である。
旅の時には、助けてくれる人も必要である。
信用できない人に頼ってはならない。
《爻辭》
旅の途中、柔順で中正である。
必要な資金は懐にあり、さらに心が正しい童僕を得た。
両方とも、道中大変ありがたいものである。
道中最も安定ているといえる。
〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は諸侯でいえば国を失い、大夫でいえば家を失ったものにあたる。
一つ前に䷶雷火豐があるが、これが転倒してしまったのである。
贅沢が過ぎて、身を滅ぼしてしまったのである。
その後、旅に出る。
旅に出ると、威張っていてはどうしようもないので、身を小さくしておくのが良い。
謙遜の態度を守って、正しくしていればうまく行くのである。
[彖傳]
この卦の五爻の陰爻は、元々は䷶雷火豐の時には、内卦にいた。
それが外に出たので、旅をするというのである。
旅に出たはいいが、陰であり独立自尊の気概がない。
そこで、上爻と四爻に依存している。
このようにただ縮こまっていてはいけない。
旅は大変危険なものであるから、ちゃんとした助けが必要で、公明正大な人間についていくべきである。
怪しい人間は避けた方が良い。
[象傳]
山は動かず、火は行き過ぎる。
この二つが同居しているのが旅である。
君子は刑罰を慎まねばならない。
なぜなら、旅に出て、家を離れ、國を離れたものが罪を犯すことがある。
それはその土地の法をよく知らないから、無意識に犯しがちである。
君子は一人一人を大切にしなければならないので、旅人だからと言っていい加減に裁いてはならない。
慎重に刑罰を行うべきである。
《爻辭》
二爻は旅の卦の中で一番安定している。
次とは宿のことで、旅人が宿を得たということである。
そればかりではなく、懐には資金があり、童僕もいる。
童僕とは若い召使と年を取った召使である。
二人とも忠誠心があり、旅の友としては最適である。
お金をたくさん持っていても安心である。
[象傳]
童僕が良く尽くしてくれるので、憂えが無くなるのである。