【運勢】
何事も、段階を踏み進む事が大切である。
物事の土台がしっかりしており、正しさを守っているので、進めば上手く行くだろう。
大事を成す為に、自身の能力を発揮するのであればとても良い。
【原文】
《卦辭》
漸は女歸いで吉。貞によろし。彖に曰はく、漸は進󠄃むなり。女歸いで吉なり。進みて位を得るは往きて功あるなり。進󠄃むに正を以てす。以て邦を正すべきなり。その位剛。中をえる。止りて巽。動いて窮まらず。象に曰はく、山上に木あるは漸。君子以て賢德にをりて風俗を善くす。
《爻辭》
六二。鴻、磐に漸(すす)む。飲食衎衎(かんかん)たり。吉。
象に曰はく、飲食衎衎たりとは、素飽せざるなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
漸は漸進の卦である。
止まりて巽。
だから適度に進む。
巽に留まるから進󠄃む。
だから女嫁いで吉なのである。
進んで正しいものを用いる。
進んで位を得るとは五爻を指す。
この卦は進むことを主る。
漸進して位を得る。
《爻辭》
磐は山にある岩の盤石なものである。
進んで位を得る。
中に居て應ず。
本は食い扶持がなかったが、進んで得ることが出来た。
その喜びが第一である。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
漸は次順番通りに進むことである。
巽は長女、進んで上に在る。
進めることをゆつくりしなければならないのは、女が嫁ぐ時である。
五爻が位を得て、剛が中にある。
家を正し、功があるだろう。
君子が仕えるときは、進󠄃むに礼を以てし、退󠄃くに義を以てする。
五爻剛中の徳がある。
《爻辭》
磐は石の平らで安定したものであり、主に水辺にある。
和楽して漸にして柔順中正。
上は五爻に応じ、鴻が岸から立って、磐にたどりついたようなものである。
吉である。
己に徳があり、智を上から受けて、次󠄄に進む。
そして安住の地を得る。
飲食物は豊富にある。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
漸は、小さな木が次第に成長して大木になるように、順序を立てて進んで往く意である。
この卦は鴻雁(こうがん)の象を取っている。
雁は水鳥で、陰鳥であるから、陽に能く従う。
そのため婚礼の時には、雁を以て礼を行う。
即ち、女が夫に従う義を取ったのである。
また臣たるものは、必ず君に従う。
国に生まれた者は、皆君に仕えなければならないと云う義も示している。
[彖伝]
女の嫁入りは、速やかにするものではない。
六礼といって、六つの段に分かれており、順次進んで往って婚礼が成る。
また天子は天下を治めるのに、先ず我が身を正しくする。
正しい所を以て、国家を正しくすることが出来る。
[象伝]
山の上に木がある。
君子はこの義を用いて、賢徳ある人物を高い所に据え、賢人の徳を以て社会風俗の悪い所を能く直して行く。
《爻辞》
六二は九五の天子と相応じている。
六二は天子から禄を受け、飲食に事欠かず安楽である。
身の上に不自由が無く、一家を養うにも十分である。
[象伝]
人間は安楽にしているだけで、何も働かず考えも持たず、空しく飲食に飽きていてはいけない。
しかし九二は、学問や徳を以て君の為に盡す所があるから、禄を賜り裕かなのである。