8/5 (水) ䷸ 巽爲風(そんゐふう) 二爻
【運勢】
厳しく指摘された時、よく聞き従うと良い。
反対に、反感を持ち従わないのは良くない。
正しさを守るには、常に周りの声に耳を傾ける必要がある。
慎みの気持ちが有れば、悪く転ずる事はないだろう。
【原文】
《卦辭》
巽は小(すこ)し亨(とほ)る。往く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大人を見るに利し。
彖に曰はく、重巽以て命を申(かさ)ね、剛、中正に巽して志行はる。柔皆剛に順ふ。是を以て小し亨る。往く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大人を見るに利し。
象に曰はく、隨風は巽。君子以て命を申(かさ)ね、事を行ふ。
《爻辭》
九二。巽して牀下に在り。史巫を用うること紛若たり。吉にして咎无し。
象に曰はく、紛若の吉は中を得るなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
巽の德であるから、少しうまく行く。
上下ともに巽。
令に違わず命が行われる。
だから命が重なり、事が行われる時、上下ともに巽なのである。
巽はよく仕えて行くことである。
拒むものはない。
大人は巽を用いて道がいよいよ盛んになる。
剛が巽を用いる。
中正に居るのは譲られたのである。
明󠄃は間違えることがない。
だから少しうまく行くのである。
《爻辭》
巽の中心にいて、すでに下位にいる。
陽なのに陰位にいる。
譲るにしても甚だしい。
だから床の下に居るというのである。
下にとどまり続け正しさを失えば、咎や過ちがおこる。
よく中に居て神に対する慎みを尽くして、威勢を用いないでいるならば、吉に至り過ちもなくなる。
だから神明に仕えて居れば、混乱の中、吉を得て問題ないというのである。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
巽は順である。
一陰が二陽の下に居て陽に順っている。
また、入るという意味もある。
風、木、命令を意味する。
五爻は剛で中正である。
大人の象である。
命令に重複がある。
初爻と四爻は陰であり、陽に順う。
大きなことは出来ないにしても、小さなことは出来る。
命令は、剛が過ぎれば厳しすぎて民が従えず、乱れてしまう。
柔が過ぎれば緩くなり、秩序が乱れてしまう。
剛中の君に柔が順う状況なら、大きな成功は見れなくても、官職について君に仕えるのに支障はない。
《爻辭》
史巫は神に仕えるものであり、紛若は多いことである。
下に居て位を得ず、上に應ずるものなし。
下位に下がって上たるを知らないものである。
巽に過ぎるのである。
だから床下に居るという。
しかし、剛中の徳は失われない。
叮嚀に上と心を通わせようと求めることが、丁度神職が神明に仕えるようであれば、吉であり、問題ない。
卑巽に下に居れば、その志は徳の実践を伴わなくなるが、剛中の徳で誠意を持っていれば、人を動かすに足る。
憂いなし。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
巽は四爻目の陰爻と初爻目の陰爻が卦の主である。
陰爻は、上に重なる陽爻に順っていけば能く亨り、進んで事を行う所に宜しきを得る。
この卦はもとは山風蠱から変わったものである。
天子の晩年に政治が乱れ、崩御後に太子が即位した。
そして朝廷に入り込んだ小人を除きさり、天下を斉(ととの)えた所の象である。
古代、堯が隠居して舜に政を斉えさせたのは、まさに此の卦の義である。
[彖伝]
なし
[象伝]
巽は重ねて命令を下し、能く下へ諭す。
是までの政の弊害を悉く除いた後で命令を下す。
剛は五爻目で、中正の所に坐っており、思う通りに志が行われて往く。
柔は初爻目で二・三爻目に順う。
四爻目も五・上爻目に順う。
そこで小人は大人を見て順い事を行うのが宜しい。
《爻辞》
巽(☴)は牀の象がある。
二爻目は上卦の巽の下にあり牀下となる。
九二は陽で貴い身分だが傲らず、初六の陰爻にも交わる。
史は、祭りの文を書いて神に告げる官である。
巫は、舞を巧みにして神に能く事えるものである。
史も巫も孚を以て神の感じる様に能く事える。
九二は、史巫が神に事える如く、孚を以て初六へ交わる。
[象伝]
言葉の綾を盡しても、孚が乏しく外面を飾るだけではいけない。
そこで中を得ることを尚しとする。
二爻目は中を得ているから吉である。