【運勢】
世を正す為に大事を行うと良いが、物事の支えが軟弱であり、行うのは難しい。
この様な時は、変わらずに中正さを保ち続ける事が大切である。
衰退の流れに抗う事は大変だが、後悔はしないだろう。
【結果】 ䷛◎五⚪︎二
澤風大過󠄃(たくふうたいか) 五爻二爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][二爻]
【原文】
《卦辭》
大過は棟(むね)撓(たわ)む。往くところ有るによろし。亨(とほ)る。
彖に曰はく、大過は大なるものは過󠄃ぐるなり。棟撓むとは、本末弱ければなり。剛すぎて中。巽にして說󠄁(よろこ)びて行く。往くところ有るによろし。乃(すなは)ち亨る。大過の時、大なるかな。
象に曰はく、澤木を滅するは大過。君子以て獨立して懼れず。世をのがれて悶(うれ)ふることなし。
《爻辭》
[五爻 優先]
九五。枯楊華を生ず。老婦其の士夫を得る。咎无(な)く、譽无(な)し。
象に曰はく、枯楊華を生ず。何ぞ久しかるべきなり。老婦の士夫は亦醜かるべきなり。
[二爻]
九二。枯楊稊を生ず。老夫其の女妻を得る。利しからざることなし。
象に曰はく、老夫女妻は過ぎて以て相與するなり。
【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
大なるものはよく過ぎることが出來るものである。
初爻が本であり、上爻が末である。
初爻は陰に居て過ぎるのである。
二爻は中。
弱󠄃の極みであり、衰を興す。
それでも中を失わない。
巽順で喜び行く。
だから難󠄄を逃れる。
君子は為すことがある時である。
大過は普通では及ぶところではない。
《爻辭》
[五爻 優先]
尊󠄄位に居て、陽が陽に居る。
まだ危機を救うことが出来ない。
尊󠄄位を得て、まだ撓むことがないので、華を咲かせることが出来るが、稊を生ずることは出来ない。
夫を得られるが、妻は得られない。
棟が撓む世に咎なく譽もないものでは、長たりえない。
華を生じて久しくない。
[二爻]
稊は楊の優れたものである。
陽で陰に居る。
その本を過ぎることが出来て、其の弱きを助けるものである。
上に応じるものがなく、心に特に吝がない。
過ぎるのはこれによる。
衰えが収まることはない。
老いた男がさらに若い妻を得る。
弱きを救い衰退したものを再興する。
二爻が一番良い。
老が過ぎれば枯れてしまい、少し過ぎれば稚い。
老が少を分れば稚は長じ、稚が老を分れば枯れたものが栄える。
大きく過ぎれば衰えてしまって、至壮が至衰を輔ける。
〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
陽大であり、陰は小である。
大過は大なる者が過󠄃ぎる。
四つの陽が中心に集まって、二つの陰が外に居る。
陽が過剰に盛んになる。
棟の中心が太く、端が細く弱くなっている。
二爻と五爻が陽剛の才があり、中に居る。
巽順であり、喜びゆく。
うまくいく。
憂虞(ゆうぐ)の時にあれば、陽剛の才が必要である。
或いは厳しすぎ、失うこともある。
棟が撓む時に当たり、剛にして中に居る。
人心が服すのを嫌うと、行きて利なし。
《爻辭》
[五爻 優先]
老婦で、行き過ぎた陰とは上爻である。
士夫とは五爻である。
五爻は大過にあり、陽剛中正である。
下は応じず、上に一陰あるが、生育の功はない。
この老婆と結婚して罪ではないが、褒められたものでない。
人が共に行動するとき、相手を選ばねばならない。
[二爻]
楊は水の傍に生える木である。
巽は木であり、喜びであり、澤の象である。
陽が過ぎる時にあるので、枯れるという。
稊は荑(つばな)ともいう。
幼い木である。老夫は二爻のことで、女妻とは初爻のことである。
大過の時に剛中の才があり、上に応じるものがなく、下は初爻と比の関係である。
陽が過ぎるといっても、つき従うものがある。
生育の功がある。
不利はない。
剛が過ぎる人は人と上手く行かず、物事を成就できない。
二爻は剛が過ぎるが中である。
時を得ないといっても、不利はない。
〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
上下の陰爻の間に陽爻が四つ連なっており、剛の方が多いため大に過ぎる。
下卦の巽は五行では陰木である。
堅く丈夫な陽木に対して、陰木は柔らかで弱い。
棟ばかり多くても、受ける方の木が弱ければ、棟も撓んで来る。
また兌の卦は水である。
上の水が下に流れて来て、天下の人は皆水中に居るが如くに苦しむ。
此れを救わなければいけない。
進んで往けば志を遂げられる。
[彖伝]
君や役人が大なる事を好んで贅沢が過ぎて居り、其れを受ける方の人民が弱って居る。
陽爻が多く剛が過ぎるが、二爻目も五爻目も中を得て居り、丁度世の中を治めるのに宜しき所がある。
上卦の兌は悦びの象があり、和して人と共に行う。
其処で人の助ける所があり、往く所あって宜しきを得る。
上下共に奢り盛大なる方に過ぎる世であるから、遂に人民は奢りのために倒れるようになる。
此の時に志あるものは大いに為すべき所がある。
[象伝]
楊(やなぎ)が水中に潜って居る。
楊は陰木で水を好むが、過ぎれば害を為す。
上下の陰爻に陽爻が包まれている。
陰爻に挟まれた内側の陽爻を一つと見れば、坎(☵)の卦の似体である。
坎の卦は小人であり、洪水の如き世の中である。
しかし君子は我れ一人独立し懼れることは無い。
世を遯れても非望を抱かない。
《爻辞》
[五爻 優先]
折れようとする楊に華が生じる。
二爻目は下方だから根から芽を生じたが、五爻目は上方だから華である。
九五の天子は未だ若いが、小人の為に籠絡されて、枯れかかった楊の様に蠃(よわ)って居る。
しかし精気は十分に在るから華が生じて来るのである。
上六は老婦で年を取った小人で、年若い男を得て意の如くに引き廻して居る。
これは老朽の大臣で、天子は若い王子である。
事は挙がらないが、別に破れも出ない。
一時華が咲いた様でも長くは続かない。
[象伝]
枯れ掛かった楊に丁度華が咲いた様であるが、姑息な遣り方のため長く続かない。
老朽なる大臣が幼年の天子を我が意の如くに引き廻らして居るのは真に醜いものである。
[二爻]
枯れた様に見える楊の根から稊(ひこばえ)が生じる。
譬えれば老夫である。
九二の老夫は一家の事を埋めるには力が足りないが、初六の若い妻を得て一家の事を担当して貰う。
国家の事に取れば、国事の担当者が段々年を取って来て元の様な働きが出来ないため、之を輔ける若者を用いる。
[象伝]
老夫は自分が行き過ぎた年であるから、若い者を得て相互に親しくして其の輔けを受ける。