9/13(火) ䷜ 坎爲水(かんゐすい)→䷑ 山風蠱(さんぷうこ)

9/13(火) 坎爲水(かんゐすい)→ 山風蠱(さんぷうこ)


【運勢】
困難が多く自暴自棄になりやすい時。
どんなに辛い状況でも、自分を信じて行動する事が大切である。
現状に満足してはいけない。
気持ちを新たに悪い習慣を改め、良い習慣を取り入れる事が大切である。


【結果】

本卦:坎爲水(かんゐすい)
之卦:山風蠱(さんぷうこ)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][三爻]


【原文】
《本卦:
坎爲水》
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。
彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。
象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


《之卦:
山風蠱》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰く、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰く、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。


【解釋】
《本卦:
坎爲水》
〔王弼、東涯の解釋〕
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


〔根本通明の解釋〕
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖傳]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。信を失わず進んでゆくのが功である。二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象傳]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。そこで徳の行いを常にする。教育を重ね、徳を育てなければいけない。


《之卦:
山風蠱》
〔王弼の解釋〕
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。旣に巽また止まり、競争しない。事有りて競争の煩いがない。だから為すことがある。為すことがあれば大いにうまく行く。天下を治める。蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。德を進めて業を修めればうまく行く。甲とは創制の令である。古いものを以てしてはならない。甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。事によって令を述べる。終われば始まる。天の運行は四季のようである。


〔東涯の解釋〕
蠱は壊、腐敗のことである。この卦は變じて隨となる。隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。だから、剛が上って柔が下るというのである。強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。内は巽順であり、よく物を止める。天に十日有り。甲に始まり癸で終わる。甲は事の始めである。甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。前󠄃の事が終わろうとする。腐敗を致す道である。甲に後れるとは乙丙丁である。乱が極まり治まるころである。腐敗を治める道である。治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。そうすればうまく行くのである。


〔根本通明の解釋〕
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。三・四・五爻目に震の卦がある。これは長子、即ち皇太子である。上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。巽は弱く姑息で敗れる。晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。皇太子が即位して政を改め天下を治める。先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。ニ・三・四爻目に兌の卦がある。兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。これは旧弊の政事を除く義である。三・四・五爻目は震の卦である。震は春で、新しい芽がまた出てくる。

9/12(月) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 三爻

9/12(月) 山天大畜(さんてんたいちく) 三爻


【運勢】
努力が結果に表れ始める時。
安易に行動してはいけない。
謙虚で堅実な姿勢が求められる。
初めから学問道徳に優れた者はいない。
賢人は、見えない所で地道な努力を続けている。
広い視野を持つ事が大切である。


【結果】
䷙◎
山天大畜(さんてんたいちく) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
大畜は貞に利し。家食󠄃せざる吉。大川を渉るに利し。
彖に曰く。大畜は剛健篤實(ごうけんとくじつ)輝光。日にその德を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは大正なり。家食󠄃せずして吉。賢を養ふなり。大川を渉るによろしとは、天に應ずるなり。
象に曰く、天山中に在るは大畜。君子以て多く前言往行(わうこう)を識して、以てその德を畜(やしな)ふ。


《爻辭》
九三。良馬逐(お)ふ、艱貞(かんてい)に利し。日に輿衛を閑(なら)ふ、往くところ有るに利し。
象に曰く、往くところ有るに利しとは、志を上合するなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
大畜は大きく蓄へる、とどむることである。剛健篤実でますます徳が高くなることを表す卦である。剛い者が最上位に登り、賢者を尊んで賢者を養う。賢者は家から出て朝廷に仕えはじめた。吉である。大事業をするのに良い時である。


《爻辭》
凡そ物極まれば則ち反る。故に畜ふこと極まれば則ち通る。初二の進は畜の盛に値ふ。故に以て升るべからず。九三に至りて、上九に升る。而して上九、天衢の亨るに處り、塗徑大いに通る。進みて違き距つなく、以て馳騁すべし。故に良馬逐ふと曰ふなり。履むに其の位に當たり、進むに其の時を得。通路に之り、險厄なるを憂へず。故に艱みて貞しきに利あるなり。閑は閡なり。衞は護なり。進むに其の時を得。艱難を渉ると雖も患ふなきなり。輿、閑に遇ふと雖も故に衞るなり。上と志を合はす。故に往く攸有るに利あるなり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
大畜は、君が臣を止めて畜(やしな)う卦である。大は君のことである。大畜とは反対に小畜という卦がある。小畜は、臣の方が君を止めるという卦である。小は臣のことである。上卦の艮は身体である。三・四・五爻目の震は仁である。また二・三・四爻目に兌は義である。つまり仁義の徳を身の内に具えていることになる。畜の字は、止めるというだけでなく、之を育てて善くするという義がある。徳を十分に養はねばならない。君は、臣の早く出世を求める心を抑えて、十分に学問を以て徳を養わせるのである。また養われる側も、貞所を守るのが良いので、「利貞」という。「不家食吉」とは、学問道徳のある人物は君に用いられ、禄を以て養われる所となる。そのため賢人は家に居って食することは無い。朝廷に招かれた賢人は、危険なことがあっても之を踏み越えて往くのが良い。そこで「利渉大川」という。
[彖傳]
天子に剛健なる徳が具わっている。政務を執っても疲れることがなく、篤実である。篤実は艮の卦の象である。また艮の陽爻が上にあり、光輝く所がある。「日新」というのは、乾の卦で象で、日々昇り沈んでいく太陽である。「其徳剛上」は、上九を指していう。上九は剛にして一番上に居る。
[象傳]
上卦の艮は山、其の山の中に天がある。山中には天の元気が十分に満ちている。火気と水気の働きで草木が良く生じ、禽獣も繁殖する。これが大畜である。「前言」は震の象である。また震は行くという事もある。
《爻辭》

9/11(日) ䷖ 山地剥(さんちはく) 四爻

9/11(日) 山地剥(さんちはく) 四爻


【運勢】
悪人が多く蔓延り力を増す。物事を前に進めるのが困難な時。
徳のない者を相手にせず、正しさは内に秘めておくと良い。
気負わず自然体で過ごすと良い。素直に休む事も大切である。
堅実に土台を固め変化に備えると良い。


【結果】
䷖◎
山地剥(さんちはく) 四爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 老陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[四爻]


【原文】
《卦辭》
剝は往く攸有るに利しからず。
彖に曰く、剝は剝なり。柔剛を變ずるなり。往く攸有るに利しからずとは、小人長ずるなり。順にして之を止む。象を觀るなり。君子は消息盈虚を尚ぶ。天の行なり。
象に曰く、山、地に附く剝。上以て下を厚うし宅を安ず。


《爻辭》
六四。牀を剥するに膚を以てす。凶。
象に曰く、牀を剥するに膚を以てすとは、切に災に近づくなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
剝は割くの意󠄃である。下から陰が侵食し、最後に上爻だけに陽が残っている。これは徳の無い者がはびこり、有徳者が衰退している時である。このような時は何か事を起こす時ではないと、強く戒めるべきである。


《爻辭》
初二、牀を剥ぐ。民の安んずる所以なり。未だ其の身を剥するなり。四に至りて剥の道浸長し、牀既に剥がれ盡く。以て人身に及ぶ。小人遂に盛んなり。物、將に身を失はんとす。豈に唯だ正を削るのみならんや。凶とせざる所靡く。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
剝は刀で削り取っていくという意味である。徳の無い者が削り取りながら有徳者にせまっていくところである。このような時には有徳者は遁れておくのが良いのである。
[彖傳]
剝にはものを破る、落とすという義もあるが、この場合は削り落とすの意󠄃である。小人が世の中の隅々にはびこっているので、君子たるものはどこにも行かない方が良い。そして正しい行いをつづけていかなければならない。今はすべてが陰になろうとしているが、固く道徳を守り、一陽来復に備えておくべきである。
[象傳]
地の上に山がある。地は民であり、山は君主である。地が厚ければ山は盤石であるように、民の生活基盤が盤石であってこそ、君主は盤石なのである。卦の形は牀のようである。牀とは今の机のことで、一番上の上爻が机で、五爻までの陰爻が足である。
《爻辭》

9/10(土) ䷜ 坎爲水(かんゐすい) 五爻三爻

9/10(土) 坎爲水(かんゐすい) 五爻三爻


【運勢】
困難が絶えず道を見失う時。
緊張感を持って過ごすと良い。
思い悩み立ち止まれば、問題は先送りになり、進退極まる結果となる。
運気は必ず好転する。
どんなに辛い状況でも、自分を信じて行動する事が大切である。


【結果】
䷜◎五⚪︎三
坎爲水(かんゐすい) 五爻三爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][三爻]


【原文】
《卦辭》
習坎は、孚(まこと)有り。維(こ)れ心亨(とほ)る。行いて尚ふること有り。
彖に曰く、習󠄃坎は重險(じゅうけん)なり。水流れて盈(み)たず。險(けん)を行いて其の信を失はず。維(こ)れ心亨るとは、乃ち剛中を以てなり。行いて尚ふること有りとは、往いて功有るなり。天の儉(けん)は升(のぼ)るべからざるなり。地の險は山川丘陵なり。王公、險を設けて以て其の國を守る。險の時と用と大なるかな。
象に曰く、水洊(しきり)に至るは、習󠄃坎。君子以て德行を常にして敎事を習󠄃ふ。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。坎盈たず。祗だ旣く平らかなるに、咎なし。
象に曰く、坎盈たずとは、中未だ大ならざるなり。
[三爻]
六三。來るも之くも坎坎たり。險にして且つ枕ふ。坎窞に入る。用ふることなかれ。
象に曰く、來るも之くも坎坎たりとは、終に功なきなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
坎(水)は險難の卦である。それが二つも重なっているので、道を見失ったような状況である。この状況を脱するには、心に実(じつ)がなければならない。どんな辛い状況でも誠を貫き通せば、最終的には安楽の境地に達し、人に尊ばれることになる。


《爻辭》
[五爻 優先]
坎の主爲りて、應じ輔くるなく以て自ら佐くるべし。未だ能く坎を盈たざる者なり。坎の盈たざれば、則ち險の盡きず。祗、辭なり。坎の主爲りて、盡く之を平らげて咎なし。故に祗だ旣く平らかなり、咎なきと曰ふなり。旣く平らかにして乃ち咎なきを説くは、九五、未だ咎を免れざるを明らかにするなり。
[三爻]
旣に履に其の位に非ずして、而もまた兩坎の間に處り。出づれば則ち坎に之き、居れば則ちまた坎なり。故に來るも之くも坎坎たりと曰ふなり。枕は、枝へて安んぜざるの謂ふなり。出づれば則ち之くなく、處れば則ち安んずるなし。故に險にして且つ枕なりと曰ふなり。來るも之くも皆坎なり。之を用ふる所なし。徒らに勞するのみ。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
危険なるものの上に危険なるものが重なり、険難の象である。しかし如何に危険な状況にあっても孚(まこと)を失ってはいけない。たとえ禍のために僵(たお)れても、その行いの尊ぶべき所は死後も人から称される。この孚が水から出てくるのは、潮汐は時を間違えず、月は旧暦十五日に必ず満月になる。この間違いの無い所から孚の象がある。
[彖傳]
習坎は陰を重ねたもので、これは習の字を釋(と)いたものである。水は常に流れ続け、塞がる所が無ければ、盈ちて溢れることが無い。水の流れは岩にぶつかったり、流路が屈曲したり困難な所があるが、潮が上り潮が下るという所においては間違いが無い。このように人は如何なる危険な所にあっても、如何なる苦しみに遭っても、信を失ってはいけない。信を失わず進んでゆくのが功である。二爻と五爻の陽爻は剛にして中正であり、中庸の徳を持っている。山川丘陵の険しく侵し難い所を、王公は外国からの護りに用いる。また小人が跋扈し君子が難に遭い苦しみを受ける世の中である。
[象傳]
洊(かさ)ねるという字は「再び」「仍る」と解くことができる。水は如何なる危険な所を流れても常に失わない孚がある。そこで徳の行いを常にする。教育を重ね、徳を育てなければいけない。


《爻辭》
[五爻 優先][三爻]

9/9(金) ䷝ 離爲火(りゐか) 初爻

9/9(金) 離爲火(りゐか) 初爻


【運勢】
感性を養うのに良い時。
調和を保ち、軋轢を避けると良い。
軽率な振る舞いを続ければ、取り返しのつかない事態になる。
慎重に考えて行動すると良い。
皆が正しさを共有すれば、自然と秩序は守られ何事も上手く行くだろう。


【結果】
䷝◎
離爲火(りゐか) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
離は貞に利(よろ)し。亨(とほ)る。牝牛を畜(やしな)へば吉。
彖に曰く、離は麗なり。日月は天に麗(つ)き、百穀草木は地に麗き、重明󠄃以て正に麗く。乃(すなは)ち天下を化成す。柔、中正に麗く。故に亨る。是を以て牝牛を畜へば吉なり。
象に曰く、明󠄃兩たび作るは離。大人以て明󠄃を繼ぎ、四方を照らす。


《爻辭》
初九。履むこと錯然たり。之れを敬して咎なし。
象に曰く、履錯の敬は、以て咎を辟くるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
離は柔であることが正しい。だから、必ず正しくして後にうまく行く。陰爻が卦の真ん中にある。牝の善いものである。外は強くて内は柔らかい。牛の善いものである。柔順を良しとする。凶暴な動物を飼ってはならない。牝牛を飼うのが良い。それぞれのものが、あるべき場所にあるのが良い。陰爻が真ん中に在ればうまく行く。吉。強暴な動物を飼うべきでない。


《爻辭》
錯然は警戒し愼しむ樣である。離の初めで進むことが盛んである。然し未だ渡り切れていないので、行動は慎むべきである。敬を大切にすれば問題を回避できる。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
離は附くということである。一陰が二陽の間についている。火であり、日であり、電気であり、德としては明󠄃である。皆柔順であることを知っている。明󠄃は正しくあるのに良い。世の中で明󠄃を用いれば、正を失いがちである。明󠄃が二つ重なる状態で正を忘れなければ、天下を化成することが可能である。坤では牝馬の貞によいとあったが、この離では牝牛である。柔順の徳というより、柔順な人に服するのが良い。智の至りである。明󠄃とは日のことである。前の日が没しても、次の日の出がある。君子はこれを体現し、前の王の明徳を継いでいくのである。


《爻辭》
錯然とは交錯したさまをいう。剛で下に居る。上に応じるものが無い。志は上を目指すが、進むことができない。慎んで敢えて進むべきでない。人は下に居ると上を目指してしまうものであるが、上に応援する人が居ない場合は成功しない。却って恥をかく。まずは慎むことである。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
離はつくの意󠄃味である。正しくあればどこまでもよい。陰が陽爻二つの間についている。この陰爻は坤からきた。牝牛は柔順であり、温厚である。二爻と五爻が牝牛であるから、柔順の徳をやしなうべきである。
[彖傳]
乾の卦の二爻と五爻に陰爻がついたのである。日月は天について天下をあまねく照らす。また百穀草木は地に附いて盛んである。明󠄃の上に明󠄃が重なっているので、重明󠄃という。それが皆正しい位置についている。日月が天下を照らすように、君主も今日も明日も正しさを失わずにいれば、あまねく天下を化すことが出来る。中正なる所󠄃に居るのは二爻である。牝牛というのは二爻のことである。天子は每日明徳を以て政治をしなければならない。


《爻辭》
初九は東から日が出ようとする所であり、未だ昧(くら)いから道が判然としない。此処で軽々しく進んで往けば、石に躓いたり穴に堕ちたりと云う様な事がある。其所で油断せずに、能々慎まなければいけない。是を人で解釈すると、未だ学問が明らかで無く、自身の行いに又疑いが起って来る。しかし十分に慎みを加えて往けば、咎を受ける事は無い。
[象傳]
足を履み進めて往く時には、紛らわしい所で道を過る事の無いように、慎しみが必要である。そうすれば咎を避ける事が出来る。

9/8(木) ䷯ 水風井(すいふうせい)→䷏ 雷地豫(らいちよ)

9/8(木) 水風井(すいふうせい)→ 雷地豫(らいちよ)


【運勢】
困難な課題に取り組み、絆を深めるのに良い時。目標を明確にすると良い。
慎始敬終。最後まで気を抜かず、着実に進める事が大切である。
邪な考えに惑わされてはいけない。
賢人に倣い礼を尽くすと良い。


【結果】

本卦:水風井(すいふうせい)
之卦:雷地豫(らいちよ)
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 老陽][四爻 老陰]
[三爻 老陽][二爻 老陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻][四爻][三爻][二爻]


【原文】
《本卦:
水風井》
井は邑を改めて井を改めず。喪ふことなく得ることなし。往来井を井とす。汔(ほとん)ど至らんとして亦た未だ井に繘(ゐつ)せず。其の瓶を羸(やぶ)る凶。
彖に曰く、水に巽れて水を上ぐるは井。井は養ひて窮まらず。邑を改めて井を改めざるは乃ち剛中をっ以てなり。汔(ほとん)ど至らんとして未だ井に繘(ゐつ)せずとは、未だ功有らざるなり。其の瓶を羸(やぶ)る、是を以て凶なるなり。
象に曰く、木の上に水あるは井。君子以て民を勞し、勧め相(たす)く。


《之卦:
雷地豫》
豫は侯を建て師を行るに利し。
彖に曰く、豫は剛應ぜられて、志行はる。順以て動くは豫。豫は順にして以て動く。故に天地も之の如し。而るを況んや侯を建て師を行るをや。天地順を以て動く。故に日月過(あやま)らずして、四時忒(たが)はず。聖人順を以て動く。則ち刑罰清くして民服す。豫の時義大なるかな。
象に曰く、雷地を出でて、奮ふは豫。先王以て樂を作り、德を崇(たうと)び、之を上帝に殷薦して、以て祖󠄃考を配す。


【解釋】
《本卦:
水風井》
〔王弼の解釋〕
井は不変の徳がある。常にあり、変化しない。ほぼ到達するのに井の水が出てこない。井は水が出なければ意味がない。至る直前でこぼしてしまったら、汲まないのと同じである。剛中である。だからよくその場にとどまり、変わらない。


〔東涯の解釋〕
汔はほとんど、繘は井戸の水をくみ上げる綱、瓶は水を汲む器、羸は破れるの意󠄃。内卦は木、その徳は入る。外卦は水。木が水の下に入って水をくみ上げる。よく人を養い、極まることがないのである。二爻も五爻も剛中の才があり、常の徳がある。そして人々を養う。井の水は減りもしないし、増えもしない。往来の人々は、みなその恩恵にあずかる。また、井は水を汲んで初めて役に立つ。水をほとんどくみ上げたところで、綱が上まで来なかったり、器が壊れてしまっては、何の役にも立たない。君子が德を修め、世の中に不正がはびこっても常に一人正しさを守り、世の中にどんな禍󠄃があろうとも不易の道を進む。窮まったり、通ったりで増えも減りもしない。あまねく人々のためになる。終始励み、怠らない。そして成功をおさめるのである。其の志を挫くことは出来ない。


〔根本通明の解釋〕
此の井は、俗に言う井戸で、水を汲み上げて以て人を養う所である。井戸の水は人間の徳に譬えたものである。乃ち道徳である。邑が変わり、国が種々に変化しても、道徳は動かすべきものでない。井戸の水は幾ら汲んでも減じて無くなる事は無く、また汲まずに置いても溢れ出る事も無い。地の中に名水を掘り当て清水が湧出するのは、学問を修め仁義礼智の徳が湧き出でて来るが如くである。釣瓶縄を置かなければ之を汲み上げることが出来ないように、道徳ある人物を朝廷へ薦め挙げる人が無ければいけない。しかし、賢人を妬み釣瓶を壊す小人もあり、之は最も凶である。
[彖傳]
下卦の巽は五行では木の象である。其処で瓶に取る。上卦の水の中に瓶を入れる形である。井戸は、水を幾ら汲んで人を養っても尽きることは無い。賢人と云うものも道徳を以て多くの人に施し養うが、道徳は尽きることが無い。此の卦は二爻目と五爻目とも剛中を得ているから、中庸にして長く施して養う所がある。しかし折角井戸を掘っても繘(つるべ)が無い。学問道徳盛んな人があっても、朝廷において挙げて用いなければ養ったところの功が出て来ない。また釣瓶を蠃(や)ぶり、賢人を用いないように讒言を以て害する者がある。是を以て凶である。
[象傳]
木の上に水がある。即ち繘を井戸の中へ入れる形である。水は広く人を養うものであり、農業が最も盛んなるものである。君子は水を以て農民を良く励まし助ける所がある。


《之卦:
雷地豫》
〔王弼、東涯の解釋〕
豫はあらかじめすることや、楽しいことを意味する。四爻のみが陽爻で、その周りを陰爻が囲んで仲良くしている。上卦は諸侯を表し、下卦は村を表すので、兵を率いる時である。統率するには、下の者が楽しみ喜んで馳せ参じる状況でなければならない。そして、順調に行動すれば、罰を与えることも少なくて、民はよく治まるのである。


〔根本通明の解釋〕
豫は象の中の最も大きなものをいう。豫は舒(ゆる)やかという意味の舒、叙、序と同じで、物を急がず順序を踐(ふ)んで往く。そこで必ず成功することから、悦び楽しむという義がある。一方で、豫(あらかじ)めという義があるのは、十年も後の事を考えて今日から行動して往き、早計であることによる。上卦の雷が下卦の地の上に出た象で、萬物が盛んになっていく。天下が治まり安楽になるには、侯を建てるのが良い。
[彖傳]
四爻目は剛で震の主爻であり、天子である。また長子でもあり、大臣にもなる。この四爻目の剛に天下悉く応じる。震は行くの義で、豫は順を以て動くの義であるから、天道天理に順って動いて行き、必ず悦びを得る所となる。日月の運行、春夏秋冬の巡りに間違う所は無い。三・四・五爻目の坎は法律の義がある。法は備わっているが、用いずに民は服す所となる。国家安楽であり、学問道徳を正しくする所があるから、義は大いなるかな、と言う。
[象傳]
豫は萬物皆悦ぶという義である。この象を用いて作ったのは音楽である。歌は最も古く、道徳功労を詩にして、詩を謡って天に誥(つ)げる。そうしてその人の徳は愈々高く尊くなるのである。殷薦というのは、有るだけの音楽を悉く奏することである。黄帝、堯、舜、夏、殷、周を六代の楽という。上帝を本にして祖考を合わせて祭り、音楽を殷(さか)んに奏す。

9/7(水) ䷘ 天雷无妄(てんらいむまう) 変爻無し

9/7(水) 天雷无妄(てんらいむまう) 変爻無し


【運勢】
誠の心を持ち明るく過ごすのに良い時。
人こそ人の鏡。否定的な言動は避けると良い。
物事に執着せず、自然の成り行きに身を任せる事が大切である。
己の役割を理解し相手と向き合えば、間違いを犯す事はない。


【結果】

天雷无妄(てんらいむまう) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陽]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
无妄(むまう)は、元(おおい)に亨(とほ)る、貞に利(よろ)し。其れ正に匪(あら)ずんば眚(わざわい)有り。往く攸(ところ)有るに利(よろ)しからず。
彖に曰く、无妄は剛外より來(きた)りて、内に主になり、動いて健。剛中にして應(おう)ず。大(おおい)に亨り以て正し。天の命なり。其正に匪ずんば眚有り、往く攸有るに利しからずとは、无妄の往く、何(いずく)にかゆかん。天命、祐(たす)けず、行かんかな。
象に曰く、天の下に雷行き、物に无妄を與(あた)う。先王以て茂(さかん)に時に對(たい)して萬物を育す。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
動いて健とは震のことをいう。雷動して乾健である。剛中というのは五爻を言う。剛が外からきて、内卦の主爻となる。動いていよいよ健である。剛中で応じている。私欲が行われない。妄動することはない。无妄の道ができ、大吉。剛が外から来て内の柔邪の道は消失する。動いていよいよ健であれば剛直の道が通る。剛中にして応じれば斉明の德が通る。天の教命である。もし正しくないのであれば、往く攸有るによくない。茂は盛んなことである。物は皆あえて妄でない。その後に萬物はそれぞれその性を全うできる。時に対して物は育つ。是より盛んなことはない。


〔東涯の解釋〕
妄(もう)は、望と音に相近し。无妄は、希望することがない。『史記』では无望󠄇とかく。この卦をさかさにすると
山天大畜になる。主爻は初九である。无妄は予期せずに来るものである。卦体は震が動くで、乾が健やかである。五爻と二爻は応じている。まさに天命である。逆に正しくないことをしていれば、どんどん禍いを増す結果となる。舜禹が君で伊傅が臣であるようなものだ。


〔根本通明の解釋〕
无妄は欲がないということである。無望の意味である。『史記』や『戦国策』にも無欲の意味で使われている。ただ誠にのみ志すのである。志が正しくなければ、災いがおこる。
[彖傳]
外卦が天で、内卦が雷である。五爻と二爻が応じており、上下心が通う。天命を受けることを表す。その天命に従うのがよい。それ以外のことをしようとするのは、天命でないことをすることになるので、よろしくない。
[象傳]
天の下に雷があるのが无妄である。人間が无妄であるのは当然であるが、万物も无妄であるべきである。先王はこの无妄の卦を用いて、つとめて万物を育んだ。春夏秋冬、天に従った生き方をした。

9/6(火) ䷤ 風火家人(ふうかかじん) 二爻

9/6(火) 風火家人(ふうかかじん) 二爻


【運勢】
身近な事から始め、土台を堅めるのに良い時。外寛内明を心掛けると良い。
仁者は己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す。
相手を尊重すれば、相手からも自然と尊重される。
皆で支え合う事が大切である。


【結果】
䷤◎
風火家人(ふうかかじん) 二爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[二爻]


【原文】
《卦辭》
家人は女の貞に利し。
彖に曰く、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。
象に曰く、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


《爻辭》
六二。遂(と)ぐるところなし。中饋(ちゅうき)に在り。貞にして吉。
象に曰く、六二の吉は、順にして以て巽ふなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。家の外の他人のことは分からない。家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。四爻が主爻である。主に女性について説かれている。家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


《爻辭》
内に居りて中に處り、履むに其の位を得。陰を以て陽に應り、婦人の正しき義を盡くす。必ず遂ぐる所なく、中饋を職る。巽にして順ふのみ。是を以て貞にして吉なり。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。兩方中である。皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。婦と妻と二つの字がある。双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。中男と兄にも嫁がある。一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。物を煮たり焼いたりするのは竈である。竈をよく治めることが家を治める時の第一である。家族は秘め事をしてはいけない。
《爻辭》

9/5(月) ䷤ 風火家人(ふうかかじん) 変爻無し

9/5(月) 風火家人(ふうかかじん) 変爻無し


【運勢】
身近な事から始め、土台を堅めるのに良い時。
親しき中にも礼儀あり。些細な行動も積み重なれば大きな結果となる。
相手への気配りがなければ、信頼関係は損なわれてしまう。
外寛内明を心掛け正直に過ごすと良い。


【結果】

風火家人(ふうかかじん) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
家人は女の貞に利し。
彖に曰く、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。
象に曰く、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
家人の爻は家族それぞれが一家を治める道について説く。家の外の他人のことは分からない。家人は夫人のことである。
は中女を表す。は長女を表す。四爻が主爻である。主に女性について説かれている。家をそれぞれがうまく治めることで天下も治まるのである。家庭円満の象である。


〔根本通明の解釋〕
家人は家族全員のことであるが、この卦は上が長女下が中女であるから、女ばかりである。家の中がいざこざなく、よく治まるためには女がしっかりしなければならない。この卦の女性は全員和合しており、家はよく治まっている。国家に当てはめると、五爻が天子、二爻が皇后である。兩方中である。皇后の助力により、宮中はよく治まり、朝󠄃廷が治まり、天下が治まるのである。
[彖傳]
五爻が天子で二爻が皇后であり、陰陽正しい位置にある。これはすべての家に言えることで、嚴君というのは、立派な父親と母親を指す。子供は母親に甘えがちであるが、母親が甘やかすと子供に良くないので、厳しさが求められる。家族それぞれが自分の為すべきことをして家はよく治まる。婦と妻と二つの字がある。双方婚礼を平等にするときに妻といい、旣に嫁入りしてからは婦という。中男と兄にも嫁がある。一つの家に三つの夫婦が揃っている。
[象傳]
この卦の場合、
は木、は火である。物を煮たり焼いたりするのは竈である。竈をよく治めることが家を治める時の第一である。家族は秘め事をしてはいけない。

9/4(日) ䷑ 山風蠱(さんぷうこ) 三爻

9/4(日) 山風蠱(さんぷうこ) 三爻


【運勢】
現状に満足しがちな時。
迅速で力強い行動が求められる。
良い習慣を取り入れる事が大切である。
気持ちを新たにし、過去の失敗を成功への足掛かりにすると良い。
不器用でも、恥ずかしがらず全力を尽くす事が大切である。


【結果】
䷑◎
山風蠱(さんぷうこ) 三爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 老陽][二爻 少陽][初爻 少陰]
《爻辭》
[三爻]


【原文】
《卦辭》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰く、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰く、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。


《爻辭》
九三。父の蠱を幹す。小しく悔有り。大なる咎なし。
象に曰く、父の蠱を幹すとは、終に咎なきなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。旣に巽また止まり、競争しない。事有りて競争の煩いがない。だから為すことがある。為すことがあれば大いにうまく行く。天下を治める。蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。德を進めて業を修めればうまく行く。甲とは創制の令である。古いものを以てしてはならない。甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。事によって令を述べる。終われば始まる。天の運行は四季のようである。


《爻辭》
剛を以て事を幹す、其れ應ずるなし。故に悔有るなり。其の位を得るを履み、正を以て父に幹す。小しく悔有りと雖も、終に大なる咎なし。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蠱は壊、腐敗のことである。この卦は變じて隨となる。隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。だから、剛が上って柔が下るというのである。強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。内は巽順であり、よく物を止める。天に十日有り。甲に始まり癸で終わる。甲は事の始めである。甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。前󠄃の事が終わろうとする。腐敗を致す道である。甲に後れるとは乙丙丁である。乱が極まり治まるころである。腐敗を治める道である。治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。そうすればうまく行くのである。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。三・四・五爻目に震の卦がある。これは長子、即ち皇太子である。上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。巽は弱く姑息で敗れる。晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。皇太子が即位して政を改め天下を治める。先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。ニ・三・四爻目に兌の卦がある。兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。これは旧弊の政事を除く義である。三・四・五爻目は震の卦である。震は春で、新しい芽がまた出てくる。
《爻辭》