10/29(金) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 四爻

10/29(金) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 四爻

【運勢】

事の初めに注意すれば、ものごとがよく進むとき。

まだ間違いがそこまで広がってなく、対処可能なとき。対処すべし。

今から物事をなそうとするなら、今は力を貯めるとき、悪いものを抑えようとするなら今行動するという判断をすれば良い。

【原文】

《卦辭》

大畜は貞に利(よろ)し。家食󠄃せざる吉。大川を渉るによろし。

彖に曰はく。大畜は剛健篤實輝光。日にその德を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは大正なり。家食󠄃せずして吉。賢を養ふなり。大川を渉るによろしとは、天に應ずるなり。

象に曰はく、天山中に在るは大畜。君子以て多く前言往行(わうこう)を識して、以てその德を畜(やしな)ふ。

《爻辭》

六四。童牛の牿(こく)。元吉。

象に曰はく、六四の元吉は喜(よろこび)有るなり。

【解釋】

〔王弼、通解の解釋〕

《卦辞》

大畜は大きく蓄へる、とどむることである。

剛健篤実でますます徳が高くなることを表す卦である。

剛い者が最上位に登り、賢者を尊んで賢者を養う。

賢者は家から出て朝廷に仕えはじめた。

吉である。

大事業をするのに良い時である。

《爻辞》

童牛とはまだ角が生えきっていない牛のことである。

初爻が童牛である。

四爻は初爻と相性が良い(応じている)。

牿(こく、四爻)は牛の角を抑える横木のことで、牛がまだ若いので抑えることはたやすい。

よくとどめておくことができるので、喜びがあるのである。

〔根本通明の解釋〕

《卦辞》

大畜は、君が臣を止めて畜(やしな)う卦である。

大は君のことである。

大畜とは反対に小畜という卦がある。

小畜は、臣の方が君を止めるという卦である。

小は臣のことである。

上卦の艮は身体である。

三・四・五爻目の震は仁である。

また二・三・四爻目に兌は義である。

つまり仁義の徳を身の内に具えていることになる。

畜の字は、止めるというだけでなく、之を育てて善くするという義がある。

徳を十分に養はねばならない。

君は、臣の早く出世を求める心を抑えて、十分に学問を以て徳を養わせるのである。

また養われる側も、貞所を守るのが良いので、「利貞」という。

「不家食吉」とは、学問道徳のある人物は君に用いられ、禄を以て養われる所となる。

そのため賢人は家に居って食することは無い。

朝廷に招かれた賢人は、危険なことがあっても之を踏み越えて往くのが良い。

そこで「利渉大川」という。

[彖伝]

天子に剛健なる徳が具わっている。

政務を執っても疲れることがなく、篤実である。

篤実は艮の卦の象である。

また艮の陽爻が上にあり、光輝く所がある。

「日新」というのは、乾の卦で象で、日々昇り沈んでいく太陽である。

「其徳剛上」は、上九を指していう。

上九は剛にして一番上に居る。

[象伝]

上卦の艮は山、其の山の中に天がある。

山中には天の元気が十分に満ちている。

火気と水気の働きで草木が良く生じ、禽獣も繁殖する。

これが大畜である。

「前言」は震の象である。

また震は行くという事もある。

《爻辞》

六四は大臣の位で、陰を以て陰に居る。

この正しい所の大臣が、賢人を留めて養う。

「童牛之告」は、牛が角を人に突き立てることが無い様に、体が小さな頃から角に木を結んで物に当たるのを防ぐのをいう。

下卦の乾は陽の卦であるから、強くて剛である。

その剛なる所を以て人へ突きあてるようではいけないので、子供の内からこれを引き留めて程よくする。

そこで「元吉」である。

[象伝]

大臣たるものは、人材を養うにあたりその人の剛なる所を程よく引きとめる。

後に、その人は立派な賢人になって国家の用を為すことになる。

そこで喜ぶ所となり、喜びは後に出てくるのである。

10/28(木) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 三爻

10/28(木) ䷗ 地雷復(ちらいふく) 三爻

【運勢】

復は、かえるという意味を持っている。

何度も同じ過ちを繰り返しては、注意されて戻っている。危ういがまだ大事に至ってない。

初心を忘れてはならない。正しい道を続けるためには、強い信念が必要である。

【原文】

《卦辭》

復は亨(とほ)る。出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。その道に反復す。七日にして來復す。往くところ有るによろし。

彖(たん)に曰(い)はく、複は亨(とほ)る。剛反るなり。動いて順を以て行ふ。ここを以て出入疾(つつが)なく、朋(とも)來たりて咎めなし。「その道に反復す。七日にして來復す」とは、天の行なり。「往くところ有るによろし」とは、剛長ずるなり。復はそれ天地の心を見るか。

象に曰はく、雷地中に在るは復。先王以て至日に關(せき)を閉(と)づ。商旅(しょうりょ)は行かず。后は方を省みず。

《爻辭》

六三。頻(ひん)に復す。厲(あやふ)けれども咎め无(な)し。

象に曰はく、頻復の厲(れい)は、義咎(とが)め无(な)きなり。

【解釋】

〔王弼の解釋〕

《卦辞》

復はかえるの意󠄃味である。

ひとつ前の䷖剝の上爻にあった陽爻が初爻に帰ったということである。

一陽来復、また盛んになろうとしている。

陰陽の運行が他の妨害を受けず、順調であるから、何か事をなすのに良い時期である。

《爻辞》

三爻は迷いやすく心が動きやすいので、危険なことが多くある。

しかし、それでも正しい道に戻ることが出来る。

正しい道に戻れたのならば、問題はない。

〔根本通明の解釋〕

《卦辞》

復は本の所に反(かえ)るという意である。

一年で考えれば旧暦の十一月、つまり冬至にあたる。

天の気が地の底に来ることで万物は生じる。

この卦は天の万物を生じる所に、復(ま)た立ち反った所である。

前の卦の山地剥は上九のみが陽爻で、それは碩果(せきか:大きく実った果実)を意味する。

果実が地に落ちて復た芽が生える所の象である。

「其道」とは、万物を生成する所の道である。

「七日来復」とは、乾為天から一爻ずつ陽が減っていって全てが陰爻になり、復た新たに陽爻を生じるまで七段階の過程があることによる(乾為天→①天風姤→②天山遯→③天地否→④風地観→⑤山地剥→⑥坤為地→⑦地雷復)。

雷気が往くに従って万物が発生する。

また君子の勢いが昌(さか)んになれば道徳が行われる世となり、志ある者は朝廷に出て往って事を行うのが良い。

それで「利有攸往」なのである。

[彖伝]

「復亨、剛反」とは、山地剥の陽爻が引っ繰り反ったのである。

上卦の坤の卦徳(卦の基本的特徴)は順である。

つまり天道天理に順って段々と動いて往く所であるから「動而以順行」なのである。

七とは陽の発生する所の数で、これから段々と陽が長じて往く。

「天地之心」は万物の生成である。

[象伝]

雷が地中に来たって居ることが「復」である。

陽気は地の底へ来た所で未だ力が弱く、これを育てなければならない。

そこで先王は一陽来復(いちようらいふく:陰暦十一月、冬至)の時期にあっては関門を閉ざして、商人や旅行者の往来をなくし、各人は家で静かにした。

天子と雖も冬至の日には巡狩(じゅんしゅ:諸国の巡視)を罷めている。

《爻辞》

震の卦徳は動であり、変化が生じる。

『論語』で言えば、子路・子貢の様な、復(ふく)したり変わったり、また復したりする様なことである。

『論語』雍也第六に「子曰わく、回(かい)や其の心三月(さんがつ)仁に違(たが)わず。其の余(よ)は則(すなわ)ち日月(ひびつきづき)に至(いた)るのみ」とある(顔回は三ヶ月もの間、仁から離れることがなかったが、その他の者は日に一度か月に一度仁に復するのがせいぜいであった)。

このように頻(しき)りに復するから厲(あや)うい。

しかし厲ういけれども咎が無いのは、仁に始終復するからである。

[象伝]

過っても繰り返し仁に復するから咎が無いのである。

10/27(水) ䷸ 巽爲風(そんゐふう) 初爻

10/27(水) ䷸ 巽爲風(そんゐふう) 初爻

【運勢】

巽は従うという意味を持つ。

立派な人が上にいるのなら、それに従うべきである。

ただ、上の人からの命令でも、自己の判断が求められるときがある。ただ、すべての命令に従うのではなく、本当に意思があるのなら自分を突き通す必要がある時でもある。

【結果】䷸◎初

巽爲風(そんゐふう) 初爻


《卦辭》


[上爻 少陽][五爻 少陽][四爻 少陰]


[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陰]


《爻辭》


[初爻]

【原文】

《卦辭》

巽は小(すこ)し亨(とほ)る。往く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大人を見るに利し。

彖に曰はく、重巽以て命を申(かさ)ね、剛、中正に巽して志行はる。柔皆剛に順ふ。是を以て小し亨る。往く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大人を見るに利し。

象に曰はく、隨風は巽。君子以て命を申(かさ)ね、事を行ふ。

《爻辭》

初六。進退す。武人の貞に利し。

象に曰く、進退すとは、志疑うなり。

武人の貞に利しとは、志治るなり。

【解釋】

〔王弼の解釋〕

《卦辭》

巽の德であるから、少しうまく行く。上下ともに巽。令に違わず命が行われる。だから命が重なり、事が行われる時、上下ともに巽なのである。巽はよく仕えて行くことである。拒むものはない。大人は巽を用いて道がいよいよ盛んになる。剛が巽を用いる。中正に居るのは譲られたのである。明󠄃は間違えることがない。だから少しうまく行くのである。

《爻辭》

令の初に處り、未だ服し令すること能はざる者なり。故に進退するなり。命を成し邪を齊ふるは、武人より善なし。故に武人の貞に利し。以て之を整ふ。

〔東涯の解釋〕

《卦辭》

巽は順である。一陰が二陽の下に居て陽に順っている。また、入るという意味もある。風、木、命令を意味する。五爻は剛で中正である。大人の象である。命令に重複がある。初爻と四爻は陰であり、陽に順う。大きなことは出来ないにしても、小さなことは出来る。命令は、剛が過ぎれば厳しすぎて民が従えず、乱れてしまう。柔が過ぎれば緩くなり、秩序が乱れてしまう。剛中の君に柔が順う状況なら、大きな成功は見れなくても、官職について君に仕えるのに支障はない。

《爻辭》

〔根本通明の解釋〕

《卦辭》

巽は四爻目の陰爻と初爻目の陰爻が卦の主である。

陰爻は、上に重なる陽爻に順っていけば能く亨り、進んで事を行う所に宜しきを得る。

この卦はもとは山風蠱から変わったものである。

天子の晩年に政治が乱れ、崩御後に太子が即位した。

そして朝廷に入り込んだ小人を除きさり、天下を斉(ととの)えた所の象である。

古代、堯が隠居して舜に政を斉えさせたのは、まさに此の卦の義である。

[彖傳]

なし

[象傳]

巽は重ねて命令を下し、能く下へ諭す。

是までの政の弊害を悉く除いた後で命令を下す。

剛は五爻目で、中正の所に坐っており、思う通りに志が行われて往く。

柔は初爻目で二・三爻目に順う。

四爻目も五・上爻目に順う。

そこで小人は大人を見て順い事を行うのが宜しい。

10/26(火) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 五爻三爻

10/26(火) ䷙ 山天大畜(さんてんたいちく) 五爻三爻

【運勢】
畜は、貯えることや止めるという意味がある。

誤った道に進むことを止めることができる。吉。

普通に行えば上手く行く時である。だからこそ、猛進しないことが重要。

【原文】
《卦辭》
大畜は貞に利(よろ)し。家食󠄃せざる吉。大川を渉るによろし。
彖に曰はく。大畜は剛健篤實輝光。日にその德を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは大正なり。家食󠄃せずして吉。賢を養ふなり。大川を渉るによろしとは、天に應ずるなり。
象に曰はく、天山中に在るは大畜。君子以て多く前言往行(わうこう)を識して、以てその德を畜(やしな)ふ。

《爻辭》
[五爻 優先]

六五。豕の牙を豶す。吉。
象に曰く、六五の吉は、慶あるなり。

[三爻]
九三。良馬逐(お)ふ、艱貞(かんてい)に利し。
日に輿衛を閑(なら)ふ、往くところ有るに利し。
象に曰く、往くところ有るに利しとは、志を上合するなり。

【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辞》
大畜は大きく蓄へる、とどむることである。剛健篤実でますます徳が高くなることを表す卦である。剛い者が最上位に登り、賢者を尊んで賢者を養う。賢者は家から出て朝廷に仕えはじめた。吉である。大事業をするのに良い時である。

〔王弼の解釈〕

《爻辞》

[五爻 優先]

豕の牙は横にして猾、剛にして暴、制し難きの物なり。二を謂ふ也。五、尊位を得ていて、畜の主である。二、剛にして進む。能く其の牙を豶く。

柔能く健を制し、暴なるを禁じ盛なるを抑ふ。豈に唯だ能く其の位を固むるのみならんや。乃ち將に慶び有らんとする也。

[三爻]

物極まれば則ち反る。故に畜るのを、極めれば則ち通る。初二の進むは、畜の盛に値ふ。故に以て升ってはならない。九三に至りて、上九に升る。而して上九、天衢の亨るに處り、塗徑大いに通る。進みて違き距つ无く、以て馳騁す可し。故に良馬逐ふと曰ふ也。履むに其の位に當たり、進むに其の時を得る。通路に之り、險厄なるを憂へず。故に艱みて貞しきに利ある也。閑は閡也。衞は護也。進むに其の時を得。艱難を渉ると雖も、患ふ无き也。輿、閑に遇ふと雖も、故に衞る也。上と志を合はす。故に往く攸有るに利ある也。

10/25(月) ䷽ 雷山小過(らいさんしょうか) 上爻

10/25(月) ䷽ 雷山小過(らいさんしょうか) 上爻

【運勢】

自身を過剰評価して行動しているので、痛い目を見る。

今の状態は、奢っているようなものなので周りを見渡せていない。

このような時は、初心を思い出して、もう少し簡単なものから始めるべき。

今の状態を認識し、落ち着いた行動が求められる。

【原文】

《卦辭》

小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。

彖に曰はく、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。

象に曰はく、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。

《爻辭》

上六。遇はずして之に過ぐ。飛鳥之に離る、凶。是を災眚(さいせい)と謂ふ。

象に曰はく、遇󠄄はずして之に過󠄃ぐとは、已だ亢れるなり。

【解釋】

〔王弼の解釋〕

《卦辭》

飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。

《爻辭》

小人が過ぎる。遂󠄅に上の極みに至る。過ぎて際限を知らない。おごり高ぶる。良い処遇は受けない。飛びて満足せず、災いが至る。

〔伊藤東涯の解釋〕

《卦辭》

陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。

《爻辭》

陰を以て陽に居る。これは遇である。陰で陰に居れば過󠄃である。鳥が網にかかったようである。小過にあって、陰で上爻にいる。遇でなく過。陰が極まって高ぶる。理に違い常を過ぎる。災いが至る。必ず凶にあう。小人が軽はずみに進み、初爻でも身に至り、凶があるのに、禄は繁栄を極め、人災と天災が至る。

〔根本通明の解釋〕

《卦辭》

小過の卦は全体でみると☵の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻に☴がある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。

[彖傳]

祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。

[象傳]

大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。

《爻辞》

上六は九三と応じて居るが、九三は上六の求めに応じて往く事が無いから、遇う事が出来ない。一番上の上六は何処迄も上り過ぎる。飛ぶ鳥が鷹に攫まれ、遥か遠くに連れて往かれれば、助かり様が無い。上六は我が居所を離れ、遥か遠くに引出して往かれる。其所で凶である。之は外から来た災である。

[象伝]

上六は已に上の方へ上り過ぎた。深い志を得た小人は、我が身が亢ぶり過ぎて、終には下に降り様がなくなった。之は丁度上に亢り過ぎて、鷹に攫まれた鶏が降ろうとしても降れなくなった様なものである。初六と上六は鳥で言えば羽である。臣は丁度羽にあたり、君は身体にあたる。権力ある大臣に率いられ、大いなる災眚(さいせい)ある所に引き立てて往かれる義である。初爻目と上爻が風切り羽で、二爻目と五爻目が其の次の羽で、真ん中の身体を勝手に率いて往く所の卦である。

10/24(日) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 三爻

10/24(日) ䷧ 雷水解(らいすいかい) 三爻

【運勢】

本来、荷物を持つ者が大臣の位にいる。要するに不相応の地位にいる。

不相応なので、他人から非難をうけるだろう。

いつも通りの場所にいるべきである。

【原文】
《卦辭》
解は西南によろし。往くところなし。それ來たり復すれば吉。往くところあれば、夙(つと)にして吉。彖(たん)に曰(い)はく、解は險(けん)以て動く。動いて險より免(まぬが)るるは解。「解は西南によろし」とは、往(い)きて衆を得るなり。「それ來たり復して吉」とは、乃(すなは)ち中を得るなり。「往くところ有れば夙にして吉」とは、往きて功あるなり。天地解(ひら)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作りて百果艸木(ひゃくかそうもく)皆甲拆(こうたく)す。解の時大なるかな。象に曰はく、雷雨作るは解。君子以て過ちを赦(ゆる)し、罪を宥(ゆる)す。

《爻辭》

六三。負ひて且つ乘る。寇の至るを致す。貞なれども吝。

象に曰はく、負ひて且つ乘るとは、亦た醜かる可き也。我自り戎を致す。又た誰をか咎めん也。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
西南は衆である。難を解決し、危険を整える。利を衆に施す。また東北に困まらない。故に東北に利がないとは言わないのである。まだ、困難を解決するによくない。安に処する迷う。解とは困難を解決し、厄を除くことである。中を失わない。難があっても行けば、迅速であれば吉。難が無ければよく中に復す。難があれば厄を除く。

《爻辭》
位に得ていなく、正でない。四に附き、夫の柔邪なるを用て、以て自ら媚ぶ者である。二に乗って四を負ひ、以て其の身を容る。寇の來る也、自己の致す所なり。幸ひにして免ると雖も、正の賤しむ所也。

〔東涯の解釋〕
《卦辭》
解は解散の意󠄃である。危険に居てよく動けば、険難を回避できる。卦は変じて蹇となる。二爻が蹇の外卦に行き、五爻が西南坤の方に行く。坤には地の象がある。險の中でよく動ける才でよく進み、よく止まる。どこでも通用する。君子は陰陽を和し、過失であれば赦して問わず、罪悪があれば、寛大にこれを宥す。仁政の至りである。解の道である。

〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
前の卦の水山蹇(䷦、天下の険難なる所の卦)が解けた所の卦である。
長い大乱で農業が廃れ、人民は衰えてしまっている。
西南は坤の卦で、地の象である。
地に五穀を植立てて、以て人民を養う。
天下が平らいだなら、進んで事を為す所の仕事は無い。
漸次人民を養えば宜しい。
若し大乱が平らいでいても、進んで往く所の事柄があるならば、速やかに往ってこれを治めるのが宜しい。
[彖伝]
険難に屈せずに踏み越えて外へ出ることで、険難を免れた。
西南は坤の卦で、衆口衆口という象がある。
大勢の人民を我が方へ撫で育てるようにしなければいけない。
既に大難は解けているから、多く仕事をし過ぎず、程良い所に止(とど)まるのが宜しい。
往くべき所があるなら、往けば必ず功が出て来る。
[象伝]
天地に於いては万物を生じ育(やしな)う時である。
君子に於いては仁を行う時であるから、人を殺めるのは良くない。
其所で過ちを赦し、罪人を宥(なだ)める。
善い事を為す心で行った悪事を過ちと云い、それならば無罪になる。
しかし意あって悪事を為したのは、赦すわけにはいかないので流刑などに処す。

10/23(土) ䷼ 風澤中孚(ふうたくちゅうふ)変爻なし

10/23(土) ䷼ 風澤中孚(ふうたくちゅうふ)変爻なし

【運勢】

誠実で私心のない行いが人に伝わるとき。

外からみた時に厳しいように見えても、中身は優しくなければならない。

私心のない純粋な心で挑戦するべきとき。

【原文】
中孚は豚魚吉。大川を渉るに利し。貞に利し。
彖に曰はく、中孚は柔、内に在りて、剛、中を得る。說󠄁(よろこ)びて巽(したが)ふ。豚魚吉とは、信豚魚に及󠄃ぶなり。大川を渉るに利しとは、木に乘りて舟虚なるなり。中孚以て貞に利し。乃ち天に應ずるなり。
象に曰はく、澤上に風有るは中孚。君子以て獄を議し、死を緩(ゆる)す。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
上四に徳があって初めて誠となる。信立ちて初めて国が治まる。柔が内に在り、剛が中を得ている。剛が中を得れば正直、柔が内に在れば、静順である。喜んで従う。競い合わない。魚は虫の潜り隠れるものである。豚は獣の卑しく弱いものである。競い合う道󠄃はない。中信の徳があつければ、どんなに弱い者󠄃でも信用に足る。木を船の空洞に用いればついに溺れない。

〔東涯の解釋〕
孚は信である。豚魚は江豚である。大きな澤に住み、風が起これば必ず出現する。二陰が四陽の中にある。二爻と五爻は共に剛中の徳があり、心が誠実である。だから中孚というのである。己に信があれば物は必ず感じる。木が澤の上に在る。真ん中が空洞の舟であり、櫂もある。大難を過ごして、誠を守る。誠があれば物は何でも動かせる。まだ誠がない場合は物を動かせない。

10/22(金) ䷳ 艮爲山(ごんゐさん) 上爻二爻

10/22(金) ䷳ 艮爲山(ごんゐさん) 上爻二爻

【運勢】  

留まるべきときに、大変であっても留まることができるので問題ない。

だからこそ、焦らずじっと我慢することが大事である。

最後まで留まることができるから、物事を成すことができる。しかし、そうすることは難しい。それを成し遂げることで成功するのである。

【原文】

《卦辭》

その背に艮(とどま)り、その身を獲(え)ず。その庭に行きてその人を見ず。咎めなし。

彖に曰はく、艮は止まるなり。時止まるときは則ち止まり、時行くときは、則ち行く。動靜(どうせい)その時を失はず。その道光明なり。その止まるに艮(とどま)るはその所に止まるなり。上下敵應(てきわう)して相ひ與(くみ)せず。ここを以て、その身を獲ず。その庭に行きてその人を見ず。咎めなきなり。

象に曰はく、兼󠄄ねたる山は艮。君子以て思ふことその位を出ず。

《爻辭》

〈上爻〉

上九。艮まるに敦(あつ)し。吉。

象に曰はく、艮まるに敦きの吉は、以て終(おわり)を厚うするなり。

〈二爻〉

六二。其の腓に艮まる。拯(すく)はずして、其れ随ふ。其の心快(こころよ)からず。

象に曰はく、拯(すく)はずして、其れ随ふとは、未だ退いて聴かざるなり。

【解釈】

〔王弼と東涯の解釋〕

《卦辭》

艮はとどまる意󠄃である。山である。山が二つ重なるので兼山ともいう。應爻が一つもなく、互いに反発して人の顔をみようとしないので、背中しか見ないのである。どこかに向おうとすることなく、その地位にとどまるだけである。

《爻辭》

〈上爻〉

止の極に居て、止まることを極める者である。敦く重にして上に在り、陷らずに、妄に非ず。宜しきを得ているので吉であるべき。

〈二爻〉

隨とは趾のことである。其のふくらはぎに止まる。故に其の趾拯はれざる也。ふくらはぎは躁を体して止まるに處り。而して其の隨を拯ふを得ず、又た退き聴いて安静することができない。故に其の心快からざるなのである。

10/21(木) ䷐ 澤雷隨(たくらいずゐ) 五爻四爻

10/21(木) ䷐ 澤雷隨(たくらいずゐ) 五爻四爻

【運勢】
随は、従うの意味があり、その中でも極みにいる。
従うべき人を選ぶことが成功の元であり、誠心誠意従えば問題ない。最後まで一貫して、ただ正しい道を続けるべきとき。


【原文】
《卦辭》
隨(ずゐ)は元(おほ)いに亨(とほ)る。
貞(てい)によろし。咎めなし。彖(たん)に曰(い)はく、隨は剛に來たりて柔に下る。動いて說󠄁(よろこ)ぶは隨(ずゐ)。元(おほ)いに亨(とほ)り、貞。咎めなし。しかして天下時に隨(したが)ふ。時に隨(したが)ふの義、大なるかな。象に曰はく、澤中に雷あるは隨。君子以て晦(みそか)に嚮(むか)ひて入りて宴息(えんそく)す。


《爻辭》

〈五爻〉

九五。嘉に孚あり。吉。

象に曰はく、嘉に孚あり、吉とは、位正中なる也。

〈四爻〉

九四。隨ひて獲ること有り。貞なれども凶。孚有り道に在りて、以て明ならば何の咎あらん。

象に曰はく、隨ひて獲ること有りとは、其の義凶也。孚有り道に在りとは、明の功也。

【解釋】
〔王弼、通解の解釋〕
《卦辭》
隨はしたがうの意󠄃味である。内卦は震で動き、外卦は兌であり、よろこぶの意󠄃である。君主が行動するとき、人々はよく協力してくれ、思い通りにできる。人々は時機にしたがい行動する。


《爻辞》
〔王弼の解釈〕

〈五爻〉

正を履みて中に居り、而して處りて世に隨う。時に隨ふの宜しきを盡くし、物の誠なるを得。故に嘉にして吉である。

〈四爻〉

説の初にいて、下にして二陰に據る。三、求めて己に係り、距てざれば則ち獲る。故に隨ひて獲ること有るという。臣の地に居り、其の位に非ざるを履む。以て其の民を擅にし、臣の道を失う。正なるに違える者である。故に貞なれど凶と曰う。剛を体して説に居て、而して民の心を得る。能く其の事を幹りて、其の功を成す者である。常の義に違ふと雖も、志物を濟ふことに在り、心公誠に存り。信を著らかにして道に在り、以て其の功を明らかにす。何の咎があるだろうか。

10/20(水) ䷌ 天火同人(てんかどうじん) 上爻二爻

10/20(水) ䷌ 天火同人(てんかどうじん) 上爻二爻

【運勢】

後悔しない人生を送る上で何より大切なのは、意志を貫く事である。

機会は幾らでもあるのだから、結果に拘り過ぎるのは良くない。

辛い時や苦しい時、上手く行かない時、身近な理解者が心の支えとなるだろう。

【原文】
《卦辭》
同人野に于てす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。
彖に曰はく、同人は柔位を得、中を得る。而して乾に應ず。同人といふ。「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし。」とは、乾行くなり。文明にして以て健。中正にして應ず。君子の正なり。


《爻辭》

[五爻]
九五。同人。先には號咷(ごうとう)して後には笑ふ。大師克ちて相遇ふ
象に曰はく、同人の先は中直を以てなり。大師相遇ふは相克つを言ふなり。

[二爻]

六二。同人宗においてす。吝なり。

象に曰はく、同人宗においてすとは、吝の道なり。

【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし」は、二爻の能くする所ではないこれが乾の行う所である。故に特に同人に曰くという。健を行うに武を使わずに、文明を使って之を用いる。相応してに邪を応じずに、中正によって応じる。君子の正しき事である。故に「君子、貞に利し」という。君子は文明をもって徳にする。天、上にあって、火の炎上げている。同人の意味である。君子、小人、各々同じくする所を得る。

《爻辭》

[五爻]
彖に曰く、柔位を得、中を得て、乾に應ずるを同人と曰ふ。然れば則ち柔を體して中に居り、衆の與へる所。剛を執りて直を用ふ、衆の未だ從はざる所。故に近づいても二の剛に隔てられ、未だ厥の志を獲ず。是を以て先には號き咷ぶなり。中に居りて尊に處り、戰へば必ず克く勝つ。故に後には笑ふなり。物をして自ら歸り使へて其の強く直なるを用ふること能はず。故に必ず大師を須て之に克て、然る後に相遇ふなり。

[二爻]

五に在るに應ずるは、唯だ主に同じくするのみ。主を過てば則ち否がる。心を用ふること褊狹なり。鄙吝の道なり。

〔伊藤東涯の解釋〕
《卦辭》
同人とは人が互いに心を同じくすること、共に同じ目標を有することである。天(日)と火は同じ火の性である。野は広い場所のことで、狭い集団での友情も大切であるが、より広い範囲で人と交流することが、大きなことを成し遂げる際には必要である。そのためには正直で、正しい心を大切にしなければならない。

〔根本通明の解釋〕
《卦辞》
同人は、人と人が互いに相親しくして、吉凶ともに同じくする。野は都から遠く離れた田舎で、山や谷の間に居る者までも親しくするという義である。これは乾の象である。天下一軒の家の如くして居れば、互いに亨らない所は無い。九五の天子は六二の賢人を深く信用して、之を用いて往く。
[彖伝]
六二は陰爻を以て陰位に居り、位を得て居る。また下卦の真ん中にあるので、中を得て居る。これは賢人で、中正なる道徳があり、天道に応じて居る。乾は上卦であり、上は外であるから、内から外へ旋って往く。人は道徳を以て普く進んで行う所の義である。之は仁者であり、君子である。天下皆悉く応じて来る。
[象伝]
「天興火」の興は親しむと訓む。また火と天は元は同じ物である。人間も天の分子であるから、御互に親しまなければならない。族を類するとは、分家が自分達の先祖である宗家の祭りへ聚って来ることである。物を辨ずるというのは、聚って来た者は皆代数や衣服などが異なり、其々仕分けて往く所を云う。

《爻辭》

[五爻]
九五は六二の賢人に遇おうとして呼び掛けるが、其の者は此方へ来る事にはならない。其所で歎くが、後には遇う所となり笑うことが出来る。併し是は容易な事では無い。間の九四、九三の悪い奴を師さを以て、撃ち払ったのである。そうして遇うことが出来たから、是程の喜びは無い。「断金の交わり」は是から出た事である。九五と六二の間に陽爻が二つあり間を妨げているが、双方が遇おうと思う心の鋭い所は刃物の如くで、間を隔てている金を貫く所となる。
[象伝]九五の天子は剛直で中正なる所を以て、終に思う所を遂げた。君臣の間で邪魔をするものを撃ち破るのは容易な事では無い。九三と九四も剛敵である。大いなる師さを挙げて、漸く戦に勝って遇ったのである。