6/3日 ䷤ 風火家人 三爻

家人は女の貞によろし。彖に曰はく、家人女位を内に正し、男位を外に正(ただ)す。男女正しきは天地の大義なり。家人に嚴君(げんくん)有りとは、父母の謂(い)ひなり。父は父たり。子は子たり。兄は兄たり。弟は弟なり。夫は夫なり。婦は婦なり。而して家道󠄃正し。家を正しくして、天下定まる。象に曰はく、風火より出づるは家人。君子以て言物有りて行恒あり。九三。家人嗃嗃(こうこう)す。厲(あや)うきを悔(く)ゆるも吉。婦子嬉嬉(きき)たれば、終ひに吝なり。象に曰はく、家人嗃嗃すとは、未だ失はざるなり。婦子嬉嬉すとは、家節󠄄を失ふなり。

家人とは家族のことで、特に婦人を指す。

家族円満、一家の繁栄を示している。

嚴君はとても威厳がある父母のことで、父母は子をいつくしみ、子は父母に孝行し、兄弟は友情を大切にし、夫婦は力を合わせなければならない。

家族それぞれが正しい行いをすれば、家はまとまり、家がまとまれば国が治まり、国が治まれば天下が治まる。

三爻は家主が厳しすぎて、家族の和が乱されているさまである。

それでもまだ治まっているからよい。

逆に寛大にしすぎると、家族の絆が緩み、それぞれの素行が悪くなる。

そして恥ずべきことが起こってしまう。

家や職場などで、決まりを厳格に守る人は、部下や後輩などから疎まれる事がある。

しかし反対に寛容であって、内の人間が、一日中気が緩んでいる様では、最後には恥ずべき事になる。

なので、家や職場を治める時は寛容であるよりも、やや厳しい方が良い。

6/2日 ䷁ 坤爲地 四爻

坤は元(おほ)いに亨(とほ)る。牝馬の貞に利(よ)ろし。君子往くところ有り。先(さきだ)つときは迷ひ、後るるときは主を得るに利あり。西南には朋を得る。東北には朋を失ふ。安貞にして吉。彖に曰はく、至れるかな坤元。萬物資(よ)りて生ず。乃ち順にして天を承く。坤厚くして物を載す。德无疆に合ふ。含弘光大にして品物咸(ことごと)く亨る。牝馬は地類。地を行くこと疆なし。柔順利貞は君子の行ふところ。先だつときは迷ひて道󠄃を失ひ、後るるときは順にして常を得る。西南には朋を得る。乃はち類と行く。東北には朋を喪ふ。すなはち終に慶有り。安貞の吉は地の无疆に應ず。象に曰はく、地勢は坤。君子以て厚德者物を載す。六四。嚢を括る。咎もなく、譽れもなし。象に曰はく、嚢を括る。咎もなく、譽れもなしとは、慎めば害あらざるなり。

坤は地、臣、妻等の象である。

牝馬は柔順で無限にどこまでも走る。

坤德を有する有徳の賢臣が大志を抱いている。

臣下は何事も王命を待って行動するものである。

西南は陰の方角であり、友を得ることができる。

一方、東北は陽の方角で陰の友を失ふが、最終的には良い。

常に穏やかに正しくあれば吉である。

四爻は賢い宰相である。

物を袋に納めておくように、自分の能力を隠しているので、華々しい功績は得られないが、過ちもおかさない。

不安や迷いがある時、進むべきか止まるべきか選択を迫られる。

今は、世の中全体が不安定であるので進むべき時ではない。

そうすれば、褒められることもないが、災いも起きないだろう。

6/1日 ䷫ 天風姤 二爻

姤は女壮なり。女を取るに用ゐることなかれ。彖に曰はく、姤は遇なり。柔剛に遇ふなり。女を取るにもちゐる勿れ。與に長かるべからず。天地相ひ遇(あ)ひて、品物咸(ことごと)く章なり。剛中正に遇ひて、天下大いに行はる。姤の時義大なるかな。象に曰はく、天の下に風有るは姤。后以て命を施して四方につぐ。九二。包むに魚あり。咎めなし。賓によろしからず。象に曰はく、包むに魚有りとは、義賓(ひん)に及ばざるなり。

姤は遇ふことである。

乾䷀がようやく初爻から陰爻に成り始めたところであり、陰がはじめて陽にあう時である。

女壮とは、とても増長した女性のことで、陽ばかりのところに一人入っていく度胸のある陰である。

ここまで强い女性を妻にするのは要注意である。

また、このような臣下(陰)も登用すべきでない。

この卦は陰陽の気が交わるはじめである。

二爻は初爻の陰爻に一番近いところにある。

陰爻は袋や風呂敷に包んでおくのが良く、討伐しようとしてはならない。

この包んだ陰爻は魚にたとえられる。

客人が来た時にその魚を出してはならない。

なぜならその魚には毒があるかもしれないからである。

包んだままにしておくのがよい。

自分の興味を惹く物事がある。

そう言った時、其れを得ようと考えるのではなく、一度考え直した方が良い。

思いがけぬ所に、問題が存在する。

5/31日 ䷎ 地山謙 初爻

謙は亨(とほ)る。君子は終はり有り。彖に曰はく、謙はとほる。天道下濟して光明。地道卑(ひく)くして上行す。天道は盈(えい)を虧(か)きて、謙に益す。地道󠄃は盈を變じて謙に流る。鬼神は盈を害して謙に福す。人道は盈を惡(にく)みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑(ひく)くして踰ゆべからず。君子の終はりなり。初六。謙謙す。君子大川を涉るに用ゐれば吉。象に曰はく、「謙謙す。君子」とは卑くして以て自ら牧するなり。

謙は謙譲や謙遜の意󠄃味である。

平面な地卦の下に高いはずの山卦がある様が謙遜を表す。

謙譲の徳を持っている者は、どんなところでも歓迎されるし、尊敬される。

しかし、謙譲の美徳は昇進するにつれて失いがちである。

謙譲の美徳を持ち続けて、人の上に立つことは難しい。

君子とは最後まで謙譲の美徳を全うすることができる人のことである。

謙譲の美徳を有する者が上にいると、下の者を大切にするので、下の者は自分の実力を活かすことができる。

また、謙譲の美徳を有する者が下にいると、周りの人がその徳を慕って昇進を求める。

初爻は謙の卦の中の最下位であり、しかも陰爻なので徹底している。

謙の中の謙といえる。

このような人物を登用すれば、大事業も上手く行くであろう。

君子は下にいる時に、謙譲の美徳を大切にして人間形成に努めるのである。

謙虚さを常に持ち、どの様な立場にあっても、学びの姿勢を忘れない。

そういった姿勢であるから人望を集め、大事を成すことができる。

5/30日 ䷌ 天火同人 四爻

同人野に于てす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。彖に曰はく、同人は柔位を得、中を得る。而して乾に應ず。同人といふ。「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし。」とは、乾行くなり。文明にして以て健。中正にして應ず。君子の正なり。九四。其の墉に乗る。攻むる克(あた)はず。吉。象に曰はく、「其の墉に乘る」は、義あたはざるなり。其の吉はすなはち困みて則にかへるなり。

同人とは人が互いに心を同じくすること、共に同じ目標を有することである。

天(日)と火は同じ火の性である。

野は広い場所のことで、狭い集団での友情も大切であるが、より広い範囲で人と交流することが、大きなことを成し遂げる際には必要である。

そのためには正直で、正しい心を大切にしなければならない。

四爻は城の塀に登って五爻に攻めかかろうとしたが、この同人の卦の五爻は道理にかなって堂々としているから、攻撃を断念せざるを得なかった。

しかし、それがかえって良かった。

道理にかなった者を攻撃することは間違いである。

四爻は法則に遵う正しい在り方に戻ったのである。

新しい事を始める時、最初は勝手が分からないので、上手く進めるために、皆で協力して取り掛かる。

しかし、暫くして勝手が分かると、一人でできる様になる。

力を出し合っていた者達は、自分の能力が不要になったと思い、不安になるかもしれないが、案ずる事は無い。

5/29日 ☲☰ 火天大有 四爻

大有は元(おほ)いに亨る。彖に曰はく、大有は柔尊󠄄意位を得て、大中にして上下之に應ず。大有といふ。その徳剛健にして、文明。天に應じて、時に行く。是を以て元いに亨る。九四。其の彭たるに匪(あら)ざる、咎无し。象に曰はく、其の彭たるに匪ざる、咎なしとは、明󠄃辨晢(せつ)なり。

大有は多くを所有することであり、その徳は剛健であり、滞ることなく、天に応じて行動するので、大変良いという。

四爻は勢いが盛大すぎなければ問題ない。

四爻は大臣などの補佐役の爻で、陽である。

その下役の三爻も陽で上昇志向が強く、自然と四爻は勢いが盛んになりがちである。

しかし、君位の五爻は陰であり、控えめであるから、これ以上四爻が勢いを持つと、君臣の関係がおかしくなってしまう。

明󠄃ははっきりの意󠄃で、辨はわきまえる、晢はかがやくである。

はっきりと忠節をわきまえてこそ、人は輝くのである。

上司をたてることが大切ということである。

物事を進める際に、主導権を利用してはいけない。

常に控えめに進める事が賢明である。

そうすれば、力があるのに驕る事が無い、君子の道に相応しい人間になれるだろう。

5/28日 ☷☱ 地澤臨 五爻

臨は元(おほ)いに亨(とほ)る。八月󠄃に至りて凶有り。彖に曰はく、臨は剛浸して長ず。說󠄁(よろこ)びて順。剛中にして應ず。大いに亨りて以て正し。天の道󠄃なり。八月に至りて凶有りとは、消すること久しからず。六五。知臨す。大君の宜。吉。象に曰はく、大君の宜とは、中を行ふの謂ひなり。

臨は下を見下ろすこと、臨むことである。

下から陽が二つ目まできており、たいへん勢いがある。

また、上から下を見下ろす余裕がある。

今はとても運気が良い。

しかし、八か月後には悪いことが起きるので、そのための備えを忘れてはならない。

五爻は君位の爻である。

よく世の中の事情を知り、賢者が誰かを把握し、登用しながら統治することは、君子のあるべき姿である。

それはとてもよいことで、国は自ずと良く治まる。

良い考えを思い付いた時、それを最善だと思ってはいけない。

自分の意見のみでは無く、周りの人達が考えた意見も広く纏めて挙げる事で、初めて最善であると言える。

5/27日 ☱☵ 澤水困 五爻

困は亨る。貞なり。大人は吉にして咎なし。言有り。信ぜられず。彖に曰はく、困は剛揜(おほ)はるるなり。險以て說󠄁(よろこ)ぶ。困みてその亨るところを失はず。それただ君子のみか。貞なり。大人は吉。剛中を以てなり。言有り。信ぜられずとは、口を尚べば乃ち窮まるなり。九五。劓られ、刖られ。赤紱に困しむ。乃ち徐にして說󠄁び有り。用て祭祀するに利ろし。

困は苦しむことである。

しかし、最後は苦しいながらも屈することなく困難から脱出できるだろう。

正しく生きるということは元々困難なものである。

それでも正しいことを続けていかなければならない。

徳のない人にはできないことである。

口だけ立派なことを言っているだけでは駄目である。

行動が伴わないと信用されない。

五爻は為政者の爻である。

鼻を切られ、足を切られる困難な状況である。

そこで赤紱という礼服を着て賢者を待つがまだ来てくれない。

しかし急がずゆっくりとしていれば、志を遂げることができ、喜びも訪れる。

必ず賢者が来てくれて、共に祭祀を行うことで、福を得よう。

物事に行き詰まりを感じる時、その困難の原因を排斥する。

しかし、そうして解決しようとすれば、協力は得られず、かえって阻まれるだろう。

けれど心配は要らない、真に進むべき道(徳のある道)は外の者に止める事が出来ない。

5/25日 ☶☴ 山風蠱 二爻

蠱は元いに亨る。大川を渉るに利ろし。
甲に先だつこと三日。甲に後るるに三日。彖に曰はく、蠱は剛上りて、柔は下りる。九二。母の蠱を幹す。貞にすべからず。象に曰はく、母の蠱を幹すとは、中道を得るなり。

蠱は腐敗の意󠄃味であり、腐敗を正すことが求められている。

そのためには大胆なことをしなければならない。

5月31日が甲の日であり、この日を挟む前後3日が重要である。

この間に大改革をすれば、事はうまく行き、その後に腐敗は自然と解消するであろう。

そうすれば一陽来復、また好転し始める。

二爻の意󠄃味は、五爻の母親の腐敗に二爻の子供が対処するという状況である。

ただし、子供は強く働きかけるべきではない。

母子の仲が悪くなるだけで、解決にはつながらない。

中道を大切にしなければならない。

改革を始める時、その体制の否定を公にするべきではない。

正道を歩んでいるものは、相手を否定せずとも受け入れられるだろう。

5/26日 ☳☴ 雷風恒 三爻

恒は亨る。咎めなし。貞に利ろし。往く攸あるに利ろし。彖(たん)に曰はく。恒は久なり。剛上りて柔下る。雷風相ひ與す。巽にして動き、剛柔皆應ず。恒。恒は亨る。咎めなし。

貞によろしとは、その道に久しきなり。

天地の道󠄃は恒久にしてやまず。

往くところあるによろしとは、終れば則ち始まり有るなり。

日月は天を得てよく久しく照らす。

四時は変化して、よく久しく成󠄃る。

聖人はその道を久しくして天下化成す。

その恒とするところをみて、天地萬物の情󠄃見るべし。

九三。その徳を恒にせず。

或いはこれが羞を承く。

貞なれども吝なり。

恒は変わらないこと、久しいこと。

何事も長く続けることで、邪悪に誘われて横道に逸れることもなく、変化しつつも変わらないことが大切である。

太陽や月、四季が恒久的に維持されることから、天地万物が生育する意󠄃味を知る。

三爻は有力者に従って利を得ようとするばかりで、恒の徳を守らず、節操がない。

こういう人は根本から心を改めなければならない。

そうしないと恥をかくことになる。

事なかれ主義は、大切な処世術の一つだ。

しかし、これでは八方美人になり、信頼は得られない。

信頼を得る為には、芯を持った発言や行動が重要になる。

一度決めた道は貫き通す、そういった強い意志が必要である。