7/15(金) ䷽ 雷山小過(らいさんしょうか)→䷍ 火天大有(かてんたいゆう)

7/15(金) 雷山小過(らいさんしょうか)→ 火天大有(かてんたいゆう)


【運勢】
小事を行うのに良い時。
皆の志が高く、何事も盛んになる。
大局的視点は大切だが、流れに飲まれてはいけない。謙虚さが求められる。
信念を守り、周りからの信頼を得る事が大切である。


【結果】

本卦:雷山小過(らいさんしょうか)
之卦:火天大有(かてんたいゆう)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 老陰][初爻 老陰]
《爻辭》
[上爻][二爻][初爻]


【原文】
《本卦:
雷山小過》
小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。
彖に曰く、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。
象に曰く、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。


《之卦:
火天大有》
大有は元(おほ)いに亨る。
彖に曰く、大有は柔尊󠄄意位を得て、大中にして上下之に應ず。大有といふ。その徳剛健にして、文明。天に應じて、時に行く。是を以て元いに亨る。


【解釋】
《本卦:
雷山小過》
〔王弼の解釋〕
飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。


〔東涯の解釋〕
陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。


〔根本通明の解釋〕
小過の卦は全体でみると
の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻にがある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。
[彖傳]
祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。
[象傳]
大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。


《之卦:
火天大有》
〔王弼の解釋〕
大いに通らない。どういう理由で大有を得られよう。大有ならば必ず大吉である。五爻は尊󠄄位に柔でいる。中に居るのは大である。陰が一つしかない。上下応じている。德が天に應ずれば、行くに時を失わない。剛健は滞らない。文明犯さず。天に応じれば大。時行きて違わない。だから大いに通る。大有は包容の象である。だから勧善懲悪が美しいのである。天德を順奉し。ものの命を休す。


〔東涯の解釋〕
大有はそのあるところが大。五爻は柔中尊󠄄位にいる。上下の五つの陽がこれに応じている。盛大である。大とは陽のことで陽が沢山ある。五爻が二爻と応じている。これは智勇兼備である。五爻に澤山の賢人が集まり、天命も之を助ける。勝道󠄃というべきである。


〔根本通明の解釋〕
この卦は、大なる物多しと云うのは、天下皆賢人と云う義である。賢人が多ければ、何事も亨らないことが無い。「有」の字は富むという義、また多いという義にもなる。『詩経』の魚麗篇に「旨且有(うまくして、かつ、おおし)」とあり、多いという義である。「大有」は、「大いにある」と読んでは駄目で、「大なる物が多い」という義である。大なる物は五爻目以外の陽爻で、大人・君子・賢人のことである。しかしその様な人才は容易に得難く、盛んなる世であった堯舜の時で臣五人、周の国で十人しかなかった。
[彖傳]
賢人が多く朝廷に出で来、君は能く賢人の言を用いる。上に居る賢人も、下に居る賢人も、皆君に応じて来る。大中は、上卦が元は乾だったのが、真ん中に陰爻が出来たことを云う。この卦を一人の天子の徳で言えば、剛健であり、時に従って能く行う。
[象傳]
火気が地の底から十分に上に昇って居り、万物が盛んになる所である。下卦は乾の卦であるから十分に充ちている。天下は至って富んでおり、人民は生活に不足が無い。しかし三、四、五爻目には、兌の卦があり、楽しみに流れる傾向がある。其処で、盛んな時には悪い者を遏(とど)め、善を掲げる。何時の世でも、名君の時でも、悪人を無くすのは難しい。この卦では、九四が悪人である。この大臣は、君に諂う所を以て立身した人で、表面上は君子のようで君子では無い。

7/14(木) ䷑ 山風蠱(さんぷうこ) 二爻初爻

7/14(木) 山風蠱(さんぷうこ) 二爻初爻


【運勢】
大事を行うのに良い時。
風が山に阻まれ淀む様に、物事の腐敗は停滞から始まる。
現状に満足してはいけない。
無理をしてでも、物事を前進させる事が大切である。
堅実に土台を築き、流れに身を任せて進めると良い。


【結果】
䷑◎二⚪︎初
山風蠱(さんぷうこ) 二爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 少陰][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 老陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[二爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
蠱は元いに亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。
彖に曰く、蠱は剛上りて柔は下る。巽にして止まるは蠱。蠱は元いに亨る。而して天下治まるなり。大川を渉るに利しとは、往きて事有るなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終はる時は則ち始め有り。天の行なり。
象に曰く、山の下に風有るは蠱。君子以て民を振し、德を育(やしな)ふ。


《爻辭》
[二爻 優先]
九二。母の蠱を幹す。貞にすべからず。
象に曰く、母の蠱を幹すとは、中道を得るなり。
[初爻]
初六。父の蠱に幹す、子有り。考咎なし。厲けれども終に吉。
象に曰く、父の蠱を幹すとは、意、考に承くるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
下の剛は制を断じ、上の柔は令を施すべし。旣に巽また止まり、競争しない。事有りて競争の煩いがない。だから為すことがある。為すことがあれば大いにうまく行く。天下を治める。蠱は事有りて、能力のあるものを待つ時である。物は喜び従う。德を進めて業を修めればうまく行く。甲とは創制の令である。古いものを以てしてはならない。甲に先立つこと三日、甲に後れること三日、治めさせて後、誅するのである。事によって令を述べる。終われば始まる。天の運行は四季のようである。


《爻辭》
[二爻 優先]
内にして中に居り、宜しく母の事を幹るべし。故に母の蠱に幹たりと曰ふなり。婦人の性、正を全うすべき難し。宜しく己の剛を屈して、旣に幹りて且つ順ふべし。故に貞にすべからずと曰ふなり。幹りて中を失はず、中道を得るなり。
[初爻]
事の首に處り、始めて任ぜ見るる者なり。柔にして巽なるの質を以て、父の事を幹す。能く先の軌を承け、其の任に堪ふ者なり。故に子有りと曰ふなり。任ぜられて事の首爲り、能く其の事を幹す。考乃ち咎なきなり。故に子有り、考咎なしと曰ふなり。事の首に當たる。是を以て危きなり。能く其の事に堪ふ。故に終に吉なり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
蠱は壊、腐敗のことである。この卦は變じて隨となる。隨の初爻が上って上爻となり、隨の上爻が下って初爻となる。だから、剛が上って柔が下るというのである。強者が弱者をしのぎ、衆寡敵せず、終に蠱壊を招く。内は巽順であり、よく物を止める。天に十日有り。甲に始まり癸で終わる。甲は事の始めである。甲に先んじるとは辛壬癸であり、統治が極まり乱れる。前󠄃の事が終わろうとする。腐敗を致す道である。甲に後れるとは乙丙丁である。乱が極まり治まるころである。腐敗を治める道である。治乱盛衰何度も反復するものであり、日が昇り暮れ、月󠄃が満ち欠け、寒暑が往来するようなものである。上下がうまく意思疎通しないと腐敗するので、巽順の道がこれを防がねばならない。そうすればうまく行くのである。

《爻辭》
[二爻 優先]
五爻の母親の腐敗に二爻の子供が対処するという状況である。ただし、子供は強く働きかけるべきではない。母子の仲が悪くなるだけで、解決にはつながらない。
[初爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
政が大いに乱れた状態で天子が崩御し、位に即いた太子はこれを悉く一新し、天下を新たにするという卦である。蠱は器物の様な物や米などが、古くなって壊れて来る所を云う。三・四・五爻目に震の卦がある。これは長子、即ち皇太子である。上爻が父親で、初六は子であり、即ち父親は終わり子が始まるの象である。
[彖傳]
陽爻が一番上になって居るのを剛上る、陰爻が一番下になって居るのを柔下ると云う。巽は弱く姑息で敗れる。晩年の天子の周りでは、大臣の悪人が天下を紊し、朝廷には小人ばかりで、手の付けようが無い。そこで姑息にして放置して居り敗れたのが蠱である。元亨而治まるとは、新たに始めることで震の卦の象である。皇太子が即位して政を改め天下を治める。先甲は旧いものが終わり新しく始まって往くことである。後甲は辛壬癸が終わり、甲乙丙で始まっていくことである。
[象傳]
旧いものを悉く洗い除く。ニ・三・四爻目に兌の卦がある。兌は秋で、枯れた葉が山下からの風で吹き落される。これは旧弊の政事を除く義である。三・四・五爻目は震の卦である。震は春で、新しい芽がまた出てくる。
《爻辭》
[二爻 優先][初爻]

7/13(水) ䷽ 雷山小過(らいさんしょうか) 変爻無し

7/13(水) 雷山小過(らいさんしょうか) 変爻無し


【運勢】
小事を行うのに良い時。
控えめに過ごすと良い。
初めから完璧を求めてはいけない。
先ず地道に経験を積み、視野を広げる事が大切である。
変な拘りを持たず、謙虚に進める事が大切である。道は大きく開ける。


【結果】

雷山小過(らいさんしょうか) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
小過は亨る。貞に利ろし。小事に可にして、大事に可ならず。飛鳥之れが音を遺す。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉。
彖に曰く、小過は小なる者󠄃過ぎて亨るなり。過ぎて以て貞に利し。時とともに行ふなり。柔、中を得たり。是を以て小事に吉なり。剛、位を失ひて不中。是を以て大事に可ならざりなり。飛鳥の象有り。飛鳥之が音をのこす。上るに宜しからず、下るに宜し。大吉とは、上るは逆にして下るは順なるなり。
象に曰く、山上に雷有るは小過。君子以て行は恭に過ぎ、喪は哀に過󠄃ぐ。用は儉に過ぐ。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
飛ぶ鳥がその声を残して、悲しみながら場所󠄃を求める。上には適当な場所がなく、降れば安住できる。上に行けば行くほど悪くなる。飛ぶ鳥と同じである。小過の小はおよそ小事全般を言う。小事を過ぎて、うまく行く。過ぎれば正しくしていればよい。時宜にかなうのである。恭しく儉約󠄃していればよい。大事をなすは必ず剛がいる。柔で大を犯すのは、剝の道である。上に昇ってはならず、降るのが良い。これは飛ぶ鳥の象である。


〔東涯の解釋〕
陽は大であり、陰は小である。四つの陰が外に在り、二陽が内に在る。陰が陽に勝っているので小過という。陽が陰に勝るのが道理であるが、陰が勝って問題ない時もある。二五は柔が中を得て、三四は剛であり、中でない。卦の形は鳥が翼を広げているようである。上に向って鳴くので、下には聞こえない。下は順調で容易であるが、上昇は逆行するので難しい。任務にも大小があり、位にも上下がある。人の才分もそれぞれ違う。柔は下位にあって小事を治めるのが良い。それが分からなかった人が多く失敗してきたのである。易は中に適うことを尊ぶ。


〔根本通明の解釋〕
小過の卦は全体でみると
の卦になっている。三爻と四爻が鳥の体であり、一二、五六が翼である。何の鳥かといえば鶏である。二三四爻にがある。これが鶏である。この卦は陰が過ぎる卦である。陽は君で陰は臣下である。君が鳥の体で、臣が鳥の翼である。陰が過ぎるとは臣下が調子に乗っていることである。だから小事は行われ、大事は行われない。鶏が高く飛べる道理はない。声だけ高く上がっても、体は高く上がらない筈である。この場合、鷹に咥えられたとするとよい。飛び去ってしまい悲しむ声だけが残るのである。上に行かれてはもうどうしようもないが、下にいるのなら人でも何とか救出できるかもしれない。
[彖傳]
祭祀に於いて祭式の起居進退は小事であり、道徳は大事である。しかし、小なることを徹底して、良くなることもある。この卦は陰が多すぎる。二爻も五爻も陰である。だから大事をするには不利である。君は常に民と共にあらねばならない。
[象傳]
大いなる山を、小なる雷が過ぎて行く。君子はこの卦をもとに行いを恭しくする。

7/12(火) ䷩ 風雷益(ふうらいえき) 五爻

7/12(火) 風雷益(ふうらいえき) 五爻


【運勢】
好機が訪れ、大いに益する時。
心を新たにして、公の為に尽くす事が大切である。
献身的な行動が周りを感化する。仲間と協力して大事を行うと良い。
相手の気持ちに寄り添い、誠意を持って正しさを守る事が大切である。


【結果】
䷩◎
風雷益(ふうらいえき) 五爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陰]
[三爻 少陰][二爻 少陰][初爻 少陽]
《爻辭》
[五爻]


【原文】
《卦辭》
益(えき)は、往く攸(ところ)有るによろし。大川を涉るに利し。
彖に曰く、益は上を損して下を益す。民說󠄁(よろこ)ぶこと疆(かぎ)りなし、上より下に下る。其道󠄃大に光なり。往く攸(ところ)有るに利(よ)しとは、中正(ちうせい)にして慶(けい)有り。大川を涉るに利しとは、木道(もくどう)乃ち行く。益は動いてしかして巽(したが)ふ、日に進むこと疆(かぎ)りなし。天施し地生(しょう)ず。其益方(かた)なし。凡そ益の道󠄃は、時と偕(とも)に行ふ。
象に曰く、風雷は益。君子以て善を見れば則ち遷(うつ)り、過(あやまち)有れば則ち改む。


《爻辭》
九五。孚有りて惠心。問ふこと勿くして元吉。孚有りて我が德を惠とす。
象に曰く、孚有りて惠心とは、之を問ふことなし。我が德を惠とすとは、大いに志を得るなり。


【解釋】
〔王弼、東涯の解釋〕
《卦辭》
益は増すこと、増やすことである。
否の上卦の四爻が陽から陰となり、下爻の初爻が陰から陽になっているので、上が損をして下が得をした象である。上の者が損をして、下の者󠄃を助けることはとても良いことで、また二爻が陰、五爻が陽で、中正であるので、大事業をするのに好機である。上の者が動けば(震)、下の者が従う(巽)象である。


《爻辭》
[王弼]
位を得て尊󠄄位にある。益の主爻である。益の大で、信より大なるものはない。惠の大で、心より大なるものはない。民の利する所󠄃によって、これを利す。恵んで費やさない。惠の心である。信は惠の心を以てする。願いを尽くす。だから問う前に元吉。誠があって我が德を恵む。誠を以て恵む。そしてこれに応じる。
[東涯]
惠の心は仁恵の心である。この爻は益があって、陽剛中正である。尊󠄄位にある。下の二爻の賢者が応じ、明君が賢臣をえる。民を利する。誠の心があり、愛を下に恵む。至善大吉である。問うまでもない。下もまた誠の心があって上に感じる。その德を以て、恩恵とする。徳で仁を行うものが王であり、力を以て仁を借りるのが覇である。仁政を民に及ぼす。もし至誠の心があれば、天下を益せば、天下の人敬服する。親は父母を超え、尊󠄄神明を超える。その心が固まり解けない。いたずらにそのことがあり、内に誠が無ければ、暫くは服従しても、実は離れる。五爻にはまことの惠があり、物に及ぼす。君臣が出合い、天下を益す。大変な吉である。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
この卦は、前の卦の山沢損と反対である。山沢損は地天泰より来た。そして地天泰は天地否から来た。天地否は、上卦は乾、下卦は坤である。坤は空しさの象で、人民の困窮する卦である。そこで九四の陽爻が下りて、初六の陰爻が上る。これで風雷益の卦になる。これが下を益するという義である。上卦の震は、農業の卦である。人民を富ますのは農業であり、これは何処までも推奨される。それで「利有攸往」である。こうして人民が富んでいれば、如何なる大難が起こっても踏み越えて往く所となる。よって「利渉大川」である。
[彖傳]
「損上益下」とは、天地否の九四の陽爻を一つ損(へ)らして、代わりに初六の陰爻を益すことである。そこで民が説(よろこ)ぶ。陽が段々進んで往けば兌の卦になる。農事が盛んになればなるほど、人民は利益を得る。天の気が地の底に下って万物が生じる。出で来たものは大きくなって花が咲き草木に光を生じる。よって「其道光大」となる。「中正にして慶(よろこ)び有り」とは、中正(二爻が陰、五爻が陽で、爻が定位通りであること)の五爻目の天子に、同じく中正の二爻目が応じることである。いわば名君と忠臣が相助けて人民を生育する所に、慶びが出で来る。「木道乃行」とは、震と巽に対応する五行が双方とも木であり、万物が盛んになることである。
[象傳]
上卦が巽=風で、下卦は震=雷である。雷が起こると、風はこれを助ける。また巽は外卦であり、修飾して能(よ)く齊(ととの)えるという所がある。つまり外の人が行いを修めて行く所を見れば、周囲の者も自ずから其の方へ従って遷って往く。そして過ちがあれば速やかに改める。震には過ぎるという象があり、もし往き過ぎれば、物を害してしまう。雷山小過は霆(激しい雷)である。雷は下から上に昇るが、霆は上から打ってくる。これは往き過ぎである。善い事も過ぎると害を為すから、これを改めなければいけない。


《爻辭》
九五の天子は、底からの孚があって、民を恵む志が真に厚い。これを占いで問うには及ばない。天子は我が徳を以て普く人民を恵む。
[象傳]
天子は我が徳を以て普く民を恵めば、大いに志を得る事が出来る。

7/11(月) ䷴ 風山漸(ふうざんぜん) 五爻四爻

7/11(月) 風山漸(ふうざんぜん) 五爻四爻


【運勢】
細かく目標を立て、物事を進めるのに良い時。
向上心を持ち成功者に倣うと良い。
新たな試みには障害が付き物である。
周りからの批判に屈してはいけない。
堅実に、知識と経験を積み重ねて行く事が大切である。


【結果】
䷴◎五⚪︎四
風山漸(ふうざんぜん) 五爻四爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 老陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[五爻 優先][四爻]


【原文】
《卦辭》
漸は女歸いで吉。貞によろし。
彖に曰く、漸は進󠄃むなり。女歸いで吉なり。進みて位を得るは往きて功あるなり。進󠄃むに正を以てす。以て邦を正すべきなり。その位剛。中をえる。止りて巽。動いて窮まらず。
象に曰く、山上に木あるは漸。君子以て賢德にをりて風俗を善くす。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。鴻、陵に漸む。婦三歳孕まず。終に之に勝つことなし。吉。
象に曰く、終に之に勝つことなし、吉なりとは、願ふところを得るなり。
[四爻]
六四。鴻木に漸む。或はその桷(えだ)を得る。咎なし。
象に曰く、或はその桷(えだ)を得るとは順にして以て巽(したが)ふなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
漸は漸進の卦である。止まりて巽。だから適度に進む。巽に留まるから進󠄃む。だから女嫁いで吉なのである。進んで正しいものを用いる。進んで位を得るとは五爻を指す。この卦は進むことを主る。漸進して位を得る。漸はようやく済むことや、順序良く進むことを言う。上卦は木德であり、下卦は山であるから山の上に木があり、順序正しい。また上卦は長女であり、下卦は小男であり、やはり順序が守られている。人生で最も重要な儀礼の一つが婚姻であり、順序正しく進めていくことが極めて重要である。秩序正しくあることが吉である。


《爻辭》
[五爻 優先]
陵は、陸に次ぐ者なり。進みて中位を得て、三四に隔たり、其の應合を與にするを得ず。故に婦三歳まで孕まざるなり。各々正を履みて中に居り、三四久しく其の塗を塞ぐこと能はざる者なり。三歳を過ぎざれば、必ず願ふ所を得。進みて以て邦を正し、三年にして成す有り。成せば則ち道濟る。故に三歳を過ぎざるなり。
[四爻]
鴻がようやく進んで木に止まることが出来た。木の枝にとまることは水鳥にとっては安全なことではない。さらに進んで、建物の垂木にとどまれたら問題ない。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
漸は次順番通りに進むことである。巽は長女、進んで上に在る。進めることをゆつくりしなければならないのは、女が嫁ぐ時である。五爻が位を得て、剛が中にある。家を正し、功があるだろう。君子が仕えるときは、進󠄃むに礼を以てし、退󠄃くに義を以てする。五爻剛中の徳がある。


《爻辭》
[五爻 優先]
[四爻]


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
漸は、小さな木が次第に成長して大木になるように、順序を立てて進んで往く意である。この卦は鴻雁(こうがん)の象を取っている。雁は水鳥で、陰鳥であるから、陽に能く従う。そのため婚礼の時には、雁を以て礼を行う。即ち、女が夫に従う義を取ったのである。また臣たるものは、必ず君に従う。国に生まれた者は、皆君に仕えなければならないと云う義も示している。
[彖傳]
女の嫁入りは、速やかにするものではない。六礼といって、六つの段に分かれており、順次進んで往って婚礼が成る。また天子は天下を治めるのに、先ず我が身を正しくする。正しい所を以て、国家を正しくすることが出来る。
[象傳]
山の上に木がある。君子はこの義を用いて、賢徳ある人物を高い所に据え、賢人の徳を以て社会風俗の悪い所を能く直して行く。


《爻辭》
[五爻 優先]
[四爻]

7/10(日) ䷌ 天火同人(てんかどうじん) 五爻初爻

7/10(日) 天火同人(てんかどうじん) 五爻初爻


【運勢】
悲しみを乗り越え大いに成長出来る時。
多くの経験を積み、視野を広げる事が大切である。
志を同じくする者と親交を深め、互いに協力して大事を行うと良い。
献身的な姿勢で、様々な人と関わる事が大切である。


【結果】
䷌◎五⚪︎初
天火同人(てんかどうじん) 五爻初爻
《卦辭》
[上爻 少陽][五爻 老陽][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[五爻 優先][初爻]


【原文】
《卦辭》
同人野に于てす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。
彖に曰く、同人は柔位を得、中を得る。而して乾に應ず。同人といふ。「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし。」とは、乾行くなり。文明にして以て健。中正にして應ず。君子の正なり。
象に曰く、天と火とは同人なり。君子は以て族を類し物を辨す。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五。同人。先には號咷(ごうとう)して後には笑ふ。大師克ちて相遇ふ
象に曰く、同人の先は中直を以てなり。大師相遇ふは相克つを言ふなり。
[初爻]
初九。同人は門においてす。咎(とが)なし。象に曰く、門を出でて人に同じくす。又誰か咎めんなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
「同人野においてす。亨る。大川を涉るによろし」は、二爻の能くする所ではないこれが乾の行う所である。故に特に同人に曰くという。健を行うに武を使わずに、文明を使って之を用いる。相応してに邪を応じずに、中正によって応じる。君子の正しき事である。故に「君子、貞に利し」という。君子は文明をもって徳にする。天、上にあって、火の炎上げている。同人の意味である。君子、小人、各々同じくする所を得る。


《爻辭》
[五爻 優先]
彖に曰く、柔位を得、中を得て、乾に應ずるを同人と曰ふ。然れば則ち柔を體して中に居り、衆の與へる所。剛を執りて直を用ふ、衆の未だ從はざる所。故に近づいても二の剛に隔てられ、未だ厥の志を獲ず。是を以て先には號き咷ぶなり。中に居りて尊に處り、戰へば必ず克く勝つ。故に後には笑ふなり。物をして自ら歸り使へて其の強く直なるを用ふること能はず。故に必ず大師を須て之に克て、然る後に相遇ふなり。
[初爻]
同人の始めに居て、同人の首となる。上に応じることが、心に吝を係ることもない。夫の大いに同じくするに通じ、門を出づること皆同じくする。故に人に「同人、門に于いてす」という。門を出づるに人と同じくすれば、誰とともに吝をなす。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
同人とは人が互いに心を同じくすること、共に同じ目標を有することである。天(日)と火は同じ火の性である。野は広い場所のことで、狭い集団での友情も大切であるが、より広い範囲で人と交流することが、大きなことを成し遂げる際には必要である。そのためには正直で、正しい心を大切にしなければならない。


《爻辭》
[五爻 優先]
號咷とは泣く声である。二爻と応じてゐる。二爻と心を同じくし、三爻四爻の二陽は防ごうとするが志を遂げられない。最後は二爻と五爻は遇う。最後まで倦まず、善を行うべきである。
[初爻]
「門においてす」とは、門から出て交わることである。私心の無いことをいう。この爻は同人にあって、初めであり、上に、繋がって応じているものがいない。故に「同人、郊(こう)においてす」の象があり、咎めなしなのである。思うに人と交わることは、偏っている所に流れやすい。それははっきりと現れている。私事に関わらず、人に交わる。何の咎めがあるのだろうか。


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
同人は、人と人が互いに相親しくして、吉凶ともに同じくする。野は都から遠く離れた田舎で、山や谷の間に居る者までも親しくするという義である。これは乾の象である。天下一軒の家の如くして居れば、互いに亨らない所は無い。九五の天子は六二の賢人を深く信用して、之を用いて往く。
[彖傳]
六二は陰爻を以て陰位に居り、位を得て居る。また下卦の真ん中にあるので、中を得て居る。これは賢人で、中正なる道徳があり、天道に応じて居る。乾は上卦であり、上は外であるから、内から外へ旋って往く。人は道徳を以て普く進んで行う所の義である。之は仁者であり、君子である。天下皆悉く応じて来る。
[象傳]
「天興火」の興は親しむと訓む。また火と天は元は同じ物である。人間も天の分子であるから、御互に親しまなければならない。族を類するとは、分家が自分達の先祖である宗家の祭りへ聚って来ることである。物を辨ずるというのは、聚って来た者は皆代数や衣服などが異なり、其々仕分けて往く所を云う。


《爻辭》
[五爻 優先]
九五は六二の賢人に遇おうとして呼び掛けるが、其の者は此方へ来る事にはならない。其所で歎くが、後には遇う所となり笑うことが出来る。併し是は容易な事では無い。間の九四、九三の悪い奴を師さを以て、撃ち払ったのである。そうして遇うことが出来たから、是程の喜びは無い。「断金の交わり」は是から出た事である。九五と六二の間に陽爻が二つあり間を妨げているが、双方が遇おうと思う心の鋭い所は刃物の如くで、間を隔てている金を貫く所となる。
[象傳]
九五の天子は剛直で中正なる所を以て、終に思う所を遂げた。君臣の間で邪魔をするものを撃ち破るのは容易な事では無い。九三と九四も剛敵である。大いなる師さを挙げて、漸く戦に勝って遇ったのである。
[初爻]

7/9(土) ䷶ 雷火豐(らいかほう) 初爻

7/9(土) 雷火豐(らいかほう) 初爻


【運勢】
世の中が活気づき努力が実を結ぶ時。
自分本位に行動せず、周りからの期待に誠実に応える事が大切である。
目先の利益に囚われてはいけない。
広い視野を持つと良い。
謙譲の美徳があれば、如何なる困難も乗り越えられる。


【結果】
䷶◎
雷火豐(らいかほう) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 老陽]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
豐は亨る。王、之に假る。憂ふる勿れ。日中に宜し。
彖に曰く、豐は大なり。明󠄃以て動く。故に豐なり。王、之に假るとは、大を尚ぶなり。憂ふる勿れ。日中に宜しとは、天下を照らす宜しきなり。日中するときは則ち昃(かたむ)き、月󠄃盈(み)つるときは、則ち食󠄃す。天地の盈虚、時とともに消息す。而るを況や人に於いてをや。況や鬼神に於いてをや。
象に曰く、雷電皆至るは豐。君子以て獄を折し刑を致す。


《爻辭》
初九。其の配主に遇ふ。旬しと雖も咎なし。往けば尚ふること有り。
象に曰く、旬しと雖も咎なしとは、旬を過ぐれば災あるなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
豐の義はひろめる、ひらく、微細にするである。隠れ滞っているものを通して天下の主となって、微隱にはうまく行かない。憂えは未だに収まっていない。だから、豐は亨に至るのである。そして憂えが無くなる。豐亨憂えなきの德を用い、天中に居るべきである。そして天下を照らす。


《爻辭》
豐の初に處り、其の配四に在り。陽を以て陽に適し、明の動を以て、能く相光大なる者なり。旬は均なり。均しと雖も咎なし、往けば尚ふること有るなり。初、四倶に陽爻なり。故に均しと曰ふなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
豐は盛大である。知有りて動く。よくうまく行く。王者が大事業を起こす時である。火を日とし、下に在る。その徳の光明、あまねく四方を照らせば、憂うことなく、自然と豊大である。人は明󠄃がなければ物を照らすことできない。動かなければ事業は出来ない。明にしてよく動く。昔は湯王の徳を慕っていった。天が王に勇智を錫(たま)う。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「豊」は腆(あつ)いと云う義で、物が厚く充ち満ちて居ることである。世の中で云えば、天子が名君で政事が能く行き届いて居り、天下が盛んで富んでいることである。しかしながらどれだけ盛んであっても、衰える所も出て来る。下卦の離は日である。東に在る時は未だ日が低いが、日中になれば遍く東西南北を照らし届かない所は無い。ただし日が昃(かたむ)くといけない。
[彖傳]
天子の明徳は宜しく四海天下を照らすべきで、暗い所が出て来てはいけない。しかしながら日が南中すれば、やがては傾いて往く所がある。月も満ちれば、欠けて来る。天地の道は斯くの如きもので、いつまでも保つことは難しい。人間の主でなって居る所の鬼神と雖も、神明なることもあれば、時には神明ならざることもある。自然の勢いと云うものは、力を以て動かすことは出来ない。
[象傳]
雷と電が一書に来るのが豊の卦である。天下が皆富んで、上下安楽の時である。しかし安楽であると、自然と人の心には奢りが出て来るようになる。其処で刑罰を厳重にしなければいけない。


《爻辭》
初九は丁度九四と位が應じている、徳も同うしている、皆陽爻でその所で我と相配偶する所の主たるものに遇ふて、夫に遇ふて倶に此安樂の世の中を長く保つ様にするべき譯である。我れ一人ではまたべけない、その所で九四を得て共に力を盡すと云ふ所である。
さて、旬しと雖も咎なし、この旬は一ヶ月の半分には未だ盈たない、この旬の字の出づる所は是が下が離の卦である、十日を旬と云ふ、離の卦が日である、まあ一日である。然るに旬の字は十日を旬と云ふときに、初九から四爻目まで丁度十日になる、そのわけは初九は陽で一であるから一つ、また六二は陰で二であるから二つ、是れで三つになる。九三は陽で三であるから三つ合せて六つになる、またそれに九四は陰位で四つであるから四つを加へると、丁度十の數になる、其所で十日を旬と云ふ。
旬しと雖もどうかこうか全ふして往く、往いて咎はない、その所で是が何所までも九四へ往けば尚ぶべき所の功が顕れて来る。長くは何時までと云ふた所で限りない。その所で旬しと雖も咎なしと云ふ所は、旬に過ぎた上はこれがその所までも保つ事がむずかしい。その處で災ひがある。

7/8(金) ䷦ 水山蹇(すいさんけん) 変爻無し

7/8(金) 水山蹇(すいさんけん) 変爻無し


【運勢】
様々な困難に遭い、どの道を進んでも厳しい時。
困難な時こそ、真価が問われる。
修身斉家治国平天下。謙虚な姿勢で地道に努力し、力を蓄えると良い。
為せば成る。最後まで諦めず、公の為に尽くす事が大切である。


【結果】

水山蹇(すいさんけん) 変爻無し
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陽][四爻 少陰]
[三爻 少陽][二爻 少陰][初爻 少陰]
《爻辭》
[変爻無し]


【原文】
蹇(けん)は西南によろし。東北によろしからず。大人を見るによろし。貞にして吉。
彖に曰く、蹇は難󠄄なり。險(けん)前に在る。險を見てよく止まる。知なるかな。「蹇は西南によろし」とは、往きて中を得る。「東北によろしからず」とは、その道窮(きは)まるなり。「大人を見るによろし」とは、往きて功あるなり。蹇の時用大なるかな。
象に曰く、山上に水あるは蹇。君子以て身に反して德を修(をさ)む。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
西南は地であり、東北は山である。難󠄄しい平地を行けば解決は難しい。難󠄄しい山地を行けば道󠄃が窮まる。爻は全部位に当たっている。正しきを履んでいるのが、邦を正す道である。ただし、難に遇うと正を失う。それは良くない。小人には対処できない。難󠄄を除くには德を高めるしかない。


〔東涯の解釋〕
蹇は難である。進むことができない。前に難があり進めず、険難があるので止まる。蹇が変わると解になる。解の二爻が外卦の五爻に行って中を得る。だから、西南がよく、止まりて進まない。東北に利なし。五爻は位に当たって中正。君を得て、國を正すことが出來る。だから賢人に遇う時であるという。世が乱れているので、蹇に遇えば身を滅ぼす。時を待って行動せよ。我が身を反省して、德を修めよ。


〔根本通明の解釋〕
蹇は歩行が難󠄄しい状況である。西南がよい、上卦が
であるが、上に在る時は月󠄃である。二三四爻の互卦にもがある。これは三日月を表す。旧暦の三日に西南から現れ、東北になくなる。又西南は坤である。草莽にいてどこまでも学問をして學藝を磨くのかよい。何の能力もなく朝廷に出ようとしてはならない。艮は朝󠄃廷を表す。学問を修めたのなら、賢人に遇って、天下を経営するのに良い。
[彖傳]
の卦は大水であり、行けばおぼれてしまう。は止まるであるから、大水に行かずにとどまった。目の前に大水があるので、進めない。止まるべきところで止まるのが知である。西南に於いて学問を修めから、東北に行けば賢人に遇って、明君を得ることになる。今は無学であるから、進んでも利なし。険難の時代に生まれても大いに活躍できるのである。
[象傳]
君子は険難の時代には、良いことをしようとしてもうまく行かない。そこで、己を正しくして、だんだんと德を修めると二爻から上爻までは正しい位にいるが、初爻だけは陽の位に陰でいる。始めが正しくないといけない。だから君子はまず自分の修身から始めるのである。

7/7(木) ䷵ 雷澤歸妹(らいたくきまい)→䷀ 乾爲天(けんゐてん)

7/7(木) 雷澤歸妹(らいたくきまい)→ 乾爲天(けんゐてん)


【運勢】
何事も楽な道などない。
物事の順序を無視し不正な道を進めば、最悪の結果を招くだろう。
己の行いを省みる事が大切である。
極端な選択は後悔の元となる。
柔軟に答えを導き出す事が大切である。


【結果】

本卦:雷澤歸妹(らいたくきまい)
之卦:乾爲天(けんゐてん)
《卦辭》
[上爻 老陰][五爻 老陰][四爻 少陽]
[三爻 老陰][二爻 少陽][初爻 少陽]
《爻辭》
[上爻][五爻][三爻]


【原文】
《本卦:
雷澤歸妹》
婦妹は征けば凶。利(よろ)しき攸(ところ)なし。
彖に曰く、歸妹は天地の大義なり。天地交はらざれば萬物興らず。歸妹は人の終始なり。說󠄁(よろこ)びて以て動く。妹を歸く所󠄃なり。征けば凶とは位に当たらざるなり。利しき攸なしとは、柔、剛に乘ずればなり。
象に曰く、澤上に雷有るは歸妹。君子以て終を永くし敝(へい)を知る。


《之卦:
乾爲天》
乾は元いに亨る、貞に利し。
彖に曰く、大なるかな乾の元は、萬物資りて始まる、乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗じて以て天を御す。乾道變化して、各おの性命を正し、大和を保合して、乃ち貞に利ろし。庶物に首出して、咸(あまね)く寧(やす)し。
象に曰く、天行は健なり。君子以て自ら彊めて息まず。


【解釋】
《本卦:
雷澤歸妹》
〔王弼の解釋〕
妹は少女のことである。兌は小陰で、震は長陽である。小陰が長陽を承けるので、よろこんで動く。妹を嫁がせる象である。陰陽が既に合って長と少が交わった。天地の大義、人倫の終始と言える。少女を長男に嫁がせる。少女は嬉しくない。不正を犯し、それを喜んで動くのは邪道である。終には敝を知る。


〔東涯の解釋〕
婦人のことを嫁とも歸ともいう。兌は少女、震は長男である。これは婦人が嫁ぐ時に礼を失している。二爻から五爻まで位を得ていない。三爻と五爻の陰爻が陽の上に居る。これは陰として正しくない。夫が先に声をかけて、それに妻は随うのである。これは天地の大義である。父母の命、媒酌の言を待ち、礼を尽くす。その後にそれぞれがその道を尽くして家道󠄃がなる。正しい道に由らないと、その夫婦は礼儀を乱し、制御できなくなる。


〔根本通明の解釋〕
上卦は震で長男、下卦は兌で少女である。兄たる六五の天子は、六三の我が妹を以て、諸侯に嫁がせる。兌は巧言令色で、男子を玩ぶ象がある。しかし婚姻は必ず男子の方から求めるべきものだから、女子の方から征くのは凶である。
[彖傳]
夫婦の道は、天地陰陽の道である。陰陽が正しく交わって、萬物が生じる。天地の大義は、人の大倫である。孟子も、男女室に拠るは、人の大倫と云う。兌は說び、震は動く。これは妹が帰ぐ所の義にあたる。三爻目の陰が、一・二爻目の陽の上に乗っており、柔が剛を凌ぐ所がある。これは戒めなければならず、この女が征けば凶である。
[象傳]
澤上に雷がある。雷が動けば、澤も随って動く。これは男子が動いて事を行い、女子がこれに応じる象である。婚姻を終生の永いものとするには、後々弊害が出ないように能く対策し、始めを慎まなければならない。


《之卦:
乾爲天》
〔王弼、東涯の解釋〕
無し


〔根本通明の解釋〕
乾、元亨利貞。代義易を作られた其初めは元三畫の卦乃ち乾坤震巽坎離艮兌の八卦之を小成の卦と云ふ。其小成の卦を二つ重ねた所で六畫になる之を大成の卦と云ふ、乃ち此乾の卦は以下六十四卦皆伏義之を名けたる所の大成の卦である。乾此卦が天である。設卦に乾天爲りとある、天は元亨利貞の四徳を以て萬物を生じ之れを養ふて之を成す、成して復始むる。天の徳と云ふ者は宏大なるものである。其宏大なる徳と指すものは何であるとなれば萬物を生ずる所、是れが天の徳である。生じた上には其物を成す、萬物此天の氣に因て始まって來る其れより段々萬物が出る。始まつて出る所が元である。元は始と云ふ字で物の始まる所を元と云ふ。又此元の字が大ひなると訓む。此天の元氣と云ふ物は世界中一杯に周つて居るから是れ程大ひなるものが無い。又萬物此元の氣を禀けて始まつて是も大なるに至る。暢ひて段々大きくなる。其れが爲めに此元の字が始まりとも訓み、大なるとも訓み、又首とも訓む。凡そ世の中に此天の元の徳より尊きものが無い。萬物の首らになつて居るから又首と云ふ義もある。其元を禀けて生じた萬物が段々と暢びる。暢びる丈暢びて、往くべき所迄往きて、達する所があるから之を享と云ふ。享は暢びて通ずるの義がある。利と云ふが宜しきを得るを利と云ふ。宜しきを得るとなれば、萬物暢びて宜しきを得る。中にも長短がある。長くなつて宜しきものは長くなり、短ふして其れ丈けで宜しきものは短かき所に止まる、細き物もあり太き物もあり、細くなるべき物は細くなつて宜しきを得る、太くなるべきものは太くなつて宜しきを得る、此は皆利である。又貞と云ふ事は總て萬物なる者は其物丈けに確りと出来るが正しいのである。正しく出来た上には固まつて動か無い、此れが貞。貞は正しうして固しとふ義である。其所で元は春になる。春は出づると云ふ義である、春者出也と云ふて動いて出づると云ふ義である。其所で萬物、春で始まつて出て往つて其れから暢びる。亨は夏になる、夏に至つて萬物十分に暢びて大きくなる。此夏と云ふ字が夏者假也で大ひなると云ふ字である。秋と云ふ字が秋は收なり就なりで暢びた萬物が陰氣を以て之を引斂めて來るが收むるである。引斂むる所で物就つて宜しきを得る。利は秋。貞は冬者藏なり。冬になれば、先づ其性の儘に凝つて固まる、固まつて翌年、相續して發生する迄之を蓄藏する。五毅の類が米でも豆でも皆出來て、味ひの甘い物は甘く出來、辛く出來るべき物は辛く出來る、苦く出來るべき物は苦く出來る、又酸く出來る物は酸つばい。是れが皆正しい。甘く出來る物が辛くなつては是れは正しく無い。又甘いでも酸つぱいでも無い様な物でも可けない。總て天地の間に生ずる物は皆五味の性を含んで居る。五味と云へば酸い所、苦い所、甘い所、辛い所、䶢い所、其れを皆蓄へて居る。是れは皆陰陽五行の氣を受けて居るものであるから必ず此五つの味がある。其五つの味は、物に依て萬物に至る迄、各々其性分が異つて居る。其性分丈けの所確かりと其通に成れば、正しい其儘に凝つて固まるが貞である。

7/6(水) ䷟ 雷風恆(らいふうこう) 初爻

7/6(水) 雷風恆(らいふうこう) 初爻


【運勢】
行き過ぎた向上心が仇となる時。
周りからの信頼を得るには、一貫した強い姿勢が求められる。
正道を守る事が大切である。
時は得難くして失い易し。やるべき事を後回しにしてはいけない。
不測の事態に備えると良い。


【結果】
䷟◎
雷風恆(らいふうこう) 初爻
《卦辭》
[上爻 少陰][五爻 少陰][四爻 少陽]
[三爻 少陽][二爻 少陽][初爻 老陰]
《爻辭》
[初爻]


【原文】
《卦辭》
恒は亨る。咎めなし。貞に利ろし。往く攸あるに利ろし。
彖に曰く。恒は久なり。剛上りて柔下る。雷風相ひ與す。巽にして動き、剛柔皆應ず。恒。恒は亨る。咎めなし。貞によろしとは、その道に久しきなり。天地の道󠄃は恒久にしてやまず。往くところあるによろしとは、終れば則ち始まり有るなり。日月は天を得てよく久しく照らす。四時は変化して、よく久しく成󠄃る。聖人はその道を久しくして天下化成す。その恒とするところをみて、天地萬物の情󠄃見るべし。
象に曰く、雷風は、恆なり。君子以て立ちて方を易へず。


《爻辭》
初六。恆を浚うす、貞なれども凶。利しき攸なし。
象に曰く、恆を浚うするの凶は、始に求むること深ければなり。


【解釋】
〔王弼の解釋〕
《卦辭》
恒であり享る。恒の道は通り、咎めなく通る。正しくしていれば良い。常道を修めることが終われば、また始まりがある。行って間違いはない。剛が尊く柔が卑しいの順序が得られる。長く陽で長く陰である。互いに成就する。動いて間違えることなく、よく連れ合い、長く続く。窮まることがない。


《爻辭》
恆の初に處り、最も卦の底に處る。始めより深きを求むる者なり。深きを求めて底を窮め、物をして餘蘊(ようん)なからしむ。漸く以て此に至れば、物すら猶ほ堪へず、而して況んや始めより深きを求むる者をや。此を以て恆と爲せば、正なるを凶にし德を害(そこな)ふ。絶へて利あるなきなり。


〔東涯の解釋〕
《卦辭》
恒は常、久しいの意である。卦は変じて咸となる。咸の三爻が上に行き四爻となった。上爻が下って初爻となった。剛が昇り柔が下る。雷も風も共に鼓動する。内外全て応じる。だから久しく続き不易である。咎めなく、正しくしておけば良い。作為や粉飾は恒の道でない。必ず駄目になり、長く続くことはない。正しくなければ恒であっても善でない。恒で善であれば何をしても良い。伊尹が畝の中に居て堯舜の道を楽しんだことは、身を終えたことはまさに恒と言えよう。
《爻辭》


〔根本通明の解釋〕
《卦辭》
「つね」は常と恒の二つがある。「常」の方は幾万年経っても少しも変わる所が無い。しかし「恒」の方は毎日変わり続けて居るが、幾万年経っても易わらない所が有る。是は日月の象になり、常の字は日、恒の字は月である。太陽は幾万年経っても大小変化せず、何時も変わらない。しかし月は毎日形が変わって居る。この卦は夫婦の卦である。夫婦は一旦婚姻を結んだ上は何処までも全うすべきものである。しかし人の身の上というものは毎日変わって往く。初爻目は下卦の主であり、四爻目は上卦の主である。また初爻目と四爻目は互いに相応じて居る。其処で正しい所が良い。夫婦力を合わせ心を同じくして事を為せば、一家は段々盛んになり先に進んで往く。
[彖傳]
この卦は元は地天泰で、一番下の陽爻が四爻目に上り、また四爻目の陰爻が一番下に下った。其処で陰陽相交わり雷風恆の卦になった。雷が鳴って動けば、風が従って雷を助ける。雷と風は相離れず、互いに相與しめ、万物を生じさせる。初爻目と四爻目、二爻目と五爻目、三爻目と上爻目、皆剛柔応じて居る。男女の道は天地陰陽の道である。
[象傳]
雷が春に起こって風が是を助ける。雷気の滞る所を風が一帯に吹き散らし、能く気が循環して万物が育つ所がある。君子は陽が外、陰が内という在り方を易えない。
《爻辭》